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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

荒木時彦『NOTE 003』

2018-04-07 08:09:19 | 詩集
荒木時彦『NOTE 003』(2018年04月01日発行)

 荒木時彦『NOTE 003』は薄い詩集だ。

bは、仕事帰りにコンビニエンスストアのイート・インで晩御飯を食べることにしていた。ゴミもその場で捨てられる上、一度食べて足りなければ、また買い足して食べればよい。効率が良く、便利だ。

 この部分を何度も読み返してしまった。「コンビニエンスストア」という言い方に、妙に、力がある。「コンビニ」と省略しない。
 この「省略しない」ことばが、そのあとのことばを動かしている。
 「ゴミもその場で捨てられる上」というのは、食べることからみると「逸脱」である。なくてもいいことばだ。腹が減っているから食べる。食べても足りなかったら、また食べる、ということとは無関係である。
 だが、無関係のはずの「ゴミ」と「捨てる」が、「効率が良く、便利だ。」へとしっかりとつながっていく。
 たしかに家で食べれば、ゴミをどこに捨てるか(いつ捨てるか)という問題が起きてしまう。コンビニを利用すれば、そこには「ゴミ」を「捨てる」場所がある。即座にそれを利用できる。「効率が良く、便利だ。」

 うーむ。

 私は考え込んでしまう。
 この詩集は、実は、

何が大切だったのだろうか?

 という一行ではじまっている。
 実際、何が大切だったのだろうか。
 食べることか、ゴミをその場で捨てることか。
 主題(テーマ)は「食べる」ことにあるように見えるが、「生きる」ということはテーマだけ成り立っているのではない。何を食べるかよりも、食べるときに出る「ゴミ」をどうするか、いつ、どこへ捨てるかの方が、もしかすると荒木を悩ましているのかもしれない。
 「食べる」を選びながら、どこかで「ゴミを捨てる」ということも選んでいる。
 どんなことでも、ことばにしてしまうと、思いがけない動きをする。


*


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目次

森口みや「コタローへ」2  池井昌樹『未知』4
石毛拓郎「藁のひかり」15  近藤久也「暮れに、はみ出る」、和田まさ子「主語をなくす」19
劉燕子「チベットの秘密」、松尾真由美「音と音との楔の機微」23
細田傳造『アジュモニの家』26  坂口簾『鈴と桔梗』30
今井義行『Meeting of The Soul (たましい、し、あわせ)』33 松岡政則「ありがとう」36
岩佐なを「のぞみ」、たかとう匡子「部屋の内外」39
今井義行への質問47  ことばを読む53
水木ユヤ「わたし」、山本純子「いいことがあったとき」56 菊池祐子『おんなうた』61
谷合吉重「火花」、原口哲也「鏡」63

谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(下)68


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問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

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荒木時彦
書肆山田

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