詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

ボニー・グレーザー「分析ウクライナ危機/台湾と根本的違い」(アメリカ人の嘘)

2022-03-09 10:40:27 |  自民党改憲草案再読

ボニー・グレーザー「分析ウクライナ危機/台湾と根本的違い」(読売新聞、2022年03月09日朝刊)

 アメリカ人は(と、一概に言ってはいけないのだが)、今回のロシウ・クライナ問題で何が批判されているかをまったく理解していない。そのことを如実に証明する記事が2022年03月09日の読売新聞(西部版・14版)に載っていた。米ジャーマン・マーシャル財団アジアプログラム部長、ボニー・グレーザーが、インタビューで語っている。
(https://www.yomiuri.co.jp/world/20220309-OYT1T50048/)
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 ウクライナで起きていることを見て台湾の人々の間で「次は台湾だ」と不安が生じている。しかし、台湾とウクライナの状況は根本的に異なる。米国がウクライナに軍事介入しないから、台湾も同じだという議論は、台湾の人々の米国に対する信頼を損なわせることを狙った中国による誤情報だ。(略)米国がウクライナに軍を送らなくても欧州の同盟関係が回復不能なほど傷付くことはないが、台湾の防衛に駆けつけなければ、アジア全体、特に日本や豪州への影響が懸念される。
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 グレーザーは、アメリカはウクライナには軍を送らないが、台湾には軍を送る、と明言している。つまり、中国となら戦争をすると言っている。それも、台湾の人々を救うためではなく、「アジア全体、特に日本や豪州」を中国から守るためだと言っている。
 このことは逆に言えば、台湾を守るという口実のもとに、日本や豪州の軍隊も結集し、組織し、アメリカと中国との戦争に巻き込む、ということである。単に、アメリカ軍だけが台湾防衛のために中国と戦うというわけではない。日本は、こういうことをするために戦争法(集団的自衛権)を成立させた。台湾でアメリカ軍が攻撃されたら、それを日本への攻撃と見なし、アメリカ軍と一緒になって戦う。つまり、中国とアメリカの戦争に参戦を強制される。
 台湾の人がどう考えるか知らないが、私が心配するのは、それだ。アメリカ主導で戦争が引き起こされる。それが心配だ。
 ここから翻って、ウクライナの状況を見れば、もっとほかのことも見えてくる。台湾に中国が侵攻したことを想定して、重書きをすると、こんな感じになるだろう。
 アメリカはウクライナにはアメリカ軍を出さないと言っている。かわりにNATOに増派する。NATOに軍備を提供する。ウクライナで戦うのはNATO加盟の(特にウクライナ、ロシアに隣接した)国の兵士である(まだ、派兵されていないが、武器の提供が提案されている)。
 台湾で問題が起きたときも、同じ方法が取られるだろう。アメリカは実際には台湾には派兵しない。日本や豪州にアメリカ軍を派兵する。武器を提供する。アメリカの応援を受け手(?)、日本や豪州の軍隊が台湾で、台湾防衛に戦う。
 アメリカは、すでにベトナム、イラク、アフガン、シリアその他の国で敗北し続けている。そこで考え出したのが、アメリカ軍が戦うのではなく、アメリカの同盟国が各地で戦う(戦争をする)という方法である。
 ロシアや中国は驚異である、とあおるだけではなく、実際の軍事行動を誘い出し、その戦争に周辺国を巻き込む。
 なぜ、こんな「手の込んだ」ことをする? グレイザーの次のことばが、アメリカの意図を明確にしている。
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米議会ではロシアの侵攻後、台湾への武器売却を増やすべきだとの意見が上がっているが、武器売却は台湾の防衛の一要素だ。
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 「武器売却」が目的なのだ。いま、コロナのために世界中の経済が疲弊している。金儲けができない。収入・利益がない。それはアメリカの軍需産業も同じなのだろう。特に、アメリカはアフガンから撤退して以来、「戦争」を引き起こしていない。軍需産業は、軍備を売ることができない。売り先(買い手)を必死になってさがしているのだ。
 金を稼ぐためなら、何でもする。この強欲なアメリカの軍需産業は、いま、ウクライナを徹底的に利用しようとしている。なんといっても周辺にはNATOの加盟国がある。それらの国に「次はおまえの国が狙われる」とあおり、武器を売る。ウクライナには兵を送らないが、ウクライナにその国が兵を送れるようにするためにアメリカ軍を周辺国に派兵する。ウクライナ周辺の各国が武器を提供しても大丈夫なように(その国の防衛が手薄にならないようにするために)、周辺国にアメリカの最新鋭の武器を売却する。
 これは「巧妙」としか呼びようのない方法である。いま起きていることは、これである。いや、それ以上のことである。
 一面には、バイデンがロシアからの原油の輸入を禁止するという方針を打ち出したというニュースが載っている。(https://www.yomiuri.co.jp/world/20220308-OYT1T50187/)しかし、この問題ではヨーロッパ各国と同一歩調をとるところまではいっていない。
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 バイデン氏は7日、英国のジョンソン首相、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相とビデオ会議形式で会談した。ホワイトハウスなどによると、首脳らは対露制裁の強化で一致したものの、原油の禁輸措置に関しては結論が出なかった。ドイツの慎重姿勢が影響した可能性が高い。
 ジェン・サキ米大統領報道官は7日の記者会見で、「米国と欧州では輸入量も含め、置かれた状況が違う」と述べ、ドイツなどの立場に理解を示した。
 ショルツ氏は7日の声明で「電力や産業のエネルギーは現時点で他の方法では確保できない」とし、当面はロシアからのエネルギー調達を続ける方針を表明した。
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 天然ガスもそうだが、ドイツはロシア頼みのところがある。これは、逆に言えば、ドイツの金がロシアに流れる。(あるいは、ヨーロッパの金がロシアに流れる。)ロシアが金儲けできるということである。この強い経済関係(エネルギーがないと社会が動かない)は、天然ガスや石油だけではなく、他の分野にも広がっていくだろう。そして、それは、その経済関係が広がった分だけ、アメリカとヨーロッパの経済関係が薄くなる。アメリカはヨーロッパでは金儲けができなくなる、ということである。
 アメリカの強欲資本主義は、これを許さない。これが我慢できない。アメリカがまず金儲けできるという環境が必要なのだ。そのためになら、何でもする、というのがアメリカなのだ。
 資本主義の「理想」は、たぶん、利益を再配分し、平等な社会をつくる、自由な社会に貢献するということだと思うが、現実は、利益の再配分はおこなわれず、一部の資本家に金があつまり、貧富の格差が拡大している。資本主義は、強欲増強システムになっている。これはアメリカの姿をみればわかるし、日本の現実をみてもわかる。日本では、資本家がよりより収益をあげるために、たとえば「非正規雇用」のシステムが確立された。低賃金で働かせ、カットした賃金は資本家の収益に、ということである。税制をみてもわかる。消費税を増税し、法人税を引き下げる。減った分の税収を消費税でまかなう。ここでも金持ちだけが、金を得られるというシステムが動いている。

 脱線したが。(脱線ではなく、補強のつもりだが。)

 今回のウクラナイ問題を考えるとき、思いださなければならないのが「ワルシャワ条約機構」である。冷戦終結後、ワルシャワ条約機構(ソ連の防衛システム)は解体し、ロシアはロシア一国で、ロシアを守ることになった。しかし、NATOは、そのまま存続し、いまにいたっている。なぜ、NATOが必要なのか。なぜ、NATOは東側へ加盟国を増やしていかないといけなかったのか。
 ロシアが攻撃をしてくるから? 今回のウクライナのように?
 これは「後出しじゃんけん」のような方便である。
 私が思うに、アメリカの軍需産業がNATOが解体してしまったら武器の売り先がなくなるからだ。NATOが加盟国を増やせば増やすだけ、アメリカの武器の売却先が増える(利益が上がる)からだ。
 グレイザーのことばをもう一度読んでみる。
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米議会ではロシアの侵攻後、台湾への武器売却を増やすべきだとの意見が上がっているが、武器売却は台湾の防衛の一要素だ。
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 「武器売却」としか、グレイザーは言っていない。「防衛」のための最大の武器は、人間と人間の「友好」である。台湾と中国の「友好」を高めるために、アメリカはこういう提案をするとは言っていない。あるいは中国と台湾が「衝突」しないようにするために、こういうことを提案したいとも言っていない。
 「武器売却」は、安全保障という名目の金儲けであり、いわば一石二鳥作戦なのである。アメリカがウクライナでやっていることは、さらにロシア経済を破綻させるという「一石三鳥」作戦である。ウクライナで成功すれば、必ず、同じ方法が台湾で試みられるはずである。アメリカのあやつり人形のような安倍は、彼自身の人種差別意識とも関係するのだろうが、それを利用して中国攻撃という夢、日本を軍国主義にするという夢を追いかけている。ウクライナで起きている問題は、日本に強い影響を及ぼすはずである。

 

 


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