君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十六話(Messiah/現在)終

2011-11-09 02:07:35 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十六話(Messiah)現在  
  Shangri-La  -ノア上空でフィズを消した直後ー
 メサイアの避難民を乗せているシャングリラは、まだ続く連邦の戦闘に加わわれず、通常航行でメサイアへの岐路についた。
 メディカルルームでの治療を終えて動けるようになった僕は、まだ眠るソルジャーズの二人を見ていた。
 彼らから動けなくなるまで力を無理やり引っ張り出し使わせたのは僕だ。
 自分の能力を相手に与えるのが出来るという事は、相手の能力を引き出す事も出来る。
 眠る二人をドクターに任せて部屋を出た。
 僕も治療は終わったといっても無理をさせた身体には体力がまだ戻らなかった。
 部屋で安静にしているようにと言われていた。
 大戦後、シャングリラにはブルーの「青の間」のように、人が集まれるくらいの大きさの、僕の部屋とトォニィの部屋が作られた。
 僕はイグドラシルでのケガの治療が終わってすぐに船を降りてしまったので自分の部屋になじみがなかった。
 だから、部屋へ行こうとは思わなかった。
 だけれど「青の間」やフィシスの居る「天体の間」に行こうとも思わなかった。
 庭園や広間は避難してきたメサイアの仲間達でいっぱいだった。
 一人になれる場所を求めて僕は船内上部の展望室へ向かった。
 ゆっくりと星が流れてゆく。
 ガラスに手をつき外を見た。
 しばらく宇宙を眺めてから、身体の向きを変えガラスにもたれて船を見る。
 この船が僕の家だと思える。
 ここが僕を作り、僕を育てた。
 立っているのが辛くなり、ずるずるっと背中がガラスをすべり片足を投げ出し、床に座った。
「本当にこれで…良かったのだろうか…」
 メサイアに戻ったら今回の事を皆に説明して無理をさせてしまった事を謝らないといけない。
 僕はミュウの皆に、頭上にメギドがある状態で逃げなければならないというそんな恐怖を強いたんだ。
 そう、仲間を囮に使うなどと許される事ではない。
 だけど、確実にメギドが我々を狙ってくると言うのならば、どうするのが良かったのだろう…。
 いつ強襲されるかわからないのを、怯えながら待つ気は僕には無かった。
 メギドの事を聞いた時、最初は残っているタイプブルーでメギドを封じるのも考えた。
 だが、それでも今の彼らではメギドは防げないと思った。
 タイプブルーの能力は確かに戦闘特化だ。
 攻撃力・防御力・危険を察知する直感みたいなものに優れている。
 戦えば戦う程強くなる。
 戦った経験がそのまま能力に変わってゆく。
 そしてその攻撃の種類も当然増えてゆく。
 ソルジャーであるトォニィは別だが、他のナスカチルドレン達の今の力は大戦中の半分もなかった。
 それと、、妊娠中のツェーレンに無理はさせられない。
 それを言うと余計に彼女は無理をして来てしまうだろう。
 そうして、たとえ壊せていたとしても、あの二人との戦闘は無理だろう。
 敵がどういった戦い方を仕掛けてくるかわからない。
 犠牲が出てしまうかもしれなかった。
 そんな危険な目にあわせる訳にはいかない。
 だが、彼らにメギドを任せてしまえば、避難なんてしなくても済んだかもしれない。
 それで、もし、止めるのに失敗してしまった時、万が一にだが、メギドが撃たれた場合にと反射板も作った。
 でも、それではナスカと同じだ…。
 逃げるわずかな時間を稼ぐだけでしかない…。
 結局はメサイアは燃えてしまう。

 多分、彼らをもう一度戦士に鍛えなおして、戦わせるのが一番簡単だったかもしれない。
 それが、タイプブルーとして生まれてしまった者の運命ならば…。
 そんな運命。
 もういらない。
 たとえ彼らの運命がそうだったとしてもだ。
 ミュウがメサイアに行く事を決めて旅立った時に僕は誓ったんだ。
 そんな運命は変えてやると。
 もう二度と彼らを戦わせない。
 メサイアの避難時に彼らはタイプブルーとして立派に皆を助けたと聞いた。
 そう、それでいいんだ。
 彼らはもう戦わなくていい。
 もう、タイプブルーは生まれなくていい。
 残る問題は、ソルジャーズの二人…。
 彼らの能力は未知数だ。
 人類がミュウを作っているのではないか、という情報はカナリア事件で確実となった。
 敵に屈したミュウではなく…、あれは、僕らのクローンだと、僕にはわかった。
 そこに居る。
 ただそれだけで恐怖だった。そして、哀れでならなかった。
 僕が僕のクローンをミュウの発達した技術と知識だけで作ったあの時、細胞分裂に失敗したものを何体も捨ててきた…。中には人の形になったのに育たなかったものあった。
 二十体、いや、二十人以上の自分を殺してきた。
 彼らを作るには一体何人「死んで」いったのだろう。

 ノアにその研究所があるのならそこに行かなければならない。
 もうノアはに無いかもしれない。
 そしたらそこを探して、僕が葬らなければならない。
 それが、死んでいった彼らの為なんだ。
 気がつくと指の先が冷たくなっていた。
 気温が下がったのではなく、僕の周りの空気だけが冷えたのだった。
「寒いな」
 僕は自分の身体を両腕で抱えた。

「ジョミー・マーキス・シン。お前が存在するのがいけないのだ」
 自分の存在が彼らを作らせた。
 ブルーの身体を残してしまったから、僕が生きていたから…。
 事の発端は残ったメギドでもなく、マザー信奉者でもない。
 自分の存在だ。

 僕は格納庫に急いだ。
 そこには僕のシャトルがある。
「ノアに戻らなければ…」
 壁づたいに急ぐ僕の腕を誰かがつかんだ。
「どこに行くのですか?」
 振り返ると、そこには…ハーレイがいた。
「……ハーレイ…」
 体力の戻りきってない僕はそこに座り込んでしまった。
 一瞬ハーレイに見えたのはシドだった。
「だ、大丈夫ですか?無理をしないで部屋に戻ってください」
 座り込んだまま僕は答えた。
「君って、僕がこんな状態の時ばかりに現われるね…」
「こんな状態?ジョミー。立てませんか?そんなふらふらでどこに行こうとしてるのです?」
「格納庫の…僕のシャトルに…」
「…一緒に行きましょう」
 シドは僕を立たせた。
 格納庫に向かいながら船は大丈夫か?と聞くと「今は副操舵士が」とシドは答えた。


  シャングリラ 格納庫
 僕はシャトルに着くとカードキーを通し、通信を開きパスワードを打ち込み、連邦の情報部のデータを見た。
 そのまま操縦席に座り発進準備に入ろうとした。、
「ノアに行くのですか?」
「行かなきゃならない」
「ダメです。そんな状態で行かせられません」
「行かせてくれ…」
「何をしに行くのですか?まだ敵が居るのですよ。このシャトルでは逃げるのが精一杯、攻撃は出来ないでしょう?いくらジョミーでも無謀です…。訳を言ってください。でないとキャプテンとして許可は出せません」
 僕は、同じセリフを言われた事があった。
 昔、ドールを連れてハッチを壊してでも出て行くと叫んだ僕に「行かせられない」とハーレイが心配して言ったんだ。
 懐かしさで泣きそうになった。
 あの時は彼が折れた…。
 今度は僕が折れる番だった。
「わかった…諦めるよ。キャプテン・シド」
 シドの肩を借りてシャトルを降りた僕は、格納庫の壁にもたれてそこに居る人々を見ていた。
 格納庫は避難してきた船でいっぱいだった。
 皆は僕を見ると「ソルジャー・シン」と挨拶をしてゆく。
 今日は前のソルジャー服を着ているからだろう。
 それが嬉しくも気恥ずかしくもあった。
「こんな所でどうやってシャトル出すのかとヒヤヒヤしましたよ」とシドが笑った。
「シャトルごと外に跳んでから行けばいい」
「じゃあ、僕の許可なんか無視して行けたって事ですか?」
「さっき、少しだけジョミーの上に立てたかと思ったのに…」彼はガクンとうなだれてしまった。
「シド?」
「ジョミーは僕達より後からミュウになったのに、あっと言う間にソルジャーになって、段々普通に話せなくなって。ナスカでも地球でも、同じように辛い目にあったのに…話したい時には船降りてしまって、そんな君を…僕達はいつも…心配していた…」
 見るとシドの目にうっすらと涙が浮かんでいた。
 僕はそれを見ないようにした。
 彼はナスカで沢山の友人達を、戦争中は仲間達を、そして地球では尊敬するハーレイを失ってきている。
「知ってたよ。君たちは僕をソルジャーと呼ばなかった。ずっと、いつも。昔のようにジョミーと呼んでくれた。嬉しかった。でも、ナスカが僕達を切り離した…」
「……」
 シドは僕から見えないように向こうを向いてしまった。
「あの後、僕は君たちを避けていた。僕の事を誰から責められるより、君たちに責められるのが怖かったんだ」
「ジョミー、僕達は誰も責めたりしない。誰も責める事は出来ません」
「責めていいんだよ。それが僕に出来る唯一の償いだから」
「だから、責めないって言ってるじゃないですか。信じているからついて来たんです」
 こっちを向いたシドの目から一筋の涙がこぼれる。
 シドはあわてて涙をぬぐい、こう言った。
「でも、大戦後は、今度は僕達が避けていましたね。地球へ行ったのに、人類との対話も出来たのに。僕は傷つき疲れてしまったあなたにかける言葉が無かった…。それでも、共存の為に立とうとする姿が痛々しくてならなかった…。船を降りるという提案がすんなり通ってしまったのも、そんな空気からだったのでしょうね…」
「あれは、もう一度、人として暮らしてみたいっていう。僕のわがままだったんだよ」
 とジョミーは小さく笑った。
 ジョミーは嘘つきだ。
 シドの直感がそう言っていた。
 まだ「君たちから逃げたんだ」と言われた方が信じれたかもしれない。
「だから、僕達はいつも…心配して…」
 またシドの目から涙が零れた。
「シド。今度は僕の背中貸そうか?」
 僕はシドの方に背中を向けた。
「ジョミーの方が背が低いじゃないか…」
「君がちょっとかがめば隠れれないか?」
 シドはそんなジョミー背中を見て改めて気が付いた。
「ジョミー…」
 シドはジョミーの肩が思っていたより小さいと思った。
 タイプブルーとしての強大な力はこの身体のいったいどこに隠されているのだろう?
 そして僕達はこの小さな肩にどれ程の重荷を背負わせてきたのだろう。
「…シド?」
「ああ、いえ。ジョミー、身長が少し伸びてます?」
「うん。ゆっくりだけど、成長させてる」
「あ、では、背中を借りるのはまた今度にしますよ」
「君を隠せるほど伸びないよ」
 と笑った。
「そうですか?もう少し伸びれば…」
 とジョミーの肩に両手を置いて、背中にかがむ真似をするシド。
「僕はいつでも…」
「ん?何?」
「あ、だから、まだ隠れれそうにないので。この前のは、貸しにしておいて下さい。何かあったらいつでも言って下さいね」
 ジョミーの肩から手を離してシドが半分泣きながら笑って言った。
「じゃあ、背中空けておいて。僕も、いつでも貸すからね」
「わかりました」
「シド。言葉使い普通でいいよ」
「僕はこっちのが話しやすいんですよ」
「そうなの?」
 二人は笑った。
 カリナやユウイやキムやハロルド…皆とずっとこんな風に笑っていられたらよかったのに、と思う気持ちが二人の間を流れる。
 ふっと優しい感情が流れていった…
「カリナ…?」
 それはシドにも感じられたようだった。
 それが消えた方向を二人は見送った。

 しばらくしてから、シドが僕のシャトルを指をさし、
「ジョミー、あの優秀なシャトルにパイロットを一人雇いませんか?いつもステルス追尾だけじゃ不都合もあるでしょう?」
 と言ってきた。
「確かに融通の利かない時はあるけど、でもそれは…君の事か?シャングリラに君が居ないのは困るだろう?」
「今回は特別ですが、長距離航行用のシャングリラはメティスでもここでもほとんど飛んでないですよ。年に1回も飛ばない船のキャプテンなんて無職のようなものです」
「無職って…。そんな事はない。君程の優秀な人材を僕が連れていく訳にはいかない…」
「それに、あのシャトルに興味があるんです。人類の最新鋭にミュウの技術を乗せてるんですよね?」
「ああ。人類のを僕が上手く操縦出来なかったからね」
「人類の最新鋭…」
 と目を輝かせるシド。
「わかったよ。君の事をトォニィに話してみよう。でも、条件が一つ」
「何ですか?僕に出来る事なら何でもします」
「なるべく普通に話さないか?」
「ど、努力してみます」

 やがて、艦橋からメサイアが見えるようになったと放送が入った。

 人類の惑星ノアの問題。
 ミュウの惑星メサイアのこれから。
 クローンの二人の事。
 色々な問題が残っているけれど、きっと皆で乗り越えていける。
 そう、人は助け合える。
 思っているより人は強い。

 

    星の祈り 終



 
後書き ここでひと段落着きました。
 続くのは閑話に近いです。
 四章までの繋ぎです。