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どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム08 『追憶のヤマユリ』

2012-11-05 00:26:34 | ポエム


      ヤマユリ

      (城跡ほっつき歩記)より

 

 

あの山百合は どこへ行ったのだ
去年はじめて 日陰に咲いた懊悩の花


庭先をわたる風に乗って ぼくを誘惑した魅惑の匂い
どこへ消えたのだ 娘盛りの山百合よ 


人目に付いたら 幾多の危険にさらされる
分かっていたのに 次の季節へ委ねた

 

春のうちに 山百合の寝床は荒らされ
ぼくを挑発するように 黒々とした穴を残していた


通りすがりの花好きなら ぼくの愉悦を奪うな
ユリ根採りの業者なら おまえの略奪を告発する


もしも森のネズミなら ほかの実りを狙え
いずれの者も 大罪を悔いてぼくの前に跪け


夏の昼下がり テラスの椅子に身を預ける
イギリスの小説に飽きて 時折まどろみながら

 

あれほど素敵な女には 二度とめぐり合えないと
奪われた山百合を追慕し 初老の感傷にひたる


潮騒のようにざわめく風よ 木の葉とともに胸中を渡るな
季節は移ろい 体内で時を刻むテロメア時計の音がする

 

若き日を引き戻そうと 長針に手をかけるが
表示された命の残高は いかんともしがたい
 






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4 コメント

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山百合に導き出される情感 (窪庭忠男)
2012-11-07 15:35:04
丑さん、おっしゃる通り、人はこの花になんらかの情感を動かされるようです。

自分の山小屋体験と重ねて一つの物語ができましたが、山百合を通してこの詩を思い出していただけるなんて、本当に身に余る光栄です。

心から感謝申し上げます。
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山百合への思い (丑の戯言)
2012-11-06 21:31:35
あの山百合と「ぼく」の思いが実に切々と歌い上げられた詩文には、なんともいえない美しさを感じました。
美しい情熱的な花と筆者を重ね合わせたところが素晴らしい。

思い返すと、山百合という花は、男(女も)にさまざまな情感を呼び起こすようですね。
そこのところを筆者は優しく掬い取っているようです。

いつかまた、山百合に出合うことがあったら、この詩文を思い出すことでしょう。
返信する
たくらまざる撮影技術 (窪庭忠男)
2012-11-06 17:09:58
今回もまた貴重な画像と背景の解説ありがとうございました。
かつての勤務先でいまも大事にされているとのこと、嬉しい限りです。

さて、ヤマユリの画像についてですが、画面の左半分が、まるで右側のヤマユリの背面鏡像のように見えるのですが・・・・。
誇らしげに咲く花の正面と、その花の背面像の間に、目に見えないカガミが差し込まれているような不思議さです。
ヤマユリの花の付け方がこのような錯覚を呼んだのかもしれませんが、それだけでなく光の量も右側が多く、左側は心なしか翳っているように見えます。

個人的な印象として、たくらまざる撮影技術かと感じ入った次第です。



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いつもどうも (小頭@和平)
2012-11-06 02:50:41
こんばんは。
相変わらず、ご無沙汰をしております(汗)
いつも植物画像を、引用の上ご利用をいただきありがとうございます。
また11月に入り朝晩は大分寒くなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

このヤマユリは以前に勤務していた職場の近所の方のご厚意で゜植えていただいたものです。
生垣のカナメモチとコブシの木に囲まれた、やや日陰気味の環境でしっかりと根付きました。

その後は職場を退職をしたために、最近では直接目にはしておりませんが、風の便りでは毎年その時期には開花していると聞いております。

拙宅の派手好きなカノコユリとは違い、落ち着いた優雅な印象がその香りとともにいまでも深く脳裏に刻まれております。
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