小春奈日和

赤ちゃんは、人間は、どのように言葉を獲得するの?
わが家の3女春奈と言葉の成長日記です。

392 住吉大社の土を取る伝承

2015年05月27日 01時28分29秒 | 大国主の誕生
大国主の誕生392 ―住吉大社の土を取る伝承―
 
 
 『住吉大社神代記』には、畝傍山の土を採取して八十平甕を作るという埴使の神事の
起源と思われる伝承が残されています。
 この話は『日本書紀』が伝えるシイネツヒコとオトウカシが天の香久山の土で天の
平瓫(あめのひらか)80枚を作る話を連想させるものです。
 
 シイネツヒコとオトウカシの話は以前にも紹介しましたが、これは神武東征に登場する
エピソードのひとつです。
 大和の勢力のひとつ八十梟帥(ヤソタケル)を攻めあぐねていたイワレヒコ(神武天皇)の
夢の中に天つ神が現れて、
 「天の香具山の社の土を取りて天の平瓫(あめのひらか)80枚を作り、同時に厳瓫(いつ
くへ=神酒を入れる瓶)を神に供えよ。その上で厳呪詛(いつのかしり)を行えば敵は
おのずから伏する」
と、お告げをくだします。
 そこに、オトウカシ(大和在来の豪族で神武天皇に帰順した人物)が天皇の元にやって
来て、
 「天の香具山の社の土で天の平瓫を作り神々にお供えすれば必ず敵を打ち破ることが
できることでしょう」
と、夢のお告げと同じことを進言したので、イワレヒコは、オトウカシとシイネツヒコのふたりを
天の香具山に行かせます。
ただ、香具山は敵のテリトリーであり、その道中にも敵の兵士が臨戦態勢を取っていたので、
ふたりは身分の賤しい者が身にまとう衣服に着替え蓑笠をかぶり、シイネツヒコは老爺の
姿に、オトウカシは老婆の姿に変装します。敵の兵士たちは、ふたりを見て、
 「ずいぶんと醜い年寄りたちだ」
と、嘲笑して通してしまうのです。結果、ふたりは香具山の土を採取して天皇の元に帰還
します。
 
 さて、『住吉大社神代記』には次のような伝承が記されているのです。
 
 大神、昔皇后(神功皇后)に神託をくだし、
 「我をば天香山の社の中の埴土を取り、天平瓫を作って奉斎すれば、謀反を企てる者が
おっても必ず屈服させよう」
と、おっしゃった。
 そこで、古海人老父(こあまのおきな)に田の蓑・笠・簸を着せ、醜き者として遣わして土を
取り、それを用いて大神を祀った。それはすなわち為賀𥿻悉利祝(いかしりのはふり)、
古海人らなり。ここに天平瓫を造る」
 
 このふたつの説話を比べてみると、非常に似通っていることに気づきます。
 天の香久山の土を取りに行くのが老人、あるいは老人に変装した者であり、蓑に笠、そして
その姿が醜き者であるという共通点が挙げられます。
 
 しかし、それは今のところはさて置き、土を取るという説話は、その土地を領有する呪術で
ある、と多くの研究者が指摘しているところです。
 同時にそれは地主神、国魂神の信仰につながるものでもあります。
 太陽神であるとされる天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊(アマテルクニテルヒコアメノホアカ
リクシタマニギハヤヒノミコト)を始祖とする津守氏だけに、太陽信仰を司っていたと考えがちに
なりますが、実は国魂神の信仰も司っていたと思われるのです。

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