夕食会といえば,コース料理が2種類供されたのですが,それがかわるがわる並べられていて,隣の人とは違うコースが当たるというスタイルでした.経済学でもrandomized experimentはここまで進出したか,と驚いていたのですが,"typical Australian style" なんだそうですよ.ほんまかいな.
と思ったら,乗ろうと思った武蔵野線が事故のために遅れ(すぐに復旧したので前後は遅れなし),接続していた京成線に乗れず,予定より30分ほどおくれて成田空港に到着.まことにもって幸先がよい.ううむ.
誰が書いたのかしらん,と思ってみたら,尊敬する名古屋大学の小川光先生でいらっしゃいました.すばらしいじゃないですか.「公共事業削減よりも公務員人件費削減に切り込め」という小見出しを付けられちゃってますが.日本では少なくとも総額では,公共事業は2000年代半ばに減らされていて,redunduncyを考えなくてはイカンのではとか,維持補修費もでないとこもあるらしいとか,まあざっくりいってあんまり削れないような(配分には問題がありそうですけど)気がします.公務員人件費についても,同様に配分は考えなおさないといけないんでしょうけど(よくわかりませんが),あんまり削ると優秀な人材が公務員に集まらなくなるんじゃないかと思ったりします.国立大学の研究者で,人件費カットなどの処遇の悪さに耐えかねて私学に移る人もいます(僕じゃありません)し,海外からも来なくなるのでは.ま,研究者だけが公務員じゃないですが.「身を切る」改革が受けるらしくて政治家の人数減らしたり歳費減らしたりするそうですが,政治家の政策分析形成のためにはスタッフもいるだろうにそれも足りないとかいう話もあるところ,そこを削ってどうするという気も.政治家一人の資源には限界があるので,いろいろな問題を取りあげたりするためにはあんまり議員数を少なくするのもどうかしらん,とも思うんですけど,国際的にみてどうのこうのとか考えたほうがいいと思うのであんまり言わないことにします.
そういう意味では,日本への適用可能性に本文ではほとんど触れていないですな.いやいやいやいやいや.
ちなみに,1996年の論文,とあるんですが,元ネタはどれかしらん?
Alesina, Alberto, Roberto Perotti. 1996. Fiscal discipline and the budget process. American Economic Review 86(2), 401-407. [JSTOR]
Alesina, Alberto, Roberto Perotti, José Tavares. 1998. The political economy of fiscal adjustments. Brookings Papers on Economic Activity 2, 197-266. [JSTOR]
中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の大学分科会大学教育部会は7日、学生の勉強時間を調べたり、勉強時間を増やす方策を講じたりした大学を、財政面で優遇するべきとする素案をまとめた。勉強しない学生を放置する大学に改善を促す狙い。大学分科会の審議を経て、文科省に答申される予定で、同省は2013年度にも実施する方針。大学生を勉強させるために、とうとう国が尻をたたく。「馬を水飲み場につれていくことはできても水を飲ませることはできない」とかいう話じゃないのか,と思ったりするのですけど,「大学生なんて……」と思っている人々もまだいるわけなので,こういうことがあるととりあえず表面的には制度を作る国公立大学はあるんだろうなあと思います.金銭という外発的動機付けは内発的動機付けほど有効じゃないという話もあったような気もしますが,そうも言ってらんない,ということでしょうか.
日本の大学生は国際比較でも勉強時間が短いとされ、大学教育部会は、「日本の学生が主体的に勉強する時間は1日に講義を含めて4.6時間」とするデータをもとに、「必要時間の半分程度」と分析した。そして、このことが大学の学部教育への国民や企業からの評価が低い要因だとしている。
ところで,上の記事にある「学生が主体的に勉強する時間は講義を含めて4.6時間」というのはなんでしょか.「講義は主体的なのか」という疑問がないわけでもないのですがそれはおいておいて,素案を見てみると,たしかにそういう記述もあります.
大学制度において、1単位は予習や復習などの自学を含めて45時間の学修を要する内容で構成することが標準とされている。これは学びの主体性という大学における学修の本質に基づく仕組みであり、体系的なカリキュラムに不可分に連動するものである。卒業の要件として4年以上の在学と124単位以上の修得が必要であることを踏まえると、学期中は、授業に加え予習など高校までの勉強とは質的に異なる主体的な学修を一日当たり8時間程度行うことが前提とされているが、実際には、我が国の学生の学修時間はその約半分の一日4.6時間とのデータもある。知ってる人はうるさく言う点ですが,通常の講義科目で1コマ1.5時間・週1回・15回で2単位というのは,講義時間22.5時間に,予習復習67.5時間を足して90時間の学修を行うことを基準としています(実習系の科目で1コマ週1回15回で1単位なのは予習復習が難しいかららしい).なので,週1回1コマの講義に対してその3倍の4.5時間分の予習復習が想定されていることになります(大学によっては講義が2時間なので,予習復習はその2倍ですみます).ということは,講義は日に1コマか2コマが限度のはず,というのがキャップ制の発想です.
それはそれとして,4.6時間の話です.なんだか微妙な数字です.うろうろした結果,この部会の第10回の資料(PDF)に4.6時間についての資料が含まれていて,元ネタ(?)も書いてあります.元ネタは東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センターの「大学生調査」で,単純集計も載せてあります.しみじみ眺めるとなかなかおもしろいのでしょうが,分野別(学部別みたいなもの)の集計もあるので,そちらをみてみました.この調査は,「典型的な1週間の平均的な生活時間」を聞いているもので,学期中については「授業・実験への出席」「授業・実験の課題,準備・復習」「卒業研究・実験・卒論」「授業とは関係のない学習」「サークル・クラブ活動」「アルバイト・仕事」について時間を聞いています.ざっと見たところ,学部間で顕著な差がある項目を見つけました.「卒業研究・実験・卒論」です.「該当者のみ」というのがちょっと標本選択の偏りを危惧させますが,あっさり無視します.
われらが社会科学系では,卒業研究・実験・卒論へ使った時間が0時間だった比率は22.1%.学部別に見て堂々の1位です(2位は家政の21.0%).31時間以上と回答したのは0.9%,これは家政と並んで最下位です.もっとも,0時間と回答しているのは,実験などがたいへんそうな理学で11.1%,工学で12.3%いますから,そんなに気にしなくてもいいのかしら,とおもいきや,31時間以上と答えた比率は理学19.1%,工学11.1%,農学18.7%でやっぱり顕著な差があります.「授業・実験への出席」「授業・実験の課題,準備・復習」についても,こんなに激しくはないですが,差があります.おやおや.しかし30時間って.週6日でも1日5時間ですがな.
ということなので,社会科学系も理工系を見習っていろいろやらせたらいいんじゃないかしらん.なにを,と言われると困っちゃいますが.