だからちがうんだってば.

ブログ人から引っ越しました

高等ゆーみん

2011-10-28 13:36:00 | 授業ネタ
今学期はいろいろあって「外書講読」という科目を1つ担当しています.時間割的には不人気なコマなうえに,個人的な趣味に走って "Behavioral Public Finance"を指定したのでいたって少人数で,びくびくしながら進行しています.福祉給付にまつわるprojection biasのところで,「ちゃんと働くというコストは働くまでは過大に評価されがちだ」とかいう話があったので,そんなもんかしらん,と思って学生さんと話をしていたら「ぼくはNeetになりたい」と言い出したのでどうしようかと思いました.確かに標準的なミクロ経済学の枠組みでは労働供給は不効用をもたらすと仮定して分析しますが,大学3年だか4年だかでそんなこと言われても.ブラック企業の話とか,「フレックスタイム制でコアタイム9時-5時」とかいう話を聞くとしょうがないんでしょうか.うーん.ひょっとしてすごい富豪の関係者とか,貢いでくれるおじさんかおばさんがいるとか,そういうパターンだったのかしらん.ううむ.

関係あるようなないような話ですが,日経BPオンラインを見ていたら「これからは大学中退者が激増する!」という記事を発見.そりゃそうかもなあ,という話なのでちょっと抜粋してみると

一部の熱心な教員や問題意識のある職員は、学生の質に合わせて工夫をしていかねばならないと頑張っています。しかし、私が見る限り、ほとんどの大学教員はこれまでと同じ「研究者」としての立ち位置を堅守し、事務職員は「前年通り」の仕事スタイルを踏襲しています。

(中略)

無理をして志望者を募るのであれば、大学はこれまで以上に中身の拡充と、企業社会とのつながりを再構築し、学生たちに学ぶ意義を教えていく必要があります。キミたちの将来の何のための学問なのか。

これはあれですか,日本橋学館大学ですか.その気のない学生は退学でもして働きゃいいのに,とは思いますが,そのためには「社会が高卒でも生きていける道を明示する必要があります」ということなのでうっかりしたことは言えないません.でも,いわゆる上位校だけでも単位授与の厳格化を進めて中退者をだし,もって意思を示してもいいんじゃないかと思ったり.過渡期が大変そうなのと,私学ではできないだろうなあとは思うんですけど.確かに「文系学部においてことさら、これまであやふやにしてきた部分です。いま、まさにそれが社会から問われているといえます。」ですな.

ノーベル経済学賞

2011-10-10 22:03:49 | 経済学
プレスリリースより(仮訳)

マクロ経済における因果関係についての実証研究に対して.

GDPやインフレーションは,一時的な金利の引き上げや減税に対してどのように影響されるのだろうか? 中央銀行がインフレターゲットの水準を恒久的に変化させたり,政府が予算編成の方針を修正したりしたときには何が起きるのだろうか? 今年の経済学賞の受賞者は,これらの問題をはじめ,経済政策と他のマクロ経済変数,たとえばGDP,インフレーション,雇用,投資といった変数とのあいだの因果関係に関する他の多くの疑問にこたえるための方法を発展させてきた.

これらの減少は通常は双方向の関係にある.すなわち,政策は経済に影響するが,経済もまた政策に影響する.将来に関する期待がこの相互作用の主要な側面となる.将来の経済活動や政策に関する民間部門の期待は,賃金・貯蓄・投資の決定に影響を及ぼす.同時に,経済政策の決定は,民間部門の発展についての期待に影響される.受賞者の手法は,これらの因果関係の識別に応用され,期待の役割を説明するのに利用される.また,予期しない政策対応や,システマティックな政策変更の効果を解明することも可能にした.

トーマス・サージェントは,構造的マクロ計量経済学が経済政策の恒久的な変化を分析するのにどのように利用できるかを明らかにしてきた.この手法は,家計と企業が,経済発展にともなってその期待を修正するときのマクロ経済的な関係を分析するのにも用いられる.たとえばサージェントは第2次世界大戦後の時代を分析した.この時期には,多くの国がはじめは高インフレ政策を実行がちであったが,その後は経済政策を変化させ,低インフレ政策へ落ち着いた.

クリストファー・シムズは,経済政策や他の要因の一時的な変化に経済がどのように影響されるかを分析するために,いわゆるベクトル自己回帰に基づいた手法を発展させてきた.シムズと他の研究者たちは,この手法をたとえば,中央銀行の設定する金利の上昇の効果の分析に応用してきた.通常はインフレ率が低下するには1年か2年かかるが,経済成長は短期的にはすでに徐々に減速し,数年後まで通常の成長率には戻らない.

サージェントとシムズは研究を独立して行っていたが,彼らの貢献はいくつかの点で補完的である.受賞者の1970年代と1980年代における代表的な業績は,世界中の研究者と政策担当者の双方に受け入れられてきた.こんにち,サージェントとシムズの開発した手法は,マクロ経済分析に必須の手法となっている.

トーマス・J・サージェント.アメリカ人.1943年アメリカ・カリフォルニア州パサデナ生まれ.1968年ハーバード大学よりPh.D.取得.ニューヨーク大学経済学部教授.

クリストファー・A・シムズ.アメリカ人.1942年アメリカ・ワシントンDC生まれ.1968年ハーバード大学よりPh.D.取得.プリンストン大学経済学部教授.