君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

☆ご案内☆

☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 四章「心のままに」一話「君への想い」 (過去編・読切)

2011-11-18 23:00:26 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<用語>
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
太陽系木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人がいた建物の名前
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
☆あらすじ☆
一章「黄昏の海」
地球へ辿り着いたミュウ。人類との会見後グランドマザーの許に降りたジョミーとキースは、マザーの策略で殺されそうになる。ジョミーの最後の力でイグドラシルから地上に戻った二人。
大戦から二年。ミュウは新たな移住惑星に移り住む事となった。その旅立ちを見送ったジョミーはキースと共に「月」へと向かった。そこにはソルジャー・ブルーの身体が保管されていた。
その事実をジョミーは何故かミュウ達に明かせずにいた。
二章「湖底の城」
木星でキースの警護をして暮らすジョミーに「カナリア」の少年が会いに来た。彼らには渡航出来るIDは無い。事の不審さにジョミーとキースはある計画を練った。だがそれは思いも寄らない展開へと進んだ。事件解決後、ジョミーはメティスを出てスメールへ渡った。
三章「星の祈り」
ミュウの移住先、惑星メサイアへと向かうジョミーとフィシス。この空域にジョミーは辛い思い出があった。木星のメティスを出て二年振りに会ったキースにジョミーが告げた言葉とは…。キースは再び権力の道へと登り始じめる。やがて、姿を現す敵とメギド。

※四章・「心のままに」は最終章に向かって、心残りの無いようにと、あれこれと詰め込んでいます。
※今回も流血もBLもあります。
※後半に暴力シーンがあります。嫌いな方はその回を飛ばして下さい。パスしても繋がります。
※読みやすいように最初のブログUP時とは順番を変えています。時間は飛びますが、時代は順に追っていけるようにしました。

※「君への想い」はジョミーの人類女性との恋愛話です。飛ばしても問題は有りません。


   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」一話

    Epilogue Bridge 過去編「君への想い」 (一話読切)

  SD599年(ナスカ崩壊後)

 ナスカを焼かれ、仲間を失い、ブルーを失った。
 嘆きの中、僕達は始まりの星アルテメシアへ向かった。
 アルテメシア。
 それは僕が育った星。
 青く美しい地球を似せて作られた星。
 僕らは再びこの地に戻って来た。
 ミュウはここを力で制圧した。

 僕を育ててくれた両親が、今はスウェナの娘のレティシアを育ててると聞いて僕はスウェナと見に行く事になった。
 僕はここの人々を懐かしく思った。
 でも、やはり、人間達の感情が作り物のように見えてしまっていた。
 それは何故なんだろう。
 人が信じられないというような単純なものではなく…、僕の中で何かが変わってしまったような孤独を感じていた。
 もう戻れないという現実がそこにはあった。
 懐かしい景色に入り込めない疎外感。
 その溝を埋める事はもうきっと出来ないと思っていた。
 そして、失った物が大き過ぎて、僕はもう人を愛せないと思っていた。

 僕はこの星の人々の生活を見てみたいと思った。
 僕が髪や目の色を変え人類の中に紛れ込むようになったのはここへ帰って来てからだ。
 そして、僕はこの町でカリナに良く似た女性に出会った。
 彼女は小さなケーキ屋を営んでいた。
 町外れの公園前にある小さな店。
 僕はそこに通うようになった。
 僕達がいつまでここに居るのかわからないので行ける時は毎日でも行くようにしていた。
 通いだして三日ほど経った。
「食べるのにも限度がある…」
 ケーキは嫌いじゃないけど、そうも毎日食べ続けたいものでもなくて、かといって皆に行先を知らせずに出てきているのに買って帰る訳にもいかなかった。
 だから、僕はぼーっと店を見ながら「せめてパン屋だったら、よかったのに…」と呟いた。
「ならクッキーにすれば?甘くないのもあるわよ」
 僕が座っていたベンチの後ろで声がした。
 それは彼女だった。
 声もカリナに似ている気がする。
「お店に来て、雨が降りそう」
 店に向かいながら僕を呼ぶ。
 彼女の後を追って走っていると雨が降ってきた。
「店から見えたから呼びに行ったのだけど、間に合わなかったわね…」
 と彼女は微笑んだ。
 そして、彼女は暖かいココアをいれてくれた。
「甘さ控えめよ」
 彼女の名前はリザという名前だった。
 僕は「サム」と名乗った。
 本格的に降ってきた雨のせいか客が来ない店で僕たちはいろいろな話をした。
 リザは僕に簡単なクッキーの焼き方を教えてくれた。
 優しい時間が静かに流れていった。
「この店はね。本当は彼と二人でやるはずだったのよ」
 彼は辺境オリオンへ物資の輸送にいったきりだという。
 オリオンは僕らが通ってきた道だった。
 僕らが彼の事に関係しているとは思いたくはないが、何かあったのは確かだろう。
 僕はこれ以上彼女の所に来ないほうが良いと思った。
 身を引くなんて言えるものじゃない、僕が傷つきたくないだけだとわかっていた。
 ナスカで僕の腕の中で死んでいったカリナ。
 そのカリナに似た人に僕は何を求めているのだろう。
「せめて、リザが幸せならば…。それでいい」
 だけど、情けないけど、もう行くまいと思ったのに…僕は二日もするとまた来てしまっていた…。

 その日、店からアタラクシアの兵士が出て来た。
 僕は公園の植え込みに身を隠した。
 彼らは乱暴に彼女を車に乗せるとどこかへ走り去った。
 僕の意識はそこまま車を追った。
 軍事施設へ運ばれたようだった。
 すぐさまそこに跳び彼女を探した。
 僕は施設の外から中をサーチする。
 一緒に暮らす筈だった彼に反逆罪の疑いがあり、ここに戻ってくる可能性があるので彼女の見の安全の為の保護との事だった。
 だが、それは口実で、彼の居場所を聞き出す為の拘束だった。
 僕達ミュウがかけられるような精神解析用の機械に座らされる彼女。
 彼女の悲鳴が僕の頭の中で響いた。
 僕は施設の発電所を破壊し、送電を切ると基地内に潜入し、ぐったりしている彼女を助け出した。
 助けたが、店にも彼女の家にもシャングリラにも戻れない。
 僕は昔僕が住んでいた家に向かった。
 その家は今は誰も居ない事は確認済みだった。

 やがて彼女が目を覚ました。
 明かりをつけることが出来ないので、震える彼女に僕の着ていた上着を羽織らせ抱き寄せた。
「なぜ、あなたが?どうして…何が起きたの…」
「怖い目にあったね。でももう大丈夫だから…」
「で、でも、私、軍に…何故あんな目に」
「これは、きっと…何かの間違い。間違いでこんな事になったんだよ」
「うん…」
 と小さくうなずくリザ。
 彼女は今の状況が飲み込めていないようだった。
「大丈夫だから、すぐにちゃんとわかって、君も元通りになれる」
 それはどうなんだろう?
 彼の事だけなく、僕も絡むとなると、彼女の記憶は操作される事になるだろう。
 それは元通りと言えるのか?
 今、ここは僕たちが制圧している筈なのに、軍部がまだ独自で動いていた。
 自警団とかの名目で、混乱に乗じて「正義」を振りかざすだけ…。
 僕らはそれとどこが違うのだろうか…。
 
「ねぇ、サム。反逆罪ってどういう罪?」
 僕はリザの声にハッとなった。
「…それは…」
「捕まったらどうなるの?」
「それは、彼の事を聞きたいの?」
「うん」
「それは、きっと。それも間違いだよ。まだこの世界でマザーに逆らうヤツはいない」
「でも、捕まったらどうなるの?」
「捕まれば、その無実が証明できるチャンスになると思うよ…」
 と僕は答えた。
 本当に反逆したとなれば、即処刑だろう。
 マザーに逆らう事、それは大罪だ。
「でも、ミュウはマザーは間違っていると言ってるわ」
 とリザが言う。
 彼女の肩を抱いていた僕の体に緊張が走った。
「リザ。良く聞いて。それは、こういう事なんだ。人は自分で生きていける力があるのにマザーはそれを奪っている。それを変えようとミュウは言ってるんだ。だけど、この先はきっと、言うだけじゃ済まない。大きな戦争になるだろう」
「サム…」
「あ、でも、ここはきっと大丈夫だよ。僕は、君と彼が幸せになる姿を見たかったな」
「あなたが?私と彼の?」
「そう。君の幸せを願うよ」
 僕はリザを見て言った。
 彼女はそれを聞いて急に顔を手で覆って泣き出した。
「ど、どうしたの?」
「ごめんなさい」
「何に謝っているんだ?」
「私、私は彼が店の資金調達の為にオリオンに行ったと言ったけど、それは嘘なの。彼は私を置いてここを出て行ったの…」
「…そうだったのか…」
「ごめんなさい」
「でもそれじゃ君は。彼の居所は知らないんだよね」
「ええ、知らないわ」
「じゃあ、君は居所は知らないって言わないで、あの機械にかけられたって事?」
「…でも…たとえ居場所を言っても同じだったと思うの。私の所へ戻ってくるって疑われているのとか、私が知っていると思われているのが、嬉しい気がしたの。私みたいのでも彼を追う足止めになれるのならって…。バカよね…」
「彼を庇おうと思ったのか…一歩間違えば君は精神崩壊をしてしまう危険な事なのに…」
「怖かった。すごく怖かったわ。だけど、私が出来るのはもう…これくらいしか…無いから」
「リザ…」
「でも、あなたはどうして私を助けに来てくれたの?ここの兵士に捕まったらあなたも無事ではないのに」
 僕は彼女の肩から手を離し、自分の膝を抱えた。
「僕はどうしても君を助けたかったんだ。助けずにはいられなかった。僕は、君にある人を重ねているんだ。だから、君が危ない目にあっているのを見ていられなかった。だから…君に幸せになって欲しいんだ」
 と目を伏せた。
「その人が好きだったのね」
「うん。とても優しくて、暖かくて、好きだった」
「彼女だったの?」
「ううん。カリナは、彼女は他の人を好きになって、幸せになったんだ。嬉しかった。僕はその姿をずっと見ていたかった」
「…どうしたの?」
「亡くなった。僕の腕の中で…僕は助けられなかったんだ…」
 と自分の手を見る。
 まだあの時の感覚が残っているようだ。
 何も、何一つ、出来なかった空しさが蘇る。
「…僕は…何も出来なかったんだ…」
 そう言うと涙がこみ上げてきた。
 それを手のひらでぬぐい顔を上げる。
 僕の頬にリザの暖かい手が触れた。
「何も出来ない事はないわ。あなたは私を救ってくれた」
 そう言ってリザは僕の頬にキスをした。
 僕はリザを抱きしめていた。
 僕からお返しのキスをする。
 それを彼女は受け入れてくれた。

 僕らはお互いが世界で一人ぼっちなんだとそう思い。
 そう感じて。
 その寂しさを埋めるように抱き合った。
 何度も求め合い。
 満たされない思いをお互いの体で埋めあった。


「ソルジャー・シン。人類の町はどうでした?」
 僕はアタラクシアに戻ってからしばらくスウェナと行動をすると言っていた。
「懐かしかったよ」
 と答える。
 艦橋に向かいリオを呼んだ。
 人払いをした部屋にリオが入ってくる。
 僕はリザの事を彼に話し、リザの彼の消息を調べた。
 彼は疑われているだけのようだった。
 これならすぐにでも見つけ出せるだろう。
 僕はリザを救い出す時に基地のコンピュターにアクセスして彼女の記録をすべて抹消し、兵士の記憶も消してきていた。
 これは、そうする事は、マザーと同じ事を僕はしていると思いつつ、実行した。
「リザは眠らせてきた」
(はい)
「一緒に行って、彼女の記憶を…彼女の中の僕の記憶を全て消してくれないか」
(ジョミー、消してしまっていいのですか?)
「彼女には幸せになって欲しいんだ」
(それは、辛くないですか?それは二人とも辛いですよ)
 リオに僕は彼女を好きになったとかを一切言っていないが、彼にはわかっているようだった。
 僕らは、彼女の記憶を消しに戻った。
 僕は眠っている彼女に最後のキスをした。
「出来る事なら奪ってしまいたいよ。出来るのなら…。でも、僕はミュウだから…。彼を君の元に帰るようにしてあげる。そして最後まで名乗れなくて…ごめん」
 そう、いくら僕が元は人間だったと言ってもシャングリラに人間を乗せる訳にはいかない。
 いつ果てるともわからない戦いの道に進みゆくのならば、なおさらだった。

「ありがとう。僕はまた前に進める」

「リオ。施設のコンピューターに入った時に一つわかった事がある。ここのテラズナンバーを破壊する。きっと道は開ける」
 僕らはもう振り向かずに歩き出した。

 ここから、僕らの本当の戦いが始まった。




    君への想い 終



『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」二十話・閑話

2011-11-12 02:11:01 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  二十話 現在 
 後日談  
 子供だったのが無理やりに大人になったような…とは、当たっているのかもしれない。
 誰にでも子供時代はある。
 けれど、今の大人達に子供時代の記憶はない。
 子供時代が無いような人間達を相手していれば、僕はかなり不安定なモノに見えると思う。
 SD体制は記憶を消し、都合のいいようにして何百年もやってきた。
 それを人間は不満を持たずに受け入れてきた。
 それを壊したのが僕ら。
 人の記憶は大切だが問題はある。
 それがあると動けないようになってしまう場合もある。
 だけど、たとえどんな事がその人に起きたとしても、人にはそれを乗り越えられる力があると僕は信じている。  思っているより人は強い。

 記憶を見せる以外に出来る事は多い。
 その人の記憶から映像を取り出し見せる事も出来る。
 それが人物であるならある程度の情報があればその人を思考の中で映像を再現し、会話をさせることもできる。

 キースに今、会いたい人は?と聞いたら、
「ジョナ・マツカ」
 と答えたので、僕は情報を集めキース自身からの記憶も聞いて彼を再現してみる事にした。
 トォニィが殺した彼を再現させるのは僕にも辛いものだったが、キースの方も、心理的な波形があまりに微妙だったので、僕自身は再現させるだけで見ないようにして、彼に会わせた。
 マツカとキースがどんな会話をしていたかは僕は知らない。
 何が聞きたくて会ったのか。
 何が言いたくてそうしたのか、僕にはわからなかった。
 興味があると言えば、ある。
 自分がやった事なので、自分をたどれば見えると思うが、それをする気はなかった。

 何日かしてからキースが聞いてきた。
「お前が今、会いたい人は誰だ?」
「ブルーと答えると思っているよね?」と聞いてみると、
「ああ。そうだろう?」と返ってきた。
「別にいないよ」
「いないのか?」不思議そうに言うキースが言った。
「んー、今、会いたい人には、会ってるから。他はいないんだ」 
 にっこりと笑いながらジョミーが答えた。
 一瞬驚くキース。
 僕はその顔が見れたから蟠っていたものが流されていく気がした。
「言うようになったな…」
「自覚したからね」
「何をだ」
「それ、言わせるんだ…」
「お前が言うのを聞きたい」
 我がままだねと思いつつ。
「君を愛している。僕には君が必要だと自覚したんだ」

「今すぐ会いたくなった」
 キースは笑った。
「来れば?僕が行ったみたいに」
 と笑うジョミー。
「今度いつ会えるか?なんて思う日が来るとは思ってもみなかった」
「僕も」
 これが交信でなければ僕はキースに抱きついていたのでは?と思う程だ。
 自分でも感情が浮ついているのがわかる。
 こんな日が来るとは思っていなかった。

 消えたモニターの前に、ゆっくりと彼の幻影が現れる。
 僕に手を延ばして、僕の襟を掴んで引き寄せる。
 唇が触れる程に近づく…。
「お前は、もう離れていたくないと思う事は無いのか?」
 ごめん。
 キース…。
「僕にはそれは望んじゃいけない事なんだ」
「……」
 今だけ…、
 今、愛している。
 それじゃいけない?
 だけど、 
 先の事はそうなってみないとわからない。
 その時その時を生きた先が未来なんだ。
 僕は…望み願う。
 この先がある事を。
 ああ…。
 今は前だけを見て進もう。



   「星の祈り」 終


 閑話 キース
 それは、メティスで暮らしていた頃に、精神感応をしたいと、ジョミーが言ってきた。
 また地球が見たいのか?と聞くとそれとは違うと言う。
 僕の記憶を君に見せたい。と言うのだ。

 僕が持ってる十四歳までの記憶を君にあげたいんだ。
 パパやママ そしてサムのきっと君にもこれは必要だと思う。
 記憶がないのは寂しいことだから、
 せめて…僕には君にしてあげられる事が何もないから…。

 何も無いと思うのか?あるだろう?

 そうかな?
 でもね。今は記憶を見せたい。
 十四年分のすべてを渡すわけじゃないからすぐだし、怖くないよ。
 持ってて欲しいんだ。君に。
 人間らしく生きると決めたのなら持ってた方がいいと思うんだ。
 SD体制で皆が幼い記憶を無くしているけれど、無くしてしまったのと、無かったのとは全然違うと思うから…。
 記憶を無くしていない僕には、本当の辛さはわからないけれど…、
 でも、この記憶が無かったら…と思うと…。
 僕は僕でいられたかどうかわからない。

 だから、
 コレはきっととても大切なモノなんだと思う。
 持っていて欲しいんだ。
 君にも。

 キース
 あげるよ。君に僕のこの暖かい記憶を…。

「ねぇ、暖かい?」



 閑話 トォニィ
 ねぇ、知ってた?暖かいんだ。

 何が暖かい?

 グランパがいるとシャングリラは暖かいんだよ。知ってた?

 それはね、きっと。
 君が安心していられる場所だから、家に誰もいないと寂しいよね?
 自分の家なのに、そう思うだろ?
 そこに誰か居ると安心するよね?
 それが「暖かい」んだよ
 親がいるだけで子供は安心して眠れるんだ。
 子供が安心して眠れる場所を与えてあげるのが親の仕事。
 それが僕達ソルジャーの役目。
 仲間たちが安心して暮らせるように。
 外で親鳥が戦い傷つき帰って来ても、そこに子供が笑顔で待っていてくれたら…。
 どこでも何度でも立ち向かえるんだ。
 僕達はそうならなきゃいけない。
 君は大人になってゆく。
 僕が君にしてあげられる事はもう少ないだろう。
 だから、
 今は、ここで…、眠っていいからね。
 僕の隣で眠って。

「ねぇ、暖かい?」



 閑話 ジョミー
 やってきた事の全てが正義だったなんて思わない。
 いい事だけを選んで生きていける訳じゃない事も知っている。
 したくない事もしたし、しなきゃならない事から逃げもした。
 理不尽さに泣いた日も、ただ力だけを揮った日も、諦めてしまった日も、
 でも僕たちは、それでも進まないといけないんだ。
 キースに十四歳までの記憶を渡した時、思い出した。
 僕はブルーにも記憶を渡している事を…。

 貴方は眠っていて、受け取ってくれたかもわからなかったけれど…。
 記憶がないままで、ずっといるのが辛い事だろうと思ったから…、
 だけど、あの頃の僕はまだ未熟で、不慣れで。
 十四歳までの記憶をちゃんと選んで送れていたかがよくわからなかった。
 ありとあらゆる事まで見せてしまっていたんじゃないだろうかと…。
 後で顔から火が出そうな程になったっけ。
 あれもきっと貴方は笑って許してくれるだろう…。

「うん、そうだね暖かいね」って笑ってくれる…。




  終


『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十九話 ※BL風味(会話が過激?)

2011-11-12 02:06:48 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十九話 現在  ※BLあり…会話が過激?

   戦艦ゼウス キースの部屋
「人を好きになる意味がわかったと言ったが本当に解ったのか?」
「どうしてこだわるの?」
「気になったからだ」
「言いたくないと言ったらどうする?」
「無理にでも答えてもらう」
「…性格が違ってるって言うんじゃなくて、元々からそういう性格だったね…。疑問があると突き進む…」
 分かっているなら早く答えろ。と言う顔で見てくる。
 仕方なく素直に答える事にした。
「好きになるって言い方をしたけど、本当は愛する意味は?と聞いていたんだ。愛は難しいから言いにくかった。愛する事は知っているけど…。親から子への愛なら親への愛も愛。友情も愛だし、僕がミュウたちを守ってきたのも愛があったから、地球や人類への愛もあった」
 何も言わずに聞いていたキースが少し厳しい顔をした。
「…それでは何故わからなくなった?」
 それは、多分…。
「僕自身が真剣に愛した事がなかったからだと思う」
「相変わらず、お前のは…許容量が広すぎる…。それなのに、愛した事がなかったのか?」
「すり抜けて行くものばかり追ってた気がする」
 僕は手を見た。
「わからなくなったのは、誰も僕を見てくれてないから…」
 戦後になってやっと自分は生きているんだと自覚が出来たキースには、ジョミーの言う意味が痛いほどわかる気がした。
 彼はミュウである以上、どこまでも「ソルジャー・シン」の名は付いてまわる。
 どこまでも人間ぽいこの男を、その強大な力は人間で無くさせてしまうのだろう…。
 そんな気持ちが自分はわかると思った。
「だから、僕は、ミュウの女達のように自分の命をかけても後悔しないような、愛し方がしてみたいと思ったんだ」

「じゃあ、俺を好きになれは、あながち間違ってはいなかったな」
「それは、僕に命をかけさせる程に、君を好きになれという事?」
「そうしたいんだろう?」
「ん、わからないな。僕に子供でも産めればすごくはっきりした形で理解できるんだけどね」と答えると、キースは黙ってしまった。
「……」
「ん?なに?」
「お前、俺の子を産みたいって思ってるのか?」
「!!」
「ち、違うーーー。そうじゃない」
 そうか、ソルジャーズみたいなクローンでなく、もし、僕が女だったとしたら、受精するその相手ってのが必要になるんだ。僕と僕ってわけにはいかないんだ…。でも、だからって…。
 キースは考え込んでしまったジョミーを面白そうに見ていた。
 彼はジョミーが他と考え方や感じ方が少し違うのを楽しんでいた。
 そして、助け舟を出すようにキースは「俺も愛はわからない」と言った。
 それに対してジョミーは事もなげに言った。
「キースは人を愛していればいいよ。僕はそんな君を愛するから」
 今こいつは俺に対して、最上の殺し文句を言ったのを全然、わかっていないなと思った。
 言われたのは嬉しかったのだが、ジョミーのそれは人類愛だ。
 キースは、人類愛=愛 の図式を恋愛に替えてやろうと思った。

「命を掛けても惜しくない愛か。それは重くないか?」
「重い?」
「お前が言う愛は、人類愛や親が子に思う愛だ。その辺りはお前は十分に実践してきている。お前が人類も愛していて、その行く末も心配していなければ、でなければ、イグドラシルに降りたりしない」
「…そうかもしれない」
「そんな重い愛じゃなく。もっと違うのがあるだろう?」
「?」
「お前、いままで何人と経験した?」
「!」
「何人好きになったか?だ」
「…」
「ちゃんとした恋愛で…何人とだ」
「4人、5人かな?」
「それで何回経験してる?」
「か、回数?」
「そう、肉体関係が何回あったか?だ」
「それは、こ…答える必要があるの?」
「必要無かったら聞きはしない」
「…人数と同じくらいだと思う…」
「ミュウってそんなに禁欲主義なのか?」
「き、禁欲って……。他の人は知らないけど…」
「それが、もう一種の愛だ。お前はそこを飛び越えて重い方のばかりを追っているから、わからなくなるんだ。人を好きになって愛してからじゃないのか、命を掛けれる程の愛ってのは?」
 これでは、恋愛=愛ではなく、肉体関係=愛になってしまう。
 かなり強引な言い方だとキースにも思えたが、これくらい言わないと、きっとジョミーには、わからない。
「そうか…」
 命を作り出す過程で僕に足りなかったのは愛だったんだ。
 カリナもユウイを愛しているから、何があっても怖くなかったんだ。
「僕の中で、いつしか命と愛が別物になってしまっていた…。愛があるからなんだね」
 ボロボロとジョミーは泣き出した。
「バカだな。お前」
「機械人間に愛を諭されるなんて思わなかったよ」
「俺には子供時代が無いが、お前は子供からいきなり大人にさせられた感じがあったからな…」

「あ…れ?」
「?」
 それっきり何も言わなくなってしまったジョミーをいぶかしげに見るキース。
「どうした?」
 ジョミーはじっとキースを見ながら、
「君がちゃんと見れない」と言った。
「?見てるじゃないか?」
「ドキドキするんだ」
「…お前、今までの経験って何だったんだ?したいだけだったのか?」
「ち、違う。好きで愛してきたけど、どうしたんだろう…情けないな…僕はこんな感情も閉じ込めてきたってことなんだね…」

 ミュウになるという事。
 ソルジャーという重責。
 ナスカの責任、宣戦布告、地球へと。
 その役目を終えた僕は…。
 もう人でもミュウでも無くなっていた。そう思っていた。
 家族を作る事には憧れたけど、僕はどこか臆病になっていた。
 人を愛せない。
 いや、愛してはいけない。そう決め付けていた。
 カリナを失い、ブルーを逝かせてしまった。
 僕が愛する人は不幸になるんだと、だったら、誰も愛さずに。すべてを愛してゆこうと。
 でも、それはとても悲しい事だったんだ。

「僕はどうすればいいのだろう?」
 そう聞かれたキースは、今、はじめて、ブルーに会って話をしてみたいと思っていた。
 ジョミーは確実にブルーを愛している。
 それは心の底から、ジョミーの深層心理には彼がいた。
 深い海の底でジョミーを見守るブルーがいた。
 だからもう誰も他を愛するなんて出来ないのだろう。
 けれど、その一画に自分が入った。
 それは事実だ。
 今、ブルーならジョミーをどう受け止めていくのだろうと思っていた。
 どうやって愛してゆくのだろうと思った。
 結局はこいつは…、俺だけのものにはならない。
 いや、なれない。
 そうキースが思った時、
「僕だけの…ものになって…」
 聞こえないような声で、きれぎれにジョミーが言った。
 それはきっと心からの言葉だろう。
 自分は俺だけのものになれないのに、俺にはなれ。と言うのか?
 そんな事、もうずっと前から決まっている。
「いつでも俺はお前だけのものだ」
 お前が笑っていられる世界を、作っていくのが俺が生きるという事だ。

 半年前のあの時、俺はふわふわとどこでも行ってしまいそうだったジョミーを、繋ぎとめようと抱いた。
 思えばそんなのは一時の事で、腕の中に居る時間だけしか止めておけない事に気がつくべきだったんだ。
 でも今は違った。俺の中にも愛しているという自覚があった。

「何でも持っていけばいい。それがお前を俺のモノに出来る。唯一の方法なら」



  続く






『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十八話

2011-11-11 01:52:37 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

   十八話 現在  
 戦艦ゼウス キースの部屋
「シャトルが撃ち落されなくてよかったな」キースは冷たく言った。
「普通に飛んできたから…ね…」
「能力で飛んでたら即撃ち落されてたかもな」
 急速接近するシャトルに一時戦闘(スクランブル)状態になったゼウスだった。
 二人はテーブルを挟んで向き合って座っていた。
 ジョミーの後ろにはソルジャーズがいる。
「……」
「で、急用でもないのに、何をしに上がってきた?」
「……」
 ジョミーは答えなかった。
「あんたに会いくなったからだよ」ブルーが言う。
「わー!ダメだってば」とブルーをおさえるソルジャーズのジョミー。
「ごめんなさい」彼はブルーを無理やりひっぱり出ていった。
 ドアが閉まるのを見届けてから、
「ブルー、声が低くなったな」キースが言う。
「最近、声変わりしてきたからね。ますます似てきたかな」
 ジョミーは彼らが出て行ったドアを見たまま答えた。
「それで、ブルーが言った事は本当か?」
「うん。そうだな…認めるよ。会いたくて来たんだ」
 ジョミーはキースの方を見ながらゆっくりと返事をした。
「それだけで、来たのか?」
「……」
「バカだな、おまえ」キースはため息をついた。
「後、何時間かで会えるだろうに…」
 ゼウスは式典の後、各地を回ってノアに戻る前にメサイアに寄る事になっていた。
 僕もそれは十分承知していた。
 だが、僕はゼウスが到着する頃には、メサイアを出発する予定になっていた。
 出来れば会いたいなと思っていたのは確かだけど、たとえトォニィ達にのせられたとしても、こんな行動を取ってしまった自分が恥ずかしかった。
「会いたかったんだから!いいじゃないか!」と心の中で言ってみた。
 情けないが、言い訳すら出てこなかった…。
「……」
「いつも、そう素直で大人しかったら、何年もかかる事はなかったのにな」
「え?」
「お前が俺を好きだと自覚してから今日みたいに本音が出るまで何年かかっていると思っている?」
「自覚って…メサイアでの事?」
「素直に俺に会えて嬉しいと言ってただろう?俺の事を好きだったとも。だけどお前が俺を意識するようになったのはもっと前だと思っている」
「……」
「お前はいつからだと思う?」
「…わからない…」
 キースが真正面からじっと僕の目を見て話すので、彼の前に、尋問を受けるような形で椅子に座らされているのが、苦痛になってくる。
 しかし、よくそういう事を平気な顔で言えるなと、キースは照れるってないのか?と思った。
 この機械人間!
 僕は下を向いていた顔を上げて、キースの目を見返して言い返した。
「確かにメサイアで僕は好きだって言ったけど、キースからは何もなかったじゃないか」
「言っている」
「いつ?」
「月に行った後だったか…」
「え?…あ…」

『お前は俺を好きになればいい』

「あれは、冗談だと思ってた…」
「好きだと気づくまで何年もかかって、自覚しても行動に出るまで二年か…。それで、まだ何年もかかるのか?」
 その言い方にカチンとなるジョミー。
「じゃあ!キースはいつから、僕を好きになった?」
「俺はナスカでも、地球でも、敵としか見ていなかった。助けられてからも、余計な事をしてくれたとしか思ってなかったな…」
「…助けてごめん」 ぼそりとジョミーが言った。
「そこでお前が謝る必要はない。言いたい事は違うだろ?言葉をとめるな。そこで切るんじゃない。言いたい事はすべて言え。受け止めるから、俺はそんなやわじゃない」
 ここまでこんな風に来てしまい、僕の感情が不安定に露になってて隠せてない今だから…。
 キースは僕から全てを吐き出させるつもりなんだと感じた。
 今の心のままに全部出してしまおう…と覚悟を決めた。
「…わかった。僕は君を、地球で助けた事を後悔はしていない。だから謝らない。」
「そうか」
「あの時は、僕も死ぬと思った。だけど…助かる可能性があるのならそれに懸けてみようと。地の底で、君を助ける事が僕も生きる事に変わったんだ。もう駄目だと諦めた時、君に触れたら「命の音が聴こえてきた。それで、諦めずに地上まで上がれたんだ。君が僕を助けた。だから謝らない」
「俺はお前を責めてはいない。意識が戻った時に礼は言っている。あれは本心だ。今も感謝している。俺はあの日でやっと人間になれた気がした」
 キースは少し優しい目をした。
「キース」
 彼にあらためてそう言われると、あの時の死にそうな思いや死んでいった仲間たち。僕たちを押し上げてくれた幾多の人々の想いが報われる気がした。
 キースは言葉をつづけた。
「地球で、お前の覚悟と優しさを知った。きっかけはシロエだったのかも知れないが…、ビルレストで暮らしている間は、危なっかしいやつくらいにしか思っていなかった。月日が経つ内に、俺の中でわだかまっていた「月」を教えないといけなくなった。だが、何故だか教えられなかった。そこが自分でも不思議だった。月にはブルーがいる。だから、言えなかったのだと俺は気がついた。あれは嫉妬だったのかもしれない…。正面からお前を見るようになったのは月を教えた時からだ」
「月を…」
「上手く言えないが、あの時、月でお前を守るのが俺の役目みたいに思った」
「守る?」
「能力が強い弱いじゃない…。お前はどこで何をしてても自分を捨ててる気がして」
「僕はちゃんと生きてるよ」
「そうだな、今はな…」
 キースは、一度目を伏せてから、あらためて僕を見つめ直した。
 彼の目は「さあ、まだ言いたい事を言え」と言っていた。
 そんなキースの行動に言葉がつられて出てくる。
「…確かに僕は月で…変だったかもしれない。月に着いてから、何もかもがどうでもよくなってた。地球も月も、人もミュウも。すべて…。僕は何故死ななかったのだろう?とそればかり…何の為に生き延びているのだろう?とそう、すごく死にたがっていた」
「月でブルーを見て生きていこうと思ったのか?」
「ううん…ブルーを見ていたら、生きなくてはならないって感じはしたけど、彼じゃない。あの赤い地球を見たら、青い地球が見たくなる。生きて青い地球が見たいと…。月は近い、肉眼で地球が見える。地球は青く美しいとインプットされた僕の心は軋むんだ。人は愚かだと泣くんだ」
「ああ」
 自分をつかまえ地球を見せたジョミーを思い出すキース。
「キース、僕は、今どう見える?」
 今度はジョミーがキースを真正面から捉えて聞いてくる。
「今も探してる気はするが、スメールに行ったからか?何かがあった方が良いのかもしれないな。お前は。生まれながらのソルジャー(導く者)なのかもな」
「導く者がソルジャーなら、キース、君もだね」
「その称号は欲しくないが、今度、月へ行ってみるか?」
「議長の許しが頂ければ、いつなりと」


 戦う者がソルジャーだと思ってた時期もあった。
 導く者だと地球に着いてやっと気がついた。
 僕らはブルーに導かれてここまでやって来たのだと…。
 今は、守護する者だと思っている。
 この新しき世界を…。

 ブルーが恋がれ 
 キースが願い 
 トォニィが夢を見て
 僕が望む

 この世界を護りたい
 僕はこの世界の剣と盾になろう。
 



  続く



『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十七話(Messiah/現在)※BL風味

2011-11-10 19:27:56 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十七話(Messiah)現在 ※BL風味(遊び回です)
 人類の首都ノアの政変は連邦政府の勝利となった。
 惑星ノアの避難も解除され、各地で起きた暴動の芽も収まっていった。
 ノアを救ったのは連邦政府と報道された。
 ミュウの星、メサイアにも人々が戻った。
 ノアと同じようにメサイアも狙われたが、こちらも無事に終わったと報道されていた。
 危険度の高い兵器コロナフィズの存在は人類には明かされなかった。
 けれど、人類の首都ノアを救ったのは「ソルジャー・トォニィとジョミーである」と静かに広まっていた。
 ミュウ達は自分達が人類と同等では無いと思う者が多いが、この事件はミュウ達にとって心強い誇りとなっていった。

  シャングリラ メディカルルーム
 ミュウとしての力を使うのに慣れていないソルジャーズの二人はジョミーより遅かったが、動けるまでは回復をしていた。
 トォニィは政府からメサイア襲撃の実行犯として彼らの引渡しを要求された。
 彼は重症の為、治療中と拒否をした。
 交渉の末、彼らの身柄はジョミーが預かる事となった。
 しばらくして「終戦式典」が行われた。
 最後のメギドは太陽系地球のの太陽に落とされた。
 また人類は自立と、共存の道を静かに進み始めた。
 式典後、ジョミーとトォニィの許にセルジュが訪れた。
 一時、メサイアの治安を守っていた彼はトォニィと話が合うようだった。
 前は喧嘩腰だったのに、いつの間にこんなに仲良くなったのだろうか…とジョミーは思った。

  メサイア上空 衛星ステーションのトォニィの部屋
 セルジュはノアやペセトラでソルジャーズのデータを集めていた。
「こう表現するのも申し訳ないのですが…」少し恐縮したように話し出した。
「彼ら二人はとても完成度の高いクローンのようです。今の人類では最高傑作と言えるのでは…と思われます」
「細胞の活性化の付加はない?」
「今のところはないですね。多分この先も起きないと思います。成長も十歳くらいまで意図的に引き上げられてますが、その後は普通に育てられていたようですし…」
「十四になって覚醒するように、時を待ったのか…」
「SD体制でクローンを作るのと似たような事をしてたのに、人類は人間のクローンは禁止なんだもんね」とトォニィが皮肉を言った。
「それは、同じ人間が何人も居たら困るじゃないか」セルジュが真顔で答えた。
「なんで?わかってればいいじゃない?」
「一人だけで何人も作って、独裁国家なんて出来たらどうするんだ?」
「そんなの相手にしなきゃいい」
「強大な軍事国家を作ったら?」
「ありえないよ」
「まぁ、ありえないけど…」ジョミーが口を挟んだ。
「彼らは、百人以上作られてたらしい」
「え?…百人も…なんで…」
「DNAを使ってクローンを作っても、僕達と同じようにミュウとして覚醒するとは限らないんだ。百体以上作って一人なら良い方だ…僕も二十体は破棄して…」とそこで言葉を切った。
 重くなってきた空気を変えようとセルジュが言った。
「でも、たとえば、自分のクローンを作って、子供はいらないってなったら、人類の未来はないからね」
「そうだ!そうだよ。ジョミー」
「?」
「クローンの彼らは勝手に作られた。それはジョミーの意思じゃない。ジョミーも子供をつくればいいのに!メサイアにはジョミーの子が欲しいって言う娘が沢山いるよ」
「だよね?」とセルジュに同意を求めた。
「そ、そう…ですね」とセルジュが言った。
「…あのね…」
 データを見ていたジョミーが困惑したようにトォニィを見る。
「命を生み出す事は全然怖いことじゃないよ」
 トォニィが静かに言った。
「…トォニィ…」
 彼が言おうとしている意味が伝わってくる。
「僕は、もう怖がっていないよ」
「だったら」
 チラッとセルジュを見てから、
「キースなんかと一緒にいないでさ、結婚しなよ」と言った。
「なんかとは、聞き捨てならないな!ソルジャー・トォニィ」
「じゃ、あいつ」
「おい!」
「トォニィ…」
 ジョミーが二人の止めに入った。
「だけどさぁ、そうでしょ?」
「アニアン議長にはジョミーが必要なんです」
「ふーん。じゃあさ。ジョミーにはキースは必要なの?」
「…え?…」
「どう?」
「…それは…別に…」
 苦笑いをしたまま答えないジョミー。
「別に必要ないなら、いいじゃん。メサイアにおいでよ。カナリアもソルジャーズも一緒にさ」
「だから、議長には…」
 セルジュが食い下がってくる。
「だから?どうして?どう必要なんだよ。僕がもう彼を襲うこともないし、もうちゃんと守られてるじゃん。まさかまた今回みたいにミュウを利用しようってんじゃないよね?」
「利用されたと思うなら、利用しかえせばいいじゃないか」
「何だよ、それ?軍人らしい考え方だな。だいたいさぁ、ジョミー。キースのどこがいいの?まさか、こいつみたいに軍人っぽく感化されて、彼を利用しようってのでもないでしょ?」
「ジョミーはそういう事はしないし、僕に感化なんかもされない人でしょ?さっきから言ってるじゃないか。議長のどこって全部がいいじゃないか!」
 とセルジュがほえる。
「セルジュに聞いてないって。だからさ、あいつのどこがいいんだよ。一緒にいる意味があるの?」
「どこって…」
「どこって、大きいからじゃん」※ソルジャーズのジョミー(声は同じ)
 いつから居たんだ?となるトォニィとセルジュ。
 ジョミーは頭を抱える。
 話がズレていた。だがそのまま話を繋げるトォニィ。
「大きい?何が?」「何がだよ?」とかぶせる。
「だからー、こ…」答えようとするソルジャーズのジョミーの邪魔をするブルー。
「ちょっと、待てジョミー。お前が入ると事がややこしくなるからやめろ」
「なんでさ」
「いいか。良く聞けよ」とブルー。
「?」
「この状態で大きいなんて言ったらアレに決まって…」
「…」
「アレ?」事が不明なソルジャーズのジョミー。
「鈍いヤツだな。アレはあれだろ?」 (笑いを堪えているブルー)
「何が何だって?セルジュわかる?」トォニィがわざと聞いた。
「…ソルジャーズのジョミーって天然?…」
 セルジュは笑えて返事になってならなかった。
 この瞬間。ジョミーはソルジャーズを連れて跳んだ。(逃げた)

「行ったかな…。全く頑固なんだから」
「行き先は?ゼウス?」
 上がってゆくジョミーのシャトルを見ながらトォニィは呟く。
「もう僕は大丈夫だから…気にしないでいいのに…」
「トォニィ?」
「自分で命をつくる事を怖がっているんだジョミーは」
「命を?なぜ?そんなのあえて作る必要ないんじゃないか」
「命って言っても、子供とか。ソルジャーだからって後を継ぐものが必要ってんじゃないよ。だけど、立場的には命を生みだす事を怖がってたらいけないじゃん?」
「立場的ねぇ」
「一応ね」
「見ため的に幸福な図ってのが必要って事?でも、彼なら、そういう事に敏感で真っ先にやってゆきそうじゃないか?どうしてそうしてこなかったんだ?」
 とセルジュが聞いた。
「詳しくは知らないけど、昔、何かあったみたい。それと、僕達ナスカチルドレンは、彼が望んだから生まれてきたんだ。僕らが生まれた事で大きく戦況が動いたのも事実だし、僕らの仲間も無事には終わっていない…。確かに力技だったかもしれないけど、ジョミーの本意ではなかったかもしれないけれど、だけどさ。もう戦いは終わって、僕達は生きている。だから、もういいよね?」
「まだ君たちへの責任を感じているというのか?、そして、今はもうそれを感じる必要はないという事だな」
「そう。だって僕ら。今はもうジョミーの為だけに生きていると思ってないし、ジョミーはジョミーの生き方があるからさ。そろそろ過去からも僕らからも解放されていいと思うんだ」
「お前達、ソルジャーって生きるの不器用だな」
「ソルジャーだけじゃないよ。ミュウ達はみんなこんなもんさ」
「そうか…」
「お前達、人間が単純すぎるんじゃないの?」
「ははは、そうなのかもな」
「だけど、ジョミー。キースの所へ行くってのも問題ありだなぁ」
「まぁな…。でも、二人して焚き付けといて、今更それを言うのか?」
「僕は二人が仲がいいなんて、承知してないけどね。でも、いつまた何が起きるかわからないんだから、今、ジョミーが望むのならいいんじゃない?」
「あの二人は負った傷が同じなんだと思う」
「…負った傷か…。そうかもね」
 と二人は空を見上げた。



  続く