金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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282:酒見賢一 『陋巷に在り〈10〉』

2006-12-31 12:32:55 | 06 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り〈10〉命の巻』(新潮社)
★★★★★

医鶃をともない魯城に帰った顔回は、
蠱術におかされた伯牛のもとを訪れる。
医鶃は体内の蠱を取り出す治療を開始するが、
宋から帰還した孔子の巫儒追放の命により治療を阻まれる。
一方、蠱術から解放され、衰弱した体の療養につとめるだが、
尼丘に禍を持ち込む余所者として顔一族からの風当たりは強かった。
太長老に危機を救われたは彼の自宅に招かれ、
孔子の母である徴在の話を聞くことになる。
優秀な巫であり季女であった徴在は、誰にも嫁がないまま
家のために生涯を終えるはずであったが、
尼山の神から三年後に子を産むと神託を受けることになった。

元気で負けん気の強いが帰ってきて、安心!
今まで秘されていた徴在の出奔と孔子誕生の経緯も明かされはじめ、
處父のもとには悪悦の魔手が忍び寄る。
孔子の政治的な立場にも翳りが見え始め、気になる話が目白押し。
許されない婚姻を貫こうとする徴在に頼まれ、
恋敵である男を守ろうとする顔穆にホロリ。
顔穆は死の間際まで徴在を忘れることができなかったのに、
徴在は天命という好意よりはるかに大きなものを抱えていて、
その天命の前では、顔穆なんて
吹けば飛ぶような存在だったのだなあと思うとせつない。

最初は13巻もある……と思っていたけど、残り3巻しかない。
なんだか読むのがもったいない。

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281:酒見賢一 『陋巷に在り〈9〉』

2006-12-31 11:56:51 | 06 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り〈9〉眩の巻』(新潮社)
★★★★☆

とともに子蓉をも冥界から連れ戻そうとする顔回は、
子蓉の示す奇策を実行するが、結果的に彼女を失うことになる。
一方、魯城にある孔子は、成城毀壊を実行しようとしない處父に
煩わされていた。
理想を実現するためには三城の毀壊が不可欠と考える孔子は、
自らが忌み嫌う手段を選ぶことになる。

割と早い段階で鏡蠱に憑かれてしまったせいか、
の印象が薄くなってしまっている。
ただ救出されるべき存在として動かされているような。
顔回があれこれ奔走しているのも責任感のためだけって感じで
理由がなんだか弱く思えてしまう。
願回が子蓉と惹かれあってやまないのはわかるのだけれど、
に対する感情が明確に描かれないので、
一連の騒動が解決したというのになんだかもやもや。

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280:酒見賢一 『陋巷に在り〈8〉』

2006-12-29 16:09:51 | 06 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り〈8〉冥の巻』(新潮社)
★★★★☆

子蓉との駆け引き破れた医鶃は勝負に出た。
顔回は医鶃の指示に従い、薬草漬けの酒で意識を殺し、
冥界までを連れ戻しに行くことになる。
医鶃の信奉する女神・祝融に導かれ、と子蓉のもとへ
たどりついた顔回だが、なぜかそこへ孔子が現れる。

問答にはもううんざりだし、今回は完全にオカルトというか
スピリチュアルな世界に話が行ってしまって、
そういうのが得意じゃないわたしは困ったなあという感じなのだけど、
祝融のキャラクターと暗示される孔子一門の未来に惹きつけられて
脱落せずに読めております。
男らしいようでおっかさんのような祝融さまがすてき!
さっき便覧で調べてみたけど、この後孔子は魯での政争に破れて
失脚してしまうのね……。

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279:大道珠貴 『しょっぱいドライブ』

2006-12-29 15:38:54 | 06 本の感想
大道珠貴『しょっぱいドライブ』(文藝春秋)
★★★☆☆

連日の出勤で読書はすすむが感想が追いつきませぬ。

籐子ちゃんライブラリーから拝借。
芥川賞受賞の表題作と、「富士額」「タンポポと流星」の三篇を収録。

小説にわかりやすさとか明確なテーマを求める人には
この本ダメだろうなあ……と思うのだけれど、
個人的には楽しめました。
女たちの奇妙な関係を描く「タンポポと流星」が好き。
いずれもなんとも形容しがたい関係性を描いたお話で、
帯の文句を考えるのに苦労しそうだ。

ある種の人々は、向上心もなく流される主人公に対して
嫌悪感を持つかもしれないけれども、別にいいじゃん、と思う。
前向きで希望に満ち溢れた小説ばかりじゃなくてもいい。
怒ったりいらついたりした感想を読むと
みんな真面目なんだなあと思う。
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278:酒見賢一 『陋巷に在り〈7〉』

2006-12-27 00:16:31 | 06 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り〈7〉医の巻』(新潮社)
★★★★☆

鏡蠱の影響で生命の危険にさらされたは、
顔回のはからいによって尼丘で治療を受けることになった。
尼丘に招かれた南方の流れ医者・医鶃が
に乗りうつった子蓉と対決する。

公冶長、ふたたび受難の巻。
に吹っ飛ばされ、医者にはでぶ呼ばわりされ、
顔面火傷しかけて髪はちりちり、友達の鳥たちは全滅。
目立たないながらもひどい目にばかりあわされている彼。
かわいそうすぎる。

小競り合いというか、話にはあまり動きがない。
子蓉が強すぎてやや飽きて来た。
鮮やかな逆転劇を期待しつつ、
強さインフレが起こらないだろうかと余計な心配もしてしまう。

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277:酒見賢一 『陋巷に在り〈6〉』

2006-12-27 00:09:00 | 06 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り (6)』(新潮社)
★★★★☆

悪悦の細工によって、孔子への憎悪の念を噴出させた不狃は、
鬼に憑かれ、子路の軍を蹴散らして魯城に進撃した。
混乱の中、費軍を迎え撃つ孔子。
一方、街中の暴徒を扇動していたと五六の前には、
顔回があらわれていた。

孔子のかっこいいところがようやく見られましたよ、の巻。
子路に対する孔子の信頼のあつさにときめき!
孔子が自害を図った子路をぶっとばしたところで笑ってしまった。
二メートルは飛びすぎ。
最初に読んでいたときは眠くていまいち集中できなかったのだけど、
読み直してみれば、戦闘の描写も退屈せずに読めました。
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276:酒見賢一『陋巷に在り〈5〉』

2006-12-25 14:48:14 | 06 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り〈5〉妨の巻』(新潮社)
★★★★☆

孔子から命じられて死者として費城へ向かった公治長は、
何者かの情報操作によって費城における孔子への信頼と
長年にわたる工作の成果が崩壊していることを知る。
一方、鏡の術の力は強大化し、ヨに扇動された雑人溜りの連中のため
魯の城内には不穏な空気が流れはじめていた。
様子のおかしいを見張っていた五六も、
恋ゆえに媚術に付け入られ、妖女となったの僕と化していた。

これでもか!これでもか!と不幸に見舞われる公治長。
犯罪者の汚名を着せられて投獄され、
孔子のために力をつかって衰弱し、
今度は費城の牢に入れられてしまいました。
政治にかかりきりになっている孔子への不満は
ところどころにさしはさまれるのだけれど、
孔子を侮辱されて激昂し、死して事態の転換を図ろうかと考える
公治長の姿勢はよくわからないわー。
孔子ったら思いやりに欠けるしさー、
公治長がまっさきに愛想つかしてもおかしくないんじゃ……。

子路は将軍として費城へ向かうことになり、ウッキウキ。
景伯の前で頭の悪さを露呈しているところはおもしろいが、
個人的には戦争のやり取りに興味を感じないので
次巻は退屈してしまいそうだ。
コメント (2)
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275:酒見賢一『陋巷に在り〈4〉』

2006-12-25 14:13:07 | 06 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り〈4〉徒の巻』(新潮社)
★★★★★

師であった顔穆の死に様に、自らの存在意義を揺るがされた
五六は顔回の警護を放棄して街を彷徨する。
彷徨の途中、と出会った五六だが、
は子蓉に与えられた鏡によってあやつられ、
別人のようになまめかしくなって、男を誘っていた。
正気に戻ったから、このところ記憶を失うことが多いと
聞かされた五六はを守ることにする。
一方、少正卯は顔氏の本拠地である尼丘を訪れていた。

説明的でおもしろくないなあと思っていた1・2巻の
陽虎にまつわるあれこれだけれども、
費城のエピソードのためだったのかしら。
子路・子貢のキャラクターも確立し、いい味出している。
五六・・顔回の三角関係フラグに期待大
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274:酒見賢一『陋巷に在り〈3〉』

2006-12-25 13:50:07 | 06 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り (3)』(新潮社)
★★★★★

おもしろい!!
1巻で挫折してしまった人には、2・3巻まで我慢して読むことを
おすすめします!

少正卯の塾の偵察に赴いた伯牛は悪悦の術で病み衰え、
子貢は子蓉の媚術に骨抜きにされてしまう。
帰ってこない子貢を連れ戻しに行った顔回は子蓉と対決、
子蓉に惹かれながらもの髪のおかげで媚術を破る。
顔回に愛憎半ばする気持ちを抱く子蓉は、
髪の持ち主を探して顔儒たちの前に姿を現し……。

子蓉の悲しみ、子蓉と顔回の関係も見所のひとつではあったのだけど、
なにより顔穆対子蓉の対決で明かされる顔穆の過去と恋、
最後の行動に思わず涙が……
一巻から名前の出ていた孔子の母・徴在は今後物語の展開に大きく
関わってくる様子。
気になってしょうがなく、借りてきていた5冊、
一気読みしてしまいました……

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273:寺田克也・穂村弘 『課長』

2006-12-25 13:23:52 | 06 本の感想
寺田克也・穂村弘『課長』(ヒヨコ舎)
★★☆☆☆

イラストレーター・寺田克也と歌人・穂村弘のコラボ絵本。
穂村弘の名前で検索かけて借りてきたのですが、
いったいどんな本だかまったく知らなかったので、
最初目を通したときは「なんじゃこりゃ!」。
あとがきで、寺田氏の絵に穂村氏が勝手に文章をつけるという
試みだったことがわかり、それなりに意味を見出せたのだけど……
寺田克也ファンは読まれたし。
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