山本周五郎『樅ノ木は残った(下) 』
★★★★☆
【Amazonの内容紹介】
お前の目論見は終わる。この命と引き替えだ!
切腹、闇討ち、毒殺。
親しき友が血を流す様を「主家大切」一義のため
原田甲斐はひたすら堪え忍ぶ。
藩内の権力をほしいままにする伊達兵部は他の一門と激しく対立し、
ついに上訴へと発展する。
評定の場で最後の賭けに出る甲斐。
すべては仙台藩安堵のために─。
雄大な構想と斬新な歴史観の下に、原田甲斐の肖像を刻んだ歴史長編。
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5月末から読み進めていた全三巻、ようやく読了!
長かった……!
単純に私が間を開けすぎだったのだけども、
読むのにかかった時間が、お家騒動の長い年月とリンクして、
「終わった……」と放心状態になってしまった。
史実を詳しく知らず、
七十郎が主人公の前に立ち塞がるヒーロー役になるのだろうと
思い込んでいたため、
「罪死??? マジで???」
とぽかーん。
七十郎も主人公の甲斐も、本人だけでなく、
一族が連座で死に追いやられてしまうの、本当にむごいね。
今だって、血縁者や家族に過剰な社会的制裁は加えられるが、
現行の法では、罪科の及ぶのが本人一人だけ。
心の底からありがたいよ……。
身内のやらかしで関係ない自分まで殺されるの、理不尽すぎるもん。
でも、理不尽な連座制が謀反や犯罪の抑止力にもなっていたのだろうな。
仕える主人のために命を賭けることを嫌っていた主人公が、
六十万石の藩を守るために、
自らの命と名誉、一族の命まで捧げてしまう皮肉よ……。
自分がこれからすることを客観的におかしいと思っていたからこその
嫌悪だったのかな。
悪役たちが、野望はくじかれたものの、
主人公たちほどの痛手を被っていないのが現実的。
身分の高い権力者だからね。
私の最大の危惧は、
「主人公は死に、その子らも死に追いやられたが、
宇乃ちゃんが主人公の子をひそかに産んでいて、
血は絶えなかったよ」
というロリコンエンドになることだったので、
その危惧にかすりもしない展開だったのには心の底からホッとした。
だって、なんか、多くない? こういう展開。
子孫が残るというのは生物としては救いなのかもしれんが……。
父に嫌われていると思い続け、何も知らされないまま
連座で切腹させられることになった主人公の息子が哀れ。
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