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「貧困の連鎖」「格差極悪論」「社会的包摂」ー阿部彩氏の講演より(下)(K)

2012-10-10 | 貧困・格差・社会保障
「格差極悪論」

 第二に、「格差極悪論」である。格差の下のほうの人々は劣等感や自己肯定感の低下の心理的打撃が大きい。一方、上のほうの人々は社会的地位を守ろうと躍起になる。人々は攻撃的になり、差別が助長され、コミュニティや社会のつながりが弱くなる。高いストレスにさらされ続け、結果として健康を害する。これらの影響は、社会の底辺のみならず、どの階層の人々にも及ぶ。
 以上が、報告された「格差極悪論のまとめ」の概略である。それを、「不平等な社会では、社会資本も少ない」「不平等と社会資本:犯罪(殺人)」「不平等と社会資本:人々の攻撃性」「『格差』と健康」「信頼感と死亡率 ボランティア活動と犯罪発生率」という統計で証明した。低層の人々のうちでも、直ぐ上の人ほどすぐ下の層の人を攻撃しやすいのも特徴である、と付け加えた。「あのグループはもらった補助金を無駄に使っている」と言って同じように経済的に困難なグループを攻撃するように、と。
 格差の拡大は社会全体に困難をもたらす。











 
「社会的包摂」という考え方
 
 第三に「社会的包摂」である。格差の拡大によって作られた貧困は社会的に排除される人々を作り出す。
 社会的排除とは、「社会的な統合とアイデンティティの構成要素となる実践と権利から個人や集団が排除されていくメカニズム、あるいは社会的な交流への参加から個人や集団が排除されていくメカニズム」「それは労働生活への参加という次元すら超える場合がある。」「居住、教育、保健、ひいては社会的サービスへのアクセスと言った領域においても現れる」ことである。社会的に排除されると、貧困は克服されない。日本における就労の困難につながるうつ病や介護しなければいけない人、育児しなければいけない人の増加は労働人口の減少になる。
 多くのOECD参加国は社会全体にとっても困難をもたらす貧困を防ぐために、低所得者に限っての保護や子ども手当てなどの川下対策ではなく、川上での対策、すなわち、同一労働同一賃金などの労働規制を第一の防波堤に、最低賃金や所得保障、生活保護だけでなく住宅扶助・家族給付・教育への奨学金などさまざまな組み合わせのセーフティネットで、社会的に排除されないように、「防貧」機能の充実させている。これを「社会的包摂」と言う。「低所得世帯に対する給付の国際比較」はそれを物語っている。
 しかし同時に、日本が生活保護のみのセーフティネットということも示している。さらに、日本は「最低賃金と社会保障の接近」にあるように、働いても生活保護と同水準と言う世界にまれに見る不思議な国でもある。


 




 以上が、講演で印象深かったところ。
 日本はいかに異常な国であるか、そして、国民の間に「自己責任論」が宣伝・流布されて、弱いものが弱いものを攻撃する構図となり、格差極悪論が現実のものとなっている国であることか。社会の崩壊、亡国の道へと歩んでいる日本への客観的事実からの警鐘だった。

 地方自治研究全国集会からの紹介 終わり

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