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小春奈日和

赤ちゃんは、人間は、どのように言葉を獲得するの?
わが家の3女春奈と言葉の成長日記です。

141 吉志舞の氏族たち

2013年06月01日 01時35分13秒 | 大国主の誕生
大国主の誕生141 ―吉志舞の氏族たち―


 いずれにせよ、吉志舞とは、朝鮮半島における武勲と新羅の
服属をテーマにした舞であり、服属儀礼だったと思われます。
 久米舞が、おそらく久米歌と同じく大和平定をテーマにした
国内の服属儀礼であったと思われますから、吉志舞は新羅など
海外の国が天皇に服属するものとして行われたのではないでしょ
うか。
 伝えられるところによる吉志舞は、甲冑をまとい、抜刀して
行われたといいます。

 その様は、志田諄一の、『日本書紀』雄略天皇八年の記事を
吉志舞の起源とみる説も説得力を帯びます。
 しかし、ここに登場するのは、膳臣斑鳩、吉備臣小梨、難波
吉士赤目子であって、阿部氏は登場しません。
 ならば、どうして阿部氏が践祚大嘗祭で吉志舞を奏するよう
になったのか。
 この矛盾を解決するためには阿部氏の系譜を見てみる必要が
あります。

 『古事記』には、

 「この天皇(註:8代孝元天皇のこと)、穂積臣(ほづみの
おみ)等の始祖内色許男命(ウツシシコオノミコト)の妹内色
許売命(ウツシシコメノミコト)を娶られて、お生まれになっ
たのが、
大毘古命(オオビコノミコト)
少名日子建猪心命(スクナヒコタケイココロノミコト)
若倭根子日子大毘毘命(ワカヤマトネコヒコオオビビノミコト
=開化天皇)
の3名」

と、あり、その後で、

 「ワカヤマトネコヒコオオビビの兄オオビコノミコトの子建沼
河別命(タケヌナカワワケノミコト)、この方は阿部臣等の始祖」

と、あるので、『古事記』では、孝元天皇の子オオビコの子タケ
ヌナカワワケが阿部氏等の祖である、としているわけです。

 これに対し、『日本書紀』は、オオビコ(『日本書紀の表記は
大彦』を孝元天皇の子としている点は『古事記』と同じなのです
が、

 「大彦命は、阿倍臣、膳臣、阿閉臣、狭狭城山君、筑紫国造、
越国造、伊賀臣、合わせて7族の始祖なり」

と、記し、阿部氏の始祖をタケヌナカワワケではなく、その父オオ
ビコとしているのです。
 そして、ここでは阿倍臣、阿閉臣を分けており、伊賀臣も同族と
なっています。
 伊賀臣については、『日本書紀』の宣化天皇の元年の条に、阿部
臣が伊賀臣を遣わして伊賀国の屯倉の殻を筑紫国の那津の宮家に
運ばせた、という、阿部氏と強い結びつきがあったものと思わせる
記事があります。
 そして、膳臣が同族となっていることには注目です。

 また、難波吉士氏については、『新撰姓氏録』に、次のように記
されています。

 「大彦命の子孫なり。阿倍氏の遠祖大彦命が崇神天皇の時代に、
蝦夷の制圧に向かうために兎田墨坂を進んでいた時、赤ん坊の泣く
声が聞こえた。見ると捨て子がいた。大彦命は大いに喜び、すぐさ
ま乳母となる女性を探した。そうして兎田弟原媛という女性を見つ
け乳母とした。大彦命はその子を、愛情を注いで養育した」

 この、オオビコに拾われた子が難波吉士の祖である、というので
す。
 もっとも、難波吉士氏は渡来系であったとする考えも根強く、『新
撰姓氏録』に記されている内容も史実であるかどうかは大いに疑問
なのですが、オオビコとの関係が深いものとする記事が書かれたそ
の背景には、難波吉士と阿部氏の強いつながりをうかがわせるもの
です。
 ただ、そうすると、『日本書紀』雄略天皇八年の記事で、新羅を
救援した膳臣、難波吉士、吉備臣のうち、膳臣と難波吉士が阿部氏
と同族、残る吉備臣も、オオビコがタケハニヤス王の反乱鎮定の際
に、タケヌナカワワケが出雲フルネ討伐の際に、吉備津彦とともに
戦っており、阿部氏とつながりの深い氏族なので(ただし、『日本
書紀』は吉備津彦を吉備臣の祖にはしていませ
ん。『古事記』は大吉備津日子を吉備上つ道臣の祖としています。)、
記事に登場いない阿部氏が吉志舞を奏する理由はここにあると思わ
れます。

 阿部氏と吉備氏のつながりはそれだけには終わりません。
 ともに蝦夷討伐に関わり、朝鮮半島に赴いていること、それにオ
オモノヌシと関係がある氏族である、というところです。
 すなわち、ともに服属儀礼に関係している氏族なのです。
 ここに、吉志舞が服属儀礼であると考えられる理由があるわけで
す。

 ですが、吉志舞が阿部氏と、その同族たちだけのものではありま
せんでした。
 『続日本紀』に記された黒山企師(吉志)。この黒山企師からは
海人たちが見えてくるのです。


・・・つづく

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