ムラサキゴテン
(城跡ほっつき歩記)より
ムラサキ色の御殿が
堀に囲われた敷地に広がっている
幾重にも秘された大奥の
女中のように咲いたのだ
国盗りに明け暮れする男たちの
昂ぶりを鎮めるために
ムラサキ色の褥を敷いたのだろうか
妖艶に行きつく前のほのかな紅が初々しい
鷹狩りの武将に見初められ
駕篭に乗せられて鄙の地から運ばれたのか
おどおどと覗き窓から視線を揺らし
ムラサキゴテンは六月の風に晒される
城中に曲者が忍び込んだぞ、と
曲輪の回廊をめぐって声が届いたとしたら
召された女の許婚者に違いないなどと
大奥の女たちはヒソヒソ話に目を輝かす
うつつの狼藉は二の丸どまり
奥まで忍び込む豪の者など白日の夢
殿がこよなく愛でる紫御殿の庭先には
褥に合わせて匂い立つ花があわあわ
わずか三百年の記憶もすでに霧の彼方
戦の世も泰平の世も共に夢まぼろし
仮託した物語をムラサキの花々にとどめ
紫御殿はますます妖しさを増している
この特徴のある紫色の細長い葉を目にすることは割合と多いのですが、淡い紫色の可愛らしい花は殆ど咲かない場合もあります。
これは例え花が咲かなくとも茎が匍匐してグランドカバーのように繁殖することが可能だという性質にあるのかも知れませんね。
ツユクサ科に属する多年草で、南関東の市街地では地植えしていても越冬できる性質があります。
これによく似ている花には、ムラサキツユクサやゼブリナなどがあります。
埼玉県上里町に所在する中世の城館跡(戦国期の地侍層の館跡)と推定されている吉祥院館の道端で撮影したものです。
全面紫色の葉は珍しいと思うのですが、地植えならこれが地面を這って増えていくとは考えもしませんでした。
ムラサキゴテンという、優美な名がつけられた理由も知りたいものです。
この植物が城跡の道端で咲いていたとは、なかなかのマッチングかと嬉しく思いました。
今回も画像拝借させていただき、ありがとうございました。
誰がつけたんでしょうかね。
葉も茎も紫という珍しい植物で、花はやや白っぽいピンクから濃いピンクまで多種あるようです。
日本には1955年に渡来したそうですが、元となった野生種はあまり栽培されていないそうです。
セトクレアセアの名前で呼ばれることもあるようですが、濃いピンクの花を咲かせる園芸品種パープルハートという品種を指してムラサキゴテンというのが一般的だそうです。
果たして誰が「紫御殿」の名を付けたか、興味深いですね。
ありがとうございました。