(新)緑陰漫筆

ゆらぎの読書日記
 ーリタイアーした熟年ビジネスマンの日々
  旅と読書と、ニコン手に。

コラム 風の音~原発処理水

2019-09-22 | コラム
コラム 風の音~原発処理水
                       (写真は、千葉県の停電の状況を示すマップ)


 このところ新聞はあまり読まない。単にあった事を報道するだけで、その背景や意味、問題点などについて掘り下げて報じられることはあまりない。では、国際政治や時事問題、金融や経済などなどは何によって知るのかというと、そのほとんどはSNS(フェイスブック、ツイッター、それらにつながるブログもふくめて)それから有料配信ニュース(NewsPick,WSJ・・・)によっている。

 最近、福島第一原発の処理水(マスコミはなぜか汚染水と書く)のことは前環境大臣の原田さんの発言からはじまった。”処理水は海洋放出しかない”、と。これは何の問題もないのであるが、後任の環境大臣に就任した小泉進次郎氏は、それを否定して福島漁連に陳謝した。余談になるが、この人の話しを聞いていると、なるほどとうなずくこともあるが、紙に書いてみるとほとんど中身がない。

 そもそも処理水は、原子炉を冷却する時に使用される水は、その時点では汚染されるが適切な化学処理(ALPS)によってトリチウム(三重水素)以外はすべて除去される。トリチウムは現在の技術では除去できないが、自然界にも存在するもので、一定の基準値であれば排出(放出)はもちろんのこと、飲料水としての利用も問題ない。 現在、福島の原発内のタンクに貯められている100万トンの水は、(一部は再処理してから)希釈すれば人体・環境に無害な水として対応(=海洋放出)できるのである。

それから処理水は、原発事故を起こした福島特有の問題ではない。
日本を含むあらゆる原子力発電所でこの冷却水は発生しているわけであり、充分な化学処理をした後に海洋放出が行われている。(下記の図を参照、経産省の資料から)


    
     




 では、なぜ経産省の小委員会で、まだえんえんと議論が続いているのか、それは福島での風評被害を恐れているからである。 

ことは、簡単だ。小泉環境相が、率先して福島の海で取れた魚を食し、議員会館の食堂で福島の魚を料理した食事を議員みんなで楽しめばいいのだ。風評被害など、どこかへ飛んでしまう!


 せっかくなので、千葉県での停電問題について。未だに停電は続いている。風速50メートルを越す未曾有の強風が吹いたからである。停電があるため、配水ポンプも作動せず、水のきていないところもある。千葉県市長の熊谷俊人氏は、毎日の状況をツイッターを含むSNSで毎日活動状況を発信し続けている。頭の下がる思いである。それに対し、千葉県知事の某氏は初動も遅れ、”電力関係者は不眠不休でやってほしい”、というばかり。ついでの思い出したが、太平洋戦争中の米軍では、あまりに激しい戦闘なので、定期的に交代で「休暇」をとったとか。

東電の復旧現場では作業員たちが真摯に働き続けている。その裏にはこの停電復旧の根本的な原因が隠されているとの指摘がある。電柱の立て直し、撤去、寸断された電線の引き直し、変圧器の交換など現場工事のスキルは社員はもはや持ち合わせていない。協力会社、あるいはプロジェクトごとに集められたスキルをもった熟練職人であった。それが、昭和60年代から平成に入る頃から、現場の作業を避け、技能労働を軽んじる風潮が生まれ始めた。3Kを避け、ホワイトな机の上での仕事につくことが人生の勝ちパターンという物語を皆が共有するようになった。

ある人が指摘するように、みんなが管理する側に回って、現場の熟練ノウハウが減衰すれば、工事の品質は落ち、作業が遅れていくのである。この問題を如何に解決するか?
熟練労働者の評価のあり方を考え直さなければならない。






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感想 (九分九厘)
2019-09-25 17:42:53
 原発処理水は海に放出すればいいと考えます。どの国も海に放出しているわけだから、日本は堂々と国際社会に向かっって主張すればいいと思います。しかし、そのためには原発事故発生の当事者である日本は、放射能除去の科学的データを示して安全であることに関し世界の同意を取る必要があると思います。IAEAか然るべき国際機関に技術評価の査察を行うべく、政府が率先して動かないとだめです。新環境相も出だしで、地元におもねる発言をしましたが、当然前もって勉強もしたはずだのに今後の動向が注目されます。大阪の松井市長は大阪湾に流してもいいと発言。久元神戸市長は、国決めることでコメントは控えると発言。
 話は変わりますが、名古屋にある核融合研究所で長く研究に従事していた私の大学の後輩が、福島の原発事故のあと後始末の話をしました。核融合の反応に最も効率的で無害な原材料はトリチウム(三重水素)だそうです。そして、トリチウムを作る方法は原子力発電をするしかないという悪矛盾を嘆いていました。トリチウムを抽出する技術があれば原発を順次廃止しながら、トリチウムを使って夢の核融合をかなりの年月運転することができる。トリチウムが途切れたらそのあと更に次の新しいエネルギー開発をやればいいというのが彼の主張でした。
 それから、汚染土壌などの廃棄物は30年経ったら福島県以の外に持ち出すとしていますが、受け入れ場所を何処にするかで必ず揉めます。今から、何処か太平洋の日本領土の無人島を国有化して捨てる場所を決めておかないといけません。
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お礼 (ゆらぎ)
2019-09-27 15:13:09
九分九厘様
 早速のコメントありがとうございました。的を得たご指摘、そのとおりかと思います。処理水の安全性については、経産省の「トリチウムタスクフォース」で、その安全性がすでに確認されています。(一部は再処理が必要) したがって、改めて安全性を再確認の上、それを海外を含めて情報発信することが必要かと思います。ちなみに日本政府の外交は海外への情報発信が不足していると思います。

 核融合とトリチウムのの関係は興味深く思います。いずれにしろ、今後の地球温暖化対策を考えると原子力発電は外せないでしょう。安全性など一層の技術開発が望まれます。
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正しい主張 (龍峰)
2019-09-28 21:33:12
ゆらぎ 様

ゆらぎさん並びに九分九厘さんのご意見に全面的に賛成です。日本はエネルギーの確保からは、原子力発電は必須です。そこでは排水処理も廃棄物処理も避けて通れない問題です。
小生も今から30年ほど前、通産省の補助金で高濃度放射性廃棄物処理の基礎実験を延々とやっていた。地下1000mで、これら廃棄物を何千年も保管した場合の雰囲気ガスと使用材料の経時変化を追求するものであった、ことを思い出す。
排水の処理水が既に国際的に認められている水準に達しておれば、まずIAEA辺りの査定と評価を受け、第三者からの「海洋に放水可」のお墨付きをもらうことである。そして、国連の場などで日本の実態を明らかにし、情報を発信することである。
処理水は海洋投棄しかなく、いたずらに風評被害などを気にして、で正しい道を誤ってはならないと思う。ましてや最近の隣国のイチャモンなんぞ取るに足らないと思う。


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お礼 (ゆらぎ)
2019-09-29 11:32:00
龍峰様
 貴重なコメントをありがとうございました。高濃度放射性廃棄物処理の実験に関わっておられたのですね。こういう基礎実験があちこちで積み重ねられていって、廃棄物の処理技術が開発されてゆくのですね。

ちなみの韓国の原発は日本のそれの数十倍の処理水(あるいは汚染水)を海に放出しています。
問題をひろげているのは、むしろマスコミの情報汚染ですね。
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Unknown (Unknown)
2019-10-22 13:38:52
退任間際の大臣に 海洋投棄を発言させて、原発廃止を謳う元総理の息子を環境大臣に任命する。何か恣意的な匂いがしますね。
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