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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(27)

2018-03-11 00:28:24 | 谷川俊太郎『聴くと聞こえる』
谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(27)(創元社、2018年02月10日発行)

 「生きとし生けるものはみな」か。この詩では三回繰り返されている。

雪にしるした足あとは
いのちのしるしのけものみち
しるべもなしに踏み迷う
生きとし生けるものはみな

 これが一連目。三連あり、それぞれの最終行が同じ。ことばが、すべてその最終行に向かって動く。統一される。その「統一」に「音楽」があると言えるかもしれない。
 これに二行目の「……みち」という言い方も加わる。

息をひそめて立ちつくす
闇へとつづくわかれみち    (二連目)

夜のしじまに輝いて
はるかにめぐる星のみち    (三連目)

 「脚韻」のようなものが、最後に「生きとし生けるものはみな」におさまる。その「構造」がめだつのだけれど、この詩には、それとは別の「統一」もある。
 それぞれの連の三行目。

しるべもなしに踏み迷う

あしたを知らずに夢を見る

よりそいながらそむきあう

 「踏み迷う」「夢を見る」「そむきあう」という「動詞」で終わっている。この三行は、それぞれが倒置法で、主語は「生きとし生けるものはみな」ということになる。
 そして、この「動詞」は、私には何か「悲しい」ものに聞こえる。「苦しい」と言い換えてもいい。「歓び」というものがない。「夢を見る」は明るいことばなのかもしれないが、「あしたを知らずに」という否定的なことばが先にあるために、「生き生きとした夢を見る」とは読めない。
 「音楽」で言えば「短調」ということになるだろうか。「短調」で統一されている、と感じる。「音」ではなく「意味」が響きあっている。





*


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目次

小川三郎「沼に水草」2  岩木誠一郎『余白の夜』8
河邉由紀恵「島」13  タケイ・リエ「飯田橋から誘われる」18
マーティン・マクドナー監督「スリー・ビルボード」再考21  最果タヒ「東京タワー」25
樽井将太「亜体操卍」28  鈴木美紀子『風のアンダースタディ』32
長津功三良『日日平安』37  若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」40
草森紳一/嵩文彦共著『「明日の王」詩と評論』47  佐伯裕子の短歌54
石井遊佳「百年泥」64  及川俊哉『えみしのくにがたり』67
吉貝甚蔵「翻訳試論――漱石のモチーフによる嬉遊曲」72
西岡寿美子「ごあんない」76
     *
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