詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

ニュースではなく、情報の読み方(北朝鮮のミサイル報道)

2022-03-25 10:26:51 |  自民党改憲草案再読

ニュースではなく、情報の読み方

 新聞には「ニュース」があふれている。たとえば、2022年03月25日の読売新聞(14版、西部版)の1面のトップは「北、新型ICBM級発射/最高高度6000キロ超 最長71分飛行/北海道沖150キロEEZに」という見出しと記事。ニュース(事実)は、見出しを読めば十分にわかる。しかし、私が注目したのは「ニュース/事実」ではない。
 本記に連動して「許されぬ暴挙」と岸田が批判したという記事がある。そこにこんなことが書いてある。(番号は、私がつけた。一部補足)
↓↓↓↓↓
 ①北朝鮮からミサイル発射予告はなかった。航空機や船舶への被害や国内への落下物は確認されていない。②政府は「領域内落下や我が国上空通過が想定されなかった」(松野氏=官房長官)とし、ミサイル発射などを知らせる全国瞬時警報システム「Jアラート」はつかわなかった。
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 ①の「発射予告はなかった」は、どこから得た情報なのか。書かれていない。まさか読売新聞に北朝鮮が予告してくるわけはないから、きっと、政府関係者から得た「情報」なのだと思う。次の「国内の被害は確認されていない」というのも、読売新聞が独自に調査した結果ではなく、政府関係者の発表(?)を書いている。
 さて。
 ②だが、とても奇妙だ。安倍が首相の時代、何度も「Jアラート」が発令され、ビルのなかで頭を抱える避難行動(?)が報道されたが、あれは「領域内落下や我が国上空通過が想定され」たからだということになるが……。どうして、そういうことが「想定」できたのか。
 ①とあわせて考えると、北朝鮮から「発射予告」があったから、そういうことができたのではないのか。当時も、発射日には安倍がかならず官邸にいて、すぐ記者会見をした。まるで「発射情報」を事前に把握していたのではないのか、ということが言われた。
 (私は「発射予告があった」と推定していた。どこに落下するかも、きっと「予告」があったと思う。落下物で船舶が被害を受けると問題になるだろうから、そういうトラブルは北朝鮮だって回避しようとするだろう。)
 今回は、それがなかった。なぜか。たぶん、世界の目が「ロシア・ウクライナ」に向いているので、その目を北朝鮮に向けさせるには、いままでとは違った「衝撃」が必要と北朝鮮が判断し、あえて予告をしなかったのだろうと思う。
 あるいは、北朝鮮から予告はあったが、その「情報」は不十分で、たとえば、いままでのように日本のEEZ圏外に落下すると「想定」してしまったのかもしれない。その「想定間違い」を指摘されると問題になるので(想定能力がないと判断されてしまうので)、「予告はなかった」「想定しなかった」「Jアラートはつかわなかった」という「ストーリー」を読売新聞にリークしたのかもしれない。(「予告」はほんとうはあったが、見落としていたのかもしれない。)
 問題は、ここから。
 もし、読売新聞に載っている、この「作文(ニュースの裏話)」が「事実」だとしたら、予告がなかったから適切な対処ができなかったというのが事実だとしたら、これは、もうむちゃくちゃだね。
 実際に戦争が起きれば、北朝鮮は日本対して、「〇〇へ向けてミサイルを発射する」と予告してから発射するわけではないだろう。突然、発射するだろう。そうすると、日本のシステムでは、そのミサイルがどこに飛んでくるか推測できない。「Jアラート」も発令できない。ビルのなかで頭を抱え、避難するということももちろんできない。「Jアラート」なんか、役に立たないのだ。
 「予告されなかった発射」のときこそ、あらゆることを想定し、即座に「Jアラート」を発令してこそ、「Jアラート」の意味がある。「予告されなかった」などと、平気で「内輪話」をもらしたのは誰か、そして、こんな「内輪話」をもらしてしまえば、そこからどんな問題が浮き彫りになるか考えない読売新聞の記者はどうかしている。きっと「私だけが聞き出した特ダネ」と思って、大はしゃぎで書いたのだろう。編集者も、その大はしゃぎに載ってしまったのだろう。(ウェブ版では、岸田の談話の記事の後半、つまり「予告云々」の部分は、私が読んだ限りでは省略されている。)

 さらに。
 この朝刊の記事は、かなり混乱している。この「作文」の前には、こういう事実がある。https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220324-OYT1T50224/ 
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 政府は24日午後、北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性がある飛翔体が同日午後3時35分に、青森県沖の排他的経済水域(EEZ)内に落下する見込みだと発表した。船舶への注意を呼びかけている。
 政府は24日午後、北朝鮮から発射された飛翔体が落下したとみられると発表した。
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 時系列で整理すると。(読売新聞の記事を参照)
①24日午後2時33分、北朝鮮がミサイル発射
②(時間不明)日本が、午後3時35分にミサイルが青森沖に落下すると注意発令
③午後3時44分、ミサイルが落下
 ミサイル発射がわかった段階で、落下地点を予測して、政府は船舶に注意を呼びかけている。それは正しい行動なのだが、では、以前は、どうしていたのか。北朝鮮がミサイルを発射した、それで「Jアラート」と発令したということは聞いたことがあるし、新聞でも写真つきで避難行動が報道されたが、「船舶に注意した」という記事は書かれていない(私は読んでいない)。つまり、「予告」にしたがい、事前に船舶には注意を呼びかけていたが、それを秘密にしていたということだろう。つまり、安倍の「Jアラート」と市民の避難活動をアピールするために、船舶へも注意してきたことを隠していたということだろう。
 少し考えてみればいい。こんな記事がある。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20220325-OYT1T50170/
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【ソウル=上杉洋司】北朝鮮国営の朝鮮中央通信は25日、金正恩朝鮮労働党総書記の命令に基づき、北朝鮮が24日に新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星砲17」を試射したと伝えた。正恩氏が現地で試射の全課程を指導した。北朝鮮が24日に発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に落下したミサイルを指すとみられる。
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 北朝鮮のやっていることは、金のことばにしたがえば「試射」であり、「実戦」ではない。「試射」で誰かが犠牲になれば(外国人が死んでしまえば)、それは大問題になる。だから、「試射」の前には「試射する」と「予告」するだろう。
 予告したのに、事故を回避しなかったとしたら、その責任の一端は回避しなかった方にある、と言い逃れができる。
 大きな犠牲が出るかもしれないときは、責任者は、それくらいのことはするだろう。

 ここからも、安倍は、北朝鮮の「予告」を自分の保身のために利用したいたことがわかるのだが(推測できるのだが)、「情報」がここまで操作されたものであるなら、私たちは、ていねいに「情報」を読み解く努力をしないと、完全にだまされていしまう。いま、何が起きているか、さっぱりわからなくなる。

 さっぱりわからなくなる、といいながら、私が読売新聞を「愛読」しているのは、今回の「予告はなかった」のような、おもわぬ「作文」が読売新聞には満載されているからだ。「私は、政府筋からこんな情報をつかんだ」と「リークされた情報」を得意になって書いているからである。政府のなかで何が起きているか、政府が何をしようとしているか、それを推測するのに、とても役立つからである。
 私の推測は「妄想」かもしれないが、私は私の「ことばの論理/自律性」を頼りに、考える。

 


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