金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

263:岡本敏子 『岡本太郎が、いる』

2006-12-08 10:43:11 | 06 本の感想
岡本敏子『岡本太郎が、いる』(新潮社)
★★★★☆

わたしは芸術に疎いので、岡本太郎作品はおそらくほんの一握りも
知らないし、その位置づけというのも把握できていないのだけれど、
仕事で彼の文章に触れる機会があって、思想家・文筆家としての
彼の一面に、すごいなあと思うことしばしばだったのです。
手始めに彼の通史のようなものを読みたいなあと思っているのだけれど
なかなか見つからず、とりあえず読みやすそうなものをちょこちょこ
セレクトしている次第。

本書は、岡本太郎のパートナーであり秘書であり養女でもあった
著者の回想録。
思想のバックグラウンド、私生活の姿を垣間見ることができて
おもしろい。
帯に
「誰だって惚れずにはいられない“人間・岡本太郎”の魅力の全て」
とあって、著者の視点というフィルターがかかっているのは
もちろん考慮しなければならないところだけれど、
本当にチャーミングな人だったのね、と思う。
彼のことが大好きだったんだなあ……というのがひしひし感じられて、
なんだか胸にじんわりきてしまった。
凡人のわたしには、まるで嫉妬を感じなかったというのが
信じられないのだけれど、そんなことは問題でなくなるくらいの
絆があったということなんだろうか。

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262:野中柊 『ひな菊とペパーミント』

2006-12-07 12:31:15 | 06 本の感想
野中柊『ひな菊とペパーミント』(講談社)
★★★☆☆

離婚してしまったパパとママ、パパの再婚に、再婚相手の息子、
友だちとのトラブルに恋の噂。
13歳の女の子・結花の中学生ライフを描く物語。

帯に「ちょっとキュートな少女の世界」とあったけれど、
まさにキュート。
長野まゆみ『コドモノクニ』が好きな人は
たぶんこれも好きだと思えるはず。
女の子どうしの、あからさまでないけれどぎくしゃくした空気は
ちょっとだけリアルだなと思ったけど、
全体的にふわふわした綿菓子みたいな雰囲気。
松岡くんとの最後のやり取りがとっても可愛い。
すべてが「開きっぱなし」で終わってしまったので、
ちょっと個人的には物足りないのだけれど、
きちんと締めていないところもこの雰囲気に一役買っていたのかな。
野中さんの本は「女の子」が主人公の話が好きだ。
大人が主人公の話は「むき出し」な感じが苦手。

しかしこの結花ちゃんは、客観的に見てみると
典型的な「男が途切れないタイプ」だな。
末恐ろしい!

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261:酒見賢一 『陋巷に在り〈1〉』

2006-12-06 12:53:16 | 06 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り〈1〉儒の巻』(新潮社)
★★★☆☆

後宮小説』の著者が、12年かけて連載していたという
古代中国を舞台にしたサイキック・アクション。
孔子と、「一を聞いて十を知る」と評された最愛の弟子・顔回が、
政敵たちと「儒」の能力をもって戦う。

「話がおもしろすぎて打ち切りにできなかった」という話が
文学賞メッタ斬り!』にありました。
政治的野心を持った孔子、敵の首を刎ねちゃう孔子、
聖人君子じゃない孔子像がおもしろい。
今はまだ孔子周辺の政治的なトラブルと素性の話に終始していて、
当時の呪術的集団や儀式、孔子の生涯にまつわる説明が
頻繁に出てくるため、ややうんざりしてしまうのだけれど、
話の前提なのでがんばって読む。
子路や子貢という名前を知っている人物が出てくると
なにやらうれしい。
どうやらヒロインとなるらしい、願回に恋して
子どもながら押しかけ女房しているも大変可愛い。
おっとりしている願回のキャラクターは、わたしの好みに吉と出るか
凶と出るか、まだ判断がつかないところ。
まだ様子見、ということで1巻は★3つ。

「論語」も、思想的な面はさておいて、きちんと読めば
実在の人物の言行録としてはかなり面白そう。
中学・高校の教科書で一部読んだだけだけれど、
孔子の弟子たちに対する人物評や弟子とのやり取りには
当時から興味大でした。

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260:江國香織 『冷静と情熱のあいだ―Rosso』

2006-12-01 14:02:08 | 06 本の感想
江國香織『冷静と情熱のあいだ―Rosso』(角川文庫)
★★★★☆

未読の文庫本がなくなってしまったので再読。
江國香織が女性視点、辻仁成が男性視点で描いたラブストーリー。
映画化もされましたね。
映画版の竹野内豊は鼻血が出そうにすてきだったのだけれど、
辻仁成(※)の描く順正が好きじゃないのもあって、
物語としては特別感銘を受けることはなかった。
映画だとダイジェスト的にまとめられ、映像の力もあって
単純に「すてき……」と思ったのだけど。
(竹野内豊をすてきだと思っただけかもしれない

そんなこんなでストーリーはさておき、
文章として見たときに、『ウエハースの椅子』についで
この本の表現は好き。
言葉が喚起する色彩とかイメージを含めて、すごいセンス。
無駄なディテールについて指摘されるけれども、
表現としては無駄がなく、行間を読ませる種類の文章だと思う。

(※)
一時期は、彼の文章や映像からにじみ出る、
「俺ってかっこいいぜ! 才能あるぜ! 女にモテるぜ!」
という感じをおもしろく見ていたこともあったが、
美穂ちゃん(なぜか我が家では昔からちゃん付け)と
まんまと結婚しおおせてからは、腹立たしくて仕方ない。

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