金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

61:恩田陸 『いのちのパレード』

2009-11-26 11:41:28 | 09 本の感想
恩田陸『いのちのパレード』(実業之日本社)
★★★☆☆

<異色作家短編集>へのオマージュとのこと。
<異色作家短編集>自体を読んでいないので、
どこがどうオマージュになってるのかわからないのだが。
表題作を含む15編からなる短編集。
正直、最初の二編を読んで、
「あ~これは合わない予感……読むのやめようかな」
と放棄しそうになったのだけど、結局読了。
「SUGOROKU」「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」
あたりは雰囲気や発想がおもしろいし、全体的に
「好きじゃないんだけど、上手い」って感じ。
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60:朝倉かすみ 『田村はまだか』

2009-11-23 23:08:06 | 09 本の感想
朝倉かすみ『田村はまだか』(光文社)
★★★☆☆

小学校のクラス会の三次会、ススキノのバー「チャオ」で
四十歳になる男女五人が同級生「田村」を待つ。
貧しい母子家庭に育ち、「孤高の小六」と言われた田村を
待ちながら、彼に関する思い出話をする五人。
それぞれに忘れられない人物とそれにまつわるできごとを
脳裏に浮かべ、「田村はまだか?」を繰り返すが……

***********************************

吉川英治文学新人賞受賞作とのこと。
読んだ書評で、「この作家のベスト!」とイチオシされており、
ほかでもずいぶん評判がいいようだ……と興味を持って
借りてきました。
世代的な問題なのか?
正直、そこまで胸に迫るような話だとは思えなかったのだけど、
ぴかっと光るような好みのエピソードとセリフがあって、
この人のほかの作品も読んでみたいと思えた。
裏ベストは『ほかに誰がいる』とのこと。
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58・59:田辺聖子『花衣ぬぐやまつわる…―わが愛の杉田久女<上>・<下>』

2009-11-19 21:41:09 | 09 本の感想
田辺聖子『花衣ぬぐやまつわる…―わが愛の杉田久女〈上〉・〈下〉』(集英社文庫)
★★★☆☆

天才的と評されながら、敬愛する師・高浜虚子から破門され
失意のうちに精神病院で死を迎えた俳人・杉田久女。
松本清張の『菊枕』、
吉屋信子の『私の見なかった人〈杉田久女〉』によって
定着してしまった、嫉妬深く虚栄心の強い女性としての
彼女のイメージをくつがえすべく、
資料と彼女を知る人々の証言をもとに
新たな久女像を描き出す評論。

*****************************

うう、長かった……。
3日かかってようやく読了。
これまでのイメージどころか、杉田久女のことなんて
まったく知らなかった(句はいくつか知ってたが)ので、
イメージを覆される衝撃というのはなかったのだけど、
生真面目すぎて人との距離の取り方・付き合い方がわからず
夫や友人、そして師から疎まれていく久女が、
なんだかもう、痛々しすぎて気が滅入った!
小細工が本当だとしたら、虚子嫌いになってしまいそうである。

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57:吉本隆明・吉本ばなな 『吉本隆明×吉本ばなな』

2009-11-15 20:42:05 | 09 本の感想
吉本隆明・吉本ばなな『吉本隆明×吉本ばなな』(ロッキングオン)
★★★☆☆

よしもとばななの言動にはうんざりしちゃうし、
作品にも昔のような透明感がなくなってしまって
図書館で未読のものが目に付いたら借りて読む、くらいの
スタンスなのだけど、お父ちゃんはなんか可愛い。
「戦後最大の思想家」だとか「知の巨人」だとか言われている人に
対して何だけれども。

しかしこの本は読みづらかったなあ。
対談で、もろに話し言葉だからかもしれないけど、
やたらと指示語が多くて曖昧なの。
あとがきは良かった。
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56:コラム・マッキャン 『ゾリ』

2009-11-14 12:26:11 | 09 本の感想
コラム・マッキャン『ゾリ』(みすず書房)
★★★☆☆

1930年代、ファシズムに支配されたスロヴァキアで
フリンカ親衛隊によって両親と兄弟を惨殺され、
唯一の家族となる祖父とともに生き延びたジプシーの少女ゾリ。
ジプシーの仲間たちとの旅暮らしのなかで、
ゾリは祖父からジプシーの掟で禁じられた読み書きを教えられ、
学校へ通わされる。
戦後、社会主義政権下のブラチスラヴァで、
ゾリは詩の才能を革命詩人ストラーンスキーに見出され
文壇の寵児となった。
しかし、政治の変化がストラーンスキーを窮地に追い詰め、
ジプシーの生活をも変えていく。
そしてその発端をつくったとされたゾリは、
ジプシーからの終生追放を言い渡されるのだった。

***************************************

ある女性の一代記ってところでしょうか。
実在のジプシー出身の女性詩人をモデルにしているそう。

時代背景がよくわかっていなかったせいか、
前半はなんだかよくわからないままに社会とゾリの状況が、
ぱたぱたっと変わっていってしまう印象なのだけど、
ファンキーなじいちゃんとともに、ジプシーの仲間たちと
すごしていた少女時代がいちばんおもしろかったかも。
ジプシー詩人として注目を浴び、華やかな世界に取り巻かれて
恋をしていたものの、いつの間にか人生は暗転。
ラストの章があれだったってことは、
ゾリの人生にとって、その時期のその恋が
重要な意味を持ってたってことなのかなあ。
男のキャラクターが全然好みじゃないので、
そこに関しては感情移入できなかった

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55:高山なおみ 『日々ごはん〈11〉』

2009-11-12 21:41:12 | 09 本の感想
高山なおみ 『日々ごはん〈11〉』(アノニマ・スタジオ)
★★★☆☆

強くなにかを主張しているわけでもないのに、
読んでいる人間に日々の暮らしに対する姿勢を正させてしまうのは
何なんだろうなあ。

一日のできごとをすくい取り、それに対する自分の気持ちを
きちんと覚えていて文字にする。
それって、簡単なことのように思えて、難しい。
年を取って感受性というものが低下しまくっているのか、
ここ数年のわたしは、夜になってブログに何か書こうとしても
一日のできごとや気持ちはすでに風化してしまっていて、
何も書くことが思い浮かばない。
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54:恩田陸 『きのうの世界』

2009-11-11 12:15:55 | 09 本の感想
恩田陸 『きのうの世界』(講談社)
★★★☆☆

上司の送別会の帰り、突然姿を消し失踪した男は、
住んでいた東京から遠く離れた塔と水路の町で
殺されていた。
男は町に移り住み、町にまつわるなにかを
調査していたようだが……

*********************************

ああ~まさに恩田陸!!
って感じの、肩透かしを食らわされる結末。
中盤までは文句なしにおもしろい、
ラストはあたりはずれがあって、
おもしろいかどうかは読み終わるまでわからない、という。
新聞連載のせいもあるのか?
加筆修正しているはずだけど、
なんだか練りが足りない印象。
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53:奥田英朗 『ガール』

2009-11-07 10:34:00 | 09 本の感想
奥田英朗『ガール』(講談社)
★★★☆☆

課長に昇進し、年上の男性部下の扱いに悩む。
マンション購入を決意し、働いているときの意識が変わる。
年齢と「ガール」意識のギャップに悩む。
シングル・マザーとして、子育てと仕事の両立に励む。
ハンサムな新入社員に胸をときめかせる。

そんな30代OLたちの日常を描く短編集。
帯に抜粋されていた
「きっとみんな焦ってるし、人生の半分はブルーだよ。
 既婚でも、独身でも、子供がいてもいなくても」
という文句がこの短編集のテーマをよく表している。

見破られてるなあ、というこの感じ。
表題作「ガール」と「ひと回り」には
横っ面を張り飛ばされたような気が……
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52:干刈あがた 『野菊とバイエル』

2009-11-06 23:43:32 | 09 本の感想
干刈あがた『野菊とバイエル』(集英社文庫)
★★★★☆

戦後間もない昭和20年代の半ば、小学3年生になったミツヱは
町が市になったのに伴い、新しい小学校に通うことになった。
家に下宿することになった音楽の男の先生からピアノを習い、
若い男の先生と母との間に流れる空気に気を揉み、
別の小学校からやってきた隣の席の女の子との距離に
もどかしさを感じる。
子どもの日常と、時折垣間見える大人の世界を
少女の視点で描いた物語。

*****************************************

Kライブラリーより拝借。
これ、もう絶版なんだなあ。

時代背景としては、わたしの生まれた年の30年も前なのだけど、
描いているのが普遍的な子どもの世界なので、
どこかで知っていたような、なつかしさを感じる。
始業式に若くてきれいな先生を見て、
「あの先生が自分の担任だったらいいなあ」
と思ったことあるなあ。
時代背景のせいか、舞台設定のせいか、
「枠」の中に納まった現代の少年少女の物語にくらべると、
描かれた世界に広がりが感じられる。
たぶん、時代の空気がそういうものだったのね。
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51:村上龍 『半島を出よ〈下〉』

2009-11-06 11:46:47 | 09 本の感想
村上龍『半島を出よ〈下〉』(幻冬舎文庫)
★★★★☆

日本政府は福岡を封鎖、反乱軍の占領下となった福岡では
日本政府や中央に対する反感を強めていた。
市民を巻き添えにした大阪府警のSATの急襲により
反感はますます強められることになる。
反乱軍によって行われる逮捕や拷問、郡内の粛清を目にした
被占領者たちが苦悩する一方で、
イシハラグループの若者たちは
ある計画を実行に移そうとしていた。

************************************

「話進まないなあ~!!」というところは
飛ばし読みしていたのだけど、
肩透かしを食らわされることなく楽しめました。

チョ・スリョンとキム・ヒャンモクの回想シーンでは
涙が……
犯罪者であるイシハラグループの連中には
ちっとも感情移入できないので
最後の盛り上がりは半減といった感じだけど、
読み終えた!見届けた!という達成感は味わえる。
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