ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

朗読者

2008-11-20 00:04:31 | Weblog
ベルンハルト・シュリンク著、新調クレスト・ブックス。

いま長編を読み始めてしまったので、少し前に読んだ本についてです。
世界的な成功をおさめた作品で、映画化もされています。
ニコール・キッドマンが懐妊して降板した作品ですね。

15歳の少年が、21歳年上の女性と出会い、
恋に落ちるところから物語は始まります。
ということは、女性の年齢は36歳。うむ。すごい。

かなり強引にストーリーを要約すると、
2人が付き合いはじめたあと、
女性は少年に本を朗読してほしいと頼みます。
その後ふいに女性は失踪し、数年経って、
この2人は、思ってもいなかった場所で再会します。

読み進めていくうちに、少しずつ見えて来る女性の心情や背景は、
とても理解できるなどとは言えないし、
私には想像もつかないものだけれど、
何ともやるせない気持ちになりました。

ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を読み終わった時の気持ちと、
なんだか同じような感じがして、
「恥」や、もっと言うと「原罪」のようなものが
根底で語られていると思いました。
つまり恋愛小説として読むには、私の恋愛に対する想像力が足りませんでした。

毎日、仕事をしていると、「できる自分」というか、
意地をはって自分を鼓舞しているようなところが、どうしてもでてくるし、
逆にそれが責任感にもつながって、よい仕事をうみだすことがあるけれど、
心の底では、「できない自分」や限界を感じている。

そして、もっというと、自分の責任ではないことであっても、
受け止め、引き受けなければならないことがあって、
自分が万能でないことを知らされるし、
それによって引き起こされる心の動きから、高潔でもないことを知る。
見ないふりをすることもできるけど、深いところで知ってしまった自分。

よほど超人的に変なことをしない限り、確実に泣ける映画になる原作です。


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