感染を題材にした小説 (4) 「アウトブレイク・感染」 他
(ハヤカワ文庫「アウトブレイク・感染」ロビン・クック著)
今から30年以上も前に書かれた小説です。
1日目 体調を崩す。寒気がして熱もある。診療所で注射をし気分はよくなった。
2日目 体調は回復した。
3日目 症状は急に悪化した。
激しい頭痛、つづいて悪寒、発熱、吐き気、下痢が急にはじまった。
アフリカ、ザイール 1976年九月七日
ひと晩じゅう震え続けた。暗闇の中で何度か吐き、朝までに彼は
すっかり衰弱し、脱水症状になった。ようやくの思いで荷物をま
とめ、よろよろと病院へ向かい、構内へ入ったところで鮮血を吐き、
病院の床へ倒れて失神した。(引用)
最初の発症から二か月後、この奇病は、
数週間患者が発生していないところから、封じ込めに成功したと考えられた。
話は十年後のカルフォニア、ロサンゼルスに飛ぶ。
頭痛、高熱、吐血をへて最後は死にいたる。
病名はエボラ出血熱。
アフリカでしか流行しなかった伝染病が、
なぜ、突然アメリカで発生したのか?
医学サスペンス「アウトブレイク・感染」は新米女医の奮闘を通して
アメリカ医学会の暗部を描き出す。
(東京創元社文庫「汚染 イエローストーン完全封鎖」レス・スタンディフォード著 1994年初版) 現在絶版
イエローストーン国立公園について
アイダホ、モンタナ、ワイオミングの三つの州にまたがる米国の公園で1872年に世界初の国立公園に指定され
る。8,980㌔平方メートルの広大な場所にに間欠泉、温泉、地熱による観光スポットが散在する。
夏の観光客で賑わうイエローストーン国立公園。
ある日、一台のタンクローリーが公園内で横転。
軍事用に極秘開発された病原菌が流失し、その猛威を振るい始める。
感染したものは全身から血を噴き出して死にいたる。
しかも、事故を知った開発元の企業は、公園を封鎖し、
誰ひとり生きて出さぬため殺し屋たちを送り出してきた。
退路を断たれた人々の運命は。
パニック小説+冒険小説。
国家機密を厳守するために、全員皆殺し作戦という隠ぺい工作を描く。 (「首都感染」高嶋哲夫著 講談社文庫 2013.11第一刷刊 書き下ろしとして2010単行本) 未読の本ですが、当ブログ①~④の本の中で一番新しい本です。
簡単に紹介します。
中国でワールドカップの中止と謎の感染症発生が発表されてから、北京にいる
外国人たちの帰国ラッシュが始まった。外国メディアによって北京空港に殺到
する外国人の映像が放映された。前日、中国国営テレビが流したワールドカッ
プ継続を求めるサポーターの熱狂とは全く違った光景だった。そこには恐怖が
前面に出ている。(略)
12時間後、WHOは正式に中国で新型インフルエンザが発生したことを伝えた。
日本ではそれを受けて直ちに閣議が開かれ、、「新型インフルエンザ対策本部」
の設置が決定された。
(第2章から要約引用)
本書は、中国で流行したSARSから8年目に書かれた小説である。
SARSは全世界で8000人ほどが罹患し、800人ほどの人が死亡したとと言われている、
死亡率10%ほどの「新型肺炎」でした。実際この時の中国の対応は、国際的な面子を等を重視し、
発表を遅らせ隠ぺいに走った経緯がありました。
小説の内容に話を戻します。
小説で登場する「新型インフルエンザ」は致死率60%という、猛毒性のある殺人ウイルスです。
この猛毒ウイルスの侵入を防ぐために、「首都東京封鎖」を敢行する。
「ウイルスから身を守る一番有効な方法は、感染者との接触を断つことです。感染者を収容し、
すべての公共交通を止め、学校を閉鎖し、店を閉じ、集会を中止し、家に閉じこもっていることです」
ー政府高官の発言ー
「機動隊と自衛隊を使って東京を封鎖するなど、前代未聞の民主主義を否定する行為だ。
戒厳令と同じじゃないか。戦前に逆戻りだ。わが党は徹底的に反対するぞ」
-野党議員の発言-
パニック小説というより、ウイルスが都市を襲った場合、政府はどう対応するのか、
国民はどう反応するのかを細菌感染に対する資料を集め徹底的に検証したシュミレーション小説。
新型コロナウイルスが世界を席巻している今だからこそおすすめの一冊です。
そのほかの細菌の脅威を扱うパニック小説の紹介。
① 『レッド・デス』マックス・マーロウ著
太古の病原菌が現代によみがえり、地球規模のパニックを引き起こす。
② 『アンドロメダ病原体』マイクル・クライトン著
大気圏外の細菌によって滅んだ街を描く。ベストセラーにもなり、お薦めです。
③ 映画『カサンドラ・クロス』
軍の細菌兵器に感染した男の乗った列車内部で病原菌が猛威をふるう。軍の機密が絡んでくると
内容が暗くなってくる。秘密漏洩、そして隠ぺい工作が描かれるからです。
人間社会を脅かすような感染症対策に求められるのは、徹底した危機管理です。
その国のリーダーは迅速に施策を打ち出しすための必要なことは、
国民との信頼関係に基づいた、勇気と英断だと思います。
首相の新型コロナ対応について朝日新聞全国世論調査(電話) (4/21新聞に掲載)
① 「指導力発揮していない」57%
② 生活不安「感じる」58%
③ 緊急事態宣言後「外出自粛」76%
④ 緊急事態宣言を出すタイミングについて
「遅すぎた」77% 「適切だ」18%
調査とは別問題ですが、「里帰り出産お断り」のニュースは痛ましいですね。
一向に営業自粛をしない業者(最初は要請のみで保障システムが施策されてなかったから)。
都市封鎖を今日権力で施策するには、私権の問題が絡んできます。
厳戒令は絶体に容認できません。
東京都知事の「ただひたすら、お願いします」の姿勢に、都知事の苦しい胸の中が理解できます。
このシリーズは、今回で終了します。
(読書案内№151) (2020.4.22記)