だからちがうんだってば.

ブログ人から引っ越しました

「強い社会保障」?

2010-07-07 13:16:00 | 経済学
ちょっと前の学会で,「地方政府がその執行の多くを担っている医療や介護の分野が,成長産業として取り上げられていることについてどう思うか」といった感じの(といった感じの,です.文意はこんな感じで合ってると思いますが)質問を受けて,一段上に座っていた都合上,なんらかの返事をしなくてはいけなくって往生してしまいました.と思っていたらこんなの発見.
「強い社会保障」で村おこし
これを書いている鈴木亘先生のことは,すごいなあと思うのですけど,なんとなくよくわからんなあと思うこともあるのですが,この寓話はよくできているなあと納得しています.成長分野を政府部門が決めることができるかという点,ある産業に傾斜させるということは他の産業から資源を移動させなければならないという点が指摘されているのではないかと.あとたぶん,「社会保障が成長につながるのか」ということについても書いてあるのかしらんと思ったり.社会保障は,なんらかの事故にあった人たちを「ふつう」に戻す,あるいは戻そうとするためのものなので,言うなれば,なんかの拍子にマイナスになったものをゼロにするのがその主な役割と考えられて(障碍者施策などの文脈ではたいへん不適切な表現なので,治癒可能な医療分野あたりを想像したほうがよいです),ということは,「成長」には向かないのではないかしら,とうすうす感じております.まあでも,そんなことはオオヤケの場ではちょと言い難いですが.

というわけで,いわゆる社会保障施策が対象としているリスクへの保険を十分に提供することができれば,他のリスクを取ることができるようになるので,そのルートで経済成長に寄与するかもしれませんね,とは思います.医療保険が充実して,病気になったときのためにとっておかなければならない貯金の額が減れば,そのぶん,株式投資等に回してもいいと思う人も出てくるかも,という話.あんまり実証に乗らなさそうな話ではありますが.

ま,この爺さんたちみたいに「子孫に莫大な借金を残しては、申しわけなくて、死んでも死にきれねぇだ」というのが,日本に当てはまるかどうかは,またなんともはや.