窓際日記・福島原発

窓際という仕事の雑感

アインシュタイン

2024-08-29 09:46:15 | Weblog

ポアンカレの怒り
このような一連の事実を並べてみると、アインシュタインの「特殊相対性理論」は少なからぬ先人たちの思考や仮説、実験結果と無縁でないことは明らかである。

だからといって、「光速不変」を原理として規定し、エーテルの存在をきっぱりと否定し、“時間の遅れ”や“長さの縮み”を理論的に明らかにし、「特殊相対性理論」という革命的な理論体系を構築したのはアインシュタイン一人なのだから、彼の栄光が減じられることは少しもない。

しかし、アインシュタインが1905年の「特殊相対性理論」の末尾に、友人であったベッソーへの謝辞を掲げるのみで、論文中にマクスウェル、ローレンツの名前は見られるものの、マイケルソンやモーレイ、ポアンカレ、フィッツジェラルドらの文献が引用されていないのは、いささか不可解といわざるを得ない。この点において、アインシュタインは非難されても仕方ないだろう。

また、アインシュタインのこの論文の査読者(私はプランクではないかと想像する)が、そのことを指摘しなかったとすれば、私には、それも不可解である。

ポアンカレは並外れて優れた数学者、物理学者で、おだやかな人柄として知られていたが、自身の論文を引用文献としなかったことに関しては、アインシュタインを生涯許さなかったそうである。

私には、ポアンカレの気持ちがよくわかる。

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ロシア

2024-08-25 05:59:18 | Weblog

8月

8月24日で、ロシアがウクライナへ侵攻を開始して2年半が経過する。
このタイミングでロシアは第2次世界大戦後、初めてとなる外国軍によるロシア領土への本格的な侵攻を受けている。

 

にもかかわらず「国民の安全を守る強いリーダー」を自負するプーチン大統領は、ウクライナの攻撃について不自然なほど言及しない。
そして、ロシア国内でも避難者の状況を伝える報道は極端に少ない。

ウクライナが越境攻撃を加えているロシア西部クルスク州の国境地帯から300kmほど北東に位置するオリョール市。中心地の建物に支援物資が集められている

ここに来れば、避難者の現状が何かわかるのではないか。
ウクライナが攻撃を始めて1週間後の8月13日。その現場を訪れた。

現場を監督している女性は当初、取材を許可してくれた。しかしほんの数分後、私たちは同じ女性により建物から追い出された。

「撮影をやめてください。今すぐに出て行って下さい!」

なぜ、避難者の情報は隠されるのか。
プーチン大統領が沈黙する理由とは何なのか。

(ANN取材団)

■ウクライナによる攻撃開始の一報は“従軍ブロガー”から
ウクライナによるロシア領への直接攻撃を最初に伝えたのは、ウクライナ侵攻を支持し、ロシア軍に同行取材を繰り返している「Zブロガー」と呼ばれる人たちだった。

8月6日の早朝、彼らはウクライナ側から重装備の武装集団が国境を越えてロシアに侵入したと伝えた。彼らの情報によれば、かなり大規模な攻撃のようだ。

しかし直後の同日午前10時、クレムリンに近いテレグラムチャンネル「マッシュ」が、その報道を打ち消す形で、攻撃を仕掛けてきた約100人の武装集団をロシア側が撃退したと報じた。ロシア国防省やクルスク州のスミルノフ知事代行は攻撃を受けたことは認めたものの「ロシアは国境を突破させなかった」と発表した。

しかし、事実は違った。「Zブロガー」たちのほうがより正確だった。
「Zブロガー」らは「撃退した」とするロシア国防省の発表は虚偽だと訴え、大規模なウクライナ軍に国境を越えられたロシア軍の「失態」を批判し続けた。・・・

https://archive.md/iiQX6

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9月:ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ軍がロシア領内で続けている越境攻撃をめぐり、ウクライナ東部でのロシア軍の進軍を止めようとした試みで、失敗しているとの見方を強調しました。

ロシアのプーチン大統領は2日、ウクライナ軍がロシア西部のクルスク州で1か月近くにわたって続けている越境攻撃について「ウクライナ東部、ドンバス地域でのロシア軍の進軍を止めようとした試みだ」と述べました。

そのうえで「結果は明らかだ。ドンバス地域でロシア軍は久しくなかったペースで進軍している」と述べ、ウクライナ軍がクルスク州に越境攻撃をすることでドンバス地域に展開するロシア軍部隊を再配置させようとしたが、そうはならず、失敗しているとの見方を強調しました。

ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州の要衝、ポクロウシク方面への進軍を続けていて、戦況を分析するイギリス国防省は1日、「ロシア軍がこの7日間で進むペースが速くなっている。おそらくポクロウシクまで10キロ以内のところまで来ている」と指摘しています。

そして、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は1日、SNSに「敵の主要な攻撃がある地域では状況が厳しくなっている」と投稿しています。

シルスキー総司令官は、先週も「ポクロウシクの戦線の状況はかなり厳しい」と述べていて、ウクライナ軍がロシアへの越境攻撃を続ける一方で、ロシア軍はウクライナ東部での攻勢を一層強めています。

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平和式典

2024-08-10 10:37:10 | Weblog

長崎市で9日に開かれた平和祈念式典に、米欧6カ国と欧州連合(EU)の大使が出席を見合わせた。パレスチナ自治区ガザ地区で戦闘を続けるイスラエルが招待されなかったことを受けた措置だが、どのように考えるべきなのか。有識者に聞いた。

篠田英朗・東京外大教授(国際政治)の話
 米欧諸国は今回、イスラエルが招待されなかったとしても、粛々と平和祈念式典に参加するという選択肢もあったはずだ。式典に参加したからといって、イスラエルが怒るとは考えづらい。

 だが米欧は、日本との外交関係を悪化させるリスクがあっても、大使を欠席させることを選んだ。日本はこれまでG7(主要7カ国)の連帯を重視し、米欧が求めるウクライナ支援に大きく貢献してきた。今回の米欧の政治判断はとても妥当だったとは言えない。

 米欧は欠席の理由とし…

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南極

2024-08-10 10:16:47 | Weblog

地球上の最寒冷地である南極大陸の最も寒い時期に、記録破りの熱波が発生している。

7月中旬以降、南極大陸では気温が平年を約10度上回る地域もあり、季節外れの暖かさは8月前半まで続く可能性がある。最も異常な状況が続いているのは東南極の一部で、通常の平均気温は零下約50度から60度の間だが、現在は零下約25度から30度の間に近づいている。

化石燃料による汚染が地球の気温上昇をもたらす中、他のどの地域よりも壊滅的な海面上昇を引き起こす可能性が高い南極大陸にとって、真冬に夏のような暑さが続くのは憂慮すべき事態だ。

地球上の氷の大半は南極大陸に蓄えられているため、それがすべて溶けると、世界の平均海面水位は約45メートル以上も上昇する。「ドゥームズデー(最後の審判の日、この世の終わりの日)氷河」の異名をとるスウェイツ氷河でさえ、溶けると海面は約3メートル上昇する可能性がある。

米ウィスコンシン大学マディソン校の南極気象研究データセンターの研究気象学者、デビッド・ミコワイチク氏は、こうした冬の熱波は今後も起こり得ると述べた。また、南極大陸で氷床の融解が加速すると、地球の海洋循環も変化する可能性があるとCNNに語った。

英南極調査局の大気・氷・気候チームの科学副リーダー、トーマス・ブレイスガードル氏はCNNに対し、今回の熱波は記録的なものであり、長期的に何が起こるかを示す重要なシグナルだと語った。

欧州連合(EU)の気候情報機関であるコペルニクス気候変動サービスの分析によると、熱波は6月下旬に記録された観測史上最も暑い日にも大きく寄与した。

これは、南極大陸が過去2年間に経験した熱波としては2度目となる。前回の2022年3月には、一部の地域で気温が平年を約38度上回り、この地域で記録された偏差(平年との気温差)としては最大となった。

米コロラド大学ボルダー校の氷河学者であるテッド・スカンボス氏によると、現在の熱波は平均気温からの偏差が22年のレベルには達していないものの、より広範囲で長く続いているという。

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市場

2024-08-09 21:34:43 | Weblog

 日本株の急落は金融緩和を前提にしたトレードの終焉を意味しているーー2日間で日経平均が3192円下げた日本市場についてこのような指摘が出ている。日銀が利上げを決め、植田和男総裁が追加利上げに前向きな姿勢を示し、株式市場は転機を迎えているというわけだ。

加えて、海外投資家からインフレヘッジの手段として位置づけられていた側面が後退していることも影響しているようだ。

松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「(株安は)緩和トレードの巻き戻しだろう。低金利持続を前提にしたストラテジーが修正を迫られている」と指摘する。海外投資家が日本で資金を調達して投資する手法は、金利が上昇するようなら見直す必要が出てくるとの見立てだ。

著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイの投資先として注目を集めた商社株の下落が象徴的との受け止めが市場では聞かれる。バークシャーは日本株投資の資金の大半を、相対的に金利が低い円建てで資金を借り入れて調達しているとみられている。

商社を含む卸売業は、この日の業種別下落率の5位に入った。市場では「バークシャーが戦略を見直すのではないかとの警戒感が浮上し、追随して商社株を買っていた中長期投資家などから売りが出たのではないか」(国内証券のアナリスト)との思惑が聞かれた。

<インフレトレードにも巻き戻し>

世界的なインフレトレードからの資金引き揚げの一環で日本株が売られているとの見方をJPモルガン証券の高田将成クオンツ・ストラテジストは示す。「ハト派的なパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見が、インフレトレードからの即時撤退にお墨付きを与えた可能性がある」と高田氏はみている。

インフレトレードとは、インフレヘッジできる資産を買う取引で、インフレ連動債の上場投資信託(ETF)やコモディティ、高配当株などの取引を指す。グローバル投資家の間では、この中に日本株も含まれている。

これまではグローバルでインフレのときでも、日本では基本的に利上げはできず、その結果として円安になり株高になるという傾向がみられ「期待インフレが高まる中で日本株がアウトパフォームすることが、この20―30年の通説だった」(JPモルガン証券の高田氏)という。

フランス系資産運用会社コムジェストのポートフォリオマネージャー、リチャード・ケイ氏は「この1-2年の間に日本株に入った海外短期筋のマネーが逃げていることが主な要因だろう」と、株安の背景を説明する。

この日の業種別の下落率では、証券や銀行、保険などの金融株が1―3位を占めた。日銀の連続利上げが見込まれる中での大幅安を、松井証券の窪田氏は「日本株が叩き売られていることの現れ」とみる。コムジェストのリチャード氏は、日銀が追加利上げに動いたことで「(海外短期筋にとって)好材料出尽くしになった」ためという。

JPモルガンの高田氏は、インフレトレードの巻き戻しのほか、予想外の日銀タカ派化で日本の景気失速を市場が織り込み始めたことや、膨らんでいた円ショートや日本株ロングのポジションがいずれも急速に巻き戻された結果、日本株は大幅に調整しているとも指摘している。

積み上がったポジションが調整を終えるには1─2週間ぐらいかかるのではないかとコムジェストのリチャード氏はみている。     一方、全体相場が大きく調整した中でも、日本製鉄やコナミグループ、アステラス製薬など直近に決算を発表した銘柄群は上昇した。「物色意欲は払底したわけではない」としんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは指摘している。     足元の相場はパニック的な動きのため3万5000円程度への下落はあるかも知れないものの、株価収益率(PER)はデフレ時の過去平均並みの水準に低下してきたとして「きっかけがあれば短期間で反発する余地はある」と、藤原氏は予想する。

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先ほど外国為替市場で円相場は1ドル=146円台をつけ、3月中旬以来、およそ4か月半ぶりの円高・ドル安水準となりました。

午後9時半に発表されたアメリカの雇用統計で、農業分野以外の就業者数が市場の予想を大幅に下回り、失業率は予想を上回ったため、市場ではアメリカの景気が減速しているとの見方が拡大。日米の金利差の縮小を見込んだ円買い・ドル売りが膨らみ、円高につながりました。

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経済アナリストの森永卓郎氏(67)が5日、文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」(月~金曜後1・00)に出演。東京株式市場の急落についてコメントした。
 この日、東京株式市場の日経平均株価(225種)の前週末比の終値の下げ幅は4451円28銭となり、1987年の米国株式相場の大暴落「ブラックマンデー」翌日に記録した3836円を超え、史上最大となった。

 森永氏は「世界の景気がどんどん悪化していて、イギリスは利下げ、景気を刺激する方向に金融政策を変えた。アメリカも9月に利下げに行く。その中で日本だけが先週、利上げをするっていう逆噴射、暴挙に出たわけですね。それが背中を押して大暴落につながった」と説明。

 先月末に日銀が追加利上げを決めたことを受けて、それを後押ししたとされる岸田文雄首相と河野太郎デジタル相、自民党・茂木敏充幹事長について「マーケットでは日本の三大悪人と呼んでいる人もいる」とバッサリ。森永氏は「最悪は岸田総理」と考えているそうで、「“貯蓄から投資へ、新NISAをやりましょう”と国民全体で10兆円もやっちゃった。岸田さんに乗っかった人がいっぱいいるわけです」と指摘した。

 では、株価急落を受けてどうしたらいいのか。森永氏は「下がってきたから割安だと買いに入るのは絶対にダメです」と断言。さらに「かと言ってもっといけないのは、下がって損をしたからと言ってもっと金を突っ込んで損を取り返そうとする、これはもっと最悪です。今は撤退する一手です」と言い切った。

 森永氏はかつてバブル期の1989年に日経平均が大幅に下がった際、「これだけ下がったんだからもう下がらないだろう」と日経平均連動の投資信託に資金を「ぶっ込んだ」という。しかしその後も株価は下がり続け、バブルでもうけた金は泡と消える事態に。「今は潮目が変わったので、下がったから買うという選択は絶対しちゃいけないし、取り返そうと思って新たな金を突っ込むと悲惨なことになる」と自身の経験を基にリスナーへ助言していた。

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7月末に追加利上げを決めた後、金融市場で歴史的な株価下落や急激な円高に見舞われた日銀。

 これを受け、内田真一副総裁は7日の記者会見で、早期の再利上げを封印した。賃金と物価の「好循環」実現を見据え、段階的に利上げしていく日銀の戦略は、株価や円相場の乱高下でいったん停止を余儀なくされるなど、誤算が生じた格好だ。

 「経済・物価の反応を確認しつつ、適時かつ段階的に利上げしていく必要がある」「賃上げといった前向きな企業行動が確認されていけば、その都度、金融緩和の一段の調整を進めていく」。8日公表の日銀が追加利上げを決めた7月金融政策決定会合の主な意見では、さらなる金利引き上げを視野に入れる見解が複数示された。

 日銀が7月会合後に実施した市場参加者向けの「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」に関する恒例の説明会でも、「日銀幹部から年内に複数回の利上げを意識させる発言があった」(出席者)といい、市場では一時、次回展望リポートが公表される10月の再利上げ観測も浮上した。

 しかし、日銀が利上げに積極的なタカ派に変身したことが市場で嫌気され、8月に入ると、円高が進行し、株価も急落。内田副総裁は7日の会見で「市場が不安定な状況のときに利上げをすることはない。これまでより慎重に考える要素が生じている」と強調。タカ派路線を早くも軌道修正した。

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円安株高の投機の巻き戻しから、8月5日には日経平均が前日比4451円下げるセリングクライマックスに至った東京株式市場。その後はやや回復したものの、積み上がったポジションの整理にはまだ時間を要する。

他方で、米国の景気や不穏な中東情勢が懸念され、大統領選までは米国の政策は方向が定まらない。大統領選後も消化に時間がかかり、年内は株式市場の動揺は続きそうだ。

 日本銀行はさらなる利上げが難しくなり、再び受け身の状態になる。円安インフレは和らぐが、人手不足による供給制約もあり、日本のスタグフレーション的な状態は続く。

■ 植田総裁は記者会見の質疑応答が下手

 8月の株価暴落の最大の要因は円安株高投機の巻き戻しであり、日本銀行の利上げはそのトリガーを引いたとはいえる。しかし、植田和男総裁はかねてさほどハト派的だったわけではない。

 筆者はむしろ、4月の「展望レポート」以降、円安インフレの状況次第で日銀は利上げに踏み切り、連続利上げもあるとみていた。市場関係者の間でも利上げ観測は燻り続けていた。

 ただ、植田総裁は記者会見などでの質疑応答が下手であり、利上げに慎重だと見られて、安易に円安に賭けるFX投機が積み上がり、円キャリートレードや円安に連動して上昇する日本株買いの信用取引も膨らんでいた。これが7月31日の金融政策決定会合での利上げによって一気に逆回転した。

 そもそも、7月中旬を境に米国の株式市場がもたつきはじめていたという事情があった。

 第1に米国の景気後退への懸念が急浮上したこと。第2に相場をけん引してきたエヌビディアやGAFAMなどのAI関連企業は市場の期待ほど利益を出せるのかという疑問。第3にイスラエルがイランにいたハマスの最高幹部ハニヤ氏を殺害したことによるイスラエルとイランの軍事衝突への懸念の高まり。

 これらの悪材料に日本株のクラッシュが重なった。暴落の規模だけでなく、複数の要因が重なったという点でもブラックマンデーに似ている。

 FX投機はかなり巻き戻されたが、株の信用取引の巻き戻しにはまだ時間がかかる。直近の公表数字である8月2日時点では東京市場の信用の買い残は4.87兆円もあり(売り残は5587億円と少ない)、整理には時間がかかる。

 8月7日の内田眞一副総裁の「金融市場が不安定な状況で利上げすることはない」との発言から、落ち着いてはいるものの、複数の不安材料とそれがドル円に及ぼす影響を見ながらの一進一退が続く。米国景気指標の悪材料が続くようなことがあれば、株価は二番底のおそれもある。

 もっとも、今回の暴落がリーマンショックのような金融システム危機につながる可能性は小さい。民間債務が積み上がっていないからだ。

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地震

2024-08-09 04:53:22 | Weblog

8月:8日、宮崎県で震度6弱の揺れを観測するマグニチュード7.1の大きな地震があり、九州で、最大で50センチの津波を観測しました。

この地震で気象庁は南海トラフ地震の想定震源域では大規模地震が発生する可能性がふだんと比べて高まっているとして臨時情報を出して巨大地震への注意を呼びかけています。・・・

過去の世界の大規模地震の統計データでは、マグニチュード7.0以上の地震が起きたあと隣接した領域で1週間以内にマグニチュード8クラス以上の地震が発生する頻度は数百回に1回程度あるということです。

国は揺れに備えて家具の固定のほか、避難場所や家族との安否確認の方法を確認しておくなど日頃からの備えを改めて確認するよう呼びかけています。

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気象庁は、8日午後7時15分「南海トラフ地震臨時情報・巨大地震注意」発表し、今回の地震が震源域の一部が破壊された一部割れケースに当たり南海トラフ巨大地震が発生する可能性が相対的に高まっていると判断しました。

【画像】宮崎県内・鹿児島県内の被害は?画像で見る

気象庁は、午後4時43分頃に宮崎県の日向灘で起きた地震によって南海トラフ想定震源域のどれくらいの領域が破壊されたかなどを分析した結果、今回の地震が想定震源域の一部が破壊された一部割れケースにあたり、この地震によって南海トラフ巨大地震が発生する可能性が平常時より相対的に高まっていると判断し、「南海トラフ地震臨時情報・巨大地震注意」を発表しました。

政府の検討会の報告書では、1週間程度警戒レベルを上げて家具の固定や備蓄の確認、避難経路や家族との連絡方法の確認を行うとともに必要に応じて自主的な避難を求めています。

一部割れケースでは大規模な地震が続発する頻度は数百回に1回程度とみられますが、2011年の東日本大震災では、本震の2日前に、マグニチュード7.3の地震が同じ領域で起きていて、この事例にあたるという事です。

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ロボット

2024-08-08 10:42:32 | Weblog

JR西日本の鉄道整備に実践導入され話題となっている、高所作業用人型ロボット「零式人機ver.2.0」の開発を担当した「株式会社人機一体」社長の金岡博士にインタビューを実施。開発の転機となったのは東日本大震災だったという。

【映像】話題の高所作業用“人型ロボット”(実際の映像)

 金岡博士がロボット開発を始めたのは、京都大学で化学工学を学び大学院で修士課程を修めたのち、立命館大学の理工学部で教鞭を執ったときだった。2005年の愛・地球博では、まだロボットのアーム部分を発表する段階だったが、2011年3月11日の東日本大震がきっかけとなり、実用的ロボットの普及に全身全霊をかけるようになったそう。

 特に福島の原発事故の事後処理について、ロボット開発者としての責任を痛感したそうで「ロボット研究者としては屈辱だった、ロボット工学の敗北だと思った」と当時を振り返った。震災時に関西にいて直接的な被害は受けていないという金岡博士だったが「テレビでみていて、こんな屈辱的なことはないと思った」と告白。

 「日本全国が、福島第一原発事故のときに『これはロボットの出番だろ』とみんな思った。そのときに我々にはここで役に立つロボットはありません、我々のところには役に立つロボットを持っていません、というのがロボット研究者として屈辱だったか」と悔しがった。

 さらに「日本のロボット工学は、世界的に見てもレベルが高くて世界一だと思っていた、自負していたところもあった」「しかし、結局のところ何の役にも立たないのだと。有事のときに何の役にも立たない研究をこれまでしてきたのだと思うと、このままではいかんなと思った」と心情を吐露した。

 今後の展望を聞かれると「魔法みたいなロボット工学技術がいっぱいあって、それが世の中に出て行けば、すごいことが起きるはず。世の中の産業が変革するとともに、有事の災害復興にも劇的に役に立つはず」とコメント。

 「そのために我々が目を付けたのがインフラメンテナンスの分野」と続けると「平時のロボットがもしもの有事には災害復興、災害対応ロボットに変わるというのは実現できるだろうと考えている」と展望を語った。

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ウクライナ

2024-08-08 10:25:07 | Weblog

ロシアに侵攻されるウクライナが提唱する和平案「平和の公式」を協議するスイス中部ビュルゲンシュトックでの「世界平和サミット」は16日閉幕し、ロシアが占拠する原発の安全確保や食料安全保障、強制連行された市民の帰還の3項目を盛り込んだ共同声明を採択した。

【写真】ロシア側に向けて砲撃するウクライナ軍兵士

 主催国スイスによると、80カ国と四つの国際機関が支持したが、新興国のインド、サウジアラビア、南アフリカなどは加わらなかった。今後、3項目に関する行動計画の詳細を詰める。

 共同声明で国際的な結束を示してロシアに外交圧力をかけ、最終的に平和の公式をのませたい考え。ゼレンスキー大統領は、国際的に承認された行動計画を策定後、ロシアとの折衝が始まると主張した。ただロシアが譲歩する兆しはなく、影響力を持つ中国はサミットを欠席。戦争終結への道は険しい。

 平和の公式はロシア軍の即時全面撤収などを含む10項目。ウクライナは今回、侵攻に中立的な国々の同意を得ようと、ウクライナ南部ザポロジエ原発の安全確保や、穀物の安定供給に基づく食料安全保障、ロシアに拉致された子どもたちの帰還の3項目に議論を絞り込んだ。

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ロシアの捜査当局は17日、ウクライナ軍第138高射ミサイル旅団の司令官、ジャマン大佐を身柄不在のままテロ罪で起訴し、指名手配したと発表した。露経済紙コメルサントによると、露捜査当局は、ジャマン氏が2月の露航空宇宙軍の早期警戒管制機「A50」の撃墜を指揮したと主張している。「A50」の撃墜をロシアが認めたのは初めて。

【写真】モスクワ周辺を飛行するロシア軍のA50空中警戒管制機

捜査当局の発表やコメルサントの報道によると、ジャマン氏は2月23日、非武装かつ軍事行動中ではなかったA50を露領土上空でミサイルによって撃墜し、乗員10人を死亡させたとしている。

大型レーダーで空域を監視するA50は、露軍の制空権確保の要を担う希少な機体。コメルサントはA50の価格が1機3億ドル(約470億円)以上だと伝えた。

A50を巡っては、ウクライナ国防省情報総局が2月23日、同国空軍との共同作戦によりアゾフ海上空で撃墜したと発表していた。ウクライナは1月中旬にも別のA50を撃墜したと報告している。

一方、前線の戦況を巡り、米誌フォーブス(電子版)は今月16日、露軍が5月に着手したウクライナ東部ハリコフ州への越境攻撃で攻防が焦点化している国境地帯の小都市ボフチャンスクで、ウクライナ軍が露軍兵400人の立てこもる化学工場を包囲したと伝えた。包囲を受け、露軍兵数十人が投降したという。

ボフチャンスクを巡っては、露軍が一時、市内の5割程度を制圧したものの、その後、ウクライナ軍が反撃。最近はウクライナ軍が市内の7~8割の支配権を回復したと報告されるなど、優勢だとみられている。

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ロシア軍の地対空ミサイルシステムに損害続出か
ロシア軍のS-400地対空ミサイルシステム。この発射車両のほか、レーダー車両、指揮車両などで構成される(画像:ロシア国防省)。

 ウクライナ国防省は2024年6月10日~12日にかけて、クリミア半島に駐留するロシア軍の地対空ミサイルシステムを、ミサイル攻撃によって相次いで破壊したと発表しました。

【画像】これが破壊された「ロシア軍が誇る地対空ミサイルシステム」です

 同国防省によると、6月10日にクリミア半島のジャンコイに位置するS-400地対空ミサイルシステムを1基、エフパトリアとチェルノモルスク(オデッサ州)に位置するS-300地対空ミサイルシステム各1基を攻撃したとのこと。攻撃により、地対空ミサイルシステムのレーダー停止を観測したとしています。
 
 6月12日には、クリミア半島のベルベク近郊に位置するS-300を1基、同地区とセヴァストポリに位置するS-400各1基を攻撃。合計で2基を破壊したほか、残るS-400の状況については分析中としています。
 
 ウクライナ国防省は、詳細な攻撃手法については明らかにしていませんが、アメリカ製の長距離陸軍戦術ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」が使用されたとみられます。
 
 S-300やS-400といった地対空ミサイルシステムは、巨大なミサイルを収める発射筒を備えた発射車両のほか、レーダー車両、指揮車両などで構成。2024年4月にも、ジャンコイ飛行場に配備されていたS-400がウクライナ軍のミサイル攻撃を受け、発射車両やレーダー、防空指揮所などが破壊されており、損害が目立ってきています。
 
 アメリカのシンクタンク・戦争研究所(ISW)は6月13日、「ウクライナ軍は、ロシアの防空体制を弱体化させることを目的とした取り組みを行っている可能性があり、それが成功すれば、ウクライナは長期的に航空戦力をより効果的に活用できるようになる可能性がある」と指摘しています。
 
 ウクライナ軍は今後、F-16戦闘機の配備を進める予定ですが、戦力化にはしばらく時間を要する見込みです。ロシア軍は「F-16対策」として、A-50早期警戒管制機とS-400を連携させ、占領地の防空能力を向上させることを画策していた模様ですが、いずれも損害が続出しており、暗雲が立ち込めています。

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ロシアのプーチン大統領は19日、北朝鮮の平壌(ピョンヤン)を訪問し、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記と首脳会談を行った。両首脳は、いずれかが攻撃を受けた場合、相互に支援する条項などを盛り込んだ「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。露朝の協力関係を格上げし、米欧に一致して対抗する姿勢を鮮明にした。

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 タス通信などによると、プーチン氏は会談後の共同記者発表で、同条約について「一方が第三者の侵略を受けた場合に、相互に支援する条項を含むものだ」と説明した。

(写真:読売新聞)

 ロシアが侵略するウクライナに対する米欧の長射程兵器などの供与を挙げ、「国際的な義務に西側は違反している」と主張した。ウクライナ侵略で北朝鮮製の砲弾や弾道ミサイルを露軍が使用していることを正当化する意図とみられる。

 プーチン氏は「北朝鮮は国家の安全と主権を守るため、防衛力を強化する権利がある」と述べ、北朝鮮の核・ミサイル開発に理解を示す発言もした。露朝間の軍事技術協力についても「排除されるものではない」と述べた。

 正恩氏は条約について「両国関係を同盟という新たな高い水準に引き上げるものだ」と歓迎し、「多極化された新しい世界を作る推進力になる」と主張した。「多極化」は米欧主導の国際秩序からの脱却を唱えるプーチン氏が多用する言葉だ。正恩氏は「あらゆるロシアの政策を無条件で支持する」とも強調した。

 ロシアの前身・ソ連と北朝鮮は1961年、有事に相互が軍事介入する条項が盛り込まれた「友好協力相互援助条約」を結んだ。軍事同盟に該当したが、ソ連崩壊後の96年に失効した。2000年に露朝は「友好善隣協力条約」を交わしたが、相互軍事介入は盛り込まれていなかった。

 露メディアによると、首脳会談は19日昼過ぎに始まり、閣僚らが同席した約1時間半の拡大会合の後、予定時間の倍となる2時間にわたり、1対1形式の会談が行われた。

 露大統領府の発表によると、拡大会合の冒頭、プーチン氏はウクライナ侵略を支持する北朝鮮に謝意を示した。次回の会談をモスクワで開催したいとの意向を述べ、正恩氏を招待した。

 プーチン氏は訪朝後、ベトナムを訪れる予定だ。

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そもそも昨年夏前から「反転攻勢」を仕掛けたのは、アメリカの大統領選挙の選挙戦が本格化する前に、戦場で武器支援の結果を出しておきたかったからだろう。その成果は芳しくなく、責任を取る形でザルジニー総司令官が更迭された。ただしこれは政策の変化を意味せず、戒厳令を根拠にした大統領任期の無期限延長状態に入ったゼレンスキー大統領は、従来の姿勢を取り続けている。

 果たしてこの状況は、いつまで続くのか。おそらく大きな転機は、アメリカの大統領選挙後に訪れるだろう。突発的事態がなければ、ウクライナ向け支援の停止を訴えているトランプ前大統領が、返り咲く。武器支援の中核を担うアメリカからの支援の停止は、戦況に影響を与えるだけでなく、アメリカの同盟諸国によって形成されているウクライナ支援の国際体制にも、大きな動揺をもたらすだろう。

 ゼレンスキー大統領は、トランプ前大統領への批判的な感情を隠しておらず、トランプ大統領誕生に備えた保険を用意している様子がない。かつてはトランプ氏の弾劾裁判にまで展開したスキャンダルがあった。両者が良好な関係を築けそうな兆候がない。プーチン大統領は、そのことを計算に入れているだろう。そして他の諸国の指導者もそうだ。日本はどうだろうか。

 

数をめぐる「平和サミット」の国際政治
 ウクライナ「平和サミット」が終了した。主催者によれば、92カ国が参加したという。ただし、会議を締めくくる「共同宣言」に賛同したのは、主催国スイスを含めて77カ国にとどまった(スイス政府公式ウェブサイトにおける賛同国の数)。

 なおスイス政府は、四つの欧州地域機構のみならず、コンスタンティノープル総主教庁までも賛同国リストに含めて、参加国・機関の総数を多く見せることに、こだわりを持っていることをうかがわせている。実際のところ、「平和サミット」の目的の一つは、ウクライナの立場に対する賛同者をなるべく多く参集させることだったのだろう。参加国を増やすために、2022年11月のG20会議の際に披露した「平和の公式」10項目から、3項目だけを議題にするという措置をとった。ただ、160の招待先の約半数しか参加せず、共同宣言に調印してくれたのは、さらに少ない77カ国となった。欧州全域で参加・署名が集まったのとは対照的に、アジア・中東では、東アジア・オセアニアのアメリカの同盟国以外には、政権交代後に中国との関係を悪化させたフィリピンなど数カ国だけで、アフリカでも9か国ほどであった。

 上記の筆者作成の「平和サミット」共同声明賛同国の分布を見れば一目瞭然であるとおり、島嶼国と沿岸国に張られたアメリカの同盟国網が、「平和サミット」賛同国のネットワークである。このネットワークは、ユーラシア大陸やアフリカ大陸の内奥には、入り込めていない。つまり「ランドパワー」の領域には、全く食い込めていない。これは地政学理論における「シーパワー」の領域と、「ランドパワー」の領域が対峙する、典型例の構図である。ロシア・ウクライナ戦争が、二つの領域がせめぎあう地点で発生していることも、よくわかるだろう。

 このような明白な構図ができあがってしまっている以上、今後「平和サミット」に集った「シーパワー」の領域が急拡大していくことは、期待できないと言わざるを得ない。むしろアフリカでわずかにアメリカの影響が及ぶアフリカの角の2国、旧宗主国イギリスとフランスの影響がわずかに残存する西アフリカのギニア湾岸の数カ国を、「平和サミット」側で死守するのがやっとだろう。そしてこれらの諸国だけでは、国際社会の多数派を占めることはできない。

 

国連総会では、2022年3月、23年2月と、ロシアの侵略を非難する決議に、141カ国が賛同した。しかし24年の同時期には、同じような決議案が提出されなかった。ウクライナとその支援国が、提出を見送ったからだ。賛同国の数が、大幅に減ることが必至の情勢であった。賛成国の数が141カ国から大幅に減るようであれば、ウクライナにとっては大きな痛手となる。万が一、過半数をとれないようなことにでもなったら、大変な事態となってしまう。

 そこで開催された「平和サミット」は、国連総会から離れて、多数の諸国がウクライナを指示していることを見せるための場であったと言ってよい。国連加盟国数は193なので、過半数は97である。結果として、最終共同宣言に調印したのが77カ国だったことを考えると、同じ内容の決議文が、国連総会で採択されるかは不明だ、ということになる。この数では、そもそも今後、ウクライナとその支援国の主導で決議文が提出された際、国連加盟国の過半数の賛成をもって、国連総会がそれを採択するかどうかも、不明だと言わざるを得ない。

 「平和サミット」の第2回目が、数か月内に開かれる見込みだという。ロシアの「行動計画」なるものを作成し、それをロシアに提示するのだという。おそらくは欧州全域の諸国と、欧米諸国の同盟国あるいは友好国は、その試みに賛同することになるのだろう。だが反対陣営に食い込んでいくことは難しいだろう。

 ロシアは、併合を宣言しているウクライナ4州からのウクライナ軍の撤退やNATO非加盟などを要求する停戦の条件を、「平和サミット」の直前に表明した。ウクライナが、少なくともすぐには受け入れるはずのない内容である。形式的に和平案を提示するイニシアチブをとってみることによって、「平和サミット」の前に、ロシアの不在を強調しようとする試みであったと言える。実際のところ、不参加の諸国の多くが、ロシアの不在に不満を表明していた。参加国の中ですら、同じ不満を表明したサウジアラビアのような国があった。参加しながら共同宣言に署名をしなかったアルメニア、ブラジル、メキシコ、インド、インドネシア、サウジアラビア、南アフリカ、タイ、UAEなどの有力な諸国は、いずれも同じような立場をとっていると考えてよいだろう。これらの諸国は「交渉の不在」に不満を持っている。

 理論的には、ロシアの停戦条件と、ウクライナの「平和の公式」を突き合わせる「交渉」は、実施可能なはずだ。だが双方が嫌っている。「交渉」を公然と拒絶しているのが、ウクライナ側である。したがって「平和サミット」は、「交渉」を通じた和平を模索するものではなかった。戦争の早期終結を求めてきている諸国が、共同宣言への署名を避けたのは、予測された態度であったと言える。

 ウクライナとしては、停戦を求める諸国の翻意を狙って「平和サミット」を開催したのだが、それはほとんどかなわなかった。「平和サミット」を通じた「行動計画」への賛同は、「交渉」を通じた早期和平とは逆の方向を向いているという印象を持たれる可能性が高い。今後の「平和サミット」の成果も、77カ国以上の賛同は、なかなか得られないだろう。

 

昨年の春先からウクライナの「反転攻勢」が強行されたのは、アメリカの大統領選挙の選挙戦が本格化する前に、目に見えた戦果をあげて、アメリカの選挙民にアピールしておかなければならなかったからだろう。少なくともバイデン政権関係者は、それを強く望んでいたはずだ。だが戦果は出なかった。今年2024年は、もはや2023年ではない。アメリカの議会は予算案をめぐる空転を経験した。世論調査では、トランプ前大統領がバイデン大統領をリードしている。その前トランプ大統領は、自分が当選したら、ウクライナへの巨額支援は止める、と公言している。この流れを見て、ウクライナの戦争継続努力への支援を呼び掛ける欧米諸国に相乗りしたいと思う諸国が少なくなるのは、どうしようもない。

 

たとえば国際法において、イスラエルのガザと西岸の占領政策が違法であることについては、広範な了解がある。世界の大多数の諸国は、パレスチナを国家承認している。それにもかかわらず、米国を中心とする欧米諸国は、イスラエルに武器支援をし続けている。これは二重基準以外のなにものでもない。欧米諸国は、パレスチナの占領を通じた入植政策を、イスラエルに武器を提供して実態として支援してしまっている。ところがその同じ欧米諸国が、ウクライナの占領については、ウクライナに武器を提供して抵抗を支援しなければならない、と主張している。残念ながら、世界の大多数の諸国にとっては、容易に納得できる話ではない。世界の大多数の諸国が、欧米諸国に追随することに警戒的になるのは、やむをえない。

 

ゼレンスキー大統領は、昨年10月7日のハマスの攻撃の後、熱烈なイスラエル支援の心情を吐露した。ユダヤ人としての出自から、親イスラエルのイメージが強い。当初と比せば、だいぶイスラエル一辺倒の姿勢を和らげようとしているとも評される。だが最初に作られたイメージが強すぎて、その後の微妙で穏健な言い回しでは、印象を変えることができない。実際のところ、ウクライナのガザ危機への態度は、微妙である。停戦要請決議やパレスチナ加盟決議など、大多数の諸国が賛成票を投じた国連総会における投票行動の機会において、ウクライナは棄権を繰り返している。ウクライナは、公式にはパレスチナを国家承認している国に入っているが、承認したのはまだソ連の一部の共和国だった時代の1988年のことだ。現在のゼレンスキー政権は、アメリカに気を遣うあまり、中東における違法な占領の問題を語ることができないなっており、二重基準に加担している、という印象が広範に共有されてしまっている。

 

日本の岸田首相は、多額の財政支援を約束するなど、ウクライナ支援の充実を目玉の政策の一つと捉えている。狙いは、低迷する支持率の改善だと報道されている。外交で目立つことをして、国内世論を好転させたいという思いから、ウクライナ支援に力を入れている、というわけである。

 ただ首相就任直後に発生したロシアのウクライナ全面侵攻に、明確な反ロシア・親ウクライナの姿勢で臨んで喝さいを浴びた岸田首相は、二年前の成功体験にとらわれすぎているように見える。株式市場の動向を見るのと同じ思いで、支持率の低迷を示すグラフを見ながら、追加投資に奔走する姿は、果たして11月のアメリカの大統領選挙後には、どうなるのか。

 もちろん本人としては、まずは9月の自民党総裁選を乗り切ってから考えるべきことだ、という理解ではあるだろう。いずれにせよ先行きは不透明だ。

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7月

ロシアによるウクライナ侵略で、露国防省は1日、露軍がウクライナ東部ハリコフ州の集落ステポバヤ・ノボセロフカと東部ドネツク州の集落ノボポクロフスコエを制圧したと主張した。同省は6月30日にも、ドネツク州の集落スポルノエとノボアレクサンドロフカの制圧を発表していた。

 

露軍とウクライナ軍の間では現在、ドネツク州の小都市チャソフヤルと、ハリコフ州の国境地域の小都市ボフチャンスクを巡る攻防が焦点化している。両都市ではウクライナ軍が露軍の前進を阻止していると伝えられている。ただ、兵力で勝る露軍は、ウクライナ軍が両都市の防衛に注力している隙を突き、ウクライナ軍の防御が比較的手薄な地域で占領地域を拡大する作戦を進めているもようだ。

一方、ウクライナ軍は露軍に損害を強いることを主眼とした「守勢の戦術」を展開。戦略的に重要性が低い地域での一定の後退は織り込み済みとされる。ウクライナ軍は露軍に決定的な突破を許さないようにしつつ、追加動員や欧米諸国の軍事支援による戦力回復を待ち、将来的な反撃につなげる構想を維持している。

戦況の先行きについて、米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)も7月1日、露軍は多大な損害と引き換えに少しずつ前進しているものの、ウクライナ軍もドローン(無人機)などを使って効果的に防衛しており、戦局の全体的な膠着状態は当面続くとする米国防総省高官らの分析を伝えた。

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ウクライナ軍は4日、東部ドネツク州の要衝チャソフヤールの一部地区から撤退したことを明らかにした。
ロシア国防省は前日、チャソフヤールの一地区を制圧したと発表していた。 もっと見る
ロシア軍がチャソフヤールを完全に掌握した場合、クラマトルスクやスラビャンスクに向けて西進するための中継点となり得る。
ロシア国防省によると、同国軍はチャソフヤールの東側を流れる運河の西に位置する地区を掌握した。
ウクライナ軍報道官は国内テレビで「敵が侵入しており、運河地区を保持することは現実的ではなくなった。軍人が生命と健康を脅かされており、守備陣地が破壊されたためだ」と説明。
「ウクライナ軍は相対的に安全な地域に撤退したが、そこでも敵が積極的な戦闘行為を続けている」と述べた。

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プーチン氏は記者団に対し、先週の米大統領選テレビ討論会の一部を見たと語ったが、それについてのコメントは避けた。討論会での精彩を欠くパフォーマンスを受けて、バイデン大統領に対しては選挙戦から撤退するよう圧力が高まっている。

  トランプ氏はこれまで、3年目に突入したウクライナ紛争をどのように終結させる考えなのか明らかにしていない。ニュースサイトのポリティコは今週、北大西洋条約機構(NATO)がウクライナやジョージアを含め、これ以上東方へ拡大しないと確約することでロシアと合意する案をトランプ氏が検討していると報じた。

  プーチン氏は会見で、ロシアが要求する「不可逆的な」措置をウクライナが講じることに同意しない限り、ロシアが戦闘停止を宣言することはないと説明。「そのような合意に達することなく停戦することは不可能だ」と述べた。ただ、不可逆的な措置に関する詳細には踏み込まなかった。

  プーチン氏はまた、米大統領選が終わるまで米国との戦略的安定に関する協議は再開しないとも発言。ロシアはまず「米新政権の雰囲気と好みを理解する」必要があるとした。

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〈ウクライナにも西側にも、消耗戦でもっとも重要な大砲の数でロシアの優勢を逆転する能力はなかった。西側には疲労感があったのに加えて、米国は中国の脅威に直面していた。それはロシアよりも重大な脅威だ。消耗戦を避けるには電撃作戦が必要だったが、兵隊の数と装備が十分でなかったウクライナは、それに失敗した〉

〈ウクライナとロシアの両方が、領土と中立問題で満足する結末を期待するのは難しい。もっとも可能性のある結末は「凍結された紛争」になる。ただし、それは「ロシアとウクライナ、西側との紛争が終わる」という話ではない〉

教授が指摘した「凍結された紛争」とは何か。

ミアシャイマー氏は、6月19日に出演したYouTube番組で「それは韓国と北朝鮮が38度線を境に睨み合っている状況と同じだ。38度線は、何か意味のある平和合意に記されているわけではないが、戦闘停止は実現している。ただ、何かの拍子に熱い戦争に発展する危険性を秘めている」と説明している。

つまり「平和が約束されてはいないが、戦闘は止まる」という状況である。そのうえで「ウクライナにとって、最良の解決は(クリミア半島と)4つの州を奪われたという事実を受け入れる。そして、NATOにも加わらないと宣言して交渉に臨むことだ」と語った。

トランプ氏が思い描いているのは、まさに、こうした状況だろう。

これを「ロシアびいきの敗北主義」と批判するのは、たやすい。事実、そういう声は共和党内からも出ている。たとえば、共和党のリンゼイ・グラム上院議員は先のワシントン・ポストで「私はトランプ氏と意見を交換した。プーチンには代償を支払わせなければならない」と語っている。

だが、戦争の現実を直視すれば、ミアシャイマー教授が指摘してきた形に近づいているのは否定できない。米国のウクライナ支援は共和党の反対で滞っていたが、4月にようやく総額600億ドル(約9兆6000億円)の供与に合意した。だが、今後も支援が続くかどうかは分からない。トランプ氏が11月の大統領選に勝利すれば、なおさらだ。

ミアシャイマー教授は1月17日、ポッドキャストの番組で「ウクライナは2024年中に現状維持を続けるのが、望める最善のシナリオだろう。25年に再び反転攻勢を仕掛けて、流れを変えられるなどと考えるのは、幻想だ」と指摘していた。

先行きについても、こう語っていた。

〈私が非常に興味深いと思っているのは「ウクライナの状況が今後数カ月で悪化した場合、西側とくにNATOはどう対応するか」という問題だ。ロシアは西に進んで、オデッサやハルキウなどを奪おうとするだろう。そうなったら、ウクライナはまさに「機能不全の半端な国家」になってしまう。ウクライナ軍が総崩れになりかけたら、米国やNATOは軍事介入するかもしれない〉

〈ロシアが首都キーウの入口にまで迫ってきたら、米国はどうするか。米国は軍隊をウクライナ西部に派遣すると同時に、ロシアに「我々はロシアと戦うつもりはない」というメッセージを送る。我々は「ロシアはウクライナ西部には関心がない」「米軍を派遣しても、エスカレートする心配はない」と自分に言い聞かせようとするのだ。我々は、ロシアがもっと多くの領土を支配しようとする現実と向き合う必要がある〉

実に意味深長である。

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7月:トランプ前米大統領は19日に行ったウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談について「とても良かった」と評価した上で、ウクライナとロシアとの戦争を終結させるとあらためて明言した。ただ具体的な方法については触れなかった。

  トランプ氏は自身が始めたソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿。ロシアとウクライナは「暴力を終わらせ、繁栄への道筋を開く合意」の交渉に臨むことになると和平仲介に意欲を示した。

  一方、ゼレンスキー氏は X (旧ツイッター)への投稿で電話会談について、共和党大統領候補にトランプ氏が指名されたことに祝意を示したほか、トランプ氏に対する「衝撃的な暗殺未遂」を非難したと明らかにした。

NATO Annual Summit
ウクライナのゼレンスキー大統領
Photographer: Chris Kleponis/CNP/Bloomberg

  ゼレンスキー氏は会談で「ロシアのテロに抵抗する能力の強化を米国が支えてくれたことへの感謝をウクライナは忘れない」とも伝えた。また「公正かつ真に永続的な和平実現にどのような措置が必要かについて、トランプ氏と個人的に協議することで合意した」という。

  今回の電話会合はロシアとの戦いで米国の支援に頼ってきたゼレンスキー氏の外交努力の一環とみられる。ゼレンスキー氏はトランプ氏が大統領に返り咲いた場合に支持を得たいと考えている。

  しかしトランプ氏は米国がウクライナ支援に多過ぎる資金を費やしていると示唆している。副大統領候補のバンス上院議員はさらに懐疑的であり、トランプ氏の側近として首席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏のポッドキャストで「ウクライナがどうなろうと気にしない」と発言したこともある。

  トランプ氏は先月のバイデン氏との討論会で、大統領選で当選したなら就任式までの間にロシアとウクライナの戦争を終結させるつもりだと述べていた。

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7月:

英国防省は24日、ウクライナ軍が今月上旬にロシア南部ボロネジ州で実施した無人機攻撃で、露軍の貯蔵施設に保管されていた兵器や砲弾がほぼ全て破壊されたとの分析を発表した。ウクライナを侵略する露軍部隊の活動に一定の支障が出る可能性がある。

 

 英国防省はウクライナ軍による7日の攻撃の被害を、衛星写真などの公開情報から分析した。攻撃を受けたのは約9平方キロ・メートルの大規模な貯蔵施設で、地対地兵器や小火器が保管されていたとみられる。露軍は、兵器や弾薬の分散管理などの対策を迫られることになり、前線への物資補給の効率が低下するとみられる。

 一方、米政策研究機関「戦争研究所」によると、ロシア軍は24日の夜明けに合わせて、東部ドネツク州ドネツク西方で、戦車11両、装甲車45台などを投入した大規模な攻撃を展開し、ウクライナ軍が撃退した。

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8月:

 ウクライナ軍は7日、侵攻に対抗する形でロシア西部クルスク州への攻撃を続け、国境地帯のスジャにある欧州向け天然ガスパイプライン施設を制圧した。ロシア国防省系のインターネットメディアが伝えた。

ウクライナ軍、ロシア3集落制圧 国境で激戦、新兵捕虜に

 6日に始まった越境攻撃は2日目に入った。クルスク州のスミルノフ知事代行は7日、非常事態を宣言したと通信アプリ「テレグラム」で発表。プーチン大統領は7日の政府会議の中で、ウクライナのゼレンスキー政権による「大規模な挑発」だと非難した。

 プーチン氏はこの後、軍・治安機関幹部と緊急会合を開催。ゲラシモフ参謀総長はウクライナ軍の少なくとも100人が死亡、215人が負傷したと主張した。ロシア軍の損害は非公表だが、数十人が捕虜になったという報道がある。

 スジャから約60キロ離れた同州クルチャトフには運転中のクルスク原発があり、ロシア国家親衛隊は警備を強化したと明らかにした。

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ロシア国防省によると、ウクライナ軍が越境した露西部クルスク州では8日、3日連続となる戦闘が行われた。ウクライナ軍が占領地域を拡大しているとみられる。将来的にロシアとの交渉材料にするため、露領内に占領地域を確保しようとしている可能性がある。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は8日のビデオ演説で「(ロシアは)自分が何をしたのか身をもって知るべきだ」と述べ、越境攻撃を行っていることを示唆した。ロイター通信は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵略開始以降、ウクライナによる「最大規模の越境攻撃」と報じている。

 米紙ワシントン・ポストによると、ウクライナ政府高官はウクライナ軍が同州で約100平方キロ・メートルを制圧し、露軍兵を多数捕虜にしたと明らかにした。米政策研究機関「戦争研究所」は8日、ウクライナ軍が国境から北方へ最大35キロ・メートル進んだとの分析を示した。

 露軍事ブロガーがSNSに投稿している映像では米国製装甲車などが確認されており、ウクライナ軍の精鋭部隊が投入されている可能性がある。露メディアによると、ウクライナ軍は同州スジャ周辺で塹壕(ざんごう)を掘るなど防衛陣地の構築を始めた。

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8月:ウクライナの特殊部隊が9日、ウクライナ南部ヘルソン州キンブルン砂州に対し水陸双方から攻撃を行い、ロシアの装甲車両6両を破壊した。ウクライナ軍情報機関が明らかにした。

ロシア軍は2022年2月の侵攻開始後すぐ、黒海に突き出したウクライナ南部ミコライウ地域のキンブルン砂州を占領した。

 

ウクライナがミコライウとヘルソンの港を再開できず、黒海の海上輸送路を経由した輸出が行えない理由の一つは、ロシアが軍事的に有利なこの岬を占領していることとされる。

ウクライナ軍情報局は声明で「ロシア軍が占領していたキンブルン砂州への攻撃の結果、敵の装甲車両6両が破壊され、30人余りの侵入者が排除された」と述べた。

一方、インタファクス通信によると、ロシア国防省は、ウクライナ軍の攻撃を撃退したと発表。この作戦でウクライナ軍は16人の「破壊工作員」を失ったと発表した。

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 ウクライナ軍が開始したロシア西部クルスク州への越境攻撃は10日で5日目に入った。ロシア軍は侵入したウクライナ兵の掃討作戦を展開し、州内では緊張状態が続くが、ロシア国内から一掃する目標は達成できずにいる。千人程度とされるウクライナ部隊が防衛網を突破した「想定外の奇襲」にプーチン大統領が衝撃を受けているとの情報もある。

 

 6日未明に始まったクルスク州スジャ方面などへのウクライナ軍の越境攻撃では、ロシア国防省軍事政治総局のアラウジノフ副局長が国境から少なくとも10キロまで侵入されたと認めた。ウクライナ軍は最大で20集落を制圧したとみられる。

 ネット上では9日からウクライナ兵が「スジャはわれわれの支配下にある」と主張する動画が拡散した一方、スジャ市長は同日、タス通信の取材に制圧を否定した。

 プーチン政権に批判的なメディア「モスクワ・タイムズ」は9日、ロシア政府当局者の話を引用し、今回の越境攻撃がプーチン氏への「強烈な平手打ちになった」と報じた。

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ロシア西部クルスク州のクルスク市郊外にあるハリノ航空基地は、ウクライナによる奇襲侵攻の中心地となっている国境の町、スジャから最も近い場所にあるロシアの軍用飛行場だ。

ハリノ航空基地にはロシア空軍の第14親衛戦闘機航空連隊が所在していて、第14連隊に所属する24機のスホーイSu-30SM戦闘機は滑空爆弾を搭載できる。発射後に翼が展開し、衛星誘導で40km以上先の目標に向かって滑空していくこの航空爆弾、ウクライナでの通称「KAB」は、ロシア軍が多用している強力な兵器だ。最も大型のものは重量が3tある。

ウクライナ軍部隊が6日に北部スーミ州から国境を越えてクルスク州に進撃してくると、ロシア空軍は、少なくとも5個の旅団から成る侵攻部隊やスーミ州内のその基地を滑空爆弾で爆撃し始めた。1日の投下数は最大で前線全体の半数に相当する50発ほどに達するらしい。

ウクライナ側はハリノ航空基地の重要性がよくわかっている。だからこそ、侵攻の前の週からこの基地に対する攻撃を激化させていた。

ウクライナとの国境から100kmほどしか離れていないハリノ航空基地は、ウクライナの弾道ミサイルや巡航ミサイル、爆発物を積んだドローン(無人機)など、さまざまな深部打撃兵器の射程内に入る。実際、ロシアが全面侵攻を始めた2022年2月以降、ウクライナ側はこの基地を数回攻撃している。

2022年12月にはドローンで襲撃し、基地の燃料貯蔵庫の火災を引き起こした。その8カ月後には、ウクライナ独自の段ボール製ドローンで攻撃した。

攻撃は最近エスカレートした。クルスク州侵攻の6日前の7月31日、ハリノ航空基地の弾薬庫がウクライナの攻撃を受け、一部が焼失した。この攻撃にはウクライナ海軍のネプトゥーン巡航ミサイルが使われたとされ、保管されていた滑空爆弾が破壊された可能性もある。

クルスク州で滑空爆弾を浴び、車両数両に損害を出しながらも、ウクライナ軍部隊はそれから11日後、クルスク州の数百平方kmの地域を制圧した。

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ロシア西部クルスク州への越境攻撃を続けるウクライナのゼレンスキー大統領は13日、ロシアの計74集落を制圧したと明らかにした。ロシア国防省はクルスク州の4集落で敵の進軍を阻止したと発表。ロシア側は兵力を増強して撃退作戦を展開しており、双方の激しい戦闘が続いている。

ウクライナ外務省の報道官は、ロシア軍がクルスク州からウクライナを攻撃しているとして、越境攻撃は「市民を守ることが目的で、領土を奪うつもりはない」と主張。クルスク州にロシア軍を引き付け、ウクライナ東部ドンバス地域(ドネツク州とルガンスク州)への増援を阻止する狙いがあると説明した。

ブルームバーグ通信はロシア大統領府に近い筋の情報として、兵員不足に陥っているロシアが年末までに新たな動員令を出す可能性があると報じた。ロシアは2022年9月に約30万人の予備役を対象にした動員を発表したが、その後は志願兵を集めており、プーチン政権は新たな動員を否定している。

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8月:双方とも侵攻地域やその周辺に作戦機を投入しているが、その数はロシア側のほうが多い可能性がある。ロシア軍機は、クルスク州内の侵攻部隊とスーミ州内のその基地の両方を空爆している形跡がある。

一方、現時点でウクライナ軍機による爆撃が確認されているのはチョトキノの指揮所に対するものだけだ。つまり、ウクライナ側は前線のすぐ上空には航空戦力を展開させていない可能性がある。

それは理にかなっている。ウクライナ側はドローンやミサイルによってクルスク州内やその周辺のロシア軍の航空基地に対する攻撃をエスカレートさせているものの、ロシア側のほうが依然として作戦機の数も航空爆弾の数も多いからだ。また、欧州の支援諸国から供与される計85機のF-16の到着には時間がかかっており、今後も少しずつしか入ってこない見通しになっている。

しかもウクライナ空軍はこの夏、ロシア側による航空基地への度重なる攻撃で駐機中の戦闘機などを数機失った。残りの作戦機はわずか100機ほどかもしれない。ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)のノンレジデント・フェロー、ハンス・ペテル・ミットゥンは、クルスク侵攻は「すでに(戦力が)引き伸ばされているウクライナ軍にとって試練になるだろう」と予想している。


ロシア空軍がウクライナに対する空戦に投入している爆撃機およそ300機は、合計で滑空爆弾を1日最大100発投下できる。規模で劣るウクライナ空軍が1日に投下できる滑空爆弾数は、それよりはるかに少ないはずだ。

とはいえ、作戦機や航空爆弾をはじめ重火器の装備が著しく不利な状態にありながら、ウクライナ軍がたんにロシアに侵攻したばかりか、その侵攻に失速の兆しがみられないのは驚くべきことだ。

匿名のウクライナ高官はミットゥンに、「われわれは攻勢に出ている。敵の陣地線を引き伸ばし、最大限の損害を与え、国境を守れないロシアの状況を不安定化させることが狙いだ」と説明したという。

ロシアはクルスク方面で、地上だけでなく空中でも脆弱性を抱えている。開始から1週間たつ侵攻作戦へのウクライナ軍機の参加がそれを示している。

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ウクライナは14日、自軍がロシア領内で前進を続けており、複数の方向へと動いていると発表した。

ロシア西部の国境地帯にあるクルスク州は6日、ウクライナ軍の突然の越境攻撃を受け、ロシア当局が同州に非常事態を宣言した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領によると、ウクライナ部隊は14日朝からクルスク州で1~2キロメートル前進したほか、ロシア兵100人を捕らえたという。しかしロシア側は、ウクライナ部隊のさらなる前進を阻止したと主張している。

ウクライナの越境攻撃は2週目に突入している。ウクライナがロシア領内にここまで深く侵入したのは、2022年にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して以降で初めて。

■ウクライナとロシア、相反する主張

実際にどれくらいのロシア領土をウクライナが占拠したのかは不明で、両国は相反する声明を出している。

ロシア・チェチェン共和国の特殊部隊「アクマット」の司令官アプティ・アラウディノフ少将はロシア国営テレビ「チャンネル1」で、ロシア部隊はウクライナ軍の前進をほぼ「完全に阻止した」と語った。

一方で、ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官はビデオリンクで、ウクライナ部隊が現在、クルスク州境の町スジャを完全に制圧していると、ゼレンスキー大統領に伝えた。

BBCはこの主張が事実かどうか、独自に検証できていないが、ウクライナのテレビ局がスジャで撮影した動画には、ウクライナ兵が学校からロシア国旗を撤去する様子が映っていた。

■ウクライナ、ロシア側に「安全地帯」設置も

ウクライナがロシア領の一部を占拠したと主張するなか、ウクライナ外務省のヘオルヒ・ティキヒ報道官は、同国はロシア領を「奪う」ことに興味はないと述べた。

「ロシアが公正な平和の回復により早期に合意すれば(中略)ウクライナ国防軍によるロシア領内への襲撃も早期に止まるだろう」と、同報道官は記者団に述べた。

ゼレンスキー氏は先の政府関係者との会談で、ロシア・クルスク州に「軍司令官の事務所」を設置することを検討するつもりだと述べた。

ウクライナのイリナ・ヴェレシュチュク副首相は14日、自国の国境を守るためにクルスク州に「安全地帯」を設けるという計画の概要を述べた。

ウクライナは安全地帯の中でロシア市民のための人道支援を組織し、ロシアとウクライナ双方への避難回廊を設けるつもりだと、副首相はメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した。

■ロシア側の状況は

ロシアのリベラル系野党「ヤブロコ」所属の地方当局者ヤン・フルツェフ氏は、クルスク州は「緊迫した」状況に置かれていると述べた。

「自宅を離れようとしている市民は非常に難しい心理状況にある」、市民は多くの「ストレスと悲しみ」を受けていると、フルツェフ氏はBBCラジオ4の番組「ザ・ワールド・トゥナイト」に語った。

フルツェフ氏によると、約18万人の市民が避難を必要としている。これまでに12万1000人が避難しているという。市民は食料や資料品など基本的な必需品を求めていると、同氏は述べた。

ロシアは先に、ドローン(無人機)攻撃や砲撃で複数の家屋が損壊している、クルスク州に隣接するベルゴロド州に2度目の非常事態を宣言した。

ロシア政府は、主にクルスク、ヴォロネジ、ベルゴロド、ニジニ・ノヴゴロドの4州を標的とした117機のドローンを、一晩で撃墜したと主張している。

ウクライナの治安当局がAFP通信に語ったところによると、複数の長距離ドローンはヴォロネジやクルスク、サヴァスレイカ、ボリソグレブスクのロシアの飛行場にも撃ち込まれた。

ウクライナ軍は、特別に計画された作戦で一晩中、飛行場で「楽しい」夜を過ごしたと、治安当局筋の言葉を引用した。

■各国の反応

アメリカのジョー・バイデン大統領は13日に、ウクライナ軍の越境攻撃について初めて言及した際、この攻撃はロシア大統領の「プーチン氏にとってまさにジレンマを生み出している」と述べた。

こうした中、欧州のさまざまな支援国がウクライナへの支持を表明している。

フィンランドとエストニアの首相は、クルスク州でのウクライナの軍事作戦を支持すると述べた。ラトヴィアの外相は、ウクライナ政府にはロシア領内で北大西洋条約機構(NATO)供与の武器を使用する「権利がある」と、一歩踏み込んだ発言をした。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は以前、こうした行為は「レッドライン」(越えてはならない一線)だと述べていた。

ドイツ外務省は先週、ウクライナの自衛権は「自国の領土に限定されない」としていた。

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 ウクライナは1週間余り前にロシア西部クルスク州への越境攻撃を開始して以来、幾つかの勝利を手にしてきたが、そうした戦果を失うリスクが生じつつある。制圧地の確保に向けた計画が必要となっている上に、ロシアの逆襲も見られるためだ。

この越境攻撃にウクライナは数千の兵力を投入し、ここ数カ月で初めてロシアから戦争の主導権を奪い取った。

14日には複数のウクライナ政府高官が、制圧した地域をロシアの攻撃に対する「緩衝地帯」として利用すると発言。シルスキー総司令官は15日、クルスク州内に軍司令官事務所を設置したと述べ、長期制圧の構えを示唆している。これまでに掌握したロシア領は1150平方キロメートルを超えるという。

ウクライナ元国防相のアンドリー・ザゴロドニュク氏はインタビューで、越境攻撃の目的はウクライナ東部ドンバス地方からロシア軍を引き離すことだとの見方を示した。同地方でロシア軍は何カ月も着実な前進を続けており、最終的には全て占領しようとしている。

ただ今のところ、ウクライナが意図するようなロシア軍の兵力移動の兆しは見えていない。

ロシア政府はウクライナの越境攻撃について「テロリストの侵攻」と断じ、民間施設を標的にしていると非難。プーチン大統領は、ロシアも「相応の反応」をするが、差し当たってはロシア領内から全てのウクライナ軍を駆逐すると述べた。

ウクライナ外務省の報道官は今週、制圧したロシアの地域を永久に占領する意向はないと強調した一方、プーチン氏はウクライナが最終的な和平交渉の「持ち札」にするためロシア領土を欲しがっていると指摘している。

キーウの軍事アナリスト、セルヒー・ズグレツ氏は、ウクライナがリリスク、コレネボイ、スジャの各都市と国境の間の土地を維持し、ロシア領において約20キロの幅の帯状の領有権を得るだろうと予想。この地域ならば長距離砲と防空システムを駆使した少数の兵力で防衛できると分析する。

ズグレツ氏は「道路が少なく、河川が多いこの戦線を守るのは難しくない」と述べ、ウクライナ領内からの補給も容易だと付け加えた。

ウクライナ軍は、側面攻撃の脅威にさらされる恐れがある州都クルスクまでは前進しないだろうというのがズグレツ氏の見立てだ。

一方別の専門家は、ウクライナ軍が制圧地を確保し続けようとすれば、兵力不足の問題から多大な犠牲を強いられてもおかしくないと警告した。

越境攻撃という「大きな賭け」は目先で実を結んでいるとはいえ、ロシアがドンバス地方でじりじりと前進している点を考えれば、やがてメリットよりも犠牲の方が大きくなるという。

<ウクライナ兵士の葛藤>

越境攻撃当初こそ混乱が広がったロシア側だが、最終的にはゆっくりと盛り返しているように見える。

あるロシア軍司令官は15日、国境付近の1つの集落からウクライナ軍を追い出したと明かした。衛星画像には、クルスク州の国境付近でロシアが新たに築いたと思われる塹壕が複数写っていた。

この戦争に関する公開映像を研究しているフィンランドのブラック・バード・グループのアナリスト、パシ・パロイネン氏は、ロシア軍にはドンバス地方の最も活発な最前線から軍を撤退させなくても、クルスク州で反撃に使える十分な予備兵力があるはずだと指摘した。

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ロシア領内に越境攻撃を続けるウクライナ軍は日本時間17日、ロシア軍の補給路であるクルスク州の橋を爆破する映像を公開しました。専門家は、プーチン大統領はジレンマに直面していると指摘します。(8月17日OA「サタデーステーション」)

■補給路の橋を破壊

ウクライナ軍が日本時間17日に公開した映像。ロシア西部クルスク州の橋が爆発。煙が消えると、橋は寸断されていました。

ウクライナ軍による、ロシアへの越境攻撃が始まってから11日。今回、ウクライナ軍が破壊した橋は、すでに制圧している地域からおよそ10キロ離れた場所にあり、ロシア軍が補給路として使っていたといいます。橋を破壊した狙いについて、専門家は…

防衛省防衛研究所 兵頭慎治氏
「ウクライナ軍による現在の軍事制圧地域を維持・確立しようという狙いがある。(破壊した)橋を越えて軍事制圧することは、現時点ではウクライナ側は想定していないのではないかと考えられる」

■“制圧の町”では「激戦の爪痕」

ウクライナメディアの記者(14日 ロシア・クルスク州スジャ)
「まさに歴史的な瞬間を迎えています。ロシア国旗が地面に落ちる瞬間です」

ウクライナ軍がロシア国内で制圧した町の様子も明らかになってきました。

CNN特派員(16日公開 ロシア・クルスク州)
「激戦の痕跡が残されています。ロシア国内でウクライナ軍が進軍するのは信じられない光景です」

地下シェルターには、ロシア人住民たちの姿もありました。今回の越境攻撃について、ウクライナのゼレンスキー大統領は…

ウクライナ ゼレンスキー大統領(16日公開の動画)
「ウクライナのための“交換資金”を蓄えているのです」

防衛省防衛研究所の兵頭慎治氏によると、この“交換資金”とは、「捕虜」や「制圧した土地」のことを指している可能性があると言います。

■プーチン氏 ジレンマ直面か

ロシア領内に外国の正規軍が地上侵攻したのは、第2次世界大戦以来、初めて。ロシアのプーチン大統領からは、いら立ちが垣間見える場面もありました。

(12日に行われた会議でのやりとり)
ロシア・クルスク州知事代行
「(クルスク州の)前線の幅は40キロで…」
ロシア・プーチン大統領
「そのことは軍が報告してくれるでしょう。あなたが報告すべきは、住民の支援や経済状況についてです』

プーチン政権に対するロシア国民の信頼が低下しているという、ロシアの「世論調査財団」による調査結果も出ています。

防衛省防衛研究所 兵頭慎治氏
「現在、プーチン大統領は、戦力の配分をどうバランスを保つのか、ジレンマに直面していると思う。(ウクライナ)東部などの前線をとるのか、あるいはロシア国内の国境防衛を優先するのか、難しい決断を迫られていると思う」

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ウクライナ軍がロシア西部クルスク州への越境攻撃に着手してから10日余りが経過した。ウクライナ軍の奇襲が成功した背景には、徹底的な情報秘匿と、自国領への侵攻を想定していなかった露軍の油断があったことが判明しつつある。ただ、従来の前線であるウクライナ東部では露軍が攻勢を維持しており、全体的な戦局の先行きはなお見通せない。

6日の越境攻撃の着手後、ウクライナ軍はクルスク州の集落82カ所と約1150平方キロを制圧した。現地に「駐屯司令部」を設置し、占領地域を維持する構えだ。露領土が他国軍に占領されたのは第二次大戦の対ドイツ戦以来で、ロシアにとっては屈辱となった。

ウクライナや欧米のメディアによると、越境攻撃は極秘裏に計画され、ウクライナ軍幹部の多くや欧米諸国にも知らされていなかった。ウクライナ軍は欧米側から供与された主力戦車などを持つ精鋭部隊を投入して越境攻撃を開始。露軍は現地に装備が貧弱な国境警備部隊や経験の浅い徴兵しか配置しておらず、ほぼ無抵抗で敗走した。少なくとも数百人が降伏したとの情報もある。

クルスク州は第二次大戦中、「史上最大の戦車戦」と呼ばれるソ連軍と独軍の「クルスク会戦」の舞台となるなど、機甲部隊の運用に適した場所。そこに十分な戦力を配置していなかった露軍の油断は明らかだ。英国防省は16日、「ロシアはウクライナ軍の大規模攻撃への対応を準備していなかった」と指摘した。

ウクライナ軍の越境攻撃の狙いは、露領土を占領してプーチン露大統領を停戦交渉の場に引き出す▽露軍戦力を自国防衛に回させ、最激戦地の東部ドネツク州などでの露軍の攻勢を弱める▽軍・国民の戦意を高める-といった複合的なものだとする見方が強い。実際、米国によると、露軍はウクライナ侵略に投入していた一部の部隊をクルスク州に転戦させた。

ただ、露軍は現在もドネツク州で攻勢を維持。当初から目標としてきた同州全域の制圧を断念しない構えだ。米シンクタンク「戦争研究所」は15日、露軍は主力部隊を東部に残しており、「クルスク州防衛よりも東部での前進を優先しているもようだ」と指摘した。

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ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア西部クルスク州で続く越境攻撃について、「緩衝地帯をつくるためだ」と初めて明言しました。

ゼレンスキー大統領は18日、6日から続くクルスクでの越境攻撃について、SNSに投稿したビデオメッセージの中で、「侵略者(ロシア)の領土に緩衝地帯を作ることがクルスク州での我々の作戦だ」と述べました。

ゼレンスキー大統領が、越境攻撃の目的について明言したのは今回が初めてです。

ウクライナは一連の越境攻撃で、要衝スジャを含む80以上の集落を制圧したとしています。

また、ウクライナ軍は18日、クルスク州で2つ目の橋を攻撃した映像を公開しました。

ウクライナ軍は16日にも橋の破壊を発表していて、補給路を攻撃することで、ロシア軍の動きを封じる狙いがあるとみられます。

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ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃で、露連邦捜査委員会は19日、ウクライナ軍のミサイル攻撃により、同州のセイム川沿岸のグルシコボ地区で3本目の橋が破壊されたと主張した。露著名テレビ司会者が交流サイト(SNS)で明らかにした。露メディアによると、これで同地区のセイム川南岸地域は北岸と結ぶ全ての橋を喪失し、孤立した。3本の橋はクルスク州に展開する露軍の物資輸送路だったという。

グルシコボ地区はウクライナ北部スムイ州に隣接し、ウクライナ軍が掌握したクルスク州スジャの西方に位置している。クルスク州当局は16日、同地区のセイム川に架かる橋がウクライナ軍の攻撃で破壊されたと発表。18日にはウクライナ空軍のオレシチュク司令官が同地区で「2本目の橋を破壊した」と発表していた。同氏は橋の破壊で「露軍は物資輸送が困難になる」と指摘した。

一方、露地元当局者や露軍事ブロガーは、露軍が仮設の舟橋を使って物資輸送を行っており、軍事行動に大きな影響は出ないと主張した。

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 ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、同国軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃でロシア側の報復の警告がはったりであることが示されたと述べ、ロシアの「レッドライン」(越えてはならない一線)を恐れる西側諸国に対し、ウクライナに供給した兵器の使用制限を緩和するよう訴えた。

ゼレンスキー氏はウクライナ軍が同州で約1250平方キロの地域と計92集落を制圧したと主張。ロシアの調査委員会はまた、ウクライナ軍が同州セイム川に架かる3本目の橋を破壊したことを確認した。 

ゼレンスキー氏は外交官らに対し「われわれは重要な概念の変化を目の当たりにしている」とし、一部のパートナー国がロシアの「レッドライン」と考えてきたものが足元で「崩壊している」と主張した。

ウクライナは欧米が供給した兵器の使用制限によりロシア軍関連施設を思うように攻撃できずにいるとし、同盟国に対し、ウクライナ支援の方法についてもっと「勇敢に」決断するよう訴えた。

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ロシア南部クラスノダール地方の港で22日、貨物船がウクライナ軍のミサイル攻撃を受け沈没した。現場は、ロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島の対岸。現地紙RBK(電子版)によると、燃料を積載したタンク車30両をロシア本土からクリミア半島に運ぶ途中だったとみられる。

ロシア西部戦線、長期化か 越境・占領「奪還に数カ月」―24日でウクライナ侵攻2年半

 ウクライナのメディアは、国産の対艦ミサイル「ネプチューン」が使われたもようだと伝えた。同ミサイルは2022年4月、ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」を撃沈したとされる。

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ウクライナ国防省は2024年8月21日、越境攻撃中のロシア・クルスク州で、ロシア軍の架橋を阻止した動画を公開し、弾薬や榴弾砲にも損害を与えたと発表しました。

 攻撃を担当したのは、NATO(北大西洋条約機構)の即応部隊をモデルに訓練された、ウクライナ国防軍の特殊作戦部隊とのことです。攻撃には地上監視ドローンの支援を受けた砲撃及びアメリカから供与された高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」での攻撃のほか自爆ドローンも投入され、架橋中の舟橋や建機、輸送車両などを破壊しました。

 ウクライナ軍はクルスク州への越境攻撃を開始した後、同州のセイム川に架かっていた橋を集中攻撃し、補給路を遮断しています。

 そのためロシア軍は、失った補給路を舟橋で補おうとしていますが、その橋を架けようとする動きに関しても、ウクライナ軍は監視を強め攻撃を行っているようです。

 なお、ウクライナ国防省はこの攻撃で、舟橋や運搬車両のほかに、152mm榴弾砲とその備蓄弾薬、電子戦車両などにも被害を与えたとしています。

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ウクライナ国防省の公式メディア「アーミーインフォーム」は2024年8月20日、ロシアのクルスク州への越境攻撃の後、ロシア軍の攻撃が南部で弱まっている理由について報じました。

【動画】大きな爆発…これがウクライナ軍のクルスク攻撃です

 報道によると、連日ロシア軍と激しい戦闘が行われていたザポリージャ地方のオリヒウ方面とグリャイピルスケ方面で、3日間ほど攻撃がないとのことです。

 この状況について、同地で作戦を指揮している「タヴリア部隊」のドミトロ・リュホヴィ報道官は、「(前線で)戦闘行為がゼロというのは、最近としては異例の状況といえる」と見解を述べました。

 ただ、ウクライナ軍が抑えているドニプロ川左岸の一部では、ロシア軍が追い出そうと散発的に攻撃を加えているとのことでした。

 この方面でのロシア軍の大規模な攻撃の停止とクルスク方面への越境攻撃の因果関係についてドミトロ報道官は「私はこれをクルスク作戦と結びつけようとは思わない」と話しました。ただ、慎重論というよりは、以前に指摘していたことが現実になっただけという考えで「私は1か月前に、ロシアには複数方面に同時に効果的な攻撃を行うための資源がないと言った」と強調しました。

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ウクライナがロシア西部クルスク州に逆侵攻を仕掛けて約3週間が経過した。ウクライナ軍の指揮官たちは、これによってウクライナ東部からロシア軍の優秀な連隊や旅団を引き離し、ウクライナ軍にとって最も脆弱になっている正面での圧力を軽減することを望んでいたのだとすれば、失望しているに違いない。

ロシア側は東部の部隊をほぼ動かさず、クルスク州への増援には主に、練度の低い若年の徴集兵を充てたからだ。

そのため、ロシア軍が東部で昨年秋に開始し、年明け前後に拡大した攻勢は、妨げられることもなく8月も続いている。そして、ウクライナ軍にとって東部の防衛戦は依然として深刻な状況にある。

端的に言えば、ロシア側はウクライナ東部の一部を獲得するためにクルスク州の一部を犠牲にし、ウクライナ側はクルスク州の一部を獲得するために東部の一部を犠牲にしている。どちらにとっても、犠牲が見合うものなのかのかは政治的な問題であり、容易には答えが出ないだろう。

ロシア軍は、ウクライナ東部ドネツク州ドネツク市の北西に位置するポクロウシク市に向けて、東から進撃を続けている。その響きはウクライナ側にとって、どんどん大きくなる警鐘のように聞こえていることだろう。ロシア軍の歩兵部隊は23日、ポクロウシクの東10km強のノボフロジウカ市に進軍し、ウクライナ軍の戦車1両を対戦車擲弾(てきだん)で撃破している。

ポクロウシクにはこの方面のウクライナ軍の主要な補給線が通っている。ロシア軍の数週間にわたる着実な前進によって、同市はますます危うい状態になっている。

アナリストたちはこうした状況を予想していた。ウクライナの調査分析グループであるフロンテリジェンス・インサイトは7月下旬、ポクロウシクを「危機的な」方面のひとつに挙げていた。これは、ポクロウシクに向かう軸にあるオルリウカやミコライウカといった村々がロシア軍に占領される前のことだ。

米国製M1エイブラムス戦車の残存する二十数両など、西側製装甲車両を運用するウクライナ軍の精鋭部隊、第47独立機械化旅団ですら、ロシア軍の進撃を食い止められていない。

ポクロウシク方面のウクライナ軍の防衛部隊にとってかすかな希望があるとすれば、この正面のロシア軍の損害が「甚大」(親ウクライナの調査分析グループ、コンフリクト・インテリジェンス・チーム)なことだろう。

そうした損害がロシア軍の前進の重しになっている兆しもある。ウクライナのシンクタンクである防衛戦略センター(CDS)は25日の作戦状況評価で、ポクロウシク正面ではロシア軍の進軍方向が2週間の間に7方向から3方向に減ったと指摘し、「敵はリソース不足に陥り始めている」との評価を示している。

だが、ペースが落ち、方向が狭まったとしても、ロシア軍が前進していることに変わりはなく、ポクロウシクが陥落する危険性は一段と高まっている。その結果、東部の広い範囲でウクライナ軍の防御が崩れることになれば、ウクライナ軍の指揮官たちは大規模な兵力(各最大400人の12個の大隊規模の前線部隊で構成されるともみられる)を、ポクロウシク正面の補強でなく、クルスク州への越境攻撃に投入したことを後悔するかもしれない。

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9月:ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、ロシア領内への越境攻撃を続けることで、ウクライナ東部ドネツク州でのロシア軍の進軍を防ぎたいという考えを強調しましたが「現時点ではまだ困難だ」とも述べ、東部での戦闘で苦戦していることを認めました。

ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、オランダのスホーフ首相とともに南部のザポリージャを訪問し、記者会見を行いました。

この中で、ゼレンスキー大統領は、欧米から供与された射程の長い兵器を使ったロシア領内への攻撃を認めるよう重ねて訴えたうえで「使用したいものすべてを手に入れたわけではない」と述べ、欧米に対し、さらに多くの兵器を供与するよう求めました。

また、ロシア領内への越境攻撃を続けることで、ウクライナ東部ドネツク州の要衝、ポクロウシクなどへのロシア軍の進軍を防ぎたいという考えを強調しましたが「現時点ではまだ困難だ」とも述べ、東部での戦闘で苦戦していることを認めました。

一方、ロシアのプーチン大統領は2日、ウクライナ軍の越境攻撃について「今回の挑発も失敗に終わると確信している」と述べ、ウクライナ側のねらいどおりにはならないと主張しました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は1日、ウクライナ軍のロシア領内への越境攻撃について、掌握地域の拡大は確認されていないとしています。

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ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、中部ポルタワ州でロシアによるミサイル攻撃があり、少なくとも51人が死亡、270人余りが負傷したと明らかにした。欧米メディアによれば、軍の通信専門家を養成する施設や付近の医療機関が直撃を受けた。

 攻撃があったのは3日で、ロシアが弾道ミサイル2発を発射。ウクライナ国防省によると、警報から着弾までの時間が短く、防空壕(ごう)に避難しようとした人々が被害に遭った。がれきの下敷きになった負傷者もおり、救助活動が続いている。

 ゼレンスキー氏はX(旧ツイッター)への投稿で、ウクライナを侵攻するロシアが「この攻撃の代償を払うことになる」と主張。その上で「ウクライナは防空システムとミサイルを必要としている」と述べ、西側諸国に軍事支援の増強を呼び掛けた。

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イラン

2024-08-01 03:49:11 | Weblog

7月

イラン内務省は6日、5日投票の大統領選の決選投票で、改革派のペゼシュキアン元保健相が勝利したと発表した。

大統領選はライシ大統領がヘリコプター事故で死亡したことに伴い行われ、同氏と保守強硬派のジャリリ最高安全保障委員会元事務局長が決選投票に臨んだ。内務省は「過半数の票を獲得したペゼシュキアン氏がイランの次の大統領になった」と発表した。投票率は50%程度だった。

ペゼシュキアン氏は、核開発や中東における武装勢力等への支援などを巡り、大きな政策変更を行うことは予測されていない。だが、85歳と高齢で全ての政策で最終決定権を握る最高指導者ハメネイ師の後継問題に影響を与えるとみられる。

ペゼシュキアン氏の当選により、2015年に締結した核合意を巡って停滞した米英などとの交渉などの外交面でより現実的な路線が取られ、社会の自由化などでも前進が見られる可能性があると指摘する専門家もいる。

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イスラム組織ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤ氏がテヘランで死亡した事件は、自国や同盟国の要人を守るイランの能力に疑問を投げ掛けた。この事件にイランがどう反応するつもりなのかは不透明だ。

  ハニヤ氏はイランのペゼシュキアン大統領の就任式に出席するためテヘランを訪問していた。ハマスが31日発表したところによると、ハニヤ氏は滞在していた宿泊施設で夜間にイスラエルの攻撃に遭い、死亡した。

  その数時間前にイスラエルはレバノンで親イラン民兵組織ヒズボラの司令官を殺害したと発表。さらに数カ月前には、シリアでイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)司令官らが空爆を受けて死亡。イランはイスラエルによる空爆だと非難した。

  ハニヤ氏殺害がイラン国内で起き、その数時間前に同氏がイラン国営テレビ局でペゼシュキアン大統領を称賛していたことを踏まえると、今回の暗殺はイラン情報機関と最高指導者のハメネイ師、IRGCにとって大失態と言える。

  ハメネイ氏は国営テレビで読み上げられた声明で、ハニヤ氏を迎えていた国としてイランは「復讐を求める義務」があると主張。イスラエルの「人殺しでテロリストのシオニスト体制」は「厳しい処罰」を覚悟するべきだと続けた。イスラエルは今のところハニヤ氏殺害の責任を認めていない。

イランはパレスチナ自治区ガザでイスラエルと戦うハマスの主要支援国だ。ハマスはレバノンのヒズボラ、イエメンの武装組織フーシ派、パレスチナのイスラム聖戦とともに、米国とイスラエルの利益に抵抗する枢軸を形成している。いずれのグループも程度の差はあれ、イスラエルとの紛争に関与している。

  イランの情報および安全保障担当の最高幹部は、次の一手を判断しようとするだろう。全面戦争を避ける慎重な対応を再び取るのか、ハニヤ氏殺害が一線を越えたとして域内でのイメージ回復だと判断するのか、決断を迫られる。

  イランの国連代表部は、報復が「特殊作戦」の形を取るとX(旧ツイッター)に投稿し、限定的な対応を示唆した。過去の報復措置では、イスラエルや米軍基地へのミサイル攻撃をイランは行った。

  英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)の中東・北アフリカ・プログラム担当ディレクター、サナム・バキル氏は、ハニヤ氏への攻撃について「イランの情報・安全保障機関に大きな穴が開いていることを露呈した。情報が漏れ、イランにとっては極めて大きな失態だ」と指摘。近く退任するハティブ情報相がわずか数日前、国内におけるイスラエル情報機関の影響力をイランは削減したと話していただけに、いっそう無様に映るとバキル氏は語った。

イランの安全保障に大きな欠陥が生じた理由の一つは、ユネシ元情報相の2021年の発言で説明されるかもしれない。同氏はジャマラン・ニュースとのインタビューで、2010年代初めに「競合する新たな複数の情報機関」が創設されて情報省が弱体化し、イスラエルのモサドがイラン国内に浸透する直接的なきっかけを作っていると述べていた。

  イランは今年に入り、既にイスラエルとの直接戦争の危機に瀕している。4月にはシリアで攻撃を受けた報復として、前例にない規模のミサイル攻撃をイスラエルに仕掛けた。これに対してイスラエルは当面は小競り合いの枠内とする限定的な形で対応した。

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イランの首都テヘランで31日、パレスチナ自治区ガザ地区を拠点とするイスラム組織ハマスの指導者ハニヤ氏が暗殺されたことを受け、イラン最高指導者のハメネイ師は同日、声明を出し、イスラエルに対する報復を宣言した。イランメディアが伝えた。

 ハメネイ師は声明で「シオニスト体制(イスラエル)は我々の家で客人を殉教させ、自ら厳しい処罰への下地を整えた」と指摘。そのうえで「イラン領内で起きた事件に報復するのは我々の義務だ」と述べた。

 イランは4月、在シリアのイラン大使館が空爆されたことへの報復として、イスラエル領内に300発以上のミサイルなどを発射している。

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米紙ニューヨーク・タイムズは1日、イランの首都テヘランで7月31日に殺害されたパレスチナ自治区ガザのイスラム主義組織ハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤ氏が滞在した宿泊施設に、爆破装置が仕掛けられていたと報じた。米国やイランなどの当局者が同紙に明らかにした。


 爆破装置は約2か月前に持ち込まれ、ハニヤ氏の到着を確認して遠隔操作で起爆された。同施設はイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」が管理・警備しているといい、どのように装置が持ち込まれたのかは不明だ。

 米ニュースサイト・アクシオスも、AI(人工知能)を搭載した爆破装置が寝室に設置されていたと伝えた。イラン国内にいるイスラエルの対外情報機関モサドの工作員が起爆したという。

 イスラエルはハニヤ氏殺害への関与を認めていないが、同紙によると、同国当局者は殺害直後に米国などに作戦の詳細を説明した。

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イスラム組織ハマスの最高幹部がイランを訪問中に殺害されたことをめぐり、アメリカのメディアは、宿泊先の部屋に仕掛けられていた爆発物で殺害されたと伝えていますが、状況を調べていたイランの軍事精鋭部隊は「敷地の外から発射された飛しょう体によって殺害された」と発表しました。

ハマスのハニーヤ最高幹部は、7月31日に訪問していたイランの首都テヘランで殺害されました。

当時の状況を調べていたイランの軍事精鋭部隊・革命防衛隊は3日、声明を出し、「イスラエルによって計画・実行され、アメリカによって支援されたテロ行為だ」と主張しました。

そのうえで、ハニーヤ最高幹部の殺害は、宿泊していた施設の敷地の外から発射された短距離の飛しょう体によって行われたことが分かったと説明しています。

一方、アメリカの複数のメディアは、イスラエルによって宿泊先の部屋に仕掛けられた爆発物で殺害されたと伝えていて、情報が錯そうしています。

革命防衛隊は声明で「イスラエルは、この犯罪に対する報いとして適切な時と場所、質で、厳しい罰を受けるだろう」として、報復を行う考えを改めて強調しています。

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イスラム組織「ハマス」の最高指導者・ハニヤ氏がイランで殺害されたことを受け、ハマス指導者がANNの取材に応じ、イスラエルとイランが「戦争状態に入った」と述べました。

イランにおける「ハマス」指導者 カレード・カッドミ氏
「私は(ハニヤ氏が殺害された)部屋を見た。壁2枚と天井が破壊された。つまり何かが建物の外から飛んできて建物を破壊したということだ」

 カッドミ氏はハマスの後ろ盾となっているイランにおけるハマスの指導者のトップで、ハニヤ氏が殺害された当時、同じ建物にいたと話します。

 ハニヤ氏の部屋に爆弾が設置されていたとの報道については、「イスラエルとアメリカが責任逃れをしたいだけのシナリオだ」と否定しました。

カレード・カッドミ氏
「戦争がレバノンで、シリアで、イラクで、イエメンで起きている。イスラエルによりすべての虐げられた人々に引き起こされた。イランも戦争状態に入った」

 中東全体の緊張が高まるなか、カッドミ氏は「私たちは戦争をしたくないが、自衛できるし、勝つつもりだ」と強調しました。

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8月:

パレスチナのイスラム組織ハマスの最高指導者だったハニヤ氏がイランで暗殺された事件で、米紙ワシントン・ポスト(電子版)は6日、米政府当局者の話として、イランがイスラエルに対する大規模報復攻撃の計画を再検討している可能性があると伝えた。

 米政府はイスラエルの防衛に協力する態度を鮮明にし、軍事と外交の両面でイランへの圧力を強めている。

 同紙によると、イランと国交がない米国は、スイス政府などを介して、報復による緊張激化のリスクが極めて高いとするメッセージを伝達。就任したばかりのイランの改革派ペゼシュキアン大統領の政権運営に深刻な影響が及ぶと指摘したという。米政府高官は同紙に「米国がパートナーの防衛に揺るぎないことは、イランも明確に理解している」と語った。

 ブリンケン米国務長官は6日、「誰もこの紛争を激化させるべきではない」と訴え、イランとイスラエル双方に直接懸念を伝えたと強調。「さらなる攻撃は紛争と不安定を永続させる」と述べた。

 ロイター通信によれば、ロシアのプーチン大統領も、イランを5日に訪れたショイグ安全保障会議書記(前国防相)を通じ、最高指導者ハメネイ師にイスラエル攻撃で民間人に犠牲が出ることのないよう自制を要請。衝突拡大の阻止に向けて各国の外交努力が続いている。 

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9月:イランがロシアに数百発の弾道ミサイルを供与したとイギリスメディアが報じました。

 フィナンシャルタイムズは8日、ウクライナの政府高官の情報として今週、ロシアのカスピ海にある港にイランから200発以上の短距離弾道ミサイル「ファタフ360」が到着したと報じました。

 ウクライナ当局者は、ロシアは「ファタフ360」を東部の前線地帯にある陣地や軍事目標を攻撃するために使用する可能性があり、イランによるロシア支援の重大なエスカレーションを示すものだとして深刻な懸念を示しています。

 一方、イラン外務省の報道官は国営通信の取材に「ロシアへの弾道ミサイル移送は根拠がない」と反論したうえで、「イランはロシアのウクライナ侵攻に関与したことはなく、政治的解決を支持する」と述べたということです。

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