核・放射能・被爆を詠う (朝日歌壇・俳壇より)
幾つかの核の光がこの星に弾けて静かな遊星となる
………… 福島光良
ある日、何の前触れもなく「核のボタン」が押された。誰がどんな状況で押されたのか。
最も危険で、得体のしれない「核のボタン」。アメリカは「核による先制攻撃はしない」と公言しているが、
もしも、核保有国のどこかの国が、アメリカに向けて「核のボタン」を押してしまったら。
幾つかの核の光が地球の青い空を飛び交って、生けるものすべてが息絶える。
静かな惑星は死の惑星だ。
オバマ大統領は広島訪問の際、「核のボタン」を持参した。
小さな過ちや誤解が核戦争を起こす危険性をこの地球はいつも抱えている。
「核抑止論」もっともらしい理由付けだが、死の惑星になる危険性も十分にある。
ふる里のアスパラ近所に配りたり線量検査済みと言ひつつ
…… 細野八重子
なんて悲しいことだろう。自分で作った野菜が、「線量検査済み」ですからと、
言い訳のよう言わなければならない現実。見た目には、よくできたおいしそうな野菜。
だがここに、無味無臭の危険な物質が混入していたとしたら、
今なお、避難解除地域への帰還を遅らせている原因の一つでもある。
野菜に限らず、農産物、漁業、畜産等々に広がる不安は、今も完全に取り除かれたわけではない。
汚染に関わる不安や風評を払拭して、一日も早い「復興」を遂げようと多くの人々が活動している。
福島県産の食品を機会があれば購入する。ささやかな福島支援になればと思う。
何処からか、次のような声も聞こえてくる。
核兵器絶対悪の筈なれど必要悪と囁く声が
……二宮正博
真実は一つなり、と言いたいところだが、歴史はいつも二律背反、互いの主張をどのようにして相手に知らしめ、
自分の主張を正論にしようと腐心する。勝てば官軍、歴史は常に勝者によって書き換えられる。
原発の地元では、原発の正否を語ることはしない。
反対する対局には必ず賛成し、原発で生業(なりわい)を立てている人がいるからだ。
基地問題も同じように、反対の声は大きく、報道もされるが、賛成の声はかき消される。
賛成する人がいないわけではないのに。
(2016.9.2記)