2ヶ月ぶりくらいの勉強会で某研究所へ.今回は尊敬するM先輩も久しぶりの登場ということで,早稲田駅で待ち合わせて昼食摂って一緒に行ってみました.出かけて行ったわりにはこちらは準備してなかったので,O先生が論文を発表してくださいましたが,このテーマが「暴力の厚生損失」ですと.イロモノ?と思ったのですが,書いた人はちゃんとした若い労働だか開発だかの経済学者さんでした.そりゃまあMarylandだもんなあ.
やってることはスタンダードっちゃあスタンダードな話で,死亡統計を使って殺人で失われた生命の価値を,暴力が限界的に減ったときの増分で測ってみましょうという話で,限界的な支払い意思額(MWP: marginal willingness to pay)を試算して国際的に比較してます.「命の価値」とかいうとおどろおどろしいですが,医療の費用便益分析分野では比較的確立された概念じゃないかと思います.Values of a statistical lifeとどう違うのかはよくわかんないですが,こちらは環境経済学で使われるらしいですね.で,結果ですが,たとえば日本についてみると,暴力による殺人がなければ平均余命が0.1歳延び,そのMWPはGDPの4%に相当するそうです.ふーん.MWPは,(とくに若者の)殺される率が高いか,平均所得が高ければ高くなるのですが,国際的に比較すると,コロンビア,フィリピンのMWPが高くて,GDPの2.5倍以上となっております.うーむ.
国際的な公表データから「ほほう」と思わせる結果を出しているあたりはさすがにJHEなんですが.うーむ.なんとなく釈然としないところはありますが,このデータ(WHOのデータ)は死亡に至る暴力のみを取り上げていて,ということはおそらく,戦死者は含まれてないんですよねえ.これって,警察行政とかの費用便益分析に使えるってことなんでしょうか? いやまあそうだとしても,なんとなく,うーん.
Soares, Rodrigo R., 2006. The welfare cost of violence across countries. Journal of Health Economics 25, 821-846,
Hess, Gregory D. 2003. The economic welfare cost of conflict: An empirical assessment. CESifo Working Paper Series No. 852