(新)緑陰漫筆

ゆらぎの読書日記
 ーリタイアーした熟年ビジネスマンの日々
  旅と読書と、ニコン手に。

詩歌<坂村真民の歌>

2007-02-27 | 時評
読書『念ずれば花開く』(坂村真民 柏樹社 ’87年2月)

 ごく最近日経の夕刊のコラム<交遊抄>を見ていたら、竹中平蔵氏(もと金融、経済財政政策担当大臣)が歌手の谷村新司との交友を語っていた。そのなかで、参院選出馬の折に谷村から贈られた激励の言葉を紹介していた。
「鳥は飛び立つとき、いつも向かい風に向かって飛ぶんですよ」 竹中バッシングの最中にもこの言葉を胸に、毎晩彼の曲を聴いたとのことだ。

これを読んで、私は坂村真民の詩「鳥は飛ばねばならぬ、人は生きねばならぬ」を思い出した。

  ”鳥は飛ばねばならぬ 人は生きねばならぬ
   怒濤の海を 飛び行く鳥のように
   人も混沌の世を生きねばならぬ
   鳥は本能的に 暗黒を突破すれば
   光明の島に着くことを 知っている。
  
   そのように人も 一寸先は 闇ではなく
   光であることを 知らねばならぬ
   新しい年を迎えた日の朝 私に与えられた命題
   鳥は飛ばねばならぬ 人は生きねばならぬ”

 阿蘇で生まれ、女手ひとつで母の愛を感じつつ育った詩人坂村真民。心の詩人とでもいうべく、八木重吉の詩風を受け継いだ、その詩は、多くの人に愛されてきた。母の愛誦した「念ずれば花ひらく」という八字十音を、一人でも
多くの人に念誦して欲しいと、終生願っていた。

  ”念ずれば 花ひらく
   苦しいとき 母がいつも口にしていた
   このことばを わたしもいつのころからか
   となえるようになった そうしてそのたび
   わたしの花がふしぎと
   ひとつひとつ ひらいていった”

ほかにも素晴らしい詩はいくつもある。長くなるので一つだけ書きとめておく。

  ”本気になると 世界が変わってくる
   自分が変わってくる
   変わってこなかったら まだ本気になっていない証拠だ
   本気な恋 本気な仕事
   ああ 人間一度 
   こいつを つかまんことには”

 宗教家の紀野一義は、坂村真民の詩が、いや”しんみん”さん、その人が好きで、とうと う坂村真民の風光について描いた『白鳥の歌びとー坂村真民』(柏樹社 ’90年9月)という本をを出した。この本は、真民さんと人の心について語った本で味わい深いものがある。 残念ながら、しんみんさんは、昨年の暮れに長逝された。
  



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2 コメント

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母の愛 (senji)
2007-03-02 10:40:50
坂村真民の「念ずれば花ひらく」なる母の念誦には彼の生きる道への想いが入っているのでしょう。いい言葉です。
私の母が死ぬ少し前に残した詩があります。今の私の座右に置いております。

 神様や仏様がいらっしゃるかどうか
 合掌した時のあの安らぎはどこから来るのでせう
 右の手の哀しみを左手が支え
 左の手の決意を右の手が受け止める
 その上を流れる静かなひとときは
   どこからくるのでせう

いつまでもマザーコンプレックスの私ですが、やはり母の影響が今の時点においても大きいようです。
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お礼 (草野ゆらぎ)
2007-03-03 18:15:51
senji様
 このブログにお目通しいただき、コメントを頂戴し、more than expected です。嬉しく、拝読致しました。
お母様の残された詩には、素晴らしい響きがあります。深い感銘を覚えました。このようなな心の安寧を
どのようにして得られたのでしょう。いつかまた、お聞かせください。
ありがとうございました!
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