人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

2015年 ピエタリ・インキネンとホセ・クーラ プラハ響とクーラ作曲作品を初演 / Jose Cura & Pietari Inkinen /

2016-09-17 | プラハ交響楽団と指揮・作曲・歌 ~2017



9月に日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者に就任したピエタリ・インキネン。インキネン氏は、2015年秋から、チェコのプラハ交響楽団の首席指揮者も務めています。
ホセ・クーラは、2015/16年シーズンから3年間、インキネン氏率いるプラハ響のレジデント・アーティストとなりました。歌、指揮、マスター・クラスとともに、毎年、クーラ自身が作曲した作品の世界初演に取り組むということが契約に盛り込まれているそうです。

すでに2015年10月、2016年2月の2回のコンサートを実施し、次回は、今年10月にオペラアリアコンサート(プラハ響HP)の予定です。

*2016年2月のコンサートとマスター・クラスの様子は → 「2016年2月プラハ交響楽団を指揮 スメタナ・ホール」
*今季2016/17年シーズンの予定は → 「2016/17 プラハ交響楽団で指揮、作曲家、歌手として」

この投稿では、2015年10月7、8日、インキネン氏の指揮で、クーラが共演したコンサートの様子を紹介したいと思います。

JOSÉ CURA
Smetana Hall, Municipal House 7.10.2015 19:30 , 8.10.2015 19:30
MAURICE RAVEL /Pavane for a Dead Princess
JOSÉ CURA / If I die, Survive me! (world premiere of the orchestral version)
JEAN SIBELIUS / Symphony No. 1 in E minor op. 39
José CURA = voice of Pablo Neruda
Zlata ADAMOVSKÁ = voice of Matilde Neruda
SYMFONICKÝ ORCHESTR HL. M. PRAHY FOK / PRAGUE SYMPHONY ORCHESTRA
Pietari INKINEN = conductor

  


●インキネン指揮によるクーラの「もし私が死んだら」世界初演
コンサートのプログラムには、インキネン指揮のラヴェルの亡き王女のパヴァーヌ、シベリウス交響曲第1番とともに、クーラが作曲した、"If I die, Survive me!"(「もし私が死んだら」)のオーケストラ・ヴァージョンによる世界初演が盛り込まれました。

この曲は、詩人パブロ・ネルーダが妻マチルダとの愛と死を歌った、詩集「愛と死のソネット」92番をもとに、クーラがネルーダの人生を再構成し、作曲したものです。
最初の曲は1995年に書かれました。クーラの1997年発表のCDアルバム「アネーロ」に収録されています。少年時代から指揮者、作曲家志望だったクーラの思い入れがたっぷりつまったCDです。アルゼンチンの音楽家とも共演していました。
さらに2002年に他の4つの詩に作曲し、2006年に全体が完成しました。今回さらにオーケストラ版にし、世界初演を迎えました。



こちらがCDに収録された原曲です。クーラが歌っています。
José Cura - Sonetos de Amor y Muerte


パブロ・ネルーダは、チリの民主化のためにたたかった国民的詩人であり、ノーベル賞受賞者です。クーラの出身アルゼンチンと同じ南米出身、そして平和と愛のためにたたかう思いは、クーラとも根底でつながっています。
クーラはCD「アネーロ」のなかで、こういう言葉をかかげていました。
「人々の心に平和の種をまき、それが育つことができたら、自分のアーティストとしての存在意味がある」
この初心は、今も変わっていないように思います。

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●ネルーダへの思い、作曲にあたって――インタビューにこたえて
――色彩、透明でクリスタルなサウンドを心がけた
曲は、もともと歌手、女優とピアノのために書いた。オーケストラ・バージョンは大きな課題だった。非常に親密な音楽なので、主に色彩と、透明でクリスタルなサウンドを心がけ、仕事をした。
パブロ・ネルーダの詩は非常にエモーショナルであり、ステージ上であまりにそれに入り込みすぎないよう、注意深くする必要があった。詩の言葉が、本当に観客の胸を打つように、私は音楽に妥協点を見つけたと思う。



――私の心と魂にふれてほしい
ネルーダの詩に曲をつける時、きわめて注意深くなればいけない。クリスタルガラスの間を歩くようなもの。彼の言葉、詩はとても豊かで、完璧だから、すべての音が聴衆の注意をそらすリスクを負う。
作曲のきっかけは1995年、パレルモでフランチェスカ·ダ·リミニに出演していた時。幕間に楽屋に差し入れられた一冊の詩集が、ネルーダのものだった。感動し、すぐに作曲した。

私の曲で、私の心と魂にふれてほしい。ネルーダのドラマの中で、親密な愛の物語を描きたかった。
この作品は音楽だけでなくドラマ。パブロと妻との会話だ。人間が書くことができる最もロマンチックで官能的な言葉。

――プラハ響との記者会見で
観客を驚かせたい。通常のコンサートだけでなく、特別なイベントを準備する。10月には、詩人パブロ·ネルーダと彼の妻についての音楽ドラマを初演する。

常任指揮者インキネンとの連携を楽しみにしている。
フィンランドからアルゼンチン、事実上、地球全体をまわる。年をとった自分と若い専門性の高い指揮者との興味深い体験だ。





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コンサートの街頭ポスター


●大きな成功
コンサートの様子。インキネンが指揮し、クーラとソプラノが、ネルーダと妻役で歌った。







コンサートは大きく成功、ホセ・クーラも歌で出演して、喝采を受けました。「歌手クーラ構成のドラマは大成功」とレビューも。
観客から拍手を受ける首席常任指揮者のピエタリ・インキネンとホセ・クーラ。







コンサート後のレセプションで談笑するホセ・クーラ。


フィンランドの関係団体主催のレセプションの動画
Concert José Cura and Pietari Inkinen 8.10.2015


 

終了後のサイン会




リハーサル中のインキネン氏とクーラの様子、クーラのインタビューを伝えたニュース動画。
José Cura , Pietari Inkinen 2015 concert


 



インキネン氏がいよいよ日本フィルの常任指揮者に就任しました。インキネン氏との縁とつながりで、日本でも、このようなコンサートが実現しないものでしょうか。
それはともかく、クーラは、歌、指揮、作曲、演出・舞台デザインと、多面的な活動がますます発展しつつあります。この間、同年代のオペラ歌手の急逝のニュースが相次いだこともあり、くれぐれも、身体に負担をかけすぎることなく、元気で、長く、このユニークな活躍をつづけてほしいと心から願っています。


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