だからちがうんだってば.

ブログ人から引っ越しました

煙立ち去らでのみ

2008-02-26 20:17:00 | 生活

土曜日の夜に父方の祖母が他界した.8年間にわたって介護を受け,手も足も曲がって固まり,針を刺す場所もなくなり,体重も落ちたあとだった.ありとあらゆるところが正常に機能していないように見えた.昨年の秋頃に珍しく父親から呼びつけられて会いに行った時には初孫である僕の顔を認識していたが,この正月ごろにはずっと介護を担ってきた叔母さえ識別しなくなっていた.現代科学のもとでは人はいくらでも生き続けるのではないかと思えるほどだったが,さすがにそうではなかったらしい.

結婚式で新郎新婦が多忙であるように,葬儀では遺族が多忙であることを初めて知った.村落共同体らしきものが残っている父の里では浄土宗つながりの近隣の方々が初七日まで(今では初七日は葬儀の数時間後になるが)いろいろな世話を焼いてくれるが,そうはいってもさまざまな手配は近親者が行わざるをえない.叔母は指示を出す合間に泣き,泣く合間に指示を出していた.土曜の夜は祖母の子供たちは一睡もしなかったらしい.日曜日の通夜の夜は,夜伽ということで(用語が変だけど仕方ない),交替で鈴(りん)を鳴らし,香を絶やさないようにしなければならないから,二夜にわたって十分な睡眠がとれない状態だった.僕もしばらく棺の前で鈴を鳴らし,香を継いだ.遺影は直近の誕生日に老健施設で撮ったデジタル写真を引き伸ばし,修正を加えた写真だった.金切り声で叔母を呼んでいた最近の顔ではなく,祖父をたしなめ父を叱っていた頃の祖母の笑顔が見えた.じつは祖母本人がいちばんほっとしているのかもしれない.

葬儀がすんで火葬しているあいだに受け取った籠のなかのものを分配するという作業があった.食べ物なんかを満載した籠がお悔やみに送られてくるのを,手伝っていただいた方々と親族に分配するということなのだが,技術進歩で時間の制約が厳しくなると妙なところであわただしい.年に1度か2度しか近付かない僕には,誰が誰やらさっぱりわからないし,しきたりも知らないから,言われたとおりにものを並べるしかできないのが,叔母たちはああでもないこうでもないと議論しており,携帯電話もしばしば鳴る.仕事に没頭して悲しみを忘れるという仕組みになっているんだろうか.仕組みといえば,火葬場に併設された公営葬儀場は,祖母が入っていた老健施設の山の反対側にある.隣接する町が共同で運営しているのだが,よく考えてあるというべきかなんというか.火葬の設備もよくできているのか,煙突さえ見当たらない.野辺のけぶりも環境問題にはかなわなかったのだろうか.

あだし野の露消ゆる時なく、鳥部山の煙立ち去らでのみ住み果つる習ひならば、いかにもののあはれもなからん。世は定めなきこそいみじけれ。(徒然草 第7段


任期付職員の募集

2008-02-26 17:57:53 | 生活
財務省の研究所が研究官を公募していたと思ったら,経済産業省でも係長・補佐級で職員を募集しているんですなあ.若者はぜひ応募していったらいいんじゃないかなあと思うんですが.っていうか,大学からの出向という制度は日本にはないんですかね?

リンク: 任期付職員の募集について-採用情報(METI/経済産業省).


集積と租税競争

2008-02-21 23:29:07 | 生活

某所のワークショップでKai Konradの発表を聞く機会がありました。Konradは公共経済学や都市経済学ではオオモノです。今回のテーマは集積の利益と租税競争でした。課税標準が移動可能であるとき、その課税標準に対する税率が競争手段となり、税率引き下げ競争が起きる…典型的には法人税ですが、そういう話に集積の利益の話を入れたもので、埋没費用がある時のhold-up問題とも関係しているみたいでした。話自体はそんなに難しくなくて、すでに産業が集積している地域を考えると、その地域の地方政府(国際移動なら一国政府)は、集積している資本に高い税率を掛ける誘惑に駆られるのですが、他方で、高い税率をかけてしまうと新しい投資が来ない、ということになります。集積の利益が産業の側にあれば、税率がおなじであれば投資に来てくれるのでその分で優位を持っているのですが、税率が高すぎるとやっぱり逃げられるかもしれません。で、この話を2地域のbiddingのようなモデルに落として、動学的なのでマルコフ均衡を求める、てなことになってて、さすがにそこらへんは聞いただけだとわからんなあといいうところです。もし、新規投資にだけ税制優遇措置がとれたり、補助金を出したりすることが可能なら、話はもう少しややこしくなって、均衡でのネットの税収は少なくなる、ということでした。ふうむなるほど。

集積の話は近くにいるO先生も最近やってらしたみたいなんですが、動学が入ると理論はいきなり難しくなってかなわんですなあ。実証手法も難しくなるんだけど。ううむ。


ポートフォリオは変わらない?

2008-02-20 23:46:00 | 経済学

Samuelson-Merton定理というのがあって、投資家の時間的視野にかかわらず最適な資産ポートフォリオは変化しない、ということになってるんだそうです。で、ポートフォリオというのは、リスクなし資産があれば、その安全資産と適当に作ったmutual fundの組み合わせで決まり、そのファンド内部の危険資産の組み合わせは一定になる、というのもわかってるんだそうで。だからつまり、投資する資産が預貯金、債券、株式の3種類で、預貯金が安全資産とすると、危険回避度によって預貯金と(債券+株式)の比率は変化するけれども、債券と株式の比率は最適ポートフォリオでは危険回避度によらず一定、ということになります。なんですが、たいがいの投資アドバイスでは、「リスクを取れる場合には株式の比率を高く」なんてことが書いてあって、債券に対する株式の比率はリスクがとれるほど大きい、ということになっています。

こりゃいったいなんじゃらほい、というのを検討した論文があって、「理論で支持されるアドバイスがこんなに簡単なのに、実際に行われているアドバイスのほうがややこしいのは、理論が何かを見落としているkらに違いない」というような雰囲気で書いてあります。いいですねこういうの。好きですね。で、この論文の場合は「何を見落としていたのかよくわからん」という結論になるんですけど。この論文の第一著者はいまは学問の世界ではなくて投資家らしいのですが、そういう人がいるってのが日本とは違いますよねえ。受け入れる素地があるってことですかね。

Canner, Niko, N. Gregory Mankiw. David N. Weil. 1997. An asset allocation puzzle. American Economic Review 87(1), 181-191.


入試で処理ミス

2008-02-19 22:30:00 | 生活

センター試験も終わり国公立は2次試験を控え、私学も入試まっさかりというシーズンです。例によって(?)出題ミスのニュースがちらほらと出ている今日この頃ですが、出題ミスとは少しレベルの違う(?)事件が専修大学で起きたようで。センター試験を使った入試で、大学のシステムに昨年の残されていたため、誤った結果が出力されたところ、センター試験の自己採点をもとに問い合わせが相次いで発覚、という事件です。去年と今年の受験番号が成績について相関がない限り、昨年のデータに基づいた発表というのはほとんどランダムに近いわけで、あらあらまあまあ、ってなものです。合格発表した人を不合格にはせずに、間違って不合格にしてしまった944人を合格にすることにしたために、合格者数がえらく増えてるみたいです。辞退者の数はそうそう変わらないでしょうから、このままいくと入学者も増えちゃって大変そうです。しかし、昨年のデータを消し忘れたのは仕方ないにしても確認とかしないのかなあというのがなぞ。入試のパターンも増え、システムがややこしくなってしまったのでそれどころじゃないというところなんでしょうか。

しかし、来年入学の専修大学の学生さんは入学のプロセスが前後と違うわけですから、自然実験になってるわけで、これを使って大学教育の効果が実証できますなあ、と思うのは不謹慎なんでしょうか。でしょうね。あらあら。

ぜんぜん関係ないんですが、大学入試センターって、英語名はなんだか難しいんですが、ネットのアドレスはDNCなんですなあ。略し方がNHKみたいですが、どうなんでしょうねこういうの。

リンク: asahi.com:専修大学入試でデータ処理ミス 944人追加合格 - 教育.


英語の名前

2008-02-18 13:27:22 | 生活
大学プロデューサーズノートから.

近畿大学はいまのところ英語でKinki Universityというのですが,kinkyという単語と発音がそっくりで困っているので英語名称を変えましょう,という話があるらしいです.僕の名前も英語読みすると「避ける、遠ざける、回避する」という他動詞になってしまうので心情はわからないでもないっす.近畿大学といえば英語村でも取り上げられた大学ですが,Kindai Universityに変えたいんですって.Mt. Fujisanに似た重複表現じゃないですか.ていうか,「秋田経済法科大はノースアジア大になった」というほうが気になりますね.ノースアジア大って.フィリピンにFar Eastern Universityというのはありますけど.

大学の英語名称というと,"University of ..."というのと"... University"というのがあって,英語圏では公立と市立で住み分け(?)してるそうなんですが,日本の公立大学はほとんど"... University"と呼んでいる気がします.が,東京大学はUniversity of Tokyoが正しい英語名称だそうで.なんでなんでしょうねえ.

大学プロデューサーズノートでは「中京女子大学は共学」という話も紹介されてます,この大学,中京大学とは関係ないんでしょうか.名前を変えるんだったら中京大学なんでしょうがそうもいかないのでそのまんま,という話じゃないかという気がしてならないんですが.あ,中京学院大学というのもあるんですか,そうなんですか…….


ケルトの虎,アジアの虎

2008-02-18 13:10:00 | 経済学
いい加減に縁を切りたいところの一般均衡シミュレーションなのですが,諸般の事情でもう少しお付き合い.その一環で人口動態とマクロ経済の関係について少し書かなければならなくて,論文をナナメ読みしているところです.人口動態とマクロ経済というと,人口転換(demographic transition)の途中に人口配当とよばれる時期(?)があって,というのも死亡率の低下に引き続いて出生率の低下が起こる関係上,一時的に若者の比率が増える時期が来る(baby boomになったり)わけです.「東アジアの奇跡」と呼ばれる急成長も,いくらかはこの人口転換によって説明される,というのはKrugmanの97年のForeign Affairsの論文で有名になった(Krugmanが言い出したことではないらしいですが)ところです.ある世代の人口が一時的に増えるとき,その世代が勤労世代にいればdemographic bonusになりますが,この世代が老年期にはいると負担になっちゃうなあというのがこれからの日本,という位置づけになるわけですが(ということは,アジアの虎たちもしばらく経てば似たような状況になっちゃう,というのが「高齢化するアジア」論ですな),人口転換が起きたからといって経済成長が起きるわけでもない,というのが60年代以降のラテンアメリカを見れば明らか,という話なんだそうです.

で.90年代に成長した国として挙げられるひとつが,アイルランドです.ケルトの虎(Celtic Tiger)と呼ばれ,規制改革やらなんやらで知られているところではあるのですが,このケルトの虎の躍進もまた,人口転換によってあるていど説明できるんだそうです.もともとアイルランドはヨーロッパの中では出生率が低下しないことで例外的な存在であったのですが,80年ごろに避妊薬(具?)が法的に認められるようになってから急速に出生率が低下し,人口ボーナスが出現することになりました.避妊の合法化というのは女性の社会進出(というか政治的発言力の増大?)によるものだったので,時期を同じくして女性の労働供給も増加した,ということのようです.へー,そーなのかー,という話.おかげで若者の海外流出も流入に転じた,ということなんですが,えーっと,最近はどうなんでしょ.人口ボーナスも終わったってことなんですかね.

Bloom, David E., David Canning. 2004. Global demographic change: Dimensions and economic significance. NBER Working Paper 10817. [Kansas City連銀シンポ論文]


仕事をする目的

2008-02-17 18:25:23 | 経済学
大学も少子化に対応するためにいろいろなことをしているわけですが,そのなかのひとつが寄付金の充実だったり,そのためのOBの取り込みだったりするわけですが,東京大学基金もいろいろやっているようで.いまどのような教育研究が行われているかを周知広報するというのはその1つの手段で,労働経済学なんていうのは紹介しやすいところなんでしょうか.

ということで,ゲンダ先生が登場,というわけなんですが,これがなかなか興味深いです.石川先生のはなしや「わからないこと」に対するタフネスという話はぜひお読みいただければと思います.ゲンダ先生がサービス業に向いているかどうかはよく分からんですが.

リンク: 東京大学基金の役割: 3.「ニート」の言葉を広めた、労働経済研究のリーダー的存在 玄田有史助教授.


解体新ショー

2008-02-16 23:45:00 | 生活

NHKの「解体新ショー」は楽しくてちょくちょく見るのですが,今回は「衝動買い」の話でした.衝動買いの言い訳を見てみるだけでもおもしろいんですが,スタジオの解説役の先生に大阪大学の西條先生が出てきたのでついじろじろ見てみました.26時間後の立派なケーキと24時間後のそうでもないケーキを比較すると立派なケーキを選ぶのに,2時間後の立派なケーキとすぐに食べられるそうでもないケーキとの選択だとそうでもないケーキが選ばれる,という話なんですが,そういう傾向がある(現状志向バイアス)という話はそれはそれでおもしろいんですが,これまでの解体新ショーと比べると理由とかメカニズムとかの解説が少なかったかなあという気がしたり.「本能的なものなんです」って言われてしまうとまあそりゃそうなんでしょうけど.ううむ.


樹さき

2008-02-16 23:36:00 | 生活

この時期になると平河町にある「ひさご」という天ぷら屋さんに行きたくなるところなのですが,一昨年あたりに平河町の店は閉店になってしまい,秋葉原にある店はやや期待外れなところがあったので,今年は北柏にある割烹樹さきに行ってみました.国道6号線沿いの便利なところにあって,個室に行けば竹林も綺麗に見られるらしいのですが,個室も取れなかったのでふつうの部屋でした.料理はこんな感じでした.薄味の上品な雰囲気でおいしかったです.しかし日本料理というのはまた驚くほど小さいのであるなあというのは再確認したところではありますが.

ところで,終わりごろにご飯(今回は煎り大豆釜炊き御飯)が出てくるんですが,その前に「これからお食事ですが」といわれました.ええとそうするとここまで出てきたのは食事じゃないのか??と思うんですがどうなんでしょう.そういう用語法ってことでいいんですかね.