どこかに笑顔が落ちていないかな
拾い屋のゲンさんは地面を見回す
タバコの吸い殻がたくさん落ちていた時代は去り
今はバス停の辺りにチラホラ
かがんで拾うのは街の美化のため
誰に頼まれたわけでもない単なるボランティア
ここまで生きてきて社会への恩返し
求めるのは街角に転がっている笑顔だけ
先月はとびきりの笑顔に出会ったなあ
ゲンさんは思わず思い出し笑いを漏らす
<あら、拾い屋さん? ずいぶん久しぶりだわねえ
見かけない老婆からいきなり声をかけられたのだ
<あんた三ノ輪から引っ越してきたの?
ほら、わたしよ。タバコ屋の看板娘
自分のことをヌケヌケと看板娘と名乗り
満面の笑みを浮かべて話しかけたのだ
ゲンさんは三ノ輪に住んだことがない
だが老婆の笑顔が顔じゅうに弾けたので
つい相手をする気になった
<わたし、亭主に先立たれちゃったの
訊かれもしないのに勝手にしゃべりだす
<へえ、おじさんすごく元気だったのに
会ったことなどないのに適当な返事
老婆とゲンさんの会話は宙に笑いの渦を巻く
<今日は最高の笑顔を拾ったな
ゲンさん太陽を振り仰いで感謝する
バイバイした後も胸のあたりが温かい
ゴミも笑顔も拾える人生は幸せだ
その設定がとても面白かったです。
昔、こういう日常の「普通」を書くのに長けた作家に内海隆一郎さんという作家がいました。
胸が温かくなりながら、久しぶりに思い出しました。
ありがとうございました。
ホンワカ気分なっていただけて良かったです。
早く秋晴れの空が見たいですね。
ありふれた日常を描く作風が、多くの読者に支持されていたんですかね。
ありがとうございました。
今は昔。。。(^O^)
話を合わせる事も、うそも方言も必要だなっと思います。
人をだますのでなく、会話を楽しむ。。。
人生の経験者という感じです。
なるほど、人生の経験者・・か。
うまい評言ですね。
ゲンさんのように生きられれば最高ですね。