だからちがうんだってば.

ブログ人から引っ越しました

総選挙

2014-12-05 23:25:30 | 生活
なんだかよくわからないうちに衆議院は解散されて総選挙に入ってしまいましたが,財政逼迫のおりに増税を延期することになったり,延期された増税でも消費税で軽減税率が決まったりと,これでいいんかいな的な展開が続いていて,悩ましいところです.「代表なくして課税なし」だそうですが,あれって植民地への課税の話であって現代日本にそのまま通じるものでもないし,財政赤字を通じた将来の課税を考えるとすると,(何らかの形で)税を払わされる将来世代はこの選挙に「代表」を送り込めないわけで,いったいなんじゃらほい,といったところです.軽減税率については事務コストなどが高くて,それが故に3%での導入時点から断念してきたという経緯がありますし,導入している諸外国では止めたいという声もあるやに聞いております.軽減税率の対象となる品目は高所得者も購入してしまう関係上,軽減税率を入れると税収を確保するためには本則税率をあげねばならず,それでいいんかいなと思います.低所得者への配慮は所得税や給付で行えばいいだけのはなし.所得税をあげれば高所得者が逃げるかもしれませんが,低所得者への配慮のためには相続税や固定資産税(とくに土地保有税)を活用すればよく,とくに固定資産税については地方分権とかいってるわけですから地方政府が責任もってあげて,そのぶん補助金や交付金を総額では減らせばよいのではと思ったりします.「お上頼み」を止めるのはいいんですが,うっかり公務員の給料を下げたりすると,有為な人材が公的部門に来なくなるリスクもあります.

けーざいがく的には最適な公的債務の水準が実証的に決まるわけでもないので今の水準が高すぎるのかどうかははっきりとは言えないですが,中立命題が成り立ってなさそうな現状にかんがみれば(とくに「バローの」中立命題といわれるほう),赤字公債については「公正」とか「不道徳」とか日本ではあんまり言われないですけど(こちらを参照),けーざいがくしゃ的にはやっぱり減らしたほうがいいんじゃないかしらんと思います.

赤字の返済といえば,戦中に累増した公債はインフレで返されたと思ってたんですが,こんなこともやってたとは.税率90%の財産税とか,政府の負っている債務と同額での「戦時補償特別税」の課税とかですか.たしかに制度上は増税ですけど,国内債がほとんどであったところでもほとんどデフォルト(というか債務調整)だったのですなあ.


財政論(9)

2014-12-04 13:46:27 | 授業ネタ
法政の財政論は少子化対策から生活保護をあつかっています.少子化対策の経済学的正当化というのはわりと難しくて,保育市場への公的介入のほうが話としては簡単(市場の失敗の存在が言いやすいから)なんですがうまく伝わったでしょうか.生活保護については貧困の問題や,所得再分配の程度の問題が顕著に表れるところなので,ぜひ考えていただきたいところですが,そこらへんはまた次回です.でも生活保護って,実際のところあんまり実感のない学生がほとんどじゃないのかしらんと思ったり.人のこと言えませんが.

経済政策論(10)

2014-12-03 13:42:10 | 授業ネタ
経済政策論ではヘドニック・アプローチの問題点をいくつか挙げたあとで,表明選好法(stated preference)に進んでいます.実際にない状況についても質問できるのがメリットなのですけど,経済学者は伝統的には行動のデータを重視しており,アンケートの回答はそんなに使ってこなかったところではあります.それでも昨今ではアンケート調査も使いようによっては,ということになりつつあるんでしょうか.幸福度の研究とか.表明選好法についてはExxon Valdes号の原油流出事故以来いろいろと研究が進んでいるということなんですが,Valdes号とかDeepwater Horizenとかの話で時間を使いすぎたかもしれません.

軍隊を誘致せよ

2014-12-01 23:03:33 | 生活


松下孝昭.2013.軍隊を誘致せよ: 陸海軍と都市形成.吉川弘文館 (歴史文化ライブラリー).

タイトルのとおり,明治維新後から日露戦争前までの期間,軍拡によって設置が決まった師団や歩兵連隊を誘致するために各都市が運動を繰り広げ,またそのために水道が整備されたり遊郭ができたりできなかったりした歩みをまとめた本です.都市や地域が発展のために誘致をするということ自体は今も昔も変わらないのであるなあ,というところなのですが,この本が注目しているのが軍隊だというあたりが興味深いです.ふつう,というか都市経済学や地方財政論の標準的な設定では,地方政府が誘致するのは民間資本か,本社か,公共投資かあたりで,いずれも直接にその地域で生産を行い,雇用を生む存在です.でも,軍隊はそれ自体はその地域で消費されるような財を生産をするものではない(外交や国防は典型的な公共財だということになっているので,消費されているといえばされてますが)し,兵隊さんはほかからもやってくるので雇用を生むわけではありません.したがって,誘致する意義が直接にはない気がします.もう少しちゃんというと,それぞれの地域で完全雇用が達成されているとすれば,軍隊が来ることは生産関数を拡張するのには役に立たないわりに,消費人口のみを増やし,一人当たり消費を減らす効果を持ちかねません.

それでも軍隊の誘致が熱心に行われたのは,もちろん完全雇用が達成されておらず,ケインズ的な乗数効果が期待されたのであろうというのが1つの理由です.また同時に,軍隊が立地した都市では,軍隊のための公共インフラ整備のおこぼれに与かることができた,具体的には水道が整備された,という事情もあったようです.ふーむ.あと,遊郭がうんぬんという話もあったようですが,これはどちらかというと副作用的なものみたいで,NIMBY的なものであると同時に,経済効果もあったりしてややこしいようです.

軍都としての広島がちょくちょく登場するので,その意味でもおもしろかったです.そうか,流川ってそうなのか.