雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

ねむのきの歌 (俳句と短歌から)

2017-08-08 08:30:00 | 人生を謳う

   象潟や雨に西施がねぶの花   芭蕉
   
紀行文「奥の細道」で、憧れの象潟を訪れた時の歌です。
           雨に煙り薄桃色に咲いた繊細な花、
     見ようによっては美貌ゆえに水に沈められ殺されてしまう傾城の美女・
           西施がうなだれている様子と合歓の花が重なって芭蕉の心を感動させたのでしょうね。
           
海に続く象潟にたたずみ、往時を偲ぶ芭蕉翁の姿が浮かんできます。
   
   下の句は今では隆起してしまい地続きになってしまった象潟に立ち、
        
在りし日の芭蕉の姿を思う作者の気持ちがよく表現されています。

   遠き日の象潟偲ぶ合歓の花
           
………相馬市 鹿又一武 朝日俳壇2017.07.31

 

   合歓の花暮れゆく山を優しゆうす
           
………尼崎市 田中節夫 朝日俳壇2017.07.31
    合歓の花には、「やさしい」「憂い」「ひかえめ」「寂しい」というイメージがあるようです。
    この花の似合う時は、「夕暮れどき」「小ぬか雨の降っているとき」なのでしょう。
    山すそに咲く合歓の花は、後ろに広がる山さえ優しく見えさせてしまう。


   合歓の木に合歓の花咲く夕小道いつしか空き家になっていた家
            
………福島市 美原凍子 朝日歌壇2017.07.31
     何時ものように夕方の散策に小道を辿って行った。合歓の花が毎年私を迎えてくれる。
    この小道に沿って建っていた家は今は人の気配のない空き家になっていて、私はこの家に
    住んでいた人はどうなったのだろうと思いながら、何時もより淋しく映る合歓の花を
    眺めています。 


     私のイメージは傾城の美女・西施の、
              美しさゆえに男をとりこにしてしまい、やがてはそれが自分の命をも

     縮めてしまう悲しい物語に繋がってしまう。
     こうした思いを芭蕉はみごとに、合歓の花=西施にダブらせたのでしょう。
                (2017.08.07記)      (人生を謳う)

 


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