ことの葉散歩道 人間は負けない
私たちはこの世の中に一定の秩序と連続性を見出そうとしています。
こうしたものがないと、とても安心しては暮らせない。
今日は昨日のようであった。
明日も今日のようであるだろう。
明日の景色も今日の景色のようであり、
今日良いこととされていることは、明日もまた良いことであるはずだ。
※ 「アダルト・チルドレンと家族」より 斉藤 学 学陽文庫1998年刊
日常性の連続
今日一日が無事であったように、おそらく明日も似たような日が訪れるだろう。
昨日・今日・明日と連続した日常の中で、私たちは年を取っていく。
今日、無事に生きられたから、予測のつかない明日であるけれど、
おそらくは今日とさほど違わない明日を迎えることを予測する。
だから私たちは安心して今日を生きられるし、明日を迎えることができる。
だが、ときとして、
事故や自然災害、脳梗塞やくも膜下出血などに遭遇し、
日常の連続性が遮断されてしまう時があります。
「予測のつかない出来事」が起きた時、
私たちの思考は混乱し、
行動そのものも活動を停止してしまうこともあります。
いわゆる「茫然自失」という状況に置かれてしまうと、
何をしていいかわからなくなってしまう。
表現を変えれば、何もできなくなってしまう。
つまり、今日が明日へとつながっていかなくなってしまう。
「トラウマ」という現象が起こってきます。
現実に起こったことを理解できない、あるいは認めようとしない。
自分に降りかかった非日常のできごとから立ち直ることができず、
PTSD(心的外傷後ストレス障害)となって、
心に傷を負ったまま回復するには長い時間が必要とされます。
人間は負けない
東日本大災害では、地震と津波に加えて、原発事故による目に見えない不安に、
多くの人が襲われ、故郷 を追われました。
そして、6年半が過ぎました。故郷に戻った人、故郷を捨てた人。
生きる糧を新しい土地に築こうと努力している人。
今もどうしていいか選択肢を見つけられないで、
あの日の災難から立ち直ることができない人。
百人いれば百様に手段も考え方も違うけれど、
確実にいえることは、
人間はどんな災難に出逢っても立ち直る力を持っているということだ。
ヘミングウェイの小説「老人と海」の主人公のように、
捕らえた獲物に襲いかかる鮫の群れに戦いを挑み、
「人間は負けるようにはできていない」と自分を奮い立たせる勇気が人間にはあります。
だから、永い永い時間をかけて人間は生物の頂点に立つことができたのだ。
人と人とのつながりや、共通する支え合う力が、明日を作ろうとする力になる。
その時、試練の時を乗り越えて、
人間は新たな明日を築くスタートラインに立つことができるのだ。
(2017.9.14記) (ことの葉散歩道№35)
(メモ書き№26)