15 声
この最終連について、池澤は書く。
「声」はんと「言葉」はたしかに似ている。共通項をもっている。しかし、「失われた人々の声は言葉としての意味が揮発してしまい」というのは、どうだろうか。カヴァフィスは「意味」という認識で「声」ということばをつかっているのか。
「我々の/人生の最初の詩の声」というとき、そこには確かに死者の声が含まれるのだが、同時に「私の(カヴァフィスの)」声も含まれるのではないのか。
「最初の詩の声」は「ことば」以前のものではないだろうか。
ある人が何を言ったか思い出せない。しかし、声は思い出せる。声を聞けば、それが誰であるかわかる、ということはないだろうか。
ひとはことばの「意味」を聞き取ると同時に、「声」そのものを聞き取る。そして「声」の方が記憶として強く残る。
この不思議さ。
私は、こんなことも思う。
昔、詩を書いた。その「ことば(意味)」は思い出せないが、書いた瞬間をおぼえている。「声」をおぼえているが「意味」をおぼえているわけではないので、そのときの「ことば」は再現できない。
そういうことはないだろうか。
こう書くとき、この「詩」はだれかの書いた詩ではなく、つまり「失われた人々」の詩ではなく、カヴァフィスの詩だと思う。「意味」てではなく、「意味」になる前の「声」だと思う。カヴァフィス自身の詩なのに「我々の」と書くのは、「未生の意味」は誰のものでもなく、詩人すべての声だからだろう。
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
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オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
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以下の本もオンデマンドで発売中です。
評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
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そしてその声と共に一瞬、我々の
人生の最初の詩の声がよみがえる--
すぐに消える夜の遠い音楽のように。
この最終連について、池澤は書く。
失われた人々の声は言葉としての意味が揮発してしまい、ただ音楽性だけがかすかに残っている。
「声」はんと「言葉」はたしかに似ている。共通項をもっている。しかし、「失われた人々の声は言葉としての意味が揮発してしまい」というのは、どうだろうか。カヴァフィスは「意味」という認識で「声」ということばをつかっているのか。
「我々の/人生の最初の詩の声」というとき、そこには確かに死者の声が含まれるのだが、同時に「私の(カヴァフィスの)」声も含まれるのではないのか。
「最初の詩の声」は「ことば」以前のものではないだろうか。
ある人が何を言ったか思い出せない。しかし、声は思い出せる。声を聞けば、それが誰であるかわかる、ということはないだろうか。
ひとはことばの「意味」を聞き取ると同時に、「声」そのものを聞き取る。そして「声」の方が記憶として強く残る。
この不思議さ。
私は、こんなことも思う。
昔、詩を書いた。その「ことば(意味)」は思い出せないが、書いた瞬間をおぼえている。「声」をおぼえているが「意味」をおぼえているわけではないので、そのときの「ことば」は再現できない。
そういうことはないだろうか。
人生の最初の詩の声がよみがえる--
こう書くとき、この「詩」はだれかの書いた詩ではなく、つまり「失われた人々」の詩ではなく、カヴァフィスの詩だと思う。「意味」てではなく、「意味」になる前の「声」だと思う。カヴァフィス自身の詩なのに「我々の」と書くのは、「未生の意味」は誰のものでもなく、詩人すべての声だからだろう。
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書肆山田 |
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
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