読書案内 そして、星の輝く夜がくる (2) 真山仁著
第二話 ゲンパツが来た!
(前回の続き) (あんな壁新聞を作ることは)「すごい勇気ですよね。
地元の教師には、あんな言いたい放題の壁新聞を作ろうなんて言えないでしょうね」
レポーターの言葉に、小野寺は答える。
「それはあなた方が、耐え忍ぶ被災者の勝手なイメージ―を作り上げてしまったからでしょ。
子どもたちは被災地でも天使のように明るいとか。
子どもたちのけなげな頑張りが涙を誘うとか。
そうやって子どもに無理をさせているのは、おたくらにも責任の一端があるんとちゃいますか」
テレビや新聞・雑誌なとで私たちもまたメディアの流す情報に感化され、いつの間にかそれが自分の考えだと錯覚してしまうことは往々にしてあることだ。
一体、メディアにとってニュースバリューとは何なのだ。
マスコミが取り上げるのはいつも「感動、人情、涙」のものばかりだし、
人はそういう記事を歓迎するのだ、と小野寺は思う。読む側の私たちにも責任があるのではないか。
「第二話・ゲンパツがきた!」:
福島原子力発電所に勤務する父親を持つ転校生を巡って起こる子どもたちの優しさや強さを描く。
悪いのは東電、私たちは被害者だ、許すな糾弾しろと、大人たち。
だが、視点を変えれば随分身勝手な考え方でもある。
子どもたちの素朴な疑問:「…どうして急に原発は悪で東電はウソつきって決めつけるんだろう」、
「…事故が起きたら、東電ばかり非難するのはおかしいと思います…」、
「日本の原発は世界一安全で地球にも優しいって。なのに今は正反対の話ばかりです。
どっちが本当なのか、僕は知りたい」。
子どもたちの疑問はもっともな疑問であり、柔軟な心が大人たちの偏見や矛盾を解きほぐしていく。
転校生を巡って、誹謗 中傷 憶測などいりみだれ、それでも子どもたちの目はしっかりと前を見ている。
「…僕の父は、福島第一原発で今も命がけで働いています。東電や原発は悪者かもしれません。
でも、安心を取り戻すために必死に闘っている人がいるのも知ってほしい」。
澄んだ少年の目には一点の曇りもない。
「僕らは原発問題から目をそらしてはならないと思います」と、風化していく問題を見つめる純真な目がある。
(つづく)
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