リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

29. ペーターとイングリッド

2016年09月07日 | 旅行

新・旅日記 No.12 2009年冬の旅

 ヴュルツブルクの大切な友だち

 ヴュルツブルクは530年ほど前にティルマン・リーメンシュナイダーが彫刻家となって工房を構えた町です。今でも世界中で一番多くの作品をマインフランケン博物館に所蔵しているのも当然と言えば当然ですね。その博物館で1999年に夫と私はペーターと知りあいました。彼はリーメンシュナイダーの部屋の監視員をしていたのです。毎年のように訪ねるうちに親しく連絡を取るようになり、今では行けば必ず一緒にあちらこちら訪ねたり、おしゃべりしたりする時間を設ける大切な友だちです。お連れ合いのイングリッドとは最初の頃はお目にかかりませんでした。でも、この年には美味しいご馳走を作って待っていてくれるほど親しくなっていました。お二人と一緒の写真を載せておきます。


                     

                                  <右からペーター・イングリッド・夫・私>


 お二人だけでなく、友だちの家を訪ねる度に、お部屋をきれいに整え、ガラス張りの大きな棚に美しく食器や工芸品などを飾り、お風呂もトイレもピカピカというドイツの住宅には感心してしまいます。ですから、我が家に戻ると家の中が一層雑然と見えて仕方がありません。少しずつでもこの整った居心地の良さをまねて家をきれいにしようと心がけるようになりました。

 マインフランケン博物館に来る日本人がいると、ペーターはこの日に渡した『祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』を見せながら話しかけては宣伝してくれています。リーメンシュナイダー関係の記事が載っている新聞やCDなども折に触れて送ってくれるので、私は彼をヴュルツブルク特派員と呼んでいるほどです。有り難い存在です。

 けれども最近、ペーターだけではなくイングリッドも足腰がだいぶ弱ってきたようなので心配です。ペーターは退職した後もときどきマインフランケン博物館で仕事をしていますので、みなさんも見かけることがあったら声をかけてあげてください。きっと喜ぶことでしょう。

※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA

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28.ヴュルツブルクにて

2016年09月07日 | 旅行

新・旅日記 No.11 2009年冬の旅

 バスで向かったマイトブロン

 本当は前日のうちにマイトブロンまで行ってくるつもりだったのですが、ゲロルツホーフェンで午後まで時間を取ってしまったので、この日は大忙しでした。まずはヴュルツブルク中央駅前のホテルレギーナに早めのチェックイン。トランクを置き、撮影道具だけ持って駅前のバス停に急ぎ、昨日のうちに買っておいたチケットでリンパーまでバスに乗りました。土曜日のために平日のようなバス便がないので、リンパーから歩けるよとアドヴァイスを受けたのです。何といっても帰りのバスに間に合わないと夫を迎えに行く列車に乗れません。ドイツ語もあまり話せず、携帯も持たない人ですから私が空港窓口で待っていなかったら一体どうするつもりなのでしょう。バスだって列車だって事故で遅れるということがありうるのに、「いいよ、あなたが来るまで待ってるから」と言うのです。よく平気で「ただ待つだけ」という選択ができるものだと、我が夫ながら呆れているのですが、本人はどこ吹く風といった感じです。結局いつも気に病むのは私。

 マイトブロンまでの地図はホテルでプリントアウトしてきたので、運転手さんに地図を見せ、「ここに行きたいのだけれど、どのバス停で下りたら良いですか」と聞きました。するとそこに座りなさい、教えてあげるからと言われて一番前の席に着きました。リンパーの町まで入ってしまうと遠くなるので、町の入り口に当たるRimper Schleifweg というバス停で、「ここだよ」と運転手さんが合図し、歩く方向も指で教えてくれました。しばらく坂を下って行くと、以前タクシーや友だちの車で来たマイトブロンの教会が見えてきました。もう大丈夫です。見慣れた景色にホッとしながら足を速め、一人で教会に入ってゆっくりマイトブロンの「歎きの群像」を撮影しました。以前と色合いがちがったような印象が残りましたが、この砂岩の浮き彫りは本当に深い感動を与えてくれるリーメンシュナイダーの最高傑作の一つです。写真と詳細は 12. マイトブロンの静かな教会をご覧ください。

 帰りのバスに間に合うようにバス停へ。3回目にしてようやく自分の足で来て、帰ったということで、『祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』というタイトルに少し自信が持てるようになってきました。このあとホテルに戻って重たいカメラと三脚を置き、フランクフルト空港まで特急で出向きました。2週間ぶりに夫と再会。やはり食事を一人で食べなくて済むこと、困ったときに相談できる相手がいるということはとても心強いことです。とはいっても、夫一人でヴュルツブルクまできてくれればもっと良かったのですけれど。


                         <リンパーと、マイトブロンのバス停> 

                   

      


                                           

                                         <マイトブロンの聖アフラ教会>
※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA 

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27.ゲロルツホーフェン

2016年09月07日 | 旅行

新・旅日記 No.10 2009年冬の旅

 再び美術館独り占め ーヨハネ礼拝堂での親切ー

 この日は一人旅最後の日。何でも自分で決められて身軽に動ける反面、何といっても食事時や困ったことが起きた場合に話ができる相手がいないのは心寂しく思えます。明日は夫が仕事を終えてドイツにやってくるのでフランクフルトに迎えに行く予定です。丸一日自分の気持ちに従って動き回れるのは今日だけです。

 バンベルクからシュヴァインフルトまで列車で行き、そこからはゲロルツホーフェン行きのバスで40分ほど。終点で下車すると町の中程に教会の尖塔が見えました。ここにはリーメンシュナイダーの「磔刑像」と「王冠を与える天使」があるはずですが、教会内を二巡りしてもそれらしき像が見当たりません。ローゼンクランツのマリアはあったのですが、作風があきらかにリーメンシュナイダーとは違っています。もしかしたら外にあるのかもしれないと探してみたところ、裏手に小さな教会のような美術館があり、ヴュルツブルクのマリア礼拝堂にあった大ヤコブのレプリカが置かれていました。ここに見たい作品があるはずと思ってよく見ると、この日はなんと閉館日でした。


               <大ヤコブのレプリカが立つヨハネ礼拝堂美術館>                    <ヤコブ像の拡大写真>


                          


  これではせっかく来たのに何の作品も見られないままで帰ることになってしまいます。他の日に出直すゆとりもありません。あまりにも残念なので思い切ってインフォメーションセンターに電話をかけてみました。直接対面してのお願いなら何とか度胸でできるのですが、電話となると本当に苦手で、ドキドキものです。それでも必死に話してみたところ、「とにかく来てみてください」と言うのです。インフォメーションセンターはこの教会の反対側にあることがわかりました。そこで、受付に行くと親切そうな女性がいたので『祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』を見せて、こういう本を書いたものですが、是非リーメンシュナイダー作品を見たいのですとお願いしてみました。すると、ここでも「館長に聞いてみて、来られる人を探してみます」といってくれたのでホッとしました。その結果、午後1時からなら来られる人がいたからといわれて、勇気を出して電話をかけて本当によかったと思いました。

 近くの喫茶店で食事をし、1時に再び出向きました。すると、てきぱきした女性が来てくれていて、先ほどの美術館の鍵を開け、電気を付けて、またまた私一人のために開館してくれたのです。昨日も今日も、何と親切な人に助けられていることか。三脚を使用しての撮影も許可をいただき、ゆっくりと撮影、拝観することができました。ヴュルツブルクのカタログに出ていた作品も他に2点あり、予想外の収穫でした。ここでも料金は不要と言われたので絵はがきを買い、心からお礼を言ってゲロルツホーフェンをあとにしたのでした。

※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA

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