7月
イラン内務省は6日、5日投票の大統領選の決選投票で、改革派のペゼシュキアン元保健相が勝利したと発表した。
大統領選はライシ大統領がヘリコプター事故で死亡したことに伴い行われ、同氏と保守強硬派のジャリリ最高安全保障委員会元事務局長が決選投票に臨んだ。内務省は「過半数の票を獲得したペゼシュキアン氏がイランの次の大統領になった」と発表した。投票率は50%程度だった。
ペゼシュキアン氏は、核開発や中東における武装勢力等への支援などを巡り、大きな政策変更を行うことは予測されていない。だが、85歳と高齢で全ての政策で最終決定権を握る最高指導者ハメネイ師の後継問題に影響を与えるとみられる。
ペゼシュキアン氏の当選により、2015年に締結した核合意を巡って停滞した米英などとの交渉などの外交面でより現実的な路線が取られ、社会の自由化などでも前進が見られる可能性があると指摘する専門家もいる。
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イスラム組織ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤ氏がテヘランで死亡した事件は、自国や同盟国の要人を守るイランの能力に疑問を投げ掛けた。この事件にイランがどう反応するつもりなのかは不透明だ。
ハニヤ氏はイランのペゼシュキアン大統領の就任式に出席するためテヘランを訪問していた。ハマスが31日発表したところによると、ハニヤ氏は滞在していた宿泊施設で夜間にイスラエルの攻撃に遭い、死亡した。
その数時間前にイスラエルはレバノンで親イラン民兵組織ヒズボラの司令官を殺害したと発表。さらに数カ月前には、シリアでイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)司令官らが空爆を受けて死亡。イランはイスラエルによる空爆だと非難した。
ハニヤ氏殺害がイラン国内で起き、その数時間前に同氏がイラン国営テレビ局でペゼシュキアン大統領を称賛していたことを踏まえると、今回の暗殺はイラン情報機関と最高指導者のハメネイ師、IRGCにとって大失態と言える。
ハメネイ氏は国営テレビで読み上げられた声明で、ハニヤ氏を迎えていた国としてイランは「復讐を求める義務」があると主張。イスラエルの「人殺しでテロリストのシオニスト体制」は「厳しい処罰」を覚悟するべきだと続けた。イスラエルは今のところハニヤ氏殺害の責任を認めていない。
イランはパレスチナ自治区ガザでイスラエルと戦うハマスの主要支援国だ。ハマスはレバノンのヒズボラ、イエメンの武装組織フーシ派、パレスチナのイスラム聖戦とともに、米国とイスラエルの利益に抵抗する枢軸を形成している。いずれのグループも程度の差はあれ、イスラエルとの紛争に関与している。
イランの情報および安全保障担当の最高幹部は、次の一手を判断しようとするだろう。全面戦争を避ける慎重な対応を再び取るのか、ハニヤ氏殺害が一線を越えたとして域内でのイメージ回復だと判断するのか、決断を迫られる。
イランの国連代表部は、報復が「特殊作戦」の形を取るとX(旧ツイッター)に投稿し、限定的な対応を示唆した。過去の報復措置では、イスラエルや米軍基地へのミサイル攻撃をイランは行った。
英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)の中東・北アフリカ・プログラム担当ディレクター、サナム・バキル氏は、ハニヤ氏への攻撃について「イランの情報・安全保障機関に大きな穴が開いていることを露呈した。情報が漏れ、イランにとっては極めて大きな失態だ」と指摘。近く退任するハティブ情報相がわずか数日前、国内におけるイスラエル情報機関の影響力をイランは削減したと話していただけに、いっそう無様に映るとバキル氏は語った。
イランの安全保障に大きな欠陥が生じた理由の一つは、ユネシ元情報相の2021年の発言で説明されるかもしれない。同氏はジャマラン・ニュースとのインタビューで、2010年代初めに「競合する新たな複数の情報機関」が創設されて情報省が弱体化し、イスラエルのモサドがイラン国内に浸透する直接的なきっかけを作っていると述べていた。
イランは今年に入り、既にイスラエルとの直接戦争の危機に瀕している。4月にはシリアで攻撃を受けた報復として、前例にない規模のミサイル攻撃をイスラエルに仕掛けた。これに対してイスラエルは当面は小競り合いの枠内とする限定的な形で対応した。
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イランの首都テヘランで31日、パレスチナ自治区ガザ地区を拠点とするイスラム組織ハマスの指導者ハニヤ氏が暗殺されたことを受け、イラン最高指導者のハメネイ師は同日、声明を出し、イスラエルに対する報復を宣言した。イランメディアが伝えた。
ハメネイ師は声明で「シオニスト体制(イスラエル)は我々の家で客人を殉教させ、自ら厳しい処罰への下地を整えた」と指摘。そのうえで「イラン領内で起きた事件に報復するのは我々の義務だ」と述べた。
イランは4月、在シリアのイラン大使館が空爆されたことへの報復として、イスラエル領内に300発以上のミサイルなどを発射している。
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米紙ニューヨーク・タイムズは1日、イランの首都テヘランで7月31日に殺害されたパレスチナ自治区ガザのイスラム主義組織ハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤ氏が滞在した宿泊施設に、爆破装置が仕掛けられていたと報じた。米国やイランなどの当局者が同紙に明らかにした。
爆破装置は約2か月前に持ち込まれ、ハニヤ氏の到着を確認して遠隔操作で起爆された。同施設はイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」が管理・警備しているといい、どのように装置が持ち込まれたのかは不明だ。
米ニュースサイト・アクシオスも、AI(人工知能)を搭載した爆破装置が寝室に設置されていたと伝えた。イラン国内にいるイスラエルの対外情報機関モサドの工作員が起爆したという。
イスラエルはハニヤ氏殺害への関与を認めていないが、同紙によると、同国当局者は殺害直後に米国などに作戦の詳細を説明した。
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イスラム組織ハマスの最高幹部がイランを訪問中に殺害されたことをめぐり、アメリカのメディアは、宿泊先の部屋に仕掛けられていた爆発物で殺害されたと伝えていますが、状況を調べていたイランの軍事精鋭部隊は「敷地の外から発射された飛しょう体によって殺害された」と発表しました。
ハマスのハニーヤ最高幹部は、7月31日に訪問していたイランの首都テヘランで殺害されました。
当時の状況を調べていたイランの軍事精鋭部隊・革命防衛隊は3日、声明を出し、「イスラエルによって計画・実行され、アメリカによって支援されたテロ行為だ」と主張しました。
そのうえで、ハニーヤ最高幹部の殺害は、宿泊していた施設の敷地の外から発射された短距離の飛しょう体によって行われたことが分かったと説明しています。
一方、アメリカの複数のメディアは、イスラエルによって宿泊先の部屋に仕掛けられた爆発物で殺害されたと伝えていて、情報が錯そうしています。
革命防衛隊は声明で「イスラエルは、この犯罪に対する報いとして適切な時と場所、質で、厳しい罰を受けるだろう」として、報復を行う考えを改めて強調しています。
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イスラム組織「ハマス」の最高指導者・ハニヤ氏がイランで殺害されたことを受け、ハマス指導者がANNの取材に応じ、イスラエルとイランが「戦争状態に入った」と述べました。
イランにおける「ハマス」指導者 カレード・カッドミ氏
「私は(ハニヤ氏が殺害された)部屋を見た。壁2枚と天井が破壊された。つまり何かが建物の外から飛んできて建物を破壊したということだ」
カッドミ氏はハマスの後ろ盾となっているイランにおけるハマスの指導者のトップで、ハニヤ氏が殺害された当時、同じ建物にいたと話します。
ハニヤ氏の部屋に爆弾が設置されていたとの報道については、「イスラエルとアメリカが責任逃れをしたいだけのシナリオだ」と否定しました。
カレード・カッドミ氏
「戦争がレバノンで、シリアで、イラクで、イエメンで起きている。イスラエルによりすべての虐げられた人々に引き起こされた。イランも戦争状態に入った」
中東全体の緊張が高まるなか、カッドミ氏は「私たちは戦争をしたくないが、自衛できるし、勝つつもりだ」と強調しました。
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8月:
パレスチナのイスラム組織ハマスの最高指導者だったハニヤ氏がイランで暗殺された事件で、米紙ワシントン・ポスト(電子版)は6日、米政府当局者の話として、イランがイスラエルに対する大規模報復攻撃の計画を再検討している可能性があると伝えた。
米政府はイスラエルの防衛に協力する態度を鮮明にし、軍事と外交の両面でイランへの圧力を強めている。
同紙によると、イランと国交がない米国は、スイス政府などを介して、報復による緊張激化のリスクが極めて高いとするメッセージを伝達。就任したばかりのイランの改革派ペゼシュキアン大統領の政権運営に深刻な影響が及ぶと指摘したという。米政府高官は同紙に「米国がパートナーの防衛に揺るぎないことは、イランも明確に理解している」と語った。
ブリンケン米国務長官は6日、「誰もこの紛争を激化させるべきではない」と訴え、イランとイスラエル双方に直接懸念を伝えたと強調。「さらなる攻撃は紛争と不安定を永続させる」と述べた。
ロイター通信によれば、ロシアのプーチン大統領も、イランを5日に訪れたショイグ安全保障会議書記(前国防相)を通じ、最高指導者ハメネイ師にイスラエル攻撃で民間人に犠牲が出ることのないよう自制を要請。衝突拡大の阻止に向けて各国の外交努力が続いている。
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9月:イランがロシアに数百発の弾道ミサイルを供与したとイギリスメディアが報じました。
フィナンシャルタイムズは8日、ウクライナの政府高官の情報として今週、ロシアのカスピ海にある港にイランから200発以上の短距離弾道ミサイル「ファタフ360」が到着したと報じました。
ウクライナ当局者は、ロシアは「ファタフ360」を東部の前線地帯にある陣地や軍事目標を攻撃するために使用する可能性があり、イランによるロシア支援の重大なエスカレーションを示すものだとして深刻な懸念を示しています。
一方、イラン外務省の報道官は国営通信の取材に「ロシアへの弾道ミサイル移送は根拠がない」と反論したうえで、「イランはロシアのウクライナ侵攻に関与したことはなく、政治的解決を支持する」と述べたということです。
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10月:イスラエル軍は1日、イランがイスラエルに向けてミサイルを発射したと発表した。イスラエルによるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師の殺害や、同組織を標的とした地上侵攻などに対する報復とみられる。イランがイスラエルを直接攻撃するのは4月以来で、中東における危機が一層拡大するのは避けられない状況だ。
イスラエルは1日未明、北隣レバノン南部での地上作戦を始めたと発表。この地上侵攻について、ヒズボラに対する地域と標的を絞った「限定的」なものだと主張しており、ヒズボラを支援するイランの出方が注目されていた。
イランは4月、シリアにある自国の大使館が空爆され、革命防衛隊の幹部らが殺害された報復として、イスラエルに300以上のミサイルやドローン(無人機)を発射。イスラエルは米英仏やヨルダンの協力のもと、攻撃の「99%」の迎撃に成功していた。今回の攻撃で、イスラエル側にどのような被害が出たかは現段階では不明だ。
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10月:イスラエル軍が26日に行ったイラン国内への空爆について、イラン側が被害は限定的だとする一方、一部のメディアは、弾道ミサイルの製造設備が破壊され、イランのミサイル製造能力に深刻なダメージを与えたとの見方を報じています。
イスラエル軍は26日、イランがイスラエルに対して今月1日に行った大規模なミサイル攻撃への対抗措置として、イラン国内の複数の地域に空爆を行い、ミサイルの製造施設や地対空ミサイルシステムなどを攻撃したと発表しました。
イスラエルメディアによりますと、およそ20か所の標的に対して3回に分けて攻撃が行われたということです。
イラン軍は、イスラエル軍の攻撃はイラクの領空に侵入して行われ、迎撃に成功したものの、兵士4人が死亡したほか、いくつかのレーダーシステムに限定的な被害が出たと明らかにしています。
一方、アメリカのニュースサイト、アクシオスは、複数のイスラエル当局者の話として、弾道ミサイルの固体燃料を製造するための設備12基を破壊したと伝えています。
これによりイランの弾道ミサイルを製造する能力に深刻なダメージを与え、イランが支援する中東各地の武装組織へのミサイル供給も制限されるとの見方を示しています。
攻撃目標については当初、石油関連施設や核施設の可能性も報じられていましたが、イスラエル首相府は声明で「国益に沿って攻撃目標を選択した」としています。
27日には、イスラエルとイスラム組織ハマスの間の停戦と人質解放に向けて、イスラエルの代表団がカタールを訪れ、仲介国とアメリカとの協議を再開する見通しで、今後、協議の進展につながるかが焦点です。
イラン ハメネイ師 反撃について具体的に言及せず
イランの国営テレビによりますと、最高指導者ハメネイ師は27日に行った演説で、イスラエル軍による空爆について「イスラエルの計算違いだ。彼らはイラン国民の強さや意志を理解しなければならない」と反発しました。
その一方で、今後の対応については「国家と国民にとって最善の方法がとられるべきだ」と述べるにとどめ、反撃するかどうかなど具体的に言及しませんでした。
イスラエル軍の攻撃への対応をめぐってイラン側は、ガザ地区やレバノンの情勢を見極めながら、慎重に判断する姿勢を示しています。
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