メシア・・・救世主ともいう。この世を救うため、天から遣わされし者のことである。
そのメシアが、21世紀の日本、そう、この国に再び遣わされたのだ。
それは大都会の中心部に近い静かな公園。初夏の爽やかな日差しの下、木々の緑が美しく生い茂り、メシアにふさわしい再臨場所であった。
降り立ったメシア、まずは近くを歩いてみることにした。小鳥たちがさえずり、そよぐ風が頬に触れて心地よい。
ふと、青い物が目に入った。木の陰に隠れるように、四角く形作られている。公園の中にしては、やや場違いな感じのするものであった。
近付いて入り口らしき所から中を覗くと、ツンとすえた臭いとともに、ヒゲ面の男がのっそりと体をもたげてきた。
「何か用ですかい?」
「いや、この青いのは何かと思いまして」
「あ? わしの家じゃよ。あんた、わしらのこと知らんのか?」
「どうしてこんな家に住んでいるのですか…」
以下のやりとりは省略するが、ホームレスというものを初めて目にするメシアは、その境遇にいたく心を痛められた。そして彼らの生活の足しになるよう、あちこちのゴミ置き場から、あるいはコンビニの裏から、使えそうな器具やら賞味期限切れ弁当やらを、こっそりまたは店の人に事情を話したりして、運び込んでくることになったのである。
メシア自身も宿無し状態であるから、自然、そのまま同じ所に寝起きすることになった。
さらにメシアは、公園内はもちろん、街中至る所に落ちているゴミを目にしては、またも心を痛めるのであった。
そこで袋を担いでは、街中の片隅にまで入り込んで、あるいは川辺に降りて、紙クズからプラスチックゴミ、缶やらPETボトルやらを、拾い集めるのであった。大きな袋はすぐ一杯になり、それは延々と終わることなく続いたのである。
かくして、来る日も来る日も、ホームレスたちのために駆けずり回り、ゴミ拾いのために這い回るメシアであった。
地上に降り立ってからもう何年も経つのに、マスコミに取り上げられることはもちろん、表の世界に出てくることさえないのであった。
ただ、接した人間たちはみな、その穏やかで慈悲深い人柄には一様に心を奪われたという。
Copyright(c) shinob_2005
そのメシアが、21世紀の日本、そう、この国に再び遣わされたのだ。
それは大都会の中心部に近い静かな公園。初夏の爽やかな日差しの下、木々の緑が美しく生い茂り、メシアにふさわしい再臨場所であった。
降り立ったメシア、まずは近くを歩いてみることにした。小鳥たちがさえずり、そよぐ風が頬に触れて心地よい。
ふと、青い物が目に入った。木の陰に隠れるように、四角く形作られている。公園の中にしては、やや場違いな感じのするものであった。
近付いて入り口らしき所から中を覗くと、ツンとすえた臭いとともに、ヒゲ面の男がのっそりと体をもたげてきた。
「何か用ですかい?」
「いや、この青いのは何かと思いまして」
「あ? わしの家じゃよ。あんた、わしらのこと知らんのか?」
「どうしてこんな家に住んでいるのですか…」
以下のやりとりは省略するが、ホームレスというものを初めて目にするメシアは、その境遇にいたく心を痛められた。そして彼らの生活の足しになるよう、あちこちのゴミ置き場から、あるいはコンビニの裏から、使えそうな器具やら賞味期限切れ弁当やらを、こっそりまたは店の人に事情を話したりして、運び込んでくることになったのである。
メシア自身も宿無し状態であるから、自然、そのまま同じ所に寝起きすることになった。
さらにメシアは、公園内はもちろん、街中至る所に落ちているゴミを目にしては、またも心を痛めるのであった。
そこで袋を担いでは、街中の片隅にまで入り込んで、あるいは川辺に降りて、紙クズからプラスチックゴミ、缶やらPETボトルやらを、拾い集めるのであった。大きな袋はすぐ一杯になり、それは延々と終わることなく続いたのである。
かくして、来る日も来る日も、ホームレスたちのために駆けずり回り、ゴミ拾いのために這い回るメシアであった。
地上に降り立ってからもう何年も経つのに、マスコミに取り上げられることはもちろん、表の世界に出てくることさえないのであった。
ただ、接した人間たちはみな、その穏やかで慈悲深い人柄には一様に心を奪われたという。
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