君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

☆ご案内☆

☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十六話(Messiah/現在)終

2011-11-09 02:07:35 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十六話(Messiah)現在  
  Shangri-La  -ノア上空でフィズを消した直後ー
 メサイアの避難民を乗せているシャングリラは、まだ続く連邦の戦闘に加わわれず、通常航行でメサイアへの岐路についた。
 メディカルルームでの治療を終えて動けるようになった僕は、まだ眠るソルジャーズの二人を見ていた。
 彼らから動けなくなるまで力を無理やり引っ張り出し使わせたのは僕だ。
 自分の能力を相手に与えるのが出来るという事は、相手の能力を引き出す事も出来る。
 眠る二人をドクターに任せて部屋を出た。
 僕も治療は終わったといっても無理をさせた身体には体力がまだ戻らなかった。
 部屋で安静にしているようにと言われていた。
 大戦後、シャングリラにはブルーの「青の間」のように、人が集まれるくらいの大きさの、僕の部屋とトォニィの部屋が作られた。
 僕はイグドラシルでのケガの治療が終わってすぐに船を降りてしまったので自分の部屋になじみがなかった。
 だから、部屋へ行こうとは思わなかった。
 だけれど「青の間」やフィシスの居る「天体の間」に行こうとも思わなかった。
 庭園や広間は避難してきたメサイアの仲間達でいっぱいだった。
 一人になれる場所を求めて僕は船内上部の展望室へ向かった。
 ゆっくりと星が流れてゆく。
 ガラスに手をつき外を見た。
 しばらく宇宙を眺めてから、身体の向きを変えガラスにもたれて船を見る。
 この船が僕の家だと思える。
 ここが僕を作り、僕を育てた。
 立っているのが辛くなり、ずるずるっと背中がガラスをすべり片足を投げ出し、床に座った。
「本当にこれで…良かったのだろうか…」
 メサイアに戻ったら今回の事を皆に説明して無理をさせてしまった事を謝らないといけない。
 僕はミュウの皆に、頭上にメギドがある状態で逃げなければならないというそんな恐怖を強いたんだ。
 そう、仲間を囮に使うなどと許される事ではない。
 だけど、確実にメギドが我々を狙ってくると言うのならば、どうするのが良かったのだろう…。
 いつ強襲されるかわからないのを、怯えながら待つ気は僕には無かった。
 メギドの事を聞いた時、最初は残っているタイプブルーでメギドを封じるのも考えた。
 だが、それでも今の彼らではメギドは防げないと思った。
 タイプブルーの能力は確かに戦闘特化だ。
 攻撃力・防御力・危険を察知する直感みたいなものに優れている。
 戦えば戦う程強くなる。
 戦った経験がそのまま能力に変わってゆく。
 そしてその攻撃の種類も当然増えてゆく。
 ソルジャーであるトォニィは別だが、他のナスカチルドレン達の今の力は大戦中の半分もなかった。
 それと、、妊娠中のツェーレンに無理はさせられない。
 それを言うと余計に彼女は無理をして来てしまうだろう。
 そうして、たとえ壊せていたとしても、あの二人との戦闘は無理だろう。
 敵がどういった戦い方を仕掛けてくるかわからない。
 犠牲が出てしまうかもしれなかった。
 そんな危険な目にあわせる訳にはいかない。
 だが、彼らにメギドを任せてしまえば、避難なんてしなくても済んだかもしれない。
 それで、もし、止めるのに失敗してしまった時、万が一にだが、メギドが撃たれた場合にと反射板も作った。
 でも、それではナスカと同じだ…。
 逃げるわずかな時間を稼ぐだけでしかない…。
 結局はメサイアは燃えてしまう。

 多分、彼らをもう一度戦士に鍛えなおして、戦わせるのが一番簡単だったかもしれない。
 それが、タイプブルーとして生まれてしまった者の運命ならば…。
 そんな運命。
 もういらない。
 たとえ彼らの運命がそうだったとしてもだ。
 ミュウがメサイアに行く事を決めて旅立った時に僕は誓ったんだ。
 そんな運命は変えてやると。
 もう二度と彼らを戦わせない。
 メサイアの避難時に彼らはタイプブルーとして立派に皆を助けたと聞いた。
 そう、それでいいんだ。
 彼らはもう戦わなくていい。
 もう、タイプブルーは生まれなくていい。
 残る問題は、ソルジャーズの二人…。
 彼らの能力は未知数だ。
 人類がミュウを作っているのではないか、という情報はカナリア事件で確実となった。
 敵に屈したミュウではなく…、あれは、僕らのクローンだと、僕にはわかった。
 そこに居る。
 ただそれだけで恐怖だった。そして、哀れでならなかった。
 僕が僕のクローンをミュウの発達した技術と知識だけで作ったあの時、細胞分裂に失敗したものを何体も捨ててきた…。中には人の形になったのに育たなかったものあった。
 二十体、いや、二十人以上の自分を殺してきた。
 彼らを作るには一体何人「死んで」いったのだろう。

 ノアにその研究所があるのならそこに行かなければならない。
 もうノアはに無いかもしれない。
 そしたらそこを探して、僕が葬らなければならない。
 それが、死んでいった彼らの為なんだ。
 気がつくと指の先が冷たくなっていた。
 気温が下がったのではなく、僕の周りの空気だけが冷えたのだった。
「寒いな」
 僕は自分の身体を両腕で抱えた。

「ジョミー・マーキス・シン。お前が存在するのがいけないのだ」
 自分の存在が彼らを作らせた。
 ブルーの身体を残してしまったから、僕が生きていたから…。
 事の発端は残ったメギドでもなく、マザー信奉者でもない。
 自分の存在だ。

 僕は格納庫に急いだ。
 そこには僕のシャトルがある。
「ノアに戻らなければ…」
 壁づたいに急ぐ僕の腕を誰かがつかんだ。
「どこに行くのですか?」
 振り返ると、そこには…ハーレイがいた。
「……ハーレイ…」
 体力の戻りきってない僕はそこに座り込んでしまった。
 一瞬ハーレイに見えたのはシドだった。
「だ、大丈夫ですか?無理をしないで部屋に戻ってください」
 座り込んだまま僕は答えた。
「君って、僕がこんな状態の時ばかりに現われるね…」
「こんな状態?ジョミー。立てませんか?そんなふらふらでどこに行こうとしてるのです?」
「格納庫の…僕のシャトルに…」
「…一緒に行きましょう」
 シドは僕を立たせた。
 格納庫に向かいながら船は大丈夫か?と聞くと「今は副操舵士が」とシドは答えた。


  シャングリラ 格納庫
 僕はシャトルに着くとカードキーを通し、通信を開きパスワードを打ち込み、連邦の情報部のデータを見た。
 そのまま操縦席に座り発進準備に入ろうとした。、
「ノアに行くのですか?」
「行かなきゃならない」
「ダメです。そんな状態で行かせられません」
「行かせてくれ…」
「何をしに行くのですか?まだ敵が居るのですよ。このシャトルでは逃げるのが精一杯、攻撃は出来ないでしょう?いくらジョミーでも無謀です…。訳を言ってください。でないとキャプテンとして許可は出せません」
 僕は、同じセリフを言われた事があった。
 昔、ドールを連れてハッチを壊してでも出て行くと叫んだ僕に「行かせられない」とハーレイが心配して言ったんだ。
 懐かしさで泣きそうになった。
 あの時は彼が折れた…。
 今度は僕が折れる番だった。
「わかった…諦めるよ。キャプテン・シド」
 シドの肩を借りてシャトルを降りた僕は、格納庫の壁にもたれてそこに居る人々を見ていた。
 格納庫は避難してきた船でいっぱいだった。
 皆は僕を見ると「ソルジャー・シン」と挨拶をしてゆく。
 今日は前のソルジャー服を着ているからだろう。
 それが嬉しくも気恥ずかしくもあった。
「こんな所でどうやってシャトル出すのかとヒヤヒヤしましたよ」とシドが笑った。
「シャトルごと外に跳んでから行けばいい」
「じゃあ、僕の許可なんか無視して行けたって事ですか?」
「さっき、少しだけジョミーの上に立てたかと思ったのに…」彼はガクンとうなだれてしまった。
「シド?」
「ジョミーは僕達より後からミュウになったのに、あっと言う間にソルジャーになって、段々普通に話せなくなって。ナスカでも地球でも、同じように辛い目にあったのに…話したい時には船降りてしまって、そんな君を…僕達はいつも…心配していた…」
 見るとシドの目にうっすらと涙が浮かんでいた。
 僕はそれを見ないようにした。
 彼はナスカで沢山の友人達を、戦争中は仲間達を、そして地球では尊敬するハーレイを失ってきている。
「知ってたよ。君たちは僕をソルジャーと呼ばなかった。ずっと、いつも。昔のようにジョミーと呼んでくれた。嬉しかった。でも、ナスカが僕達を切り離した…」
「……」
 シドは僕から見えないように向こうを向いてしまった。
「あの後、僕は君たちを避けていた。僕の事を誰から責められるより、君たちに責められるのが怖かったんだ」
「ジョミー、僕達は誰も責めたりしない。誰も責める事は出来ません」
「責めていいんだよ。それが僕に出来る唯一の償いだから」
「だから、責めないって言ってるじゃないですか。信じているからついて来たんです」
 こっちを向いたシドの目から一筋の涙がこぼれる。
 シドはあわてて涙をぬぐい、こう言った。
「でも、大戦後は、今度は僕達が避けていましたね。地球へ行ったのに、人類との対話も出来たのに。僕は傷つき疲れてしまったあなたにかける言葉が無かった…。それでも、共存の為に立とうとする姿が痛々しくてならなかった…。船を降りるという提案がすんなり通ってしまったのも、そんな空気からだったのでしょうね…」
「あれは、もう一度、人として暮らしてみたいっていう。僕のわがままだったんだよ」
 とジョミーは小さく笑った。
 ジョミーは嘘つきだ。
 シドの直感がそう言っていた。
 まだ「君たちから逃げたんだ」と言われた方が信じれたかもしれない。
「だから、僕達はいつも…心配して…」
 またシドの目から涙が零れた。
「シド。今度は僕の背中貸そうか?」
 僕はシドの方に背中を向けた。
「ジョミーの方が背が低いじゃないか…」
「君がちょっとかがめば隠れれないか?」
 シドはそんなジョミー背中を見て改めて気が付いた。
「ジョミー…」
 シドはジョミーの肩が思っていたより小さいと思った。
 タイプブルーとしての強大な力はこの身体のいったいどこに隠されているのだろう?
 そして僕達はこの小さな肩にどれ程の重荷を背負わせてきたのだろう。
「…シド?」
「ああ、いえ。ジョミー、身長が少し伸びてます?」
「うん。ゆっくりだけど、成長させてる」
「あ、では、背中を借りるのはまた今度にしますよ」
「君を隠せるほど伸びないよ」
 と笑った。
「そうですか?もう少し伸びれば…」
 とジョミーの肩に両手を置いて、背中にかがむ真似をするシド。
「僕はいつでも…」
「ん?何?」
「あ、だから、まだ隠れれそうにないので。この前のは、貸しにしておいて下さい。何かあったらいつでも言って下さいね」
 ジョミーの肩から手を離してシドが半分泣きながら笑って言った。
「じゃあ、背中空けておいて。僕も、いつでも貸すからね」
「わかりました」
「シド。言葉使い普通でいいよ」
「僕はこっちのが話しやすいんですよ」
「そうなの?」
 二人は笑った。
 カリナやユウイやキムやハロルド…皆とずっとこんな風に笑っていられたらよかったのに、と思う気持ちが二人の間を流れる。
 ふっと優しい感情が流れていった…
「カリナ…?」
 それはシドにも感じられたようだった。
 それが消えた方向を二人は見送った。

 しばらくしてから、シドが僕のシャトルを指をさし、
「ジョミー、あの優秀なシャトルにパイロットを一人雇いませんか?いつもステルス追尾だけじゃ不都合もあるでしょう?」
 と言ってきた。
「確かに融通の利かない時はあるけど、でもそれは…君の事か?シャングリラに君が居ないのは困るだろう?」
「今回は特別ですが、長距離航行用のシャングリラはメティスでもここでもほとんど飛んでないですよ。年に1回も飛ばない船のキャプテンなんて無職のようなものです」
「無職って…。そんな事はない。君程の優秀な人材を僕が連れていく訳にはいかない…」
「それに、あのシャトルに興味があるんです。人類の最新鋭にミュウの技術を乗せてるんですよね?」
「ああ。人類のを僕が上手く操縦出来なかったからね」
「人類の最新鋭…」
 と目を輝かせるシド。
「わかったよ。君の事をトォニィに話してみよう。でも、条件が一つ」
「何ですか?僕に出来る事なら何でもします」
「なるべく普通に話さないか?」
「ど、努力してみます」

 やがて、艦橋からメサイアが見えるようになったと放送が入った。

 人類の惑星ノアの問題。
 ミュウの惑星メサイアのこれから。
 クローンの二人の事。
 色々な問題が残っているけれど、きっと皆で乗り越えていける。
 そう、人は助け合える。
 思っているより人は強い。

 

    星の祈り 終



 
後書き ここでひと段落着きました。
 続くのは閑話に近いです。
 四章までの繋ぎです。





『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十五話(Noah/現在)

2011-11-07 16:38:47 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十五話(Noah)現在 

  エンディミオン艦橋
「キース。コロナフィズを使わせてしまうのはどうだろう?コロナフィズは何個も存在するものでは無かったでしょう?」
「こちらで確認されている物は一つだけだ。作るの自体偶然の産物に近い上に、もともとはある程度の密閉空間が必要な物で…こんな風に持ち出せるようにしているとは思わなかった」
「さっき一つ消した」
「フィズをか!?」
「ブルーが小型のを持っていたんだ」
「そんな物があるのか?」
「もしもの時に使うようにと…。俺が渡されたのだけだと思う…。基になった物はかなり貴重だと言ってた」
「…本体はあれの何倍の威力になるんだ?」
「何百倍?か何千倍か?わからない」
「そうなると、やっぱり一人じゃ無理だな…」
「…ジョミー。お前…まさか」
「彼らにフィズを使わせて、外に出させる。それを僕達で破壊する。ってどう?…出来る?」
 ジョミーはソルジャーズに聞いた。
「……」
 ジョミーはキースの顔色を覗う。
「絶対に星には落とさせない。それは絶対にない。たとえこちらに犠牲が出ても、それはさせない」

 やがて、三時間が過ぎた。
 彼等と話させて欲しいとジョミーが申し出た。
 ゼウスから交信を送る形で敵の艦隊に話すジョミー。
「こちらはミュウの前の長、ジョミーだ。知っていると思うが、お前達の惑星メサイアへの攻撃は失敗に終わった。出来ればこのまま艦隊を引き上げてくれないか?」
「ミュウの長よ。メサイアの攻撃が失敗しても我々とて簡単には引けない。それは、先の大戦を率いてきたお前にもわかる事だと思う」
 敵のリーダーから返事がきた。
「その思い…理解は出来る…。それでは、一つ問う。答えて欲しい。お前達はノアを制圧してから、ここに再びマザーのSD体制を復活させるつもりなのか?」
「いや、我々は、SD体制に戻すのではなく、新しいシステムを作り、人間が穏やかに暮らせる世界を作る」
「それは、前と同じように人間を管理し、監視する事じゃないのか?」
「その方が人間には良いのだと我々は思っている」
「結局は前のように、不具合を起こしたモノを排除してゆくと言うのだな?」
「そうだ」
 このままでは向こうを怒らすのではなくジョミーが怒ってしまうと思い、ブルーが口を挟もうとするが、それを眼で制するジョミー。
「人間は管理されなければならない」
「そんな体制。もしここでお前たちが勝っても。この僕が何度でも壊してやる」
 それをきっかけにするかのように、いつ間にかゼウスの前に大きなジョミーの思念波が現れていた。
 敵の艦隊を包んで余りあるほどの大きなジョミーの思念があった。
 会話でつないで思念波を張る時間を稼いだのだった。
 そのままさっきまで話していた敵のマザー信奉者のリーダーの意識に入り込むジョミーの思念。
「何故、僕達のクローンを作った?」
「お前を、お前達を殺す為に」
「何故殺そうとする?僕達はもう人類の敵ではない」
「その力がある以上敵だ!同じではない!」
「今、沢山の人間が解り合おうとしているのにどうしてこんな事をする」
「…権力が欲しい。お前のような力が欲しい」
「まさか、最初はクローンじゃなくて人間に因子を移植してたのか?あれはこの為だったのか?」
「力が欲しい…」
「お前達の所為で、何人不幸になったと思ってるんだ」
「…人間には無いもの…欲しい」
「ミュウだって完璧じゃない。助け合わないとやっていけない」
「…その力が欲しい…」
 人は、どこまで貪欲なんだ。
 僕らをあれだけ蔑んでいたのに、今度は、力が欲しいだというのか?
 戦後の混乱の中、ノア空域と辺境では行方不明者が多く出た時期があった。
 あれは、実験材料にしていると噂が流れていた。
 人への植え付けが出来ないなら、同じもの(クローン)を作ったのか?
「ジョミー・マーキス・シン。お前が存在するからいけないのだ…。私はお前を…作ったぞ、どうだ、良く出来ていただろう?あの子は…」
 思念体のジョミーからサイオンが出る。
「確かにお前たちは優秀だな…お前は有名な学者だったと聞いた。道を間違えたその罪。命を弄んだ罪。償ってもらう」
 青いサイオンはジョミーを包み彼を実体化させた。
 青いオーラを纏ったジョミーは、どこまでも冷たく彼を見下ろしていた。
 リーダーは最初は驚き近づこうとしたが、それが出来ないと気づく、
「人が触れてはいけないモノだったか…」恐慌状態になった彼はフィズの排出のスイッチを押した。
 射出されるフィズ。
「キース!」
 隙を付く形で身を隠していた連邦のミュウの部隊が敵の戦艦に乗り込んでいった。

「跳べ」
 ジョミーの合図でソルジャーズの二人が宇宙へ飛ぶ。
 段々大きくなりながら落ちてゆくフィズを受け止める二人。
 そこにジョミーが加わり青く大きな三角形が出来た。
 その真ん中は真っ暗な球体が生き物のように不気味うごめいていた。
 下へ下へと落ちてゆく三人。
「落ちるぅ」
 とソルジャーズのジョミーが叫ぶ。
「惑星の引力下はまだだ。落ちると思うから落下するんだ」
 とブルーが叫ぶ。
 それでも落下は続く。
 フィズの力にどうしても押されてしまう。
「僕を下にしろ!」
 ジョミーが言った。
 三角形が動いて向きを変える。
「落とすな。引っ張り上げろ。出来るだろう。タイプブルーならば!」
 怒鳴るジョミー。
「くっそぉーー」
 ソルジャーズのブルーが唸った。

 やがて、落下速度が少しずつ落ちてゆき、落下が止まった。
「押し上げるからこれ以上フィズが大きくならないように抑えて」
「それ、僕達にやらせて」と声がした。
「僕だってタイプブルーなんだから」
 トォニィだった。
 ジョミー達の後、青い三角と惑星ノアの間にステルスデバイスを解除してシャングリラが現れた。
 その船首にトォニィが立っていた。
「シャングリラの仲間の力も使って。宇宙(そら)へ押し上げるから収束する力を温存していて、ジョミー」
 トォニィと仲間達はフィズを抑えながら、ジョミー達の三角形を惑星ノアから遠ざけた。
「トォニィ、ミュウのみんな、来てくれてありがとう。もうシャングリラは離れて。コレを消してくる」
 シャングリラはジョミー達から離れた。
 遠くに見える青い三角形。
「ジョミー…」
 シャングリラの艦橋でそこに加われないトォニィが悔しそうにモニターを見ていた。
 彼はゼウスへ交信をしてフィズの収束を手伝う事を望んだがジョミーに頑として反対されたのだ。
「今は君がミュウの長なんだ。君に何かあったら、また仲間達は危機に晒される。君はもう君一人の身体ではなくなったんだ。それに、今回の事とフィズに関しては僕の責任だ。僕に任せて」
 
 ジョミーはシャングリラが離れたことを確認すると「いくよ」と二人に声をかけて、一気に収束をかけた。
 すざまじい反発がきた。
「…こん…なに…」
 ブルーはさっきの小型を完全収束させてしまったジョミーの力に驚いていた。
(他の事を考えてる場合じゃないよ)とジョミーがブルーに声をかけた。
「集中して!」
 その声にグンと三人は威力を上げた。
「このぉ!」
「いけぇー!」
 それを見て、なお一層ジョミーの輝きが強くなる。
 反発してくる力にあちこちすり傷が出来る二人。
 ざぁ…という音と共にまたジョミーの力があがる。
 それと一緒に三角形が大きな青い円になる。
「いくよ」
 ジョミーの声を合図に
「消えてしまえーーー!」
 と三人のソルジャーが叫んだ。
 やがてフィズはその活動を止め、小さく小さくなってゆき収束されて消えた。
 ガクンと倒れかけるソルジャーズの二人。
 二人の身体を自分の許に飛ばし両手でジョミーが支えていた。
「よく頑張ったね」
 その背後にシャングリラが近づいて来た。

「僕らの母船だ。疲れただろう…。一緒においで。皆、びっくりするよ」
 とジョミーは微笑んだ。



  続く




『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十四話(Messiah/現在)

2011-11-05 02:40:15 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十四話(Messiah)現在 
  メギド内部
 エンディミオンの艦橋に着いたジョミーは交戦中のセルジュに「メギド停止・制圧」と通信を送った。
「…ふうっ…良かった」
 ジョミーは身体が軋む音を聞きながら、呟いた。
 止めようと思えば、彼らの時間も止められた。だげど、メギドの時間を止めて、僕は彼と戦いたかった…。
 彼と会うのが怖かったなんて…。
 今思うと、こうして実際会ってしまうと、怖さなんて消し飛んでしまうなんて…思いもしなかったな…。
 僕も十分…好戦的じゃないか…。
 とても、とても。
 例え、彼がクローンでも、そこに居てくれるのが嬉しかった。そして、怖かった…。

 メギドのカウントは残り6で解除した。
「ジョミー。無事で良かった」
 交戦中にも関わらず、セルジュから返事がきた。
「セルジュ…、今の状態(戦況)と戦艦ゼウスの位置を詳しく教えて欲しい」
「何をするつもりなんです?」
 と言いつつもセルジュは座標と戦況を送ってきた。
「あまり良い感じではないようですね」
「敵がコロナフィズを持っていて膠着状態になっているんです」
「やはり、そうか」
「ジョミー、それよりタイプブルーはどうしたんです?」
「それは、また後で…。今からそちら(ネメシス)に行きます。前を空けてくれますか?」
「え?」
「急ぎお願いします」
「了解しました」
 ジョミーは戦艦ネメシスの前に現れた。
 残る敵艦は残り四隻。
(思念波でいける…)
 四隻全部に思念波を送り敵の人員のすべてを催眠状態に落とし船を停止させた。
「セルジュ、これで捕らえられます」
「……」
 セルジュはネメシスの環境に宇宙(そら)から手を振るジョミーを見て、あっけにとられた。
「僕はこれからノア空域に行くので。星を、メサイアをお願いします」
「わ、わかりました」
 ジョミーはゆっくりと青い軌跡を残してメギドに戻って行った。
 彼が戻ったエンディミオンは一旦メギドを離れた。そして、メギドがワープ準備にはいり静かに消えてゆく。
 それを見ながらセルジュは戦艦ゼウスに通信を送った。
 報告を終えた後に通信を個人回線に変えた。
「ジョミーがどうも怒っているみたいなんですが…」
「…それは、当然だろうな。一方的に自分達の星を壊されそうになって、怒らない訳がない」
「でも、囮になるのに協力してくれたのではないですか?」
「理解はしてても…。囮役は終わったから敵の顔を見たくなったんじゃないか?」
「…見るだけじゃ、済まないのでは?」
「一人でマザーに会うなんて圧倒的に不利な事をしてきたヤツが、ここで言う事を聞くとは思えないだろう?」
 まるで、こうなる事は計算済みのようなキースだった。

 その少し前 メギドのワープ中
 エンディミオンがメギドの後を追うようにワープに入った。
「戦艦を動かせる?でもまだ動力ないんじゃ?」とブルーが聞いてきた。
「さっきセルジュが座標と一緒に誘導システムと補助システムを送ってくれたからね。近距離を一度飛ばすくらいは出来るよ。それより、出るまで時間があるから、君達の事を教えて欲しいんだけど」
「僕達から得られる情報なんて無いよ」
 と二人は答えた。
「君たちはこれは動かせないんだよね?」
「僕たちは小型艇も操縦出来ない…でも飛べる」
「ん、まぁ、それは多分出来ると思ったよ。それで、計画はどうなっていたんだ?」
「俺達がここでミュウと戦って軍を引き付けてる間にノアを制圧してしまおうって計画だったんだ」
「それで?」
「まさか、主力はノアに行ってて、ミュウは一人だったなんて、しかもこんなに早く僕達がやられるとは思ってなかった…」
「早くって、メギドはあんなにも早く起動してたじゃないか?」
「僕達でミュウを抑えている間にって…話だったけど…」
「それは、ミュウ諸共、僕もお前達もって死んでもらおうって事じゃないのかな…」
「僕達も?」
 と十四歳のジョミーが声を上げた。
「メギドの出現位置がメサイアに近すぎるんだ。あれではメサイアに業火が直撃した場合、星の爆発から逃げる時間がない。しかも、お前達二人では船を飛ばせられないなら…仲間の船はメギドのずっと後ろに出てただろう?メギドが放たれたのを見たら即座に逃げてたんじゃないかな?」
「迎えが来る筈だった…」
「…そうか…わかった」
「俺達が捨て駒なのは知っている…」
 はき捨てるようにブルーが言った。
「いざとなったらメギドごとワープでも何でもしてやるつもりだった」
「座標計算も出来ないのに…?無茶なことを…。でも、ブルーならそれくらいやってのけるかもね」
 ジョミーは苦笑いをした。
「……」
 その言葉にジョミーを睨み返すブルー。
 そんな彼をジョミーは目の端で見ただけで無視した。
「さあ、そろそろ出るよ。今から僕も無茶をする気なんだけど、出来ればそれを君達に手伝って欲しい。それで、殺さなかった借りは無しって事でいいかな?手伝ってくれるよね?」
 と二人を見てジョミーはにっこりと笑った。
 この有無を言わさぬこの笑顔が一番怖いんじゃないかと思う二人だった。
「ああ、そうだ。君たちの呼び名だけど今まで何って呼ばれていたの?」
「……」
 ややあってぼそりと「2829と1563」とブルーが答えた。
「僕たちはブルー、ジョミーって言い合ってたけど…」と十四歳のジョミーが言った。
「…そっか…。新しい名前をつけるまでは、ソルジャーズのブルーとジョミーでいいね」
 とジョミーは、彼らを見ながら諭すように言った。
 ノア空域に着いたメギドとジョミーそして14歳のブルーとジョミー。
 メギドとのドッキングをするエンディミオン

 戦艦ゼウス
 メギド出現の報が入った。
「さて、どう切り出すか。ジョミー」

 ノア首都上空で睨み合いをしている敵と人類の主力艦隊。
 敵の主要艦隊三十隻あまりと、近隣の星や衛星に居るのが同じく三十隻あまり。
 こちらは国家連邦政府の艦隊百隻以上。
 真ん中の旗艦ゼウス、その後ろに十字架のメギドが出現した。
 見るからに戦力的にはこちらが有利だが…。
「戦況は膠着状態のまま?」
 キースに通信を送るジョミー。
「今はノアへの道を開けろ。と言われているこちらは協議中だと返答している」
「要求を飲まないとフィズを使うって?」
「あぁ、ノアに落とすと言っている。それをされたらどれほどの被害が出るのか計算出来ない。コロナフィズはやっかいない兵器だから手の出しようがなくてな」
 とキースは苦渋の色を隠さなかった。
 その会話を聞いていたブルーが言った。
「メギドで撃ってしまえば?」
「コレを持って来たのは、僕達が生きていると見せる為だ。ミュウがコレを使う訳にはいかない」
 メギドは本来の目的通りでいうなら惑星改造用だから連射も出来ないし防御機能もない。艦隊に向けて撃ってもせいぜい何隻かが落とせるくらいであまり効果はない。
 だが長年破壊兵器と言われた名は脅しにはなる。
 ブルーの言う「一度脅してみる」という手も使えなくはないが…。
 ミュウという立場的には、実際には使えない。
 脅しが脅しだと見被られてしまったらもう意味はないのだ。
「回答する期限は残り三時間か…」
 眼下のノアでは避難が始まっているようだが何千万の人口の首都だ。
 そう簡単にはいかないだろう…。
 時間をかけて用意してきたメサイアでも十五時間かかったのだから…。
 ノアの状況(いま)を考えると胸が痛んだ。
 三時間ではとても無理だとジョミーは思った。



  続く





『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十三話(Messiah/現在)

2011-11-03 02:54:47 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十三話(Messiah)現在  ※この章は流血もBLもあります。ご注意を!
 メギド内部で対峙するジョミーとブルー。
 二人が同時に床を蹴った。
 ブルーの青い光が空を斬る。
 細いカマイタチのような光が何個も襲い来る。
 ジョミーは剣を振るいはじき返す、間髪を入れずに細い雹のような光が襲う。
 それを避け、跳びながら下がる。
 その着地地点を目がけて光が飛ぶ、大きく跳んで背後の壁を蹴る。
 ブルーに向かって飛びながら自分の回りに何本もの剣を作った。
 大きく手を広げて、右や左に剣を上げて振り下ろした。
 ブルーはそれを読んでいるかのように避ける。
 右、左、右、左…。
 ジョミーは彼の前に剣を振り続ける自分の残像を残し上に回り込んだ。
 そして、真上からの剣戟。
 斬れたかと思ったが、それはブルーの残像だった。
 すぐ後ろにブルーが現れた。
 ジョミーは薄く笑うと、そのまま近接攻撃へと切り替えた。
 走りこみ間合いに入ると斬りつける。
 何度も何度も打ち込む、防戦一方になったブルーがじわじわと後退した。
「…くっ…」
 やがて壁際まで追い詰めると、ジョミーは瞬時に無数の剣を作り出し宙に上げ飛ばした。
 ザッという音と共に弧を描き剣はブルーに迫る。
「…つっ…」
 彼はシールドを全方向に広げた。
 シールドの輪が出来る。カンッ!と金属音が響く。
 剣はシールドにあたって消失するかに思えたが、シールドに刺さり不気味に揺れていた。
「!」
 怪訝な顔をしていたブルーが気付いた瞬間に、剣は次々に爆発した。
 硝煙があがり回りが見えなくなった。
 だがブルーにはジョミーの青い光が見えていた。
 そこに向かって大きく輝く光を撃ち込んむ。
 二発目をほぼ同時に作り今度はその光と一緒に走る。
 一発目を防いでいるジョミーに自分の体重を乗せた光をぶつけた。
 あたりが光に包まれた。
「やったか?」とブルーは思った。
 光が少し薄れる、
「残念…」
 ジョミーの声がした。
「もう少しだったのにね。左手が痺れちゃったよ」
 真後ろで輝く光の玉を作っているジョミーがいた。
「このまま逝くかい?」
「くっそ…」
 悔しそうに見返るブルー。
「お前も逝くか?」
 その手に何かがあらわれる。

 彼の手にはコロナフィズと呼ばれる兵器があった。
 それは最近偶然発見され危険過ぎるとその存在すら発表されてない代物だった。
「コロナフィズ…」
 小型なので規模は小さいだろうが、ここで爆発すればメギドも誘爆しかねない。
 そうなったら外の艦隊に影響が出るだろう。
 パチン!とケースにヒビが入る。小さな丸いケースに入っていたモノは、あっという間に大きくなった。
 フィズを中心に暗闇が広がる。
 すべてを飲み込むブラックホールを作る物質が、コロナフィズだ。
「このバカ!」
 フィズを包みジョミーの青い光が輝く。
 フィズに合わせて出力を上げる。
 ジョミーの力がメギドを中心に外まで拡がってゆく。
 メサイアの空に青い光が輝いた。
 そして、ある程度の大きさまで広がると青い光はやがて集まってゆく。
 ジョミーはフィズを押さえ込んだ。両腕に収まる程度まで小さくなったフィズは、不気味に蠢きながらやがて消えた。
 メギドの動力室で、床にしゃがんで肩で息をしながらジョミーは、少し遠くに倒れているブルーを見た。
 彼の左頬が赤くなっている。
「…殴ってごめんね」
 ジョミーが言った。
 さっき僕はフィズを取り上げる時に殴ってしまったのだ。
 ミュウは力で戦うのでこういう直接的な暴力には精神的なダメージが大きい。
 昔、僕がキムと殴り合いをした時にさんざん恐ろしいヤツだと言われた記憶が蘇る。
 ミュウの力も暴力じゃないのか?と思ったっけ…。
「平気だ」
 頬を押さえながらブルーが答えた。
「お前こそバカだ。早くエンディミオンに行ってメギドを止めろよ。それが目的なんだろう」
 ジョミーは立ち上がり艦橋へのドアを見た。
「もうカウントは…とっくに終わってるんじゃないかな?」
「?…じゃあ、なぜ発動しない?」
「ここ動力炉だよね?」
「ああ、そうだが……」
 とブルーは辺りを見回した。
「お前、まさか…」
 動力炉なのに静か過ぎる。
 さっきまでうるさかったのに…。
「ここの時間を止めたのか?メギドの時間を…」
「そう。間に合いそうになかったからね。ここまで近くならやれる」
 ジョミーは笑った。
「それで、お前は。時間を止めたまま戦い。さっきのフィズも消したのか?…あれは、フィズはどこへやった?」
「さぁ?ブラックホールを作るものだから。その向こうへ送っただけだよ。今頃はどこまでも収束してんじゃないかな?」
「呆れたやつだな…早くエンディミオンに行けよ」
「動ける?彼を…ジョミーを連れてブリッジまで来てくれないか」
「…自分で来させればいいだろう?」
「彼に刺さってる剣は君でないと抜けない。君が解除コードなんだ。じゃ、行くね。そろそろ時間が限界だ」
 そう言うとジョミーはエンディミオンに跳んだ。
 床に寝転んでいたブルーがゆっくりと体を起こした。
「俺が解除コード?じゃあ、最初っから殺す気は無いって事じゃないか…。なにが「殺さない」取引だ。フィズ消してしまうの事といい、あいつはデータと実力が桁違いだ…。この計画は最初から、ジョミーの足止めをする事から無謀だったんだな…まぁ、俺達を捨石として使うようなあいつらがどうなろうと関係はないが…」
 身体のあちこちが痛む。
 爆発しなかったジョミーの青い剣はシールドを破って進入してきてその全てが刺さったと思った瞬間消失した。
 その痛みだけ残して。
 ブルーにとって希望と絶望とが交互にやってくるような戦いだった。
「嫌味な攻撃しやがって」
 と愚痴り、十四歳のジョミーの元に跳んだ。


 
  続く