新荒川大橋を渡りきって左方向へ進むと、JR川口駅までの間に数軒のご信者宅がある。
今日は十二月田でお講があり、帰りに年配のご信者を乗せて、122号線を本町ロータリー方面へと
クルマを走らせた。本町の自宅までは、10分もあれば着いてしまう。
昔からのご信者で、私が幼少の頃には現役でバリバリご奉公されていたのを、昨日のことのように思い出す。
なんでも、今年80歳になるという。
とても上品で、ものごし柔らかなお人だ。まるで往年の大女優を思わせるような出で立ちは、
オードリーヘップバーンの映像と同じく、白黒で脳裏を過ぎる。そんなイメージなのである。
ここ数年で足腰の軟骨をやられたそうで、神経に障って、たいそう痛いという。
それでも、信行ご奉公への意欲は衰えを知らない。
「寒参詣のご供養調理も参加したいんですよ。」
「だけどね。カラダがいうことを聞いてくれず。お寺に行っても足手まといで…。」
「ホント。くやしいですね。」 こう、コメントされていた。
日中のお寺参詣にはよくみえる。バスを乗り継ぎ、ゆっくり、ゆっくりと参ってくるのだろう。
東京都北区と埼玉県川口市の境界には、一級河川の荒川が流れる。
赤羽で新河岸川と合流し、岩淵水門から隅田川が分かれる。
鳥瞰すると、ちょうどXの文字に川が流れていて、新荒川大橋がそこを南北に渡しているカッコウだ。
この長い橋を、昔は12分で歩いて渡ったという。
お寺まではさらに、徒歩30分はかかるだろう。
歩いてお寺にお参りし、それから板橋の学校へ勤務しにまた歩く。
これが日課だったとのことだった。
いまはクルマがあって、ものの15分でお寺と本町を行き来できる。
ありがたいことだ。
暖房の効いた車内にこしかけ、日だまりでニッコリと微笑みながら、そんな昔話を聞かせてもらった。
耳が遠いが、クルマの中など狭い空間では、いくぶん良く聞こえると喜んでいらした。
連合内のご奉公がある日は、この家に寄ってからいっしょに参ることにしようと思う。