☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノアの前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…ニュクス事件後行方不明中
ソルジャー・トォニィ ジョミーの後を継ぎミュウの長となる。ニュクス事件による政変でノアの議会を掌握する。現在、ジョミーのジュピターの権限を預かっている。
キャプテン・シド ミュウの優秀なパイロット ジョミーの専属だった。
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
シルジャーズのジョミー 本当はジョミーのクローンではなく実子(タイプイエロー)
『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章 閑話2
「ソルジャーズのジョミー」その2 ※ソルジャーズの表記を省いています。
「聞いた瞬間に何かが壊れた気がした…」
ドアの前に回り込んだソルジャーズのジョミーはシドを見てそう言った。そして、そのままドアを背にして崩れ落ちた。慌ててシドが駆け寄る。
「ジョミー。それは多分…怖くなったんだよ」
「怖く?」
「こっちへ」
シドは部屋にあるソファーへと彼を寝かせて、奥から水の入ったコップを持って戻って来た。医療技術を学んだシドが体を診る。
「落ち着いて。大丈夫。体に異常は無いよ」
何かあるとすれば心だな。とシドは思った。
ソルジャーズのジョミー。彼は今まで守られていた。ジョミーのクローンで力の強いミュウ。
それだけで彼はそこに当然のように居た。
彼の生い立ちは生易しいものでは無いとあれこれミュウ達は想像をしていた。だから、優しかった。
ジョミーの子どもでも、その部分が変わる事はないが、自分自身がソルジャーとなったジョミーを見る目が変化したのと同じ事が起こるだろう事は想像出来た。
いつか、この事実は公表しなければならない。それはいつなのだろうか…。
コップを受け取ったジョミーが話し出す。
「嬉しい筈なのに…。どうして…こんな。自分が望まれない子だったなんて思いは気にならない。殴っても辛かったんだ」
「ジョミーを殴った?」
「うん」
「殴ったなら、少しはスッキリしたんじゃない?」
ジョミーのコップを持つ手が震えている。得体の知れない不安に支配されてしまっている心を落ち着かせる方法を探しながらシドは話し出した。
「君はとても強いのに、何を心配しているの?」
「僕は強くない」
「強いさ。僕はずっと君を見て来たんだ。嘘はつかない」
「僕はブルーに力をもらっていたから、強いのは僕じゃない」
「ジョミーも自分を強くないって言うよ。君はあのキースとも戦っているんだ。だから…」
「同じじゃないよ」
「ん?」
「同じじゃないって…」
「そっか…」
「シドは何年ジョミー見ていたの?それなのにわからないの?」
「どういう…」
「僕が強くないと言うのと、ジョミーの言うのは違うのが気が付かないの?って言ってるの」
「違う?」
「そう、違うよ」
「どうして君にわかるんだ?」
「見ていればわかるよ」
「そうか…」
「シドってさ。自分の事しか考えていないから見えてこないんだよ!こんな時にトォニィの所へ行くなんてさ。自己満足でしかないじゃん。命をかけたってそんなの、無駄だよ」
「何を言いだすんだ」
「無駄だし。意味が無いんだ」
「ジョミー」
シドはソルジャーズのジョミーを睨む。
「いくら君でも、許さないよ」
「トォニィの所でスパイする気だろうけど、そんなのトォニィは気が付いてる。だから意味が無いんだって、言ってる…」
「このッ…」
シドは殴ろうと右手を振りあげた。
「殴れよ」
その言葉が合図だったかのようにシドは殴るのではなく、平手打ちをした。。
ジョミーが意外そうにシドを見上げた。
「ご、ごめん。大丈夫か?」
「やっぱり両方辛いじゃないか…」
「わざと怒らせた?」
「うん」
それを聞いてシドはジョミーの頭を優しく抱きかかえた。
「シド?」
「叩いてごめん」
シドに抱えられたまま、ジョミーは小さく頷いた。
「シドもさ、親は知らないんだし、こんな事で落ち込んだり喜んだりするのはミュウとして変だよね?」
「変じゃないよ」
「変だよ…どうしてこんなに変なのかな?」
「ジョミー。いつも、どうしてた?」
「いつも?」
「そう。いつも、恐くなった時とか」
「恐い時は、ブルーがいた。傍にいてくれた」
「ショックな事があって、ブルーに会いたくなっただけだよ」
「そうかもしれないけど…」
ジョミーはゆっくりとシドにもたれた。
「ジョミー?」
ジョミーの腕がシドの背中に回される。
「ごめんなさい。さっき酷い事を言って」
「大丈夫だよ。スパイだってバレているなら、トォニィの所へ行くのに意味が無いかもしれないってわかってる。でも、もう傍に居られないんだ」
「うん」
「何があっても諦めないって言ったけど、もう無理なんだ。諦めた訳じゃないなんて、嘘さ。だからもう、諦められないなら、逃げる事にしたんだ」
「でも、あのチョーカーはまだ付けないで」
「自分を犠牲にするようなのは、良いとは思っていないよ。ジョミーにブルーを失った時と同じ思いはもうして欲しくない。チョーカーを付ける付けないはトォニィに一任したから、もう僕では決められないんだ」
「それでも…最後まで付けないでいて」
「うん。そうする」
「だから…」
「キスしていい?」
「え?」
シドはジョミーの頭に回した手を顔を包むように下げた。ジョミーの驚く顔をじっと見つめた。
「この前は、抱いてって言ったのに?」
「あの時は、結局、抱いてくれなかった…のに、どうして?」
「あの時、君はジョミーの代わりにって言ったよね?今日はジョミーの代わりだなんて思わない。君が良いんだ」
「シド…」
ジョミーはシドの視線から目を外したが、腕はまだシドの背にあった。
「僕がブルーの代わりに傍に居てあげる」
「ん?ダメだよ…。僕も僕自身なら、シドもシドでなきゃ。ダメだ」
「わかった」
シドがジョミーにそっとキスをした。
強い悲しい想いがジョミーに流れ込んだ。
「僕の気持ちは変わらない」
「うん」
「彼の為に生きる。そして死ねる」
「わかってる」
「それを重荷と思われても構わない」
「シド」
ジョミーがその想いに涙ぐんだ。シドは唇を離した。
「シド。ジョミーは気が付いてる。きっと引き留めるよ。それでも?」
「それでも、変わらない」
シドはジョミーがソルジャーで無くなった時に、彼を好きだ気付いた。それは、この場所で。
シドは10年前を思い出していた。
場所はここ、宇宙港だった。
静かにエレベーターがロビーに着く、ジョミーが下りる。
メサイアは今日は祝日扱いになっているのでコンコースは混雑していた。
ソルジャー服はやっぱり目立つ、人々の中を歩いて来る。
僕が声をかけるとこんな事を言った。
「ちょっとだけ、こっちに来てくれる?」
とジョミーは下を向いたままシドの手首をつかみ、人々を避けながらコンコースの先にある外が見える所まで引っ張って行った。
「え、ジョミー?」
コンコースは宇宙港の地下なので、窓にはメサイアの市街地が見えた。
「シド。胸を借りるって訳にはいかないから、少しだけ背中貸してくれる?」
とジョミーは言った。
「え?」
「少しの時間でいいから、僕が落ち着くまでそこに向こうむいて立ってて」
あぁ、とシドは思い出した。
昔、まだ心理遮蔽が上手く出来ない頃のジョミーは、たまにリオに壁になってもらってたっけ。
「わかりました」
とそこに立つシド。
その背中にトンっとジョミーは自分の背中を預けて目を閉じる。
背中から伝わる体温が暖かかった。
暫くして、ジョミーがぐすっと鼻をすすった。
「ジョミー?」
気づいたシドが心配して様子を見ようと動く。
「おわっ?急に動くなよ」
背中に体重をかけてたジョミーが転びそうになった。
あわててシドが抱きとめる。
背中から抱き止められ至近距離で目が合う二人。
「す、すみません」
とジョミーを立たせるとシドはまた背中を向けた。
「……」
無言で背中を合わせるジョミー。
泣きそうな顔だったとシドは思った。
沈黙が流れた後、「落ち着いたよ。シド」とジョミーが言った。
「行こうか?」
と背中を離しジョミーは歩き出した。
そこに居るのはもう普段のソルジャー・シンだった。
僕はあの時に。
腕の中にいるソルジャーズのジョミーがシドを見上げて言う。
「シド。今は、今だけは君のものだ」
「ジョミー。僕も君だけのものだ」
二人の唇が再び重なった。
閑話 終
※書くのを悩んだこの部分、シドはソルジャーズのジョミーを守れた事でずい分満足してしまったけれど、
それでもまだ思いが諦められなくて、最終的には逃げる事を選んでしまいました。
自分から得られる情報を搾り取れるだけ絞ってもらおうと思っている。
二人のこのキスには少しだけ打算がある罪悪感、
ここでの事は「誰にも言えない秘密」となります。、
<人物>
ジョミー ノアの前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…ニュクス事件後行方不明中
ソルジャー・トォニィ ジョミーの後を継ぎミュウの長となる。ニュクス事件による政変でノアの議会を掌握する。現在、ジョミーのジュピターの権限を預かっている。
キャプテン・シド ミュウの優秀なパイロット ジョミーの専属だった。
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
シルジャーズのジョミー 本当はジョミーのクローンではなく実子(タイプイエロー)
『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章 閑話2
「ソルジャーズのジョミー」その2 ※ソルジャーズの表記を省いています。
「聞いた瞬間に何かが壊れた気がした…」
ドアの前に回り込んだソルジャーズのジョミーはシドを見てそう言った。そして、そのままドアを背にして崩れ落ちた。慌ててシドが駆け寄る。
「ジョミー。それは多分…怖くなったんだよ」
「怖く?」
「こっちへ」
シドは部屋にあるソファーへと彼を寝かせて、奥から水の入ったコップを持って戻って来た。医療技術を学んだシドが体を診る。
「落ち着いて。大丈夫。体に異常は無いよ」
何かあるとすれば心だな。とシドは思った。
ソルジャーズのジョミー。彼は今まで守られていた。ジョミーのクローンで力の強いミュウ。
それだけで彼はそこに当然のように居た。
彼の生い立ちは生易しいものでは無いとあれこれミュウ達は想像をしていた。だから、優しかった。
ジョミーの子どもでも、その部分が変わる事はないが、自分自身がソルジャーとなったジョミーを見る目が変化したのと同じ事が起こるだろう事は想像出来た。
いつか、この事実は公表しなければならない。それはいつなのだろうか…。
コップを受け取ったジョミーが話し出す。
「嬉しい筈なのに…。どうして…こんな。自分が望まれない子だったなんて思いは気にならない。殴っても辛かったんだ」
「ジョミーを殴った?」
「うん」
「殴ったなら、少しはスッキリしたんじゃない?」
ジョミーのコップを持つ手が震えている。得体の知れない不安に支配されてしまっている心を落ち着かせる方法を探しながらシドは話し出した。
「君はとても強いのに、何を心配しているの?」
「僕は強くない」
「強いさ。僕はずっと君を見て来たんだ。嘘はつかない」
「僕はブルーに力をもらっていたから、強いのは僕じゃない」
「ジョミーも自分を強くないって言うよ。君はあのキースとも戦っているんだ。だから…」
「同じじゃないよ」
「ん?」
「同じじゃないって…」
「そっか…」
「シドは何年ジョミー見ていたの?それなのにわからないの?」
「どういう…」
「僕が強くないと言うのと、ジョミーの言うのは違うのが気が付かないの?って言ってるの」
「違う?」
「そう、違うよ」
「どうして君にわかるんだ?」
「見ていればわかるよ」
「そうか…」
「シドってさ。自分の事しか考えていないから見えてこないんだよ!こんな時にトォニィの所へ行くなんてさ。自己満足でしかないじゃん。命をかけたってそんなの、無駄だよ」
「何を言いだすんだ」
「無駄だし。意味が無いんだ」
「ジョミー」
シドはソルジャーズのジョミーを睨む。
「いくら君でも、許さないよ」
「トォニィの所でスパイする気だろうけど、そんなのトォニィは気が付いてる。だから意味が無いんだって、言ってる…」
「このッ…」
シドは殴ろうと右手を振りあげた。
「殴れよ」
その言葉が合図だったかのようにシドは殴るのではなく、平手打ちをした。。
ジョミーが意外そうにシドを見上げた。
「ご、ごめん。大丈夫か?」
「やっぱり両方辛いじゃないか…」
「わざと怒らせた?」
「うん」
それを聞いてシドはジョミーの頭を優しく抱きかかえた。
「シド?」
「叩いてごめん」
シドに抱えられたまま、ジョミーは小さく頷いた。
「シドもさ、親は知らないんだし、こんな事で落ち込んだり喜んだりするのはミュウとして変だよね?」
「変じゃないよ」
「変だよ…どうしてこんなに変なのかな?」
「ジョミー。いつも、どうしてた?」
「いつも?」
「そう。いつも、恐くなった時とか」
「恐い時は、ブルーがいた。傍にいてくれた」
「ショックな事があって、ブルーに会いたくなっただけだよ」
「そうかもしれないけど…」
ジョミーはゆっくりとシドにもたれた。
「ジョミー?」
ジョミーの腕がシドの背中に回される。
「ごめんなさい。さっき酷い事を言って」
「大丈夫だよ。スパイだってバレているなら、トォニィの所へ行くのに意味が無いかもしれないってわかってる。でも、もう傍に居られないんだ」
「うん」
「何があっても諦めないって言ったけど、もう無理なんだ。諦めた訳じゃないなんて、嘘さ。だからもう、諦められないなら、逃げる事にしたんだ」
「でも、あのチョーカーはまだ付けないで」
「自分を犠牲にするようなのは、良いとは思っていないよ。ジョミーにブルーを失った時と同じ思いはもうして欲しくない。チョーカーを付ける付けないはトォニィに一任したから、もう僕では決められないんだ」
「それでも…最後まで付けないでいて」
「うん。そうする」
「だから…」
「キスしていい?」
「え?」
シドはジョミーの頭に回した手を顔を包むように下げた。ジョミーの驚く顔をじっと見つめた。
「この前は、抱いてって言ったのに?」
「あの時は、結局、抱いてくれなかった…のに、どうして?」
「あの時、君はジョミーの代わりにって言ったよね?今日はジョミーの代わりだなんて思わない。君が良いんだ」
「シド…」
ジョミーはシドの視線から目を外したが、腕はまだシドの背にあった。
「僕がブルーの代わりに傍に居てあげる」
「ん?ダメだよ…。僕も僕自身なら、シドもシドでなきゃ。ダメだ」
「わかった」
シドがジョミーにそっとキスをした。
強い悲しい想いがジョミーに流れ込んだ。
「僕の気持ちは変わらない」
「うん」
「彼の為に生きる。そして死ねる」
「わかってる」
「それを重荷と思われても構わない」
「シド」
ジョミーがその想いに涙ぐんだ。シドは唇を離した。
「シド。ジョミーは気が付いてる。きっと引き留めるよ。それでも?」
「それでも、変わらない」
シドはジョミーがソルジャーで無くなった時に、彼を好きだ気付いた。それは、この場所で。
シドは10年前を思い出していた。
場所はここ、宇宙港だった。
静かにエレベーターがロビーに着く、ジョミーが下りる。
メサイアは今日は祝日扱いになっているのでコンコースは混雑していた。
ソルジャー服はやっぱり目立つ、人々の中を歩いて来る。
僕が声をかけるとこんな事を言った。
「ちょっとだけ、こっちに来てくれる?」
とジョミーは下を向いたままシドの手首をつかみ、人々を避けながらコンコースの先にある外が見える所まで引っ張って行った。
「え、ジョミー?」
コンコースは宇宙港の地下なので、窓にはメサイアの市街地が見えた。
「シド。胸を借りるって訳にはいかないから、少しだけ背中貸してくれる?」
とジョミーは言った。
「え?」
「少しの時間でいいから、僕が落ち着くまでそこに向こうむいて立ってて」
あぁ、とシドは思い出した。
昔、まだ心理遮蔽が上手く出来ない頃のジョミーは、たまにリオに壁になってもらってたっけ。
「わかりました」
とそこに立つシド。
その背中にトンっとジョミーは自分の背中を預けて目を閉じる。
背中から伝わる体温が暖かかった。
暫くして、ジョミーがぐすっと鼻をすすった。
「ジョミー?」
気づいたシドが心配して様子を見ようと動く。
「おわっ?急に動くなよ」
背中に体重をかけてたジョミーが転びそうになった。
あわててシドが抱きとめる。
背中から抱き止められ至近距離で目が合う二人。
「す、すみません」
とジョミーを立たせるとシドはまた背中を向けた。
「……」
無言で背中を合わせるジョミー。
泣きそうな顔だったとシドは思った。
沈黙が流れた後、「落ち着いたよ。シド」とジョミーが言った。
「行こうか?」
と背中を離しジョミーは歩き出した。
そこに居るのはもう普段のソルジャー・シンだった。
僕はあの時に。
腕の中にいるソルジャーズのジョミーがシドを見上げて言う。
「シド。今は、今だけは君のものだ」
「ジョミー。僕も君だけのものだ」
二人の唇が再び重なった。
閑話 終
※書くのを悩んだこの部分、シドはソルジャーズのジョミーを守れた事でずい分満足してしまったけれど、
それでもまだ思いが諦められなくて、最終的には逃げる事を選んでしまいました。
自分から得られる情報を搾り取れるだけ絞ってもらおうと思っている。
二人のこのキスには少しだけ打算がある罪悪感、
ここでの事は「誰にも言えない秘密」となります。、
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