谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(27)(創元社、2018年02月10日発行)
「生きとし生けるものはみな」か。この詩では三回繰り返されている。
これが一連目。三連あり、それぞれの最終行が同じ。ことばが、すべてその最終行に向かって動く。統一される。その「統一」に「音楽」があると言えるかもしれない。
これに二行目の「……みち」という言い方も加わる。
「脚韻」のようなものが、最後に「生きとし生けるものはみな」におさまる。その「構造」がめだつのだけれど、この詩には、それとは別の「統一」もある。
それぞれの連の三行目。
「踏み迷う」「夢を見る」「そむきあう」という「動詞」で終わっている。この三行は、それぞれが倒置法で、主語は「生きとし生けるものはみな」ということになる。
そして、この「動詞」は、私には何か「悲しい」ものに聞こえる。「苦しい」と言い換えてもいい。「歓び」というものがない。「夢を見る」は明るいことばなのかもしれないが、「あしたを知らずに」という否定的なことばが先にあるために、「生き生きとした夢を見る」とは読めない。
「音楽」で言えば「短調」ということになるだろうか。「短調」で統一されている、と感じる。「音」ではなく「意味」が響きあっている。
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「詩はどこにあるか」2月の詩の批評を一冊にまとめました。
詩はどこにあるか1月号注文
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目次
小川三郎「沼に水草」2 岩木誠一郎『余白の夜』8
河邉由紀恵「島」13 タケイ・リエ「飯田橋から誘われる」18
マーティン・マクドナー監督「スリー・ビルボード」再考21 最果タヒ「東京タワー」25
樽井将太「亜体操卍」28 鈴木美紀子『風のアンダースタディ』32
長津功三良『日日平安』37 若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」40
草森紳一/嵩文彦共著『「明日の王」詩と評論』47 佐伯裕子の短歌54
石井遊佳「百年泥」64 及川俊哉『えみしのくにがたり』67
吉貝甚蔵「翻訳試論――漱石のモチーフによる嬉遊曲」72
西岡寿美子「ごあんない」76
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谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(上)83
オンデマンド形式です。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
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以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
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(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
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(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
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問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
「生きとし生けるものはみな」か。この詩では三回繰り返されている。
雪にしるした足あとは
いのちのしるしのけものみち
しるべもなしに踏み迷う
生きとし生けるものはみな
これが一連目。三連あり、それぞれの最終行が同じ。ことばが、すべてその最終行に向かって動く。統一される。その「統一」に「音楽」があると言えるかもしれない。
これに二行目の「……みち」という言い方も加わる。
息をひそめて立ちつくす
闇へとつづくわかれみち (二連目)
夜のしじまに輝いて
はるかにめぐる星のみち (三連目)
「脚韻」のようなものが、最後に「生きとし生けるものはみな」におさまる。その「構造」がめだつのだけれど、この詩には、それとは別の「統一」もある。
それぞれの連の三行目。
しるべもなしに踏み迷う
あしたを知らずに夢を見る
よりそいながらそむきあう
「踏み迷う」「夢を見る」「そむきあう」という「動詞」で終わっている。この三行は、それぞれが倒置法で、主語は「生きとし生けるものはみな」ということになる。
そして、この「動詞」は、私には何か「悲しい」ものに聞こえる。「苦しい」と言い換えてもいい。「歓び」というものがない。「夢を見る」は明るいことばなのかもしれないが、「あしたを知らずに」という否定的なことばが先にあるために、「生き生きとした夢を見る」とは読めない。
「音楽」で言えば「短調」ということになるだろうか。「短調」で統一されている、と感じる。「音」ではなく「意味」が響きあっている。
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「詩はどこにあるか」2月の詩の批評を一冊にまとめました。
詩はどこにあるか1月号注文
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ここをクリックして1750円の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
目次
小川三郎「沼に水草」2 岩木誠一郎『余白の夜』8
河邉由紀恵「島」13 タケイ・リエ「飯田橋から誘われる」18
マーティン・マクドナー監督「スリー・ビルボード」再考21 最果タヒ「東京タワー」25
樽井将太「亜体操卍」28 鈴木美紀子『風のアンダースタディ』32
長津功三良『日日平安』37 若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」40
草森紳一/嵩文彦共著『「明日の王」詩と評論』47 佐伯裕子の短歌54
石井遊佳「百年泥」64 及川俊哉『えみしのくにがたり』67
吉貝甚蔵「翻訳試論――漱石のモチーフによる嬉遊曲」72
西岡寿美子「ごあんない」76
*
谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(上)83
オンデマンド形式です。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
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以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
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(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
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問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
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