君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 四章「心のままに」十二話 「出会い」5(全五話) 

2011-12-18 02:47:29 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)十二話

   Epilogue Bridge「出会い」5(全五話)  
※この章は流血もBLもあります。時間も飛びます。ご注意を!

 Noah・Shangri-La 現在
 二人の練習が一息ついた頃に、二人はジョミーから呼ばれた。
「ジョミー。こいつ、飲み込みが早いよ。教えてて楽しい」
 と本当に楽しそうにトォニィは言った。 
「そう。良かった」
「ヴィー、君は大丈夫だった?体、無理してない?」
「え…いえ。どこも…大丈夫です」
 さっきまでの事を思うと返事がしにくかった。
「最近、トォニィは外交で疲れ気味だったから、良い気分転換になればと思った。ありがと。急に変な事につきあわせちゃったね」
「いえ…俺も色々教えてもらえたので…」
「そうか、なら良かった。それじゃ、庭に行こう」
 と、ジョミーが歩き出した。

「あ、待って…」
 ヴィーが声をかける。
「待って…ください」
 ヴィーのその表情を見て、トォニィは先に行くねと言いながら庭園に向かって行った。
「何?」
「あ、あの…さっきの事、ノアでの運び屋の事ですが…。俺は誰にも言っていません。あの頃、あの部隊にミュウは俺一人で、機械にかけたのは皆も知っていますが、あなたと彼らの事は俺しか知りません。でも、見たっていってもごく一部で…ずっと気になっていて…あんな事を言うつもりは無かったんです。直接会っても聞くつもりなんて…全然、本当に全然無かったのに…」
「きっと、君には疑問がいっぱいあって…僕を見る度に辛い思いをしていたのだろうね。僕が今、君に言えるのはこんな言葉でしかない…あの時の事は、本当にごめんね」
「…あ…いいえ…俺が悪いんです…」
 謝られた。
 俺は謝れと言っていた。
 それが叶った。
 だけど、なんで、こんなに胸が痛くなるんだ?
「…つっ…」
「…ヴィー、トォニィが待ってるよ」
 と歩き出す。
 ヴィーは泣きそうな顔でついて来た。
「あ、ジョミー。さっき…誰にも言ってないって言いましたが…キース議長には転属の時に話して…います。すみません…」
 ジョミーの後に続きながら、急に思い出したようにヴィーが言った。
「ん、そう。それはかまわないよ。大丈夫だから…」
「……」
「そんな事より、ヴィー。君の最初の疑問に答えよう」
 と言い、ジョミーは庭園に入って行った。

  シャングリラ(庭園)
「トォニィ、お待たせ。君も知りたいと思っているだろう。僕がノアで集めていたのは、これだよ」
 とジョミーが言った。
 ジョミーは胸にしまったものを取り出した。
 幅五センチくらいの黒い水晶のような塊が、彼の右手の上に浮いていた。
「これは人類の記録の断片。でもこれはもう古すぎて解析も出来ない。人類には用も何も無くなった物。グランド・マザーの基盤になっていたコンピューター・テラの中に残されてた物だ。僕はそれのある部分を切り取ってきた」
 それって犯罪じゃ…。
 と言いかけたヴィーをトォニィが止める。
「これには僕たちミュウの起源が書かれているんだ」
「僕たちの…?」
「でも、この記録はもう古くて人類には解析が出来ない。ただの数列の塊さ」
 と言って両手を閉じる。
 意味の無い物と言いながらも、大事そうにジョミーはそれを胸にしまった。
 青く光りそれはジョミーの中に消えていった。
「でも、人類の物だよ…」
 とヴィーが言った。
「持ってても、人では何も出来ないし意味はないと言っただろ」
 とトォニィが言う。
「あ、それって…ジョミー。ミュウなら出せるかも?って事だよね?」
「そうだけど、やってもバラバラ過ぎて、答えが出ないんだ」
「ジョミーがテラズナンバーを巡っているのはそれのせいだったの?」
「うん。まだ情報が足りない。月へ行くべきかも…」
「月?」
 ちょっと不安げな表情を浮かべたジョミーは顔を上げて言った。
「ああ、いや…。ねぇ、トォニィ。僕たちがミュウと呼ばれる意味は知ってるよね?」
「突然変異(ミュータント)だからでしょ?」
「そう。けれど、それすら作られたものだとしたら…どう思う?」
「僕たちが作られた?この前のノア政変で、人間にミュウ因子を植え付けるのが出来なくて失敗したから、クローンを作ったんじゃないの?人間からミュウを作るなんて無理なんじゃ…」
「でも、もし、そうやって作られたのなら、僕たちは人間から作られた別物。それでも、根幹は人間…僕たちは人間だって事になるよね」
「だけど、それじゃ。突然変異で生まれたより…酷いじゃない?」
「そうだね。でも、今は、その可能性もあるって言っただけだよ」
「人類は僕達を勝手に作っておいて変なのが出来たから、抹殺しようって事だよね」
「…そうなるね…」
「あ、あの。これって俺は聞いてていいのかな?」
 ヴィーは公表されていないクローンの事は知らなかった。
「ん、君がイヤなら…負担になるなら…。忘れさせようか?」
 とジョミーが言った。
「いいえ。誰にも言いませんから、聞いてていい…で…すか?」
「…君は…」
 と、じっと、ヴィーを見るジョミー。
「?」
 そして、ジョミーはにっこりと笑うと、
「聞いてていいよ。知りたいだろう?」
 と言った。
 そのまま、二人はまたミュウの起源の話をしていた。
 俺はさっきの「君は」の続きが気になっていた。
 彼は何を言おうとしたのだろう。

 やがて、会議の行事がすべて終了した。
 トォニィはメサイアへと戻る事になった。
 ジョミーもスメールへ戻ってゆく。
 キース議長付きになった僕は彼らを見送った。
 二つの白い船体が別方向に進んでいった。

「ヴィー、君はシャングリラに行ったと聞いたが」
 とキースが聞いた。
「はい。ソルジャー・トォニィが色々と戦い方を指導して下さいました」
「そうか。それは良かったな」

 マツカ、お前がもし今、生まれていたら、彼のようになったのだろうか?
 この世に「もし」はないが…。
 もし、あったとしたら、今頃、俺達はどうしていたのだろうな…。



    「出会い」 終



『君がいる幸せ』 四章「心のままに」十一話 「出会い」4

2011-12-16 12:37:55 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)十一話

   Epilogue Bridge「出会い」4  
※この章は流血もBLもあります。時間も飛びます。ご注意を!

  Noah・Shangri-La 現在
 三人はナスカチルドレンのトレーニングルームへと向かった。
 ジョミーは部屋の真ん中に立って、四方から好きなように攻撃を仕掛けていいと言った。
「銃を使ってもいいよ」
「バカにして」とヴィーがうなる。
 ヴィーは後ろにまわり、正確に狙いを定めてから部隊で使っている銃で撃つ。
 弾はすべてジョミーの背後のシールドで止まった。
 まだジョミーははっきりとしたサイオンを出していない。
 今度は、正面に移動し、対ミュウ用の銃で撃つ。
 透明だったシールドが青く変わっただけで、前と同じで弾はシールドに当たり、バラバラと床に落ちた。
 ジョミーは真ん中に立ったまま、動いてもいなかった。
 ヴィーは、ジョミーの間合いに走りこみ至近距離で電撃を撃った。
 二人の間で青と黄色のサイオンがはじける。
 はじかれて跳んだ場所から、光の玉を作り放つヴィー。
「……」
 ジョミーは最初のは手で受け、相殺した。
 二つ目は、受け止めてそのままゆっくり押し戻した。
 この攻撃で返されたことの無かったヴィーは慌てる。
「…!」
 爆発がおきる。
 ヴィーの前にはトォニィがいた。
 彼を庇ったのだった。
「お前、あんなの作れるんだ。サイオン、イエローなのに?」
 と嬉しそうなトォニィ。
「もっと上手く使えるように教えてやる。そしたら、もっとずっと凄いのを出せるようになる」
「…は?…え?」
 ヴィーはトォニィが何を言おうとしているのかはわかった。
 わかったが、喜びようがわからなかった。
「トォニィ。ヴィーに怪我をさせるなよ。それと、明日も勤務入ってるんだからね」
 とジョミーは部屋を後にした。
「わかっているよ。ジョミー」
 と元気な返事が返ってきた。
 あっけに取られたままのヴィーを残して、トレーニングルームのドアがゆっくりと閉まった。

 ヴィーは、思ってた以上の能力だった。
 とジョミーは思った。
 ミュウとして生まれ、何年もかけて習得するものを彼は三年あまりで覚えたのだ。
 でも、攻撃ばかりで防御を知らないのは危険。
 きっと、それはトォニィが教えるだろう。
 自分のあの反撃は、最初からトォニィが庇うと思っての反撃だった。
 しかし、ノアで僕を見つけた彼とこんな形で再会するとは…。
「泣いて謝ったか…」
 きっと、ヴィーは全てを聞いてを知っている。
 それは過去の自分の軽はずみな行動の結果だ。
 彼らを見殺した事、ヴィーに怒りを覚えても…それは間違いだ。
 挑発に乗ってしまったな。
 ずっと昔に実験室として使っていた部屋の前まで来た。
 そこにはもう何もないが、そのドアに手を着くと昔の自分とドール、そしてリオが中で笑っているような気がした。
 タイプイエローの戦士。
「ドール…。シロエ。マツカ」
 君たちの意思は彼に引き継がれていゆく…。
 そして…。彼が、僕たちの代わりに彼を守っていってくれるだろう…。
 これは、僕の我がままだ。
 僕の代わりなんていらない。
 僕らタイプブルーはもういらない。

  トレーニングルーム
 ヴィーはトォニィの教え方の的確さに驚いていた。
 自分の癖や不備な所を見抜いて丁寧に教えてくれる。
 伸びていく実感があった。
 でも、彼はやはりソルジャーの名を持つものだけあって、持久力が全然自分とは違っていた。
 俺はすぐにエネルギー切れになってしまった。
 なので、話がしたいと訓練を中断することになった。
「ヴィー、気になってる事があるけど、お前、ジョミーを敵視してるんじゃない?」
「敵視なんてしていない」
「お前がキースを尊敬しているのはセルジュから聞いて知ってた。でもそれで、ジョミーを敵視しているのか?」
「ジョミーを敵だと思っていない」
「キースとミュウの敵同士だった。その図式のままだと思っているなら、それは良くない。あ…、全部が良くないと言い切れないか…お前にも事情はあるよな…。だったら、ソレ、僕に向けたら良い」
「……」
 ずいぶんストレートに言ってくるヤツだとヴィーは思った。
「ミュウになって、俺は、あいつ、ジョミーと…。似ていると長い間思ってきた。こうして会っても、それは変わりはない。だけど、あいつは何なんだ」
「気に入らない?」
「どうも面白くないだけだ」
「ジョミーはいつもああだよ。いきなり君をここに連れて来たりしてさ。君の能力を見たら僕が嬉しがるってだけなのかもしれないけど…ね」
「嬉しい?俺みたいのは珍しいのか?」
「珍しいし、楽しいよ。この先、多分、タイプブルーはもう生まれない。だから、強いミュウは珍しいし、僕は嬉しい。僕はジョミーに言わせると、君と同じで好戦的だからね」
 と笑った。
 自分の存在を、嬉しいとはっきり言うトォニィの言葉にヴィーは少し照れた
「あ…あいつは違うのか?」
「違うよ。ジョミーは戦いは嫌いなんだと思う。でも戦い続けている。そういう所すら、本当に肝心なことを全然僕に言ってこないんだ。だから、僕も面白くないよ」
「心酔してるって聞いたけどな」
「心酔ねぇ…。そう。とても尊敬してる。大好きなんだ。だけど向こうは、それを考えてくれていない。僕の想いは一方通行なんだ。僕が心配するのも要らないと言ってくる」
「心配も?…変なヤツだな。それでやってゆけるのか?」
「ジョミーは他の人が自分を心配する事すら、痛みに変わってしまうのだと思うよ。まぁ、前はそこまで頑なでも無かったんだけどね。今は…ミュウはもう僕が引き受けているし、好きにして良いってなったら、色々と悩みだしちゃったみたいだ。今までジョミーが背負っていた荷が大き過ぎだったからね」
「戦争になった歴史は知ってる。でも、もう六年になるじゃないか」
「それは、六年が長いか短いかは人それぞれだよ。だからさ、ジョミーの事を、敵視するの止めれない」
 とトォニィはにっこり笑った。
 なまじ美形なだけにトォニィの笑顔は迫力がある。
「…あの」
「君のその気持ちはなんなの?」
「え?気持ちって?」
「敵視する根本は嫉妬?」
 どこまでもストレートなヤツだな。こいつは。とヴィーは思った。
「嫉妬なわけない…」
「ふーん。そう。君がさっき言ったように、ジョミーの生まれも育ちも、なんとなく似てるとこも反発する理由なんだろうけどさ。一番は、君の好きなキースがジョミーといる事も気に入らないのが一番の原因かと思ったんだけどな」
「お、俺の…心を読んだのか?」
 とヴィーは立ち上がった。
「あ?図星だった?読んでなんかいないよ。僕はそういうの嫌いだから」
「だけど、図星って!」
「あのさぁ、尊敬してるのはわかるけど、一体、キースのどこがいいの?」
「僕を抜擢してくれたし、立派な人物じゃないか。ノアを救った英雄だ」
 ヴィーは座りなおした。
「あぁ、先の反乱ね。マスコミに踊らされてるってそれ」
 フィズの存在を公表できないので、昨年のノア上空での戦いはただの反乱で、その戦いにはミュウも参戦したというだけになっていた。
 ミュウの中では、二人のソルジャーが星を救ったと言われているが、人類の方にはそこまでわかっているのは少なかった。
「それに、君をキースに推薦したのはセルジュだろう?ん、まぁ、いいか。君はノア出身だし、昨年の事件で急にって感じじゃないし…、彼もノアに関してはいろいろやってきてるようだからね。キースが好きなミュウってのが居ても、良いんじゃない」
 トォニィは笑いながら、僕は面白くないけどね。とつけ加えた。
「あのさ、ヴィー。結論で言うと、意外な事に僕は君が気に入った。だから、やっぱりジョミーにちょっかい出さないで欲しい。でも、さっきのジョミーの態度も良くないと思うよ」
 どこまで、ストレートなんだよ。とヴィーは思った。
 このミュウの長は俺と同じくらいの歳だと聞く、そんな立場を無視して言ってくる。
「お前が言ったように、能力で仕事をしている俺は、きっとお前達と和解するべきなんだろうけど…ジョミーの事だって…よくわからないけど。俺は…別に彼が嫌いでそう思っているんじゃないと思う」
 とヴィーは言葉を選びながら言う。
「いいって。利害関係でなら僕らと仲良くするのがいいけど。今はね。それだけで良いさ。急には無理だし。あ、そうだ、僕。セルジュと友人だから。あいつの事が気に入らなかったら、それも言ってきていいよ」
 とトォニィは笑った。
 ヴィーも思わずつられて笑った。

 でも、いくら、えらそうな態度をとってしまう自分でも。
 そうも、上官の事を言える訳ないと思うヴィーだった。



  続く




『君がいる幸せ』 四章「心のままに」十話 「出会い」3

2011-12-14 01:25:55 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)十話

   Epilogue Bridge「出会い」3(全五話)  
※この章は流血もBLもあります。時間も飛びます。ご注意を!
   Noah 現在
 会議が終わり、ジョミーはスメールに戻ろうと空港に向かった。
 手続きをする為カウンターへ行こうとすると、そこに、ヴィーが待っていた。
「はじめまして」
 彼は軍式の挨拶をしてきた。
「君は議長の護衛の…」
「ヴィーと言います。あなたはジョミー。いえ、ジュピターと呼ぶべきでしょうか?」
 挑戦的な目で睨むように見てくる彼を、少し不思議そうな眼差しで見返した後、ジョミーはこう答えた。
「どちらも同じ僕ですから、好きなように呼んでくれてかまわないよ」
 ヴィーは一瞬ムッとした。
 ジョミーが「ジュピター」である事は公になっていなかった。
 それはごく一部にしか知らされていない。そして、口外は許されていない事だった。
 それを言ったのに、責めてこないのが面白くなかった。
「ノアのあの場所に居たことは糾弾されていないようですね」
「…そうか。君はあの時の少年か…また会えるような気がしていたよ。あの頃の僕の行動は、機密事項になってるから大丈夫だ」
 ジュピターの名を出した時から判っていたのに、今思い出したような事を言ったジョミーにヴィーは喧嘩腰になった。
「機密?何か持ち出したのに?ミュウなのに?それは反逆罪になるんじゃないのか?」
 銃を出そうとした。
 音もなく、すぐ真横に来たジョミーがヴィーの手を押さえた。
「それは出さないで、見られたら問題になる」
 押さえられて動けないヴィー。
 ヴィーも確かにここで銃を向けるのはマズイ事と、思ったが、能力で何とか出来る相手でも無い事もわかっていた。
「…君とは話がしたいと思っていた。ここだといい場所が無いな」
  Shangri-La
(なんで連れて来たんだよ?)トォニィがジョミーだけに聞こえるように文句を言った。
「ミュウだから」
「…あ…(そんな)」
「お久しぶりです。ソルジャー・トォニィ」
「久しぶり、ヴィー」
 にっこり笑うトォニィ。
「僕をこんな所に連れてきてどうするんです?」
「君も一応ミュウなら、ここを知っておいて損は無いだろう?」
「知る?何をですか?知る必要なんてない。僕はお前達の仲間なんかじゃない」
「ミュウの部隊で働いているのに?」とトォニィが言った。
「それでも…僕は違う」
 ジョミーは何も言わずにヴィーを見ていた。
 昔、僕は彼が今言った言葉をそのままブルーや皆にぶつけた。
 無知としか言えないが、知らないと言う事は、知識が与えられていないという事は、とても、残酷な事なんだと思った。
 でもそれは彼のせいではない、けれど、同じミュウ同士でありながら、理解されない寂しさが胸を締付けた。
 もっとちゃんと自分達を理解してもらう必要がある。
 ミュウを取り巻く状況も複雑になってきている。
 今までと同じではダメなんだ。
「ヴィー。だったら力を使うなよ」
「僕だって好きでこうなったんじゃない!」
「……」
「僕は成人検査は受け合格した。だけど、戦争で、SD体制が無くなってしまって、僕が行くはずだった教育ステーションは封鎖されて、僕らは行く所も帰る所もなくなったんだ。両親はもう居ないし、記憶は消えてゆくし…。そんなだから、僕らは大人と扱ってはもらえなかった…。それはすべて、お前たちがした事じゃないか!だから、俺はお前たちが憎い」
「それは、言いがかりだ!SD体制は人間自身も壊したんだ」
「お前達が戦争を起こしたんだ!」
 ヴィーがサイオンを放ち始めた。
「こいつ!」
 トォニィの目が光る。
「……」
 ジョミーは二人の間に割って入った。

「ヴィー。聞くけど、それは、体制は徐々に移行していったはずだ。君にはその時勢は読めていただろう?」
「え、そ…そう。だけど。14歳の俺に何が出来た?」
「そうだね」
 ジョミーが冷たく言った。
「そうって、それだけ?謝るとかしないのか!?」
 ギッとトォニィが睨みつける。
 ジョミーはそれを目で制した。
「謝る?」
「ああ!謝れよ」
「謝らないよ。僕らは…」
「なんで?あいつらには謝ったのに?」
「…あいつらとは?」
 ジョミーの雰囲気が変わる。
「ノアの運び屋で人身売買してたあいつらだよ」
「…どうして知っている?」
「俺の部隊が捕まえた。泣いて謝ったんだろ?」
 ヴィーにやりと笑う。
「人類が…僕の記憶操作を破ったのか?…お前はミュウの能力を使った上で、機械で無理やり…記憶を出させたんだな。むごい事を…精神が…自我が崩壊してしまうぞ…」
「それが僕の仕事だ」
「そうか…」
 ジョミーは目を伏せた。
「また。それだけ?あいつらが、どうなったか知りたくないのか?」
「…想像はつく」
「あいつらは処刑されたよ。仕事を依頼してたやつらは逃げたのに」
「全員処刑か?」
「そりゃ、当たり前だ」
「わかった」
「…薄情なんだな。ジョミーは良い人で通っているのに、ジュピターは冷たいんだな」
 とヴィーが皮肉たっぷりに言った。。
「お前達が捕らえ、話させたのなら事情は知っているだろう?大戦後の混乱の中、彼らの居住区にミュウ因子を持つ者が沢山現れた。その情報はデマなのに…。それなのに、町は軍に焼かれたんだ。それが僕らのせいなら…謝りもする」
「だったら、なんで。僕には言わないんだ」
「ヴィー。君は僕に何をどう言って欲しいんだ?ミュウになってしまってすまないと、かわいそうだと言えばいいのか?それで君は満足するのか?気がついていて何もしていなかったのは、君だろう?」
「何もしていなかった訳じゃない!」
「ならば、今さら、僕を見ていても仕方が無い。君は君を見つけろ」
「なにが、お前なんかを見ていない」
「進みだしたのなら、君の道を進めばいい」
「お前何を言ってるんだ」

 ヴィーにはジョミーが言おうとしている意味はわかっていた。
 だが、簡単には納得が出来ないでいた。
 ジョミーに謝って欲しい訳じゃない。
 慰めて欲しい訳でもないのに、どうしようもなく苛立つのだろう。
 悔しくて仕方が無かった。
 こうして目の前に居るのに、話しているのにどうも違う。
 対等に扱えと思っているのでもないのに、相手にされていない気がするのは、ミュウの能力とかそういう物の差でもなかった。
 自分が勝手に同等だと思い込み、喧嘩を売り相手を怒らせ。
 それで何を得ようとしていたのだろうか?
 そんな物は自己満足でしかないと、相手を貶めて自分が上だと認めさせる行為を自分はしてきたのだと思い知らされていた。
「……」
 ギッとジョミーを睨みつけた。

「トォニィ。戦ってみる?」
「え?」
「どうせなら、お前がと良い」
 ヴィーが言った。
「はっきり言うね」

 トォニィは、さっきのジュピターのくだりを理解出来ないでいたが、ジョミーが怒っているのはわかった。
 多分、それはヴィーも感じているだろう。



  続く



隠し部屋を作りました。

2011-12-14 01:24:47 | 月イチ雑記「青い星」
昨日作成した
隠し部屋の入室案内です。
カテゴリーからパスワード入力で入れます。
15禁と18禁の境が曖昧で、個人的にヤバイかも(18禁かな?)と思ったものを置いていきます。
なので…大した事ないな~と思われるのもあると思いますが、お許し下さいませ。

隠部屋作成記念?
先行公開(試験公開)「君ノ存在」(原案)を試しで置いておきました。
これは18禁でも15禁でもないですが、覗いて頂けたら嬉しいです。

『君がいる幸せ』 四章「心のままに」九話 「出会い」2

2011-12-12 02:48:14 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)九話

   Epilogue Bridge「出会い」2  
※この章は流血もBLもあります。時間も飛びます。ご注意を!
☆くじCPにキース・ジョミー・ヴィーの「トライアングル」もUP。

  Pesetra 現在
 キースを守るミュウの部隊に優秀な者がいると聞いて、興味を持ったのはトォニィだった。
 トォニィは都合をつけて早速見に行く事にした。
 ペセトラ基地には何度も来ていたが、そのミュウに会っていなかった。
 彼は惑星ノア出身で最近ミュウになったらしく、その能力の高さを認められてペセトラに来たキースの護衛にあたっているとの事だった。
 そのミュウの名前はヴィー。
 十八歳でその位置につけるとは本当に優秀なんだとトォニィ思った。
 一度、遠くから見た時、心なしか容姿があのマツカに似ている気がした。
 そう言うと、セルジュが嫌な顔をした。
 セルジュはヴィーが苦手だった。
「マツカを思わせる容姿で性格がキツイとギャップがあって…」とセルジュは言った。
 トォニィはこの手でマツカを殺してきている身だ。
 気持ちは良くはないが、強いミュウには興味があった。

 ある日、会う機会が訪れた。
 ここペセトラではセルジュがそのミュウの上司になるので、彼を介して会ったのだが、セルジュがいるにもかかわらずにテレパシーで会話をしてきた。
(戦艦ブラウに助けられたミュウです)
 生意気に! 
 とトォニィは思った。
 ミュウになった経緯を聞くと、
「あなた方がSD体制を壊して一番被害にあったのは僕たちなんです」と言った。
 四年前、十四歳だった彼は、こう言った。
「崩壊してすぐはまだ体制がきまらず、僕らは放置された。教育ステーションにも行ってもすぐに育った家に戻された。だけど親は育てる権利を放棄していた。だから、仕方なくそういう子供達は集めらた。そんな中、覚醒してしまった僕はますますいらない子・邪魔な子として扱われた」
「人類の施設を抜け出して彷徨っている時に、ミュウの戦艦ブラウに拾われて、ミュウのそういった子を集めている家に入ったが、そこでなじめずにすぐ軍に志願したらしい」
 とセルジュが資料を見ながら補足した。
「君の境遇はわかった」
 トォニィにはもっと聞きたい事があったのだが、ヴィーとの会話はそれで終える事にした。
  ヴィーと帰ってから、トォニィはセルジュに言った。
「あの子はミュウに敵意があるね。ミュウに対してだけだなく。人類に対しても、まわり全てが敵みたいだ」
 それは、以前トォニィ自身がジョミーにしか心を許さなかったのと似ている気がした。
 ミュウに敵意と言ったが、もっと別の感情が彼にはある気がした。
 ああいう面倒なヤツは相手をしたくないなぁ、と思うトォニィだった。

「あれが、ソルジャー・トォニィか…」ヴィーは呟いた。
 そう、見捨てられた俺は軍に入った。
 二年前、警備兵だった俺はミュウの能力を買われてミュウの部隊に入る事になった。
 部隊に入って。その時、渡された資料にカナリア事件の記事とミュウの資料があった。
 ソルジャー・シンとソルジャー・トォニィの名前は知ってたが、その育ちを見ると自分はジョミーと似ていると思った。
 同じ様に14歳で覚醒。
 ミュウに助けられたタイプブルー。
 俺のサイオンはタイプブルーではなくてタイプイエローだけど攻撃能力は高い。
 サイオン能力に変化を持たせられるのはソルジャーだけ、俺はタイプブルーになりたかった。
 そして、キースの警護に正式に加わる事となったヴィーはペセトラからノアへ勤務地が変わった。
 ヴィーは自分を認めてくれたキースを尊敬していた。
 キースの護衛についている者から昔、警護にあたっていたジョミーの話を聞いた。
「ミュウを率いて戦ってきたと言うと、とても怖いようなイメージがあるが、本人はいたって普通の人間だった。だがミュウの能力は格段に高くて、警護にあたると言うより、それを未然に防いでしまって…。だから、彼が居る時は側にいる人数がすごく少なかった。
もしかしたら彼一人でよかったくらいに」
 だけど、そんなジョミーへの賛辞は自分へのあてつけに聞こえて面白くなかった。
 その後もトォニィはヴィーを調べるのをやめていなかった。
「俺はミュウじゃなく、人間でもないどっちにも付かない」
 そうヴィーが良く言うと聞きき、そう言って否定するくせにやたらとプライドが高い。
 実際はミュウとしての能力が高いから人より自分は上だと思っているだけのやつだ。とトォニィは分析した。
 トォニィはミュウの仲間としては「彼は除外」と切り捨てていた。
 だが、彼がキースに懐いている事が気になっていた。
 それと自分にではなくジョミーに対する微妙な感情がある気がすると思っていた。。
 幸せな家庭に育ち、恵まれた能力と地位を持つのが、ジョミーだと勝手に思い込み敵視しているのだと言った。
 トォニィはヴィーがジョミーと会ったら、問題になるかもと思っていた。

 その日はすぐにやってきた。
 キースの警護なのだから公式行事に出席するジョミーとは会う事はある筈だった。
「1回本気を見せればそんな甘っちろい事は言わなくなる」
 トォニィは脅して屈服させてしまえば良いと言った。
 ジョミーも彼と自分は似ていると思っていた。
 人間であり続けようと努力して、ミュウになろうと努力して、自分は何になりたかった?
 それで何になった?
「彼はまだこれからだから」
「ジョミー。僕に向かってくるなら相手するけど…僕はちょっと…」とトォニィが躊躇する。
「ソルジャー・トォニィ」
「やっぱり、僕の役目だというの?」
「前に軍部にも目を向けないといけないって言ったよね?彼がミュウとして扱われているなら、何かあった場合僕たちの事として人々は見るのだろう。だから…」
「仲間に入ってこようとしない者の責任までみるの?」
「そう。彼が来なくてもね」
「気にいらないな」とトォニィが言った。
 ジョミーはセルジュの口癖をトォニィが口にした事が面白く思った。


  続く