ようこそ埼玉自治体問題研究所へ!

埼玉県での地域やまちづくりに役立ててください。
いろいろな情報を発信しています。

「住民と自治」5月号―橋下大阪市長の職員・労働組合たたき問題ー小特集(M)

2012-04-30 | 橋下維新の会
橋下市長問題」の克服のために ―緒方恵子著― をご紹介しながら 
 5月号、「橋下大阪市長の小特集」のうち緒方氏は、公務員にとって、さらに住民にとって注意を持って監視しなければならない「橋下市長問題」とは、「地方公務員及び地域住民の中に労働組合及び組合活動を嫌悪するムードを作り出すことにある」として、「地方公務員の政治的活動制限」がそもそもどういう意味をもつのか、本来意図するところからもずれていることなど明らかにしている。

 アメリカの政策的意図の配下に
 「1945年、日本軍国主義を解体する意図をもって、アメリカ占領軍最高司令部の発した「政治的、市民的及び宗教的自由に対する制限除去」指令により、労働運動が解放された。 同年労働組合法が制定され、公務員も民間労働者も、争議権を含め、労働基本権が完全に保障された(警察・消防・監獄の職員は除く)。」
 「しかしその後、米ソの対立・冷戦の激化・中華人民共和国の成立など国際情勢の変化の中で、アメリカは親米的・反共的再軍備の確立をめざし、またアメリカによる対日管理政策を忠実に実行する官公労働者の確保という政策的意図を実現するための、一つの重要な方策として、労働運動の弱体化をもくろんだ(芦田首相へのマッカーサー書簡に基づいて日本政府により、政令201号制定、国家公務員法改正、地方公務員法制定)。当時戦闘的に運動を進めていた官公労働者がそのターゲットとされた。
 その後これに抗して、スト権ストなど戦闘的な闘いを展開したが、法律を盾に刑事弾圧など行い、戦闘的組合主義への批判意識や迷惑論・違法論を、組合員には敗北感や無力感を植え付け、労使協調路線に転換され」、労働組合は分断され、民間の組合でも闘う組合員への差別や攻撃の横行により、組合が衰退していった。
 このように アメリカの意図につき従ってきた前・現政権と同じ土俵に乗り、強硬に労働運動の弱体化を推し進めている橋下市長はさらにファシズム的体質を併せ持っているという点で、 非常に危険である。

 官公労働組合による政治活動は一体何が不適切なのか
  「まず、最高裁は、かつて国労に『労働組合が組織として支持政党又は、いわゆる統一候補を決定し、その選挙運動を推進すること自体は自由である』と述べ、組合活動での選挙運動を認めている。また、地方公務員法は、『労働組合(職員団体)を勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体またはその連合体』と定義している。
 今般の大阪市長選に限って言うなら、橋下市長が掲げていた『職員基本条例』は大阪市職員の勤務条件に関わる問題なので、その勤務条件に反対する意図での選挙運動は『勤務条件の維持改善』を目的としており」、違法とは言えない。 次に、「地方公務員の政治的活動制限の範囲は、原則として単純労務および地方公営企業職員に対しては適用されず(一部例外あり)、それ以外の一般職地方公務員については一律に制約が課せられる。
 しかし、この制約について地方公務員法36条5項の『職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、および運用されなければならない。』と規定していることの意味を正しく理解すべきで、地方公務員の政治的自由に対する制限を無限定に行うことを禁じている注意規定もある。」と著者は書いている。正確に法令を適用するならば、「行政の公正な運営の確保を侵害していない政治的行為までも同条違反と考えるのはおかしい。」さらに上記(下線部分)の「目的のために必要であれば、地方公務員の政治活動の自由が認められることを意味する」とも書いている。
                      
  地方公務員といえども、一人の生活する人間であることに違いはなく、等しく憲法に保障された人権や生命・自由・幸福追求権などが尊重されなくていいはずがない。 ただし、公務員という仕事の性格上、中立性を保つことで「行政の公正な運営が確保」されなければならないことは上記の説明のとおりである。これは、憲法第15条に「すべての公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」とあることからも導きだされる。
 ところが橋下市長は、 大阪市役所の職員のみならず、市民をもまきこみ、自分の意思にそぐわないものを排除してしまおうという、公務員や法律家の立場も逸脱して、専制政治を行おうとしているとしか言いようがない。
 それが証拠には、橋本市長が強制したアンケート調査の契機ともなった「推薦人紹介カード配布リスト」がねつ造だったわけで、 何が何でも自分と反対の勢力を抹殺しようという独裁体質が見えている。この体質が基本なのだということを中心に見ていかないと、マスメディアの演出する人気に煽られて、 取り返しのつかない政治がはびこることになる。
 

「自治体ポピュリズムを問う」―榊原秀訓編著― の書評から少しご紹介
 地方自治体の首長の独裁的な政治手法による政策の強行を「自治体ポピュリズム」と命名し、その政治手法の非民主性・反憲法性を暴露。その政治手法について、選挙や住民投票での有権者の判断を自己への信任投票と位置づけ、議会を軽視・無視するなど、住民の政治参加や民意の反映を局所的なものに限定しようとするものであると批判します。 そしてその政策が、住民の権利を侵害し、生活基盤を破壊するものであることを徹底的に暴露しています。