海はいいなあ
自由に生きているではないか
あれほど激しく続いた時化も
水温や潮の流れを変えることはできなかった
かもめよ共に喜ぼう
うねりに弄ばれた不安の海だったが
伏流する意識は海を海たらしめた
潮目が変わるところに銀鱗が跳ねるのだ
もう潮目は変わった
海中深くで耐えていた真実の塊が
徐々に海面にあらわれてきた
だれの目にもそこが潮境だと指させる時が来た
人の意識は大海原の意識だ
ぶつかり泡立ちながら静穏をめざすのだ
もう多くを語る必要はない
大海原の潮目に立ち会った確信を維持するのみだ
かもめよ共に歓ぼう
白濁する潮目に豊饒の魚が逆巻いている
暖流と寒流は右に左にと蛇行するが
一衣帯水の例えも未だ健在だ
海はいいなあ
底なしの慈愛に満ちている
さまざまな思いがぶつかる潮境だからこそ
わだつみの歌に耳を傾けるがいい
(『潮目』2015/08/19より一部修正して再掲)
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