りばぁさいどらいふ

東京を流れる某川のほとりから。
ガーデニング、アウトドアなど生活を心地よくするために思うところ、備忘録、いろいろです。

夏の京都⑤

2015-08-28 16:50:00 | お出かけ
昼食後は東塔から約2km先の西塔をめざします。
ちなみに比叡山は東塔・西塔・横川(よかわ)の3つのエリアに分けられます。



しばらく進むと弁慶水。


奥比叡ドライブウェイに掛かる陸橋を渡ると山王院。


もともと弁慶は智証大師円珍の住坊で、この山王院堂に千日籠って修行をしたそうです。その時に先程の水場で水を汲み、山王院堂まで運び、仏様にお供えしていたことから、弁慶水と呼ばれるようになりました。「ここを弁慶も歩いたのか~」と想像しながら歩くと楽しい。

突然、石灯籠が並ぶ長~い階段が出現。


下りですが結構長く、それなりに急なので、前を歩いていたサンダルの女性はかなり苦労されていました。この階段は最澄の廟所(びょうしょ)・・・つまりお墓がある浄土院につながる階段です。ここからは比叡山の中で最も清浄な聖域とされる場所なので、静かに心穏やかに歩きます。

浄土院。


真言宗の修行は大変厳しいことで有名ですが、浄土院では「侍真」と呼ばれる修行僧が、厳しい戒律を守りながら12年間(も!)籠って修行している場所です。ここも静かに参拝。
耳を澄ますとお堂の中で微かに人の動く気配が感じられました。姿は見えないのに修行の厳しさが伝わってくるようで、とても厳粛な気持ちになりました。

実はまだここまでは東塔でした。

さらに進むと、親鸞をはじめとする名僧の修行の旧跡が点在。



その先には目を引く朱色建物が現れます。


左右に宝形造のお堂があり、右は法華堂。左は堂行堂。修行中なので、ここも静かに通過します。
この二つのお堂は渡り廊下で繋がっているのですが、武蔵坊弁慶がこの渡り廊下を天秤棒のように使って二堂を担いだという伝説があり「にない堂」とも呼ばれているそうです。

この渡り廊下の下をくぐると再び階段が出現。


階段を下りると釈迦堂に到着しました。




釈迦堂を拝観して出ると、先程の雨が嘘のような晴天。
この晴天に気を良くした我々は西塔から横川まで歩くことに。3.8kmほどですが、地図をみると何となく下りのような予感。(←見事にハズレました。実際の標高は西塔約700m、横川約650mと大差なし)




比叡山には立派な奥比叡ドライブウエイが通っていますが、歩行者は利用できないので、回峰行者も歩く行者道をひたすら歩くことになります。




これがかなりハードでした。山道のアップダウンが多い上に、湿度が高くすぐにのどが渇きます。しかし、この山道に自動販売機はありそうもないので、節約しながら水を飲みます。霧に覆われ、雨に降られ、少し晴れたり、風が吹いたり・・・・天候は変わる変わる。


だんだん言葉も少なくなり・・・ひたすら歩くのみ。

ふと子供の頃にNHKで見た「千日回峰行」のドキュメント番組を思い出しました。(子供がなぜこのような渋いドキュメントを見たのか・・・比叡山を訪れた直後だったのかもしれません)厳しい天台宗の修行の中で特に厳しいといわれ、7年ががかりで千日間、計4万キロを歩く修行です。途中で行を続けられなくなった時は自害するという決意で行う荒行で、行者は(首をくくるための)死出ひもと呼ばれる麻ひもと両刃の短剣を常に持って修行します。

資料より

最後の9日間は、断食・断水・不眠で横になることも許されないのです。これを満行すると「北嶺大行満大阿闍梨」となります。子供心に真剣にドキドキしながら「この人死んでしまうのではないか」と心配して見ていました・・・
忘れていた記憶です。

玉体杉。この辺りがちょうど中間地点。


回峰行者がここで御所に向かって玉体加持の祈祷(天皇の安泰を祈ること)を行う場所です。

まだまだ、まだまだ・・・歩きます。


ただ歩くのみ。

この階段を下って・・・やっと横川駐車場に到着!!


まずは自動販売機を見つけ水分補給。美味しかった~!
(何だか今、思い出しただけで疲れました。)


横川は、慈覚大師円仁によって開かれ、親鸞、日蓮、道元などの名僧も修行した場所です。

横川中堂。横川の中心となる大堂。


元三大師堂。おみくじの発祥の地。↓角大師


角大師は元三大師(良源)が鬼の姿になって疫病神を追い払った時の像と言われています。何となくゆるきゃらの雰囲気が・・・子供は泣くかな?
この角大師のお札は魔除けの護符として京都の民家に貼られているこもあります。

拝観していたら、遠くからお経を唱える声が聞こえてきました。
声のする方に誘われて行ってみると・・・比叡山行院。


立ち入り禁止で僧侶の姿は見えませんが、たくさんの方が一生懸命にお経を唱えていて、中から大迫力の読経が聞こえてきます。その必死さが伝わってきて…
突然、ザワザワ…と感動が押し寄せてきて泣きそうになりました。

昨年訪れた高野山は、親しみやすさと寛大さを感じました。「一緒にやろうよ!」というようなすぐに仲間に入れてくれるような感じです。
それに比べて比叡山は距離を感じました。修行をしている場所を良かったら少し見て行って下さい・・・というような、親切だけど仲間には入れてもらえない寂しさ。でもそれは当然のことでもあるのです。命懸けの厳しい修行が行われてきたこの場所に図々しく入り込むことはできないのだと気が付きました。

バスに乗って横川から延暦寺バスセンターに戻ったところで、スコールのようなどしゃ降り。


ある意味、この日も天候に恵まれました。
(つづく)

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後日談。
夏休みが終わり職場で話しをしていたら、職場の人もこの日比叡山をドライブしていたことが判明。同じ時間に近くにいたことを知り、盛り上がりました。行者道を歩いていたことを話したら「無謀だ」と言われました。そういえば行者道で出会った人は一人だけでした。

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