ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

カラヤンがクラシックを殺した

2008-11-21 23:22:41 | Weblog
宮下誠著、光文社新書刊。

うむ。カラヤンの指揮に対しては、
著者が感じているのと同じような印象を私も受けます。
そして、私もカラヤンの指揮はあまり好きではありません。
といっても、生では聞いたことがなくて、レコードでしたが。

それにしても、久しぶりに出会った読むのがつらい本でした。
何もドイツの哲学者を羅列したり、哲学用語を使わなくても・・・。
アウラやエポケー(判断停止)という言葉ではなくて、
感覚的にしっくりくる日本語を使ってほしかったです。。
日本人のうち何人の人が、こういった言葉に触れたとき、
しっくりくるものなのか。
どんな人を対象に書いた文章なのでしょうね。

そして、今の世の中をそんなに欺瞞に満ちたものだと
かなり断定口調だったのですが、世の中そんなに捨てたものではないと思っているので、
「まあまあ」と言いたくなりました。
いろいろと世の中に対して自分の価値観を表明したい気持ちはわかるけれども、
ものごとのある側面をクローズアップして断言する筆致は、
私の感覚には、あまりしっくりきませんでした。

嫌いなもの、苦手なものを、多くの人に読んでもらう文章として書くときには、
おそらく好きなことを書く時よりも、数倍の注意が必要でしょう。
と思い至ったところで、私もこの本について書くのは終わりにします。

小林秀雄の「モオツァルト」。あれは名文でした。
読んだ後にモーツアルトを聴くと、今までは気がつかなかった新鮮な喜びが
感じられたものでした。
自分では言葉にできない微細な感覚を、小林秀雄が言葉にしてくれたという
感謝の気持ちがわきました。

そして、話は飛びますが、
光文社新書の装丁、とても好きです。
アラン・チャン氏ですね。


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