One of the famous questions in social science is whether money makes people happy.論文のabstractがこう始まっている論文が勉強会で取り上げられました。「あなた幸せですか」などというアンケートをとってほかの要因で回帰するという分析は一時期行われていて、その類かなあと思ってのですが、そうではありませんでした。よかった。タイトルに「mental wellbeing」とあったことから気がつくべきだったのですが、このときの指標はGHQ-12(General Health Questionnaire)スコアと呼ばれるものでした。「money」の効果をidentifyするために、この論文ではwindfallを使うとしていて、それはなにかといえば「宝くじの当選」です。ははーなるほど。ややこしい回帰分析より単純な平均値の比較のグラフのほうが面白いという典型みたいな論文ですが、その結果によると、1000ポンド以上の当たりくじがあったひと、1000ポンド未満の当たりくじがあったひと、当たらなかったひとを比べてみると、当たった年の2年前と2年後のGHQ-12スコアは、1000ポンド以上のあたりがあった人に限って有意に改善(値は低下)しています。1年前と1年後の比較ではとくに変化は見られないということです。つまりは、当たって2年後にはmental healthが改善していると。ほほー。1年後の段階ではいろいろあって幸せにはなれないけども、2年経つと落ち着いてハッピーになる、ということだそうで。
ほほー、宝くじ当選ならランダムだしidentificationにはいいよなあ、と思うところですが、このデータにはサッカーくじが含まれているので必ずしもランダムでない側面が少しだけ混じっているという点、宝くじをどれくらい買ったかというデータがなく調整されていない点、が気になるなあというところです。マイナな点ですけど。しかしこのGardnerさんとOswaldさんはhappinessの研究を続けていらっしゃるようで、なかなか興味深いです。離婚と幸せとか。なんだそりゃ。
Gardnrer, Jonathan and Andrew J. Oswald. 2007. Money and mental wellbeing: A longitudinal study of medium-sized
lottery wins. Journal of Health Economics 26, 49-60. [ScienceDirect]
Gardnrer, Jonathan and Andrew J. Oswald. 2006. Do divorcing couples become happier by breaking up?, Journal of the Royal Statistical Society Series A, 169(2), 319-336. [PDF]