だからちがうんだってば.

ブログ人から引っ越しました

教養としての宗教入門

2015-05-28 15:21:02 | 授業ネタ


宗教とは何かを,伝統・神と悟りの物語・信仰・奇跡と呪術・戒律・儀礼の6つのトピックから説明する宗教ガイド,な本です.宗教的儀式と文化的慣習の違いは線引き次第というのが全体的なメッセージとしてあります.面白いと思ったのは,宗教という単語はreligionの翻訳で,キリスト教(やユダヤ教やイスラム教)的なものを「宗教」と呼ぶことになってる,という点でしょうか.インドに信者の多いヒンドゥー教は宗教ということになってますが,ヒンドゥー教はインド(あたり)の文化的慣習の総体ともみなせるところもあって,そうすると,日本の文化的慣習をまとめて「日本教」と呼ぶことになっていれば,日本人も無宗教と言わなくてもいい,というのは,そりゃまあそうかしらん,です.クリスマスだってキリスト教本来の祝日ではない(冬至の祭が取り込まれたもの)ので,無宗教としか表現できないのも正直でいいのかもしれません.高校の同級だった坊主が死者を弔うのが宗教の始まりとかなんとか言ってたくらいだし.

多数決を疑う

2015-05-24 14:40:43 | 授業ネタ


新潟大学で開催された日本経済学会2015年度春季大会に行ってきました.ちゃんと発表もして座長もしたのですが,目的のひとつは坂井さんの招待講演を聞くことでした.行く道すがらにちゃんと著書の「多数決を疑う」も読んで準備万端でした.坂井さんは話がうまいので予習しなくてもよかったかも知れませんが.

砂原くんが書いているように,選挙の仕組み(社会選択 social choice のありよう)の理論的な分析から,後半には現実への含意を意識した議論となっていて,社会選択の仕組みは完全ではない,つまり「私たちの意思」を「うまいこと」集約できる仕組みはなかなかない以上,直接民主制の部分を増やしていくことが必要ではないかという展開になっています.講演では,書籍よりもやや踏み込んだ部分があって,クローブズ・メカニズムのようなものを使って「特殊利益」については直接民主制的な評価をしていくべきだ,という話になってました.よくできていて面白い本です(なんか上から目線だけど).

間接民主制を基本とする現代日本社会において直接民主制的な部分を導入したほうがよいのではないかということ自体は同意するところで方向性としては正しいと思いますが,メカニズムデザインの知見を使って,という話になると,ちょっと話が飛びすぎちゃうか,という気もします.理論家(というか研究者や学者)というのはちょっと極端で現実離れした話をするのが仕事だし,坂井さんは(よくは知らないけど)わりと社会的正義感にあふれているように見えるので,本人は分かって言ってるのだとは思いますけど.再分配は一般利益に関係するので,直接民主制的な話は都道328号線問題のような特殊利益・地域公共財に限るとすると,地域公共財については今でも費用便益分析がいちおうは行われていて,これがまたあてにならん,というのはいろいろ言われているところです(以前,金本先生が日本経済学会のシンポジウムでおっしゃってた.特定の手法のあやしさについては2012年のJEPで扱ってたかと).もちろん,費用便益分析で「便益」を聞こうとする選好表明法なんかが耐戦略性をもってないのはそのとおりなんですけど,じゃあ聞かれた側が戦略的に答えているので当てにならんという話なのかというとたぶんそうではなくて,正直に分からないだけじゃないかと思います(根拠はありません).自分の選好が分かってるという前提はそういう意味ではわりときつくて,だから熟議が必要ですよねとも書いてあるのでまあそれはそのとおりですが.

市長などの首長をうまく選べないのはそれはそれとしても,現在の地方政府には議会もあるわけで,行政が暴走(?)していたら市町村でも都道府県でも議員さんを使うとかいうルートもあります.議員さんも選挙で選ばれてますが.とか,いろいろ考えるきっかけになるというのは,やっぱりいい本なんだろうなあと思います.


里山資本主義

2015-05-22 10:33:43 | 授業ネタ


地産池消とかIターンとかUターンとか地域おこしとかの事例を取り上げた本はいくらもあるのでしょうけど,たぶんそれとは一線を画してなかなか面白かったです.だいたい地域おこしとかいうと資本主義キライとか市場主義に背を向けるとかいう雰囲気が漂うものですが,この本では「里山資本主義」というのを「マネー資本主義」のバックアップ・保険と位置付けていて,その意味ではわりと穏やかな雰囲気で好感が持てます.職業柄,自分でやってみようとは思わないですけど.帯や副題が訴えるような偏った本ではないです.

公会計改革と自治体財政健全化法を読み解く

2015-05-19 11:05:40 | 授業ネタ


タイトルのとおりで公会計改革と自治体財政健全化法についての解説本ですが,制度や条文についての細かい説明というよりは講義形式の入門的で読みやすい本です.政府の会計というのは伝統的には現金主義単式簿記をとっているわけですが,なんやかんやで発生主義会計や複式簿記の導入が求められていたりします.統治の手段として予算が重視されるという政府の会計を考えるときには現金主義会計にも妥当性があるという話はあまり語られないところで,興味深く読みました.いきなりいわゆる解説本を読むよりはこういうのから入ったほうがよいと思います.小西先生の総務省(旧自治省)への愛着(?)が強く感じられ,自治官僚もいろいろたいへんなのであるなあ,という心持ちになります.

反骨の市町村

2015-05-12 11:02:17 | 授業ネタ


中央政府に頼らずに地域復興を進めている市町村の事例を紹介する本,だと思ったのですが,出来合いの統計を並べ替えただけで適切な指標とは思えないようなランキングがあったり,事例紹介かと思ったら正論な総論がいろいろ述べてあったり,なので,事例のところだけ読むぶんにはよいかなあと思いました.

トンデモ地方議員の問題

2015-05-08 10:55:54 | 授業ネタ


号泣会見以来,やや注目を浴びるようになってきた地方議員の実態について書いた本で,いろんな地方議員やオンブズマンの話がでてきておもしろいです.都道府県と市町村は,首長と議会の二元代表制を取っていて,首長はかなり強い権限を持っていることもあって(竹原市長の例),議会のほうはなんだかよくわからん,というところではあるのですが,だからといって議員は好き勝手やっていいものでもなくて,もっとがんばっていただきたいところです.条例制定とか監視とか.

虹、つどうべし

2015-05-05 10:44:27 | 授業ネタ


戦国時代の三木城攻防戦を舞台に,織田方から三木城に送り込まれた女間者の数奇な運命を巡る物語,です.別所氏といえば村上源氏の赤松氏の庶流という名門で,戦国期には播磨・三木城を拠点とした有力豪族であったわけですが,長治の代に至って織田方の羽柴秀吉による兵糧攻めを受けて没落していきました.別所長治の辞世はけっこう有名です(?).

なんですけど,「葉月がくると希久も数えで十六になる」とか,わりに単純な間違いが多かったりしてけっこうがっくりきます(数えの年齢は正月で増えます).どうなんだろう.