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雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

季節の物売り 江戸情緒 ①

2021-12-09 06:30:00 | 季節の香り

季節の物売り 江戸情緒 ①   福寿草売り

季節の物売り

「きんぎょぇ~きんぎょッ」金魚屋さんがくると、一斉に物売りの声に魅かれて外に飛び出す。
夏が来たことを教えてくれる金魚売の声だ。往来に面しているけれど、私の家は道路から少し引っ込んだところに立っており、間口も広かったので金魚売りはいつも私のうちの前に店を広げた。
 巾着のかたちをした金魚鉢は、縁を水色に染めてありその中で、数匹の金魚が泳いでいた。涼し気な鉢の中で泳ぐ金魚の器がほしかったが、兄弟5人の母子家庭で育つ私は、とうとうそのことを母に言えなかった思い出がある。風鈴売りは、色鮮やかな江戸風鈴をたくさん吊るして、賑やかにやってくる。売り声がなくても、風に乗って聞こえてくる音色ですぐにそれが来たことが分かる。チリンチリンと澄んだ音を流す、南部鉄でできた風鈴は値が張ったのだろうあまり売ってなかった記憶がある。飴細工屋も私の家の軒先を商いの場所とした。冬はこんにゃくの味噌おでん売りを懐かしく思い出す。リンゴ箱に炭火を起こした七輪を載せ、その脇にカメに入った甘く煮詰めたみそだれが入っていた。売り声はなく、そのみそだれの臭いで人が集まって来る。私たち悪ガキはこのおでん屋を「墓場おでん」と陰口をたたいた。味噌の入ったカメは、墓場の骨壺を利用していると誰かが云いはじめたのが由来である。豆腐売り、納豆売り、パン売りなど、子どもたちが眼を輝かすような物売りが来た。
 時代と共に、物売りの姿は消え、私の実家も亡くなり、私も歳をとった。
 江戸時代、日常生活に必要なほとんどすべてのものが、「ぼて振り」と言われたてんびん棒の両端に売り物を載せて歩く姿は、庶民の生活に密着していた。そんな物売りを紹介します。

 

 (初夏の物売りの図)

 橋の上には薬売り、旗を持つ祈祷師(?)、或いはこの人も薬売りで、同業者同士が橋の上で出会い、互いに振り返ってみているのかもしれない。
初鰹売り、橋のたもとに花屋、その手前に乾物屋、画面左端にも物売りらしき人がいるが何を商っているのか不明。橋のたもと右側の家の軒下には「吊り忍」が下がっている。これも物売りから手に入れたのだろう。そのすぐ上には、買ったばかりの菖蒲をさげている人がいる。
 季節は初夏、汗ばむような午後の時間帯だろう。笠をかぶる人。扇を頭にかざし日差しを避ける人、菖蒲をさげた人も
 手拭いで額の汗をぬぐっている。庶民達が行きかう賑やかな往来を描いている。

福寿草売り

   

「福寿草売り12月25日 春に至る迄、梅福寿草などの盆花町に商ふ」(東都歳時記) 
 福寿草は、元旦草とも言い、歳末に福寿草売りから買って、正月の床の間を飾ったという。
 左の写真は女性の売り子さんが描かれている。女性の物売りが実在したのかどうかわからないが、
 当時、飾り絵として販売された絵も多く、特に人気のあった歌舞伎役者の売り姿の絵に人気があったようだ。
 左の絵が実際の福寿草売りの風俗画ではないかと思う。
 煙草入れを帯から抜いて、てんびん棒にかけ、一服している姿が現実感があって私は好きだ。

 40年も前、母の願いでよく神社仏閣いった。
 境内に並んだ出店を見てまわるのも参拝の楽しみだった。
 当時、よく福寿草を購入した。
 一芽、30円ぐらいだったと思う。数年続いた30円の売値も50円になり、どんどん値が上がった。
 現在では350~400円、当時の価格の約10倍もしている。
 あの時購入した福寿草は毎年、庭の陽だまりで元気に花を咲かせている。
 増えた分だけ、美しいと褒めてくれた人に分けてあげるので、
 年数の割には株は一向に大きくならない。
 母との想い出に繋がる懐かしい匂いのする初春の花である。

     (季節の香り№33)      (2012.12.8記)
 
  

コメント (6)
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