買い物に出かけるのに、母が薄い上着を出して
「これでいいかな」
寒いよ。いつものコートを着て、と言うと
「いつものコートって?」
母の部屋に行くと、いつもの場所に掛けてあるはずのいつものコートがない。
どこに置いたかなあ。
どこに動かしたかなあ。
はっと思いついて、こたつの中を見ました。
ありました。
こたつの中に服を入れたらダメだよ。
ほら、こういう生地は燃えやすいから。
↑ これはもう何度も言ってます。
すると、
「わかんない。わかんないからもう言わないで」
最近の事。
母がガスコンロの火をつけて、何かあぶっていました。
見ると、
スーパーで買ったお惣菜のプラスチックパック。
すぐに火を消して、何をしているのかきくと、
「あっためてこれをはがすの」
容器に貼ってある、値段などを記載したシールです。
はがさなくていいよ。切り取ってもいいし。
火は危ないから。
そういうと、不穏スイッチが入りました。
危ない事をしているので、それは危ないと言って、キレられる。
わかんないから教えて、キレられる。
まだ元気で動けるので、思いついたらやってしまう。
できてしまう。
でもそれが危ないという認識が薄い。
ない。
自分のアイディアを否定されて怒る。
いい事を思いついてやっているのに、自分はできるのに、うるさい、と。
コートの時は、ついイライラして、私も文句を返しました。
危ないから言ってるのになんでそういうふうに言われるのかなあ。
わかんないから教えるの。
すると母、
「行かない」
買い物には行かないと。
それなら1人で行くまでだ。
予定変更して、1番近くのスーパーに行って、すぐ帰って来ようと、
玄関に行くと、バッグの中にカギがない。
あれ…。
部屋に戻って探して、ない。
おかしいな…と玄関に戻ろうとすると、
母がコートを着てバッグを持って、出掛ける用意をしていました。
行かないんじゃなかったの…。
ちょっとの時間で忘れるんですね。
母はとにかく買い物に出かけるのが好きなので。
そっちの気持ちが勝ったのでしょう。
靴を履き始めた母に、ちょっと待ってカギが…と言いつつポケットに手を入れると、
ありました。
そして普通に2人で出掛けました。
私はムカムカしていましたが、しばらくしたら気も晴れました。
それにしても、カギ探しの時間がなかったら、
きっとすぐ1人で出掛けたでしょう。
あの時間は誰かの、何かの計らいか…なんて思いました。
認知症の人への対応として、怒ってはいけない、諭してはいけないと言います。
でも私はへなちょこなのでどうしても言ってしまう。
でも、私と母の場合、それでいいと思います。
ムカムカした私とケロッと忘れた母と、買い物に出かけて、
コーヒーでも飲んでしまえば
「おいしいねぇ」
と笑い合える。
そこにある砂糖やミルクの空き容器、マドラー、ナプキンなどのごみを
ささっと自分のバッグに入れるのはもう、そのままさせておきます。