JR西日本の鉄道整備に実践導入され話題となっている、高所作業用人型ロボット「零式人機ver.2.0」の開発を担当した「株式会社人機一体」社長の金岡博士にインタビューを実施。開発の転機となったのは東日本大震災だったという。
【映像】話題の高所作業用“人型ロボット”(実際の映像)
金岡博士がロボット開発を始めたのは、京都大学で化学工学を学び大学院で修士課程を修めたのち、立命館大学の理工学部で教鞭を執ったときだった。2005年の愛・地球博では、まだロボットのアーム部分を発表する段階だったが、2011年3月11日の東日本大震がきっかけとなり、実用的ロボットの普及に全身全霊をかけるようになったそう。
特に福島の原発事故の事後処理について、ロボット開発者としての責任を痛感したそうで「ロボット研究者としては屈辱だった、ロボット工学の敗北だと思った」と当時を振り返った。震災時に関西にいて直接的な被害は受けていないという金岡博士だったが「テレビでみていて、こんな屈辱的なことはないと思った」と告白。
「日本全国が、福島第一原発事故のときに『これはロボットの出番だろ』とみんな思った。そのときに我々にはここで役に立つロボットはありません、我々のところには役に立つロボットを持っていません、というのがロボット研究者として屈辱だったか」と悔しがった。
さらに「日本のロボット工学は、世界的に見てもレベルが高くて世界一だと思っていた、自負していたところもあった」「しかし、結局のところ何の役にも立たないのだと。有事のときに何の役にも立たない研究をこれまでしてきたのだと思うと、このままではいかんなと思った」と心情を吐露した。
今後の展望を聞かれると「魔法みたいなロボット工学技術がいっぱいあって、それが世の中に出て行けば、すごいことが起きるはず。世の中の産業が変革するとともに、有事の災害復興にも劇的に役に立つはず」とコメント。
「そのために我々が目を付けたのがインフラメンテナンスの分野」と続けると「平時のロボットがもしもの有事には災害復興、災害対応ロボットに変わるというのは実現できるだろうと考えている」と展望を語った。
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2025年は人型ロボット元年になりそうだ。中国のロボット産業はバリューチェーンが確立し、本格的な量産のステージに入ろうとしている。ただ、その中心にいるのは、ロボット企業だけでなく、新エネルギー車(NEV)メーカーたちだ。新エネルギー車メーカーの多くが、「EVの次」としてロボットに狙いを定めている理由は何か。中国ですでに実用化も進む、ロボット活用の実態もレポートする。
【詳細な図や写真】モルガンスタンレーが選んだ「ヒューマノイド企業」100社の内訳。バリューチェーンを形成している100社を選んだところ、米国・カナダと中国・台湾が35社ずつになった(出典:モルガンスタンレー「The Humanoid 100: Mapping the Humanoid Robot Value Chain」を基に編集部が和訳・作図)
モルガンスタンレーが選んだ「ヒューマノイド企業100」
米金融大手モルガンスタンレーは、2025年2月、ヒューマノイド(人型ロボット)に関するレポート「The Humanoid 100: Mapping the Humanoid Robot Value Chain」を公開した。
これは世界のメーカーから、人型ロボットのバリューチェーンを形成している部品メーカー、開発メーカーなどを100社選んだものだ。その内訳は、中国・台湾が35社と、米国・カナダの35社と並ぶ結果となった。人型ロボットは米国と中国で量産が始まろうとしていることを示している。
エヌビディアの技術者も注目、中国ロボットベンチャー
2024年後半から、中国のロボットベンチャーはSNSを通じて国際的な話題を次々と提供している。2025年1月には、中国深センのベンチャー「EngineAI」(衆擎機器人)が公開した人型ロボット「SE01」の映像が話題となった。
EngineAIが公開した、同社の人型ロボット「SE01」が歩行する動画
: https://www.youtube.com/watch?v=N_ALMlOipCI :
深センの街中をSE01が歩いているだけの映像だが、その歩き方がロボットのそれではない。安定最優先のロボット特有の歩き方ではなく、人間と同じようにスタスタ歩いているのだ。
エヌビディアのロボティクスなどの開発を進めるGEARラボのジム・ファン氏はこの映像を見て、Xに「これは本当の映像なのか。最近は生成AIの映像と本物の映像が見わけられなくなっている」と詳しい情報を求める投稿をした。翌日、ファン氏は確かな筋から情報の確認ができたとして、あの映像は本物だったと投稿した。
2024年11月には、浙江省杭州市の「Kemuko」(科梦奇机器人)が、ショールームからロボットが集団脱走した防犯カメラ映像を公開して話題になった。深夜に「二白」と呼ばれる小さなロボットが「家に帰りたい」と音声を発しながら移動し、ショールームに並んでいるロボットたちに「一緒に帰ろうよ」と語りかけると、合計12台のロボットが外に出ようと試みたというものだ。
「家に帰りたい」というのは「充電が必要」という意味で、その可愛らしいやり取りが話題となり、瞬く間に3000万回以上再生されたが、多くの人が驚いたのが、ロボットたちが音声言語で会話をし、その会話に基づいて行動できることだった。現在、多くのロボットが大規模言語モデル(LLM)をベースにした音声コミュニケーション機能を備えており、人間と会話をして、命令を理解し、行動に移すことができる。
上海市のロボット開発ベンチャー「AgiBot」(智元機器人)は、上海市にロボットの訓練センター「AgiBot World」を開設した。4000平方メートルの空間に、「家庭」「キッチン」「工場」「スーパー」「オフィス」の5つのシーンが再現され、ロボットに仕事を教えている。人が手にデバイスを持ち、どのように体を動かせばいいのかを手取り足取り教えているのだ。
また、AgiBotではロボットのソフトウェアの大部分をオープンソース化しており、AgiBot Worldで学習したデータもオープン化をする。基礎訓練を終えたロボットを購入し、自社業務に特化したファインチューニング開発ができるようになっている。
つまり、ロボットといってもメカニカルなものではなく、背景にAI技術があり、最近ではEAI(Embodied AI=体を与えられたAI)と呼ばれるようになっている。
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5月:中国で空飛ぶクルマやドローンは「低空経済」と呼ばれ、低迷する景気を盛り上げる救世主として期待されています。
実用化に向け急ピッチで開発が進む空飛ぶクルマや、ドローンが街に設置された宅配ボックスまで食事を届けてくれるフードデリバリー。
今、中国が力を入れているのが、高度1000メートル以下の低い空域で人とモノが移動するビジネス活動「低空経済」です。
中国での市場規模は2030年に60兆円超え。
加速する低空経済の最前線を取材しました。
中国で開催されている「上海モーターショー」。
100以上の新しいEVが披露される中には、空飛ぶクルマの姿も多く見られました。
EVのように見える車体の上にはコックピットが。
トヨタ自動車と合弁パートナーを組む「広州汽車」が開発した空飛ぶクルマです。
乗り込んでみると、ハンドルやペダルが何もなく、目の前にあるのはタッチパネルだけ。
その見た目どおり、地上でも走行ができ、飛行する際はコックピットのみが分離する仕組みだといいます。
「広州汽車」開発責任者・蘇慶鵬氏:
私たちの空飛ぶ車が急速に発展できたのは、70%の技術がEVと一致しているからです。
EVで世界トップを走る中国ですが、開発担当者によるとバッテリーやAI(人工知能)による自動運転など、EV技術の70%を空飛ぶクルマの開発に生かすことができるといいます。
「広州汽車」開発責任者・蘇慶鵬氏:
EVや航空産業のサプライチェーンがあるから、空飛ぶ車の分野でも世界をリードできるだろう。
広州汽車では2025年中に空飛ぶクルマの販売を受け付け、2026年には生産を開始する予定です。
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