Even if we do not reject the null hypothesis, it is possible that more than one instrument is endogenous, and that the 2SLS estimators using a full and reduced set of instruments are asymptotically biased in similar way. (Wooldridge 2010, p.135)とあるので,「操作変数を使用して過剰識別検定を行う際には、どれか一つは(状況証拠などから)「確実に操作変数が満たすべき条件を満たしている」といえる変数がない限り、帰無仮説を棄却しない=「すべての操作変数が外生である」とまでは言えない」ということだそうです.ちなみに,Wooldridgeの旧版(2001)では,
The usefulness of the Hausman test is that, if we reject the null hypothesis, then our logic for choosing the IVs must be reexamined. If we fail to reject the null, then we can have some confidence in the overall set of instruments used. Of course, it could also be that the test has low power for detecting endogeneity of some of the instruments. (Wooldridge 2001, p.123)とだけ書いてあります(Hausmanテストになってる.おや?).ぼくがSargan検定を最初に勉強したHayashi (2000, p.218)では,
If J statistic ... is surprisingly large, it means that either the orthogonality conditions or the other assumptions (or both) are likely to be false. ... It is only recently the the small sample property of the test became a concern. ... (i.e., the test rejects too often).となっていて,興味があればJournal of Business & Economic Statisticsの1996年7月号をみろ,となっています.阿部修人先生の「家計消費の経済分析」では,40ページに
過剰識別条件を用いた操作変数と誤差項の直交性の検証は,過剰識別検定,あるいはSargan検定とも呼ばれる.操作変数が誤差項と直交しているか否かは,操作変数法にとり最も重要な仮定であるため,ほとんどの計量経済学の教科書では,操作変数を用いるときには,常に過剰識別制約検定を行うべきであると書かれている....分母が観察数Nで割られており,観察数が大きいと,Sargan統計量も大きくなっていく傾向があることが分かる....ミクロの家計データでは,観察数が1万を超えることをも珍しくなく,Sargan検定をパスする,すなわち,Χ二乗検定でゼロを許容するのは困難になってくる.実際,著名雑誌に掲載されている論文でも,大量のデータを駆使した分析ではSargan検定で棄却されてしまう結果を報告していることも珍しくない.ぼくの理解はだいたいこの内容と同じくらいにすぎないです.
さて,まず,たぶん共通して言えることは,小さすぎず大きすぎない,たぶん数百から数千くらい(?)のデータを用いて過剰識別制約検定を棄却されたときには,操作変数の外生性は疑うべきだということでしょう.外生性によほどの自信があれば国語力でがんばることもできるでしょうが,あんまりそうはいかないと思います.
観測値数がやたらに大きいときに,過剰識別制約検定を棄却したときは,解釈が2通りあるかもしれません.ひとつは,操作変数の外生性が満たされていないとするもの.もうひとつは,推定式自体が1次式による近似なのだから棄却されるのも無理はないとするもの.後者の道を取って,「この推定で意味がある」と論じるのにはけっこうがんばらないといけなさそうですがどうでしょう?
観測値数がそこそこのときに,過剰識別制約検定を棄却できなかったときも,じつは解釈が2通りありそうです.ひとつは,操作変数の外生性が満たされているので推定結果は意味があるとするもの.ぼくはこれが標準だとおもってました.いまひとつは,内生変数が複数あって偏りが相殺している可能性があるのでそれでも信用できないとするもの.えーっと,こういうときにはどうすればいいんでしょうか.制度的背景やデータの作り方でがんばって説得,ということになるんでしょうかねえ.でも,外生的な(!)政策変化や地異天変でもないかぎりなあ,とも思います.
総じて,統計量1個だけではなんともいえまへんな,というところでしょうか.まあそうか.普通の結論になってしまった.ううむ.
そんなあいだにもアラバマ州ジェファーソン郡は破綻していて(Bloomberg),こりゃまたびっくりと思っていたら,アメリカの地方債は昨年で79件,今年も9月までで42件とけっこうな数でデフォルトを起こしていて(Bloomberg),いったいこれはなんじゃらほい,と思ったりしています.ジェファーソン郡の「破綻」というのは連邦破産法第9条の申請を言っていて,破産によって地方行政が全面的にストップという話ではないようです.債務整理というやつですか,といったところで「破綻」といえばそうですかいな.企業の倒産がそのまま清算を意味しないように,地方債のデフォルトもそのまま行政機能の停止を意味するわけではないということでしょうか(←分かってない).しかしこの伝でいくと,日本の準再建団体というのも破綻と呼ばないといけないような気がするんです(じっさい呼ばれてますが)が,破綻ということばのイメージとはちょっと違うよなあと思ったり.そうでもないのかしらん.
地方といえば,「国と地方の協議の場」に「社会保障・税一体改革分科会」というのが設置されて,その第1回会合が開かれたそうです(日本経済新聞,全国知事会,全国市長会).「税と社会保障の一体改革を巡り」ではあるんですが,地方分権ナントカ法との関係はどうなっているのかよく分かりません.なんなんでしょう(S原くんとか詳しそうだけど).それはさておきここでちょと目を引いたのは,地方の言い分として「地方が独自財源で賄う社会保障サービスが6兆2000億円に上ると説明し、消費増税時に一定の財源を回すよう」(日本経済新聞)とか,「地方単独事業を含めて社会保障サービスを持続的に提供できるよう」(全国市長会)のあたり.分かるような分からないような,です.分からないような,というのは,地方単独事業は読んで字のごとく地方が単独で行っているものなので,持続的に提供したければ地方税を増税するべきで,国税が増えるみたいだからついでにもらっちゃえ,という(ように聞こえる)のは,あんまり行儀のいい話じゃない気がするからです.一方で,分かるような,というのは,地方単独事業として始まったものが全国的に採用されるというのはちょいちょいある話なので,政策実験としてみるなら地方単独といっても補助っぽいものは必要かもしれないかもなあと思うのと,消費税5%のうち1%分は地方の税ということになっているので消費税の増税にあたって取り分(?)をもらおうというのは当然といえば当然で,その説得材料として地方の事業の存在を訴えるのはもっともかなあ,と思うからです.
もちっと超越的に(?)考えると,財政学の初歩では,所得再分配機能は中央政府の役割となっていて,執行を地方に任せるにしても企画立案は国が持つべき,とかいうんじゃなかったかしらん.どこに住んでもほとんど税負担に差がないような運営をしておいて,居住地によって社会保障の程度が違うというのは,目に見えやすいこともあって,あんまりいい話でもないと思います.このあたりはH先生や西川先生も危惧なさっているところで(たとえば青山経済論集の論文).「うちの町の貧乏人はかわいそうだけど,他の町の貧乏人はかわいそうじゃない」というので合意が得られている,という話なんですかね.
いまのところの関心から言うと「住民ニーズに対応するため実施せざるを得ない乳幼児・障害児医療費助成や保育料の負担軽減、構造的問題を抱える国民健康保険の保険料軽減、地域医療確保のための公立病院繰入など、住民生活に必要なものとして全国的に実施しているものなど」(全国市長会)のあたりでしょうか.ううむ.全国的に実施してるんだったら補助事業か交付税措置でいいんじゃないのかしらん.
……と気が付いたのですが,全国市長会のページ,「障がい児」って書かなくていいんでしょうか.見る人が見たら怒りそうだなーとか思ったり.
今日は部屋でぼんやりしていたのは,学部のイベントらしいと思って行ってみたらそりゃもうびっくりするくらい人がいなくて驚いて怯えて帰ってきてしまったからです.経済学部/経済学研究科というのは講座制を取っていないことが多くて,単著の論文が多い(し,評価される)分野でもあるからか,あんまり話をすることもないし,話をする機会もないので,学部のイベントとあれば…と思ったのが間違いでした.そりゃ社内旅行も減るわけですよ.
それとは対照的に,文部科学省やそこにある科学技術・学術審議会などというところでは「研究者ネットワークの構築」やその促進というのが話題になっていたりします.たとえばこれ.いわく,「我が国の学術研究においては、各分野において、個々の研究者のネットワークによる連携は行われているが、分散的な連携になっているケースが多く、グローバルに認知されるような、コアとなる研究グループの形成にまで至っていないのではないか。」だそうですよ.世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)というのが現在6拠点ありますが,どうもこの拠点づくりというのもネットワーク構築をハード面から支援するという意図があるようです.午後3時になるとお茶とおやつが提供されて研究者がわらわらと集まってきて黒板の前でアイデアを交換したりする(もちろん英語で),とかいうので有名な(?)東大柏キャンパスの数物連携宇宙研究機構もこのWPIのひとつです.ちなみにWPIの年間予算は約14億円.高いと見るか低いと見るか(仕分けたくなるかどうか)は価値観の問題なんでしょうな.
以前も書いたような気がしますが,大学院生の頃,アメリカから来た先生が「なんでここのファカルティはセミナーに来ないんだ」と言ってたくらいなので,分野の習慣みたいなものかもしれず(分権って好きそうだし),文科省が言ってるからどうだという話でもないのはそのとおりではあります.ぼくは人見知りするほうなので,セミナーなども行ってはみたものの緊張のあまり良く分からない質問をして(サカイ先生ごめんなさい)後でがっかりしてたりするくらいなので,そこまでしてやらんでもいいかも,とも思ったり.でもなあ.
ちなみにこの学部のイベント本体はなかなかおもしろかったです.素敵な研究者がいることも分かったし(他の分野だと年下の活躍っぷりはなかなかすばらしい).かといってお友達が増えたわけでもないのはがっかりすべきことなんでしょうが.あーあ.
2日付で発表された紫綬褒章の受章者24人は次の通り(敬称略)。 東北大教授・小柳光正(64)=宮城県名取市▽東大教授・石川正俊(57)=千葉県柏市▽ピアノ演奏家・高橋アキ(67)=本名秋山アキ=東京都渋谷区▽国立天文台教授・家正則(62)=同杉並区▽成蹊大教授・揖斐高(65)=同八王子市▽舞踏家・天児牛大(61)=本名上島正和=同港区▽九州大名誉教授・内海英雄(64)=同大田区▽俳優・大竹しのぶ(54)=同世田谷区▽漆芸作家・小椋範彦(53)=同大田区▽東京工業大教授・岸本健雄(64)=同町田市▽東大教授・北岡伸一(63)=同文京区▽指揮者・鈴木雅明(57)=同渋谷区▽映画美術監督・種田陽平(51)=本名種田康幸=同港区▽東大教授・◆(しんにょうに十)省次(60)=同文京区▽東大名誉教授・西沢直子(66)=同文京区 ▽東大教授・井堀利宏(59)=横浜市中区▽尺八演奏家・三橋貴風(61)=本名三橋保源=同港北区▽京大教授・丸岡啓二(58)=大津市▽京大教授・伊藤邦武(62)=京都市左京区▽大阪大教授・西尾章治郎(60)=大阪府吹田市▽大阪大教授・福住俊一(61)=同箕面市▽演出家・松本雄吉(65)=大阪市中央区▽現代美術家・森村泰昌(60)=同天王寺区▽神戸大教授・清野進(63)=兵庫県芦屋市(年齢は3日現在)